- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784042750055
作品紹介・あらすじ
ベロニカは全てを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、そして愛情溢れる家族。でも彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。ある朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。だが目覚めると、そこは精神病院の中だった。自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、狂人たちと過ごすことになってしまったベロニカ。しかし、そんな彼女の中で何かが変わり、人生の秘密が姿を現そうとしていた-。全世界四五ヵ国、五〇〇万人以上が感動した大ベストセラー。
感想・レビュー・書評
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よくわからない。
もっと賢い人が読めばきっとなにかに感銘したりするんだろうが、自分には無理だった。
二十四歳のベロニカは特に不自由を感じずに生きてきたが、同じような毎日を繰り返しながら老いてゆき、やがて得るものよりも苦悩する可能性が増えていくことに漫然と嫌気がさして自殺することにした。が、死にきれず、精神病院に入院させられることになる。そこで他の入院患者たちと交流を持つのだが。
作中、精神科医が普通とか常識とかを説明するのに、時計の針の進行方向を例にとって説明するところが「なるほど」と思った。
考えてみれば逆回りでもいいんだよね。文字盤がそれに対応さえしていれば。なのに全ての時計の針はみんな同じ方向に回る。考えたこともなかったな。
タイトルにやられて手に取りました。
こういうふうに人名が意味深に使われてるタイトルに弱いです。
古くはアガサの「なぜエヴァンスに頼まなかったのか?」とか。
中田栄一さんの「百瀬、こっちを向いて。」とか。
未読ですが「そしてミランダを殺す」なども気になってます。
本のタイトルって大事ですよね。
あの映画やドラマやで売れに売れた「世界の中心で愛を叫ぶ」も、最初はまったく売れなくて、でもタイトルを変えたらバカ売れしたそうです。
たとえどんなに内容が優れていたとしても、膨大な量の本が日々出版される現代では、まずはどんな形でも興味を持たれて手に取ってもらわないと評価のテーブルにすら上がらないってことなのでしょうね。
出版社と編集の腕の見せ所なのかな。 -
不幸ではないのになんだか心が満たされない、そんな日々はないだろうか。なに不自由なく暮らしていた若くて美しいベロニカは、ある時自殺を試みる。理由は、老いて下り坂になる今後の人生に悲嘆したこと、不条理な世の中に対してなにもできない無力感に襲われたこと。しかし彼女の自殺は失敗し、精神病院へ幽閉されてしまう。この物語は、「狂気」の世界と「普通」の世界の垣根を揺さぶり読者に疑問を投げかけてくる。そして、生への希望をも与えてくれる。『アルケミスト』とはちょっと味覚の異なる、心の探求書ではないだろうか。
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p.79 人は教わって学ぶことなどほとんどない。ただ自分で見つけるしかないのだ。
p.80 狂気とはね、自分の考えを伝える力がないことよ。まるで外国にいて、周りで起こってることは全て見えるし、理解もできるのに、みんなが話してる言葉がわからないから、知りたいことを説明することもできず、助けを乞うこともできないようなものよ。
自殺を決めたベロニカが精神病院へ入れられて、そこでゼドカやマリー、エドワードといって精神病患者たちや医者、看護師とすごすことで様々な知見を得るストーリー。
詩的な表現が多く、ハッとする文章に出会う。ただ、当時の人たちの精神病患者への差別意識を見ることもあるので、鬱病の発症率が多い現代日本とは感覚が違う。狂った人と見なされることの恐怖や、戦争から明けたばかりという空気感が、病院の内側の人たちから滲み出てる。独特の空気感(スピリチュアルの香り付き)があるけど、ラストの展開がやや私には肩透かしにも感じられた。 -
皆それぞれまず自分の世界の住人で、かつ無数の異なる個性の存在も理解しているはずなのに、"普通さ"という一般論、大勢が正しいとする事柄に縛られている…
何か満たされない若くて美しいベロニカは自殺を図り、塀で囲まれた精神病院で目を覚ます… -
10年くらい前少し心が病んでたときに読んだ。
病んでる主人公に母親が言った言葉。
「人生はそんなに複雑じゃない」
私はその言葉にけっこう救われた。
自分が考える程、けっこういろんな事って複雑じゃない。とりこし苦労って事が案外多い。
自分で物事を複雑にしないように。
うまく生きる術はそのことに尽きるのではないかとこの本を読んで思った。
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「普通に合わせるために生じるズレが憂鬱さを生み出す」という言葉が突き刺さった。
狂ってる、普通じゃないと思われたくないし、周りの人の目を伺ってたりするときこそ、一番自分の心に負荷をかけているなと改めて思った。
なかなかパウロの作品の中でも読み進めるのが難しかったが、自分も心の病の経験があるからこそ腑に落ちる物語だった。 -
この本の存在すら図書館で見つけるまで忘れていたし、手に取ってもそんなに期待せずに「高校生の頃読んだな、懐かしいな〜」程度で読み始めたのだが、結果的にかなり熱中して読んだ。後半は失速するというか、鬱状態にあるベロニカに生の気持ちを取り戻させるくだりはやや単純だし、安直なメロドラマだったので残念な気持ちになったし、そこが強く描けていないのであれば物語全体が萎んでしまうのではとも思うが、前半〜中盤くらいまでの、全てを持っている女性が今後の人生を思って死にたくなる感、がかなり切迫した力強い描写で読んでいてとても楽しかった。持っていようが今後自分に訪れるであろうのっぺりとした人生を思って死に取り憑かれることがある。私も狂気の世界に足を踏み入れてしまったし、今後もそれと付き合っていかなければならないので、この精神病の狂気と正常の境目をめぐる描写はまったく他人事ではない。
「狂気とはね、自分の考えを伝える力がないことよ。まるで外国にいて、周りで起こってることは全て見えるし、理解もできるのに、みんなが話してる言葉が分からないから、知りたいことを説明することもできず、助けを乞うこともできないようなものよ」
「わたしたちはみんなそう感じてるわ」
「だからわたしたちはみんな、なんらかのかたちで、狂ってるのよ」
何言ってるかわからない( ̄▽ ̄)
何言ってるかわからない( ̄▽ ̄)