メタルギア ソリッド2 サンズ オブ リバティ (角川文庫 ン 70-2)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年2月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784042767046
作品紹介・あらすじ
アメリカ海兵隊が開発した新型メタルギアが演習のために極秘に輸送されるという情報を入手したソリッド・スネークは、単身、輸送用の擬装タンカーに潜入するが…。
感想・レビュー・書評
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今作の舞台は全てS3計画というものが水面下で行われていて、スネークもソリダスも雷電も、その全てが愛国者の手によって動かされていた。S3計画とは人工的にソリッド・スネークを作り出す、ソリッド・スネーク・シミュレーションではない。実際は社会の思想的健全化のための淘汰(セレクション・フォー・ソサエタル・サニティ)の略で、人間の意志をコントロールするシステム。スネークに似た兵士を作り出す雷電自身のことではなく、その状況を作り出すための方法であり、それを扱う手順のこと。
全ては複雑に入り組んで、愛国者にたどり着く話だったのだ。
MGS2のノベライズで作者はMGS1と同じレイモンド・ベンソンが担当している。MGS1の時はアメリカ的なジョークが鼻につく感じだったが、今回はしっかりとゲームの空気感を損なわずに小説にしてある。
大人になり久しぶりに見ると、潜入作戦のオペレーターに潜入員である雷電の恋人のローズを入れることは凄くおかしい。これに違和感を抱かない雷電は、かなり巧妙に愛国者達に丸め込まれていたんだろう。特殊任務中に「今日がなんの日かわかる?」なんて聞いてくる女は違和感しかない。ゲームをプレイしている人には、最初からこういう違和感を与えていたんだ。子供の頃にはそこまで注意して見ていなかった。
ゲームをやっていて、銃撃戦の中で慌てていて欠損した情報を、この小説を読むことでまとめて得られる。MGSという膨大な情報量をもつゲームのストーリーを、どんなだったかなと思い出すのに良い。情報を上手く羅列してあるだけなので、小説の良さを求めると、そこまでの作品ではないのが残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『サブスタンスII マンハッタン』とは違った味があって、それがまたクセになります。
翻訳であるがゆえの若干の違和感(セリフとかセリフとかセリフとかw)も、慣れてしまえば特に気にならない…かな……。 -
超有名ゲームのノベライズ。しっかりとノベライズされている。期待以上であった。
あんなシーンもきちんと小説化されていてよかった。芸が細かいというか完全にゲームをノベライズしているので本当に素晴らしい。 -
うーん……メタルギアが伊藤計劃さんの手で全編ノベライズされる夢を見ていた者にはちと物足りなく……
MGS4のノベライズのような「読物」としてでなくあくまでもストーリーをなぞっているだけなので思い出を懐かしむ程度でした。
訳のブレや(「ベレッタ」「M9」「M92」→全て同じ銃)あまりにもキル数が多いのも引っ掛かりました(あくまでもタクティカル・エスピオナージ・アクションなので…)
MGS2が好きな私としては不満な作品でしたが表紙の新川さんの絵があるので★★★って事で( -
私はもともと伊藤計劃さんのファンだった。虐殺器官を読み衝撃を受けていた。その伊藤計劃のコアとなっている作品それがメタルギアソリッドだ。
裏のかきあいに私は踊らされてしまった。ゲームのファンならあぁこんな所まで書くんだと思うだろ。特にコーデックの使用だろう。ゲームでは重要なセーブのシーンまで書かれている。私はゲームはまだ経験していないので分からないが、ローズマリーの言った私が記録してあげるは明らかにセーブのことである。私はそこまで書くのかと思ったが、詳しく書かれすぎにくらいにゲームに忠実に書かれていたのではないだろうか。 -
ゲームの台詞がそのまま採用されているのでなんか違和感。きっちりストーリーは追っているのでなつかしいシーンとかは思い出されるんんだけどねぇ・・・「コントローラ」とか言われてもw
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私は小島秀夫が好きだ。
クリエイターとして、サラリーマンとして彼の仕事は本当に素晴らしい。
なによりも、稀代のキャラ造形師である。
MetalGearシリーズによって「ステルスアクション」なる新たなゲームジャンルを開拓し、日本ゲーム史を代表するキャラクター、ソリッド・スネークと彼にまつわる歴史を生み出し、なによりマネタイズに成功した。
しかもそれを一人でなく会社として、チームでやってのけるところがすげぇ。
MetalGearシリーズは、MSXのMetalGearとゲームキューブのTwinSnake以外全てやってきたボクです。優れた音楽、所々に挟まれる小ネタ、高いゲーム性、何より物語性。
いや、音楽ではHans ZimmerスクールのHarry Gregson-Williamsが作曲しちゃうレベルですよ。ザ・ロックからナルニア国物語まで、映画音楽でも超一流ですよ。
MetalGearシリーズの音楽は"The Dark Knight"サントラと並び、ボクの作業用BGMです。
そんな大好きなMetalGearシリーズの中でも、最もやりこんだのはこのMetal Gear Solid 2。
MGS2は、MGSに通底するテーマである「人間が遺すもの」が最もストレートに出ている作品だと思うわけです。
遺伝子か、歴史か、文化か、記憶か、価値か、はたまた"真実"か。
これまで数多の小説家がSFやファンタジーの形式で遺してきた議論を、小島監督はゲームの形で、プレイヤーのより強力な追体験を可能とするメディアで提示するのです。
ある意味、ここまで思想的なゲームは、他にはアトラスのメガテンシリーズくらいなものではありますまいか。
(まあ、それ故にゲームがあまりに「映画的」であるとの批判があるワケだけど)
このように愛して止まないMGS2でありながら、このノベライズの出来は決して良くない。
もちろん、直前に出たMGSシリーズのノベライズが故伊藤計劃著「MGS4」だったワケで、ハードルが限界長まで成長しきっていたことは差し引いて考えなにゃいかん。
MGSクラスの超大風呂敷をきちんと畳めるSFアクション小説家は日本人にはなかなか見当たらない。
しいて言えば冲方丁か、最近出た「ダイナミックフィギュア」の三島氏(実はまだ読んでないんだけど)くらいなものかと。
この本の別の側面として、小島監督の脚本を007で有名なレイモンド・ベンソンが一旦英語で小説にしたものを、さらに日本語翻訳してるって特徴が。
しかし外国翻訳SFの空気感とMGS2は結構合ってると思われるので、手法自体はそんな問題でもないかと。
セリフのほとんどはゲームから忠実に引いてきているし、
(伝説のセリフ「早くゲーム機の電源を切るんだ!」まで。)
ストーリーも完全にゲームそのままなワケなので、大筋では問題ない、というか問題があろうはずもない。
ところが、細かい描写が甘い。大甘。
「スネークは驚いて目をみはった」とか「カミソリのように鋭い反射神経を持つスネーク」とか言われるともうどうにも興冷めですよ。もうちょっとヤリ方ってのがあるだろうと。
ほとんどの読者にとって読む前からオチもキャラクターのディティールも頭に入っているゲームノベライズという特殊性において、これはもうどうしようもない。
こういう微妙なところをきっちりケアしてくれないと楽しめないんだよなぁと。
根拠はさほどないんだけど、これはレイモンド・ベンソンの問題じゃなくて翻訳がヘタなんだろうなぁ。
もうちょっとMGSのことをわかってる翻訳家ってのはいないのかなぁ。
まあ、結局のところ、小島監督は素晴らしいが返す返すも伊藤計劃の死というのは我が(?)SF業界において大きな喪失であるなぁと。
そんな信者としての意見しかボクは持ち得ないワケだな。