完訳グリム童話I さようなら魔法使いのお婆さん (角川文庫 ク 11-1)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042822011

作品紹介・あらすじ

毒リンゴの罠に陥りながらも、息を吹き返した雪姫。しかし物語は、めでたしめでたしでは終わらなかった。グリム兄弟の手によって幾度も改訂された後に、ついにできあがった完全版を初完訳で刊行。

感想・レビュー・書評

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  • サブとして長い時間掛けて読んだ。
    古典を読みたかったことと、ディズニー映画原作を改めて読んでみかったことが手に取った切っ掛け。
    寓話であったり笑い話であったり、ちょっと空いた時間に読むには最適だった。
    他の童話や日本の昔話との類似性を解説されており、その点も面白い。

    ディズニー映画の原作は、この巻では4つ収録。他にも短編アニメになっているものもあるかも知れない。
    野ぢしゃ=ラプンツェル
    灰かぶり=シンデレラ
    いばら姫=眠りの森の美女(オーロラ姫)
    雪姫=白雪姫

    あとは落語の「死神」の原案という噂の「名付け親の死神」も収録されている。これは「落語ディーパー」で知った。

  • グリム童話、原作を読んだのは初めて。絵本で見たり色々なモチーフの形で親しんできたけれど、ラプンツェルやルンペルシュツルツキンといった有名どころを読み逃していた作品やこの本で初めて知った作品を読めたのは満足。作品毎の解説で日本の童話との関連性について触れられており興味深く読めました。ただ物語の構成の説明が少々分かりにくく、一部整合性が取れてなかったりするのが残念でした。

  • ここでは、以下の三冊の本を用いて、「シンデレラ」のお話について比較・考察を試みる。

    『ペローの昔ばなし』シャルル・ペロー/白水社
    『完訳グリム童話Ⅰ』グリム兄弟/角川書店
    『本当は恐ろしいグリム童話』桐生操/KKベストセラーズ

     子供向けの童話に何が書かれているかを簡単にまとめる。裕福な家庭に生まれたシンデレラは、幼い頃に母親を亡くし、新しくやってきた継母と義姉に虐待されながらも美しく育つ。ある日、お城で王子の結婚相手を探すために舞踏会が開かれることになり、継母たちはきれいなドレスを着て舞踏会に参加するが、シンデレラは置いていかれてしまう。シンデレラが悲しくてしくしく泣いていると、魔法使いのおばあさんが登場し、魔法でシンデレラにかぼちゃの馬車、ドレス、硝子の靴などを用意してくれる。12時までに戻らないと魔法がとけてしまう、という忠告を受けたあと、シンデレラはお城へむかう。舞踏会では、シンデレラは王子様と夢のようなひと時を過ごすが、12時の鐘がなったとき、慌ててその場から逃げ出し、その途中で硝子の靴が片方だけ脱げてしまう。シンデレラはなんとか家に戻ることができたが、魔法はすっかりとけてしまい、ボロの服とただのかぼちゃに戻ってしまう。王子様はシンデレラの身分も名前も知らないので、残された片方の靴を頼りにシンデレラを探すことにし、硝子の靴がぴったり合う女性と結婚するというお触れを国中に出す。シンデレラの家に家来がやってきたとき、まず義姉たちが靴を履こうとするが足が大きすぎて靴には入らない。しかし、シンデレラが靴を履くと、彼女のためにあつらえられたかのようにぴったりであった。ポケットから残りの片方を取り出すと、みんなは驚くが、王子様はシンデレラを舞踏会で踊ったかの女性だと認めた。その後、お城で結婚式が開かれ、シンデレラはいつまでも幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。というものである。

     今回、様々な本を読み、どうやら実際の話は子供向けの話とだいぶ違うらしいことがわかった。「シンデレラ」のお話に登場するヒロインは、一般的には「シンデレラ」という名で通っているが、グリム童話では「灰かぶり」、ペローの昔話では「サンドリヨン」という名前である。「シンデレラ」、「灰かぶり」、「サンドリヨン」、どれも差別的なあだ名であり、ヒロインの実際の名前は本文中には書かれておらず、謎のままであった。
     また、魔法使いのおばあさんや妖精が登場し、かぼちゃの馬車やきれいなドレスや硝子の靴を魔法で出してくれるという話は、元々のグリム童話には存在しない。父親がお土産で持って帰ってきたハシバミの枝を母親の墓の近くに植え、その成長した木の枝に止まった小鳥たちが用意してくれたり、母親の旧友であるおばあさんが、母親にお金を預かっており、そのお金を何らかの方法で少しずつ増やして用意してくれたりする話が元々のもので、魔法は後から付け足された話らしい。舞踏会に二回も三回も行くというのも面白かった。ドレスも回を重ねるごとにグレードアップするし、硝子の靴が登場しないお話もあった。代わりに、銀の靴や金の靴が用意されるのである。
     それから、グリム童話では残酷さが際立っていた。義姉たちが靴に足を入れるために足の指や踵を包丁で切り落とすという場面が登場するのもその一つである。当時の社会では、性をほのめかす表現は徹底的に批難されるにも拘らず、残酷さは許容されていたらしい。継母や義姉たちが目を潰され盲目になってしまったり、焼靴を履かされて踊り続けて死んでしまったり、というような残酷な結末は有名だが、焼靴などは実際に処刑や拷問をするときに使われていたものらしい。
     しかし、ペローの昔話にはその残酷さが全く見られなかった。舞踏会で際立って美しかった親切なお姫様がシンデレラだとわかった義姉たちは、それまでのシンデレラに対する態度を改め、数々の非礼を詫び、シンデレラはそれを許し、義姉と裕福な男性との結婚の世話までしている。見事に「めでたし、めでたし」という終わり方だった。しかも、どうやらペローの昔話の影響から残酷さのない無害な話が語られるようになり、魔法使いの原型である仙女が登場するようになったらしい。ペローの昔話には、最後に「教訓」という項目があることにも驚いた。
     ドイツ民族の統一を目的として書かれたこと、ゲルマン民族の歴史を背景にして生まれた物語であることなども興味深かった。子どもの頃、この話を読んだときには、シンデレラと継母・義姉たちの関係にどうしても目がいくのでそれほど気にならなかったのだが、今回改めて読んでみることで大変気になる人物がいることに気づいた。シンデレラの父親だ。再婚した妻(継母)の言いなりになって、シンデレラが苛められていても何も言わない父親という存在にはどうしても納得がいかなかった。当時のドイツでは、父親が家庭に一切口出ししないような社会だったのだろうか?なんだか悲しかった。

  • 好きあらば研究したいと常々思っている

    でも範囲広いので読むだけにしておく。そんな感じ(笑)

  • 080914(n 080920)

  • なかなか興味深い。ラプンツェルがとても好きです。ぞっとしたい男はなんだか苦手です。

  • ラプンツェルとか語呂がいい

  • 全3巻

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著者プロフィール

兄:ヤーコプ・グリム Jakob Grimm(1785-1863)/弟:ヴィルヘルム・グリム Wilhelm Grimm(1786-1859)/ドイツの文献学者・言語学者・民衆文学研究者。両者ともドイツ中西部ヘッセン地方の町ハーナウに地方官吏・法曹家の息子として生まれ、マールブルク大学法学部でサヴィニーの薫陶を受けつつ、ハイデルベルク・ロマン派の詩人たちと交友関係を結ぶ。兄弟の共同作業によって多くの業績を残し、共編著として『子どもと家庭のためのメルヘン集』、『ドイツ語辞典』などがある。兄の著作としては『ドイツ語文法』、『ドイツ法古事誌』、『ドイツ神話学』、『ドイツ語の歴史』、『判告録』、弟の仕事として『ドイツ英雄伝説』のほか、第七版に至るまでのメルヘン集テクストの改稿がある。

「2021年 『グリム ドイツ伝説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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