犬の力 上 (角川文庫)

制作 : 東江 一紀 
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.98
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レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042823049

作品紹介・あらすじ

メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラー。叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継バレーラ兄弟。高級娼婦への道を歩む美貌の不良学生ノーラに、やがて無慈悲な殺し屋となるヘルズ・キッチン育ちの若者カラン。彼らが好むと好まざるとにかかわらず放り込まれるのは、30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争。米国政府、麻薬カルテル、マフィアら様々な組織の思惑が交錯し、物語は疾走を始める-。

感想・レビュー・書評

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  • ここまで麻薬犯罪物に真正面からぶつかって書き上げた著者に拍手。人種も国も関係ない人間が産んだ歪のあるシステムと動物の本能に振り回される悲哀をドラックとセックスとバイオレンスを通して描く。
    様々な登場人物たちは、すれ違い、どこかで繋がっていく。登場人物たちがまさにぎりぎりのところで息継ぎをしながら、自らを、もしくは誰かを犠牲にしもがき続ける。
    真実と虚構の混合比率の絶妙さと表現は過去形と現在形のミックスにより、読者は自然にこの世界に入り込み、登場人物たちの横であたかもその場面に直面しているような錯覚に陥り、読み出したら最後、一気に下巻へ突入する。こんな読み応えのある本に出合えたことに感謝。

  • 最初に言っておくとすれば「ゼッタイに読むべきだ!」。まず原題の『The Power of The Dog』を『犬の力』と直訳したことに敬意を払いたい。内容はアメリカン・バイオレンスの王道たる「麻薬・金・暴力・セックス」だが、そこに国際麻薬シンジケートだったり、アメリカの対外政策などが複雑に絡み合い、混沌とか不条理とか運命とか、克明に描かれる。ドン・ウィンズロウ初体験だが、筆力はハンパない。客観的描写命。会話に情緒を委ねないところがすばらしく、英語で目を通してみたくなる(たぶんさっぱり分からんと思うけど)。この物語の鍵となっているのが、アメリカとメキシコの国境地帯の状況だろう。メキシコ人たちは国境を違法に行き来し、どちらの国にもアイデンティティーを持たない(あるいは持っている)「チカーノ」と呼ばれるカテゴリーを形成している(今福龍太『荒野のロマネスク』)。本書の登場人物たちもアメリカとメキシコのハーフだったり、アメリカ人とメキシコ人が結婚していたりと、「チカーノ」として生きることを余儀なくされている。物語はメキシコの麻薬シンジケートに関わる抗争から幕を開けるのだが、東海岸からコロンビアまでスケール広く展開される。そして、登場人物たちは当初、「揃ってなにも持っていない」のだ。様々な群像が描かれるので、冒険ロマンとしても楽しめる。そして、「武装勢力」との闘い。アクション映画で描かれる激しい戦闘はどこか遠い話だったが、2013年1月のアルジェリアでの事件を見るともはやそれがグローバル社会では現実として十分ありえる、と覚悟せざるを得ないと思う。主人のいない「犬たち」は原罪を背負いながらなにを見ようとするのか。面白い!

  • 昨年読んだ『世紀の空売り』がとってもよかったので、
     訳者の東江一紀が訳している本を、ということで
     行き着いたのが、この『犬の力』(ドン・ウィンズロウ)です。

     見たことも聞いたこともなくて、
     30年に渡る壮絶な麻薬戦争を取材した"ドキュメンタリー"
     と思って、読み始めたのですが、この本、
     海外編ゼロ年代ベスト・ミステリの第2位で
     有名なのですね。


    ◇元々、私はミステリ好きだったのですが、
     最近は、年1~2冊読むのですが、
     何か物足りなくてガッカリということばかりでした。

     でも、この本は違いました。

     圧倒されます。
     この凄味は一体、何なんでしょう!
     息が詰まり、疲れました。


    ◇私が読書に目覚めてから、
     ミステリと言われる分野で、
     はじめて満足いく1冊でした。

     こういうのを読んでしまうと、他がますます物足りなく
     感じるのでしょうねー、、


    ※暴力的シーンのことを言ってるわけではないです、念のため。

     内容的には「爽快」というものとはほど遠いですねー

     訳者あとがきの第一声に
     「ウィンズロウが怒っている」とある通りです。

     「ここに噴出している怒りは、マグマ、
      あるいは"怒"石流とでも呼びたくなるような原初の
      かつ破格の熱エネルギーをたたえている」
     とあるように、全編を通じているのは、作者の怒りなのでしょうね。

  •  質・量ともにズシンと重い作品( ´ ▽ ` )ノ

     米墨を股にかけた「アンタッチャブル」( ´ ▽ ` )ノ

     善玉悪玉、多彩な人物の因縁が濃密に語られる( ´ ▽ ` )ノ
     マーティン・スコセッシ作品の活字版的( ´ ▽ ` )ノ

     こういうの読むと、トランプが国境壁うんぬん言うのもわかる気がした( ´ ▽ ` )ノ
     麻薬はあらゆる面において、人間をダメにするね(>_<)

     かなりエグいシーンで上巻は終わるけど、続きが気になってたまらない(>_<)


     映画化テレビ化という記事をどっかで読んで買ったんだけど、気が滅入りそうだから、原作だけでいいや( ´ ▽ ` )ノ

    2018/06/19

  • メキシコとアメリカを舞台に、麻薬捜査官やらマフィア、麻薬カルテルやら善悪入り乱れて織りなす物語。
    とにかく登場人物が多いのですが、それぞれに背景や内面がしっかりと描かれているせいか、読みながら頭の中でそれぞれが生き生きと動きます。
    題材が題材なだけにヒリヒリとした雰囲気の中、もはや何が善なのか悪なのかも分からなくなってきますが、ページを繰る手が止まりません。
    評価は下巻にて。

  • 『犬の力』The Power of the Dog  ドン・ウィンズロウ
    文春ミステリー2位、このミス1位
    続編の『カルテル』も評判良く、映画化もされるので読んでみました
    上下巻で1000ページ超、やっと終わったって感じ。

    高評価の小説でしたが好みとは違った。
    面白くなるのかなの待機時間が長く、上巻ラストの黄色毛メンデスの小さい子供達(姉、弟)への残酷なシーンを読んで、この本を楽しむことが出来ませんでした。

  • とにかく読みにくい。カタカナで似たような名前が出てくるとお手上げです。突然違う人が主になったり。でも話の流れが少しずつわかって読みやすくなりました。というところで上巻が終わり。銃で撃ちあったり裏切ったり裏切られたり女性が犠牲になることも。麻薬を扱うというのはこういうことかと思いました。

  • アメリカとメキシコの混血捜査官アートは、職場での不遇を跳ね返さんと麻薬組織の殲滅に乗り出す。
    されどアートが手を組んだ男は彼を手駒として敵を葬り、我こそが次代の黒幕として市場を手中におさめ悪徳の利潤を貪り始める。
    自らがもたらした惨劇を購うべく麻薬カルテル撲滅に執念を燃やすアート。
    しかしアートのよき仲間を襲った酸鼻な悲劇が、正義と神を信じる一人の男を復讐の鬼へと変えていく。

    この話では十数人もの人間の人生模様が時を経て交錯する。
    麻薬カルテルを独占する黒幕「叔父貴」、叔父を手伝いめきめき頭角を表わしていく知謀のアダンと暴力担当ラウルの兄弟、美貌の娼婦ノーラ、ヘルズキッチン育ちの殺し屋カラン、型破りながら真実の意味で人々を救済し続けるファン神父。
    それら強烈な個性を持つ登場人物たちが好む好まざるに関わらず巻き込まれて行くのは三十年にわたる壮絶な麻薬戦争、犯罪組織の対立、政府の謀略。
     
    プロローグから衝撃的。
    作者の筆が紡ぎだすのは残虐無比、悪辣非道の極地でありながらすべてが終わってしまった後の虚無と神聖さを漂わせる虐殺の現場。
    終わってしまった悲劇に立ち会うアートの悲哀、哀悼の念に隠れた身を切るような後悔が切々と伝わるだけに、どうしてこの悲劇は防げなかったのか、「不可避」で「予定調和」の悲劇のひとつとして処理されねばならなかったのかぐっと関心を引く。
     
    ジャンルで分類するならピカレスク、ノワール、ハードボイルドとなるのだろう。上質の裏社会小説である。
    同時にミステリー的な仕掛けが縦横に張り巡らされている。あの伏線がここで繋がるのか、あの人物がここで出てくるのか、まさかあの人物とこの人物が繋がってたなんてという驚きが随所にちりばめられている。
    ある時は捜査官のある時は娼婦のある時は殺し屋の視点によって、場所さえ超越しさまざまな角度から語られる物語はしかしその根の部分で確かに繋がっている。
    ある人物が起こした行動がどのように周囲に波及し影響をもたらすかが鮮明に描き出され、もしあの時ふたりが出会っていなかったら、あのふたりが別れてさえいなければ、無粋な邪魔が入らず結ばれていたらといくつもの「もしも」が浮かんでしまう。

    犬の力。
    おそらくは読者もそれに取り憑かれている。
    悪意と謀略と犯罪が渦巻く地獄において、様々な人物が交錯し描き出すドラマに魅入られる。
     
    謀略に次ぐ謀略で形勢は二転三転、誰が味方で敵か時々見失いそうになる。
    ラスト、念願かなって仇敵とあいまみえたアートが怒りの拳を振るいつつ叫んだ台詞が胸に刺さる。

  • メキシコを舞台に、麻薬カルテルやイタリア系マフィア、執念に憑りつかれたアメリカの麻薬捜査官、コールガールなど、それぞれの人物がいろいろな思惑や欲望を持って動き回るハードボイルド群像劇。かなりのボリュームで登場人物がやたら多いが、「比較的」読みやすい。ただ、知り合いからおすすめされて読んだのだが、帯文に「このミス大賞」と書いてあったのに、どこからミステリーになるのかというのが気になった部分ではある。結論的に言うと、本作は別にミステリーではない。

  • 恩田陸「蜜蜂と遠雷」以降なかなか長編小説に入っていけない状態が続いていた。この小説もまずメキシカンの名前になれるまでに時間がかかってしまった。ニューヨークのギャングの場面あたりでようやくエンジンがかかり何とか上巻を読み切った。でもすぐには下巻に手が伸びない。まだ恩田陸リハビリ中かな。

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プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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