犬の力 下 (角川文庫)

  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 136
  • Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042823056

作品紹介・あらすじ

熾烈を極める麻薬戦争。もはや正義は存在せず、怨念と年月だけが積み重なる。叔父の権力が弱まる中でバレーラ兄弟は麻薬カルテルの頂点へと危険な階段を上がり、カランもその一役を担う。アート・ケラーはアダン・バレーラの愛人となったノーラと接触。バレーラ兄弟との因縁に終止符を打つチャンスをうかがう。血塗られた抗争の果てに微笑むのは誰か-。稀代の物語作家ウィンズロウ、面目躍如の傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 長かった、久しぶりに時間かかった。下巻はの途中から一気に麻薬戦争も佳境に入り、後半は主だった登場人物が一気に消えていく。追うものと追われるもの、どちらの強大な組織のトップにいながら、最後は自分たちで決着をつける展開。本人出ていかなくても指揮を執ってやらせればいいのに。主人公は最後死ぬかと思ったけど、悪者サイドがやられてまずまずの終わり方。ただ、途中途中で子供が死ぬシーンがあるのがキツイ。

  • 復讐の螺旋階段に天井はなく、順番待ちで大渋滞だ。生きるために踏み出した階段への一歩は、戻れない死の順番待ち。ただ時々順番が前後するだけで、生まれた瞬間死に向かう命の終わり方が悲惨なものか、予期しないものか、自分で決めるか。
    どう生きるかよりも、死の瞬間をどうくぐり抜けて、そのくぐり抜ける瞬間、もしくは誰かに死の瞬間をもたらすことで、生きることを実感する。
    人も動物も罌粟もただそこに存在するだけなのに、誰かの思惑とか思いつきとか機嫌だけで、死のそよ風はあっという間に暴風雨に変わる。嵐の後、何も形を残さず、怨恨だけが次の誰かに受け継がれ、また復讐の螺旋に並ぶ人間を一人増やす。

  • すごく面白かった。緻密に設定が練られているので、どこまでがフィクションでどこまでが裏付けのある現実的な設定なのか、分からないし気にならない。
    視点がどんどん変わることに加え、正義感に溢れていたはずの主人公のアート・ケラーが、闇を見つめ、どんどんなにか得体の知れないものに飲み込まれていくさまはノワール小説やピカレスク小説の要素もある。圧巻だったのはやはりアクションシーンで、ハリウッド映画のようなスピード感と緊張感が絶妙。文でここまでスピード感がある小説を読んだことがなかったのですごく新鮮だった。

  • 麻薬、暴力、殺人。たくさんの人間の欲、金、地位。そういうものが絡み合っている。でもそれぞれに人生があり、家族がいる。そういうものがしっかりと描かれているから悲劇が際立ち大きな恐怖がある。捜査官アートの企み、麻薬組織内での対立。読み進めるほどに迫力は増していく。麻薬で金を稼ぐ者、利権、権力を利用しようとする者、巻き込まれてしまった者。そのひとつひとつにたくさんの展開がある。アートの苦悩や家族と麻薬組織の撲滅とを天秤にかけようとする心の内。麻薬の世界に嵌り込んだ者たちの圧倒的な物語。

  • なん度でも言おう。「ゼッタイに読むべきだ!」と。『犬の力』に影を落としているのは冷戦構造だ。キューバ危機を皮切りに、アメリカは「裏庭」で共産主義政権が立たないよう軍事的独裁者を支援し続けた。ジョン・マクティアナン監督『閉ざされた森』や、スティーブン・ソダーバーグ監督『チェ』で描かれたように謀略や諜報を駆使し、帝国主義さながらの暴力に訴える方法を臆面なく使ったのだ。その政治的な混沌を利用してラテンアメリカの麻薬シンジケートのドンに治まったアダンと、私怨とも正義とも区別のつかない炎に身を焦がしながらアダンを追うケラー捜査官の対決を軸に、物語は加速していく。本書で描かれる登場人物たちは寄る辺ない「可愛そうな犬たち」だ。お互いが支えあっているのだが、どこか歪んでいる。そして、信仰とか正義とか、そんな高尚なものは信じておらず、感情に従って生きている。そして、この「感情のもつれ」がスカッとするラストを用意するのだ。登場人物により視線が切り替わるたびに展開がコロコロと変わるのだが、作家の企みにワザと乗せられながら、最後のロマンスにハラハラしてください。面白い!

  • 登場人物が多く名前を覚えるのが大変なので、とっつきにくい。が、上巻のラストに待ち受ける残酷なシーンから盛り上がり、下巻はもっと読みたいが、終わって欲しくないという矛盾した読書体験。大傑作。

  • 怒涛のクライムサスペンス!
    前巻からの勢いもそのままに、圧倒的な筆力をみせつけられます。
    大麻薬犯罪を描きながら、殺し屋や運び屋、マフィアをけして英雄の様には書かず、
    しかし彼・彼女らの人間的な一面を描く、その技法に脱帽です。
    主役はあくまで捜査官であるアートだと思うのだけど、
    その他にもたくさんの魅力的な登場人物がいて、
    メキシコやアメリカの経済事情にいかに麻薬が密接しているかを浮き彫りにしている作品。
    ラストは私はある意味大団円だと思ったけれど、
    おそらく読む人によっては意見が分かれると思う。
    かなり骨太な作品であるため、未読の方は、覚悟して作品の世界に飛び込んで行って欲しいと思う。

  • 前編に引き続いて、麻薬組織との攻防戦が続く中、メキシコでは、麻薬密売がビジネスとして成立していくる。密売を単なる集団ではなく、システムとして集荷・マネーロンダリングなどをコントロールするカルテルに。なるほど、こちらの方が合理的です。21世紀型。
    そうなったら、ボスは1人でよい。とういう訳でカルテル内で抗争が始まり…。
    目まぐるしく展開する襲撃、銃撃。復讐と裏切り・密告。そして、惨殺。そして、最後は、、、
    どこまでが事実をベースとしているかは不明ですが、麻薬組織云々は、ほぼ現実と思われます。昭和の終わりから前世紀末にかけての抗争は、想像するだけで恐ろしいものです。ここまでして、彼らは、麻薬捜査官や麻薬カルテルは、何を得ることができたのでしょうか? 「兵どもの夢のあと」的な感じがぬぐえない。
    ただ、麻薬戦争はまだ終わっていない。らしい。(終章)

    気になったフレーズは以下:
    ★「おれの魂に誓います」「きみの魂は地獄より濃い闇に包まれておる」
    ★「わしは赦す」「神は汝を赦したもう」
    ★プロなら、うそを真実と思わせることではなく、真実をうそだと思わせることに神経を使うべきだと心得ている
    ★絶えず肌寒さを感じているのだ。老いた人間と死にかけた人間にしか味わえない感覚で。
    ★「遠い昔ね」「遠い昔だ」「あれからたくさんのことがあったわ」「ああ」
    ★この列車には聖人と罪人が乗っている  この列車には勝者と敗者が乗っている  この列車には娼婦と博徒が乗っている  この列車には地獄に堕ちた魂が……

  • 再読だが、やっぱりこの小説は凄い。
    ドン・ウィンズロウ渾身の大河小説。

    南米麻薬地帯からアメリカに流入する大量の麻薬。それを阻止戦と麻薬組織や密輸組織を叩くDEA。その史実を忠実になぞりつつ、組織の事よりも登場人物個人個人の感情、行動を丁寧に描く。

    ページ数も十分、主要な登場人物だけで10人はいようかという、おおぶりな小説だが、中だるみはほとんどなく、怒涛の勢いを続ける筆力はさすが。

    正義の側にいるはずの主人公、麻薬取締官アート・ケラーの正義の側にいるが故に、人を不幸にしていかねばならない苦悩。高級娼婦ノーラの愛情を求める姿、司教パラーダの赦しと愛を込めた行動としての教理の追求…、

    どれも読みごたえのあるところなのだが、殺し屋カランtとオバップの一番興味を覚えたところ。最下層のチンピラがその体一つで運を強引に味方につけて地獄街道をのし上がっていく姿は、強くて悲しくて、まさに「犬の力」を具現しているように思えた。

    今年はこの「犬の力」を筆頭にした、3部作を読もうと思う。かなりのエネルギーを消耗しそうだが、その値打ちは十分にありそう。

  • 2021年2月12日読了。

    DEA捜査官アート・ケラーとメキシコの麻薬王アダン・バレーラの話。
    アダンの恋人ノーラは、愛する人をアダン一味に殺され、ニューヨークのギャングもどきだったカランは軍人サル・スカーチの元、立派な殺し屋になっている。

    1985年から始まった物語が、2004年で終わる。

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著者プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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