運動靴と赤い金魚 (角川文庫)

制作 : Majid Majidi  青林 霞 
  • 角川書店 (1999年6月発売)
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  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042829010

運動靴と赤い金魚 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • イラン映画の原作。
    一足の運動靴をめぐる兄妹、家族と学校の物語。
    良かった点
    物を大切にする気持ち、人を敬う気持ちに溢れていた。あえて日本で言うならいわゆる「昭和三十年代」だろうか。靴を買えずに兄妹でボロボロの靴を回し履きする姿は今の日本では考えられない。貧しさの中にある美しさが描かれている。文体も原作本の為か訳者の腕か、テンポよく進み読んでいて小気味よい。日本のノスタルジアと違う点は、街の中に金持ちも平均的な人も貧者も、住区こそ分かれるものの併存していることである。総中流とか皆貧しいではないのだ。作中ではこの金銭的身分格差に対する疑問や反発は描かれておらず、主人公の父親も勉学に優れる息子を見て、偉くなってほしいと単に願うに過ぎない。父親は自身の賃金の低さ境遇に不満を覚えながらもその怒りは概して家族に向けられ、そうしてしまう自己への反省とストレスになる。息子にとって家族にとって立派で偉大な父親が、一歩外へ出ると大したことのないただの男、むしろ仕事の営業も出来ない口下手な人間、けして尊敬を集めるような存在ではない、ということを素直に描いたこと、その姿を見てなお息子は父を尊敬し力になろうと努める姿、感動的であり素朴な純粋な美しさがあった。この作品としていえることでもある。本当に純粋な、いい意味で我々が勝手にイメージする田舎の放牧的な様子があって、懐かしさと失われつつあるものに対する感動を禁じ得なかった。先生に対する尊敬の念も日本では絶対にこうならないなと思い、不良連中を熱血教師が更正するドラマとは違った、いわば古きよき先生と生徒の関係があった。映画という都合上複雑な構成ではなくしているのだろうが、分かりやすく面白い感動。ありきたりな言い方をしてしまえばこうなる。息を切らし道を走る描写、家族で食事をしながら父親の機嫌を伺い、良ければ安堵し悪ければ緊張する、なんとも言えないシビアな関係、読んでいて本当に気持ちが良かった。

    考えさせられた点
    まず題名、運動靴と赤い金魚の赤い金魚はいるのか。確かにはじめの人間と金魚の対比、同じように食べたりなんなりして生きている、違いは靴を履くかどうかだ、のシーンはとても印象的で心に残ったが、ほとんど金魚の出番はこの位だった。ラストのシーンは無駄に付け足したようにしか思えず、題名にあるからつけました感の為に感動がかき消された。ラストで言えば本当に最後、父親買い物云々での終わり方、あれはどうなのだろうか。そもそも我が家では靴も買えないとさんざっぱら訴えてきたくせに、何の気なしに買って帰るのは意味がわからない。筋が通らないと嫌だという父親のはずが、本人が全く見当違いの有り様である。余韻もなしに訳もわからず場面転換して読者を置いて終了、あれは納得いかないし失敗、裏切りだと思った。伏線の回収もなく、妹の靴を履いていた娘の父親がどのようにして妹のピンクの靴を入手したのか分からないし、ピンクの靴を塩売りに交換に出したあとどうなったのかも分からないし、主人公の家族と大家とのバトルの行く末も分からないし、サッカー仲間とのやり取りもほとんどおまけで必要性が理解できず、お金持ちの子供との友情があるのかと思いきや一度きりでなぜ金持が主人公の父親を庭師に選んだのかも、ぼんやりとしか分からない。単発で新たな出来事が起きるだけで繋がりがない。とてももったいないことをしていて、時間の尺が限られた映画ということを思えば意味がわからない。無駄に役者増やして使い捨てである。貧しい者限界がすぐ目に見える者が美しく素朴に無垢に輝いて魅せる作品のはずが、肝心要の作品作りにその魅力を出そうとする意図が欠けているのである。いくらの予算でどれだけのキャストで作ったのか知らないが、あまりにもその点残念で残念でならない。もっと金持ちの少年と主人公を照らし合わせるとか、いっそ学園に力点を置くとか、妹とのすれ違いを描くとか、色々と伸ばせる触手、枝を持っていた作品だった為にやや小さくまとめすぎな物足りなさも否めなかった。また、表紙裏のあらすじ、これを読めばこの作品を読んだも同然で、ネタバレというかこれで全て言い切れてしまうのだなと感じた。分かりやすくシンプルなのはよくもあるのだがマイナスでもあり、ここは個人差あり難しいが、個人的には主人公や妹が人としてできすぎていたので、もっと弱味を見せて、その変化や克服成長などする姿を見てみたかったかなあと思った。
    とはいえ心暖まる物語、日頃我々が忘れている感謝や大切にするべき心がありありと綴られているので、読んで失敗後悔するようなものではけしてない。頁数も少なく文体が読みやすいので、普段あまり本を読まない方にもオススメの作品である。

  • 人を思う、純粋な気持ちを思いだささてくれる映画です。

  • イラン映画の原作。
    物があり余ってる飽食の時代をゆく日本には考えられない生活だけど、本当の豊かさについて考えさせられる作品。

  • 泣きの兄妹愛を描いた作品。家族を大切に思う気持ちやものを大切に思う気持ちが随所に散りばめられていて、ほのぼのすると同時に、考えさせられるものがたくさんありました。妹の純粋無垢なかわいさは反則です(笑)。

    イランの学校教育現場が舞台ということもあり、非常に興味深い作品でした。

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