壁抜け男 (角川文庫 エ 3-1)

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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042859017

作品紹介・あらすじ

ある日突然、壁を抜ける能力を手に入れた、登録省の役人デュティユル。彼は新しい上司と手紙の書き方をめぐって対立する。屈辱的な扱いを受けたことを恨んだデュティユルが、壁から頭を出してその上司を罵ると、混乱した上司は精神病院に入院してしまう。この件をきっかけに、パリの街に次々と奇妙な事件を巻き起こしていくデュティユル。しかし壁をすり抜け続けていく彼の行く手には、思わぬ落とし穴が待ちかまえていた…。奇抜で幻想的な世界に、人間の優しさと悲哀、そして残酷さを巧みに描いた、鬼才エイメの珠玉の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • ・全体を通して
    大人のための童話集。一文目からトンデモ能力を設定されている主人公が最終的には恋愛絡みで破滅するパターンがちらほら。(「変身」「七里のブーツ」を除く)フランス人作家だからだろうか。しかし描写はアッサリしていて最後に詩的な世界観が出てくる。モンマルトルが舞台なことも多く、パリの庶民的な街並みが背景にあることで更に美しい物語に感じる。

    ・深掘りシーン
    「変身」より、ラスト痴呆的な囚人が赤ちゃんに変身してしまい、死刑執行を行うか所長や検事が悩む場面。
    読んだ瞬間には反射的に無罪だと思ったが、すると赤ちゃん(と同レベルの知能)になれば全ての犯罪者は無罪になる、という理屈になるのだろうか。
    それはオカシイ、とすればどのような精神状態、年齢、状況の条件の下で犯罪者はその罪を問われるとこになるのか。
    恐らく刑法できちんと定められているのであろうが、如何に定義が難しいものであるか改めて考えさせられるシーンだった。現実の裁判官の人達スゴいなー。 

  • 表題を含めて5作の短編集。
    ちょっと風変わりな能力を持ちながらも淡々とした生活を営む人々のありきたりな夢想…はちょっとほろ苦く切なかった。

  • 人生に甘やかされていた。

    さらっと読める秀逸な短編。

  • 平成28年11月2日読了
    影をなくした男を読んだ時のような不思議な読後感。
    なんかこう、暗いんだけど淡々としてて、どこかコミカルで毒があり、面白かった。

  • タイトルが気になって古書店で購入。全然知らない作家だったけど結構良かったような気がする。特異な能力を持った人々が主人公の短編集。壁を抜けられる能力を手に入れた男の悲恋を描いた表題作が一番良かったかな。他の作品の主人公は自分を増やせる女や2日に1日しかこの世に存在することが出来ない男の話など。2012/536

  • 壁を通り抜ける男。
    1日おきにしか存在しない男。
    分身する女。

    ありえない設定なのに、展開は現実的で、オチは妙にリアル。

  • なんとも不思議な魅力を感じた。

  • 道尾さんが「震えて泣いた」という、『変身』が読みたくて借りてみた。いやー、これは、すごいです。それにしても、道尾さんって、ホントにいいなぁ・・・。

  • 「壁抜け男」「サボーヌたち」
    壁抜け能力を患った男、同時存在能力をもち万の桁にまで増えた女の栄華が潰えるまでをシニカルな視点から語った短編

    「変身」
    悪びれず欲のため人を殺したが無垢な信仰心を得た男の願がかなえられたとき

    「死んでいる時間」
    二日のうち一日しか存在していられない男が本当に本当に死ぬまで

    「七里のブーツ」
    貧しい親子の充足的な生活

    など、淡々とした語りで。のめりこみづらかった。愉快ではある。

  • ミュージカルを観に行くので、予習として読みました。平凡な市民の非現実な出来事を不思議なくらい当たり前の雰囲気で描き進められている。読んでいて違和感をかんじさせない。

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