燃えるスカートの少女 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042968016

作品紹介・あらすじ

人間から逆進化してゆく恋人、戦争で唇を失いキスができない夫、父親が死んだ日に客たちとセックスする図書館員、火の手と氷の手をもつふたりの少女…想像と言葉の魔法を駆使して紡がれる、かつてない物語。不可解なのに現実的、暗く明るく、哀しくて愛おしい。そこから放たれる奇跡的な煌めきに、私たちはいつしか呑み込まれ、圧倒され、胸をつかまれる-。各国で絶賛された傑作短編集、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • エイミー・ヘンダー作。新聞か何かで紹介されていたのだが、ちょっと合わなかった。短編なので、飛ばし読み。
    海外作品は訳の仕方でずいぶん変わるんだろうね。

  • 「人間だった最後の日、彼は世界を寂しいと思っていた」

    もしもこの短編集の始まりが、「思い出す人」じゃなかったら私はこの本を買わなかったと思う。それぐらいこの一編のもつ話の魅力が私にとっては大きかった。
    癒す人、指輪、燃えるスカートの少女…、ふしぎだけれど、話の中にぎゅっと胸をつかまれるような一行をみつけてしまい、忘れられない。おおきな意味があるような話じゃない。でも、忘られない短編がごっそり詰まってる、そんな本。

  • 再読。

    ストーリーの奇抜さが際立つが、底には哀切・寂寞・愛情…様々な感情が詰まっている。

    「思い出す人」の思考の渦に呑まれ逆進化してしまう恋人ベンの苦痛も共感できるし、それを受け入れつつも、少しづつ失われていく人間性を見つめ続けなければいけないアニーの孤独と愛情。寂しくて、愛おしい2人。

    童話のようでもあるポップな恋の話「酔っ払いのミミ」や「指輪」も良い。

    両親を亡くし孤児となった少年の特殊能力、その理由と届かない声を思うと哀しさが溢れる「無くした人」、氷の手と炎の手、対象的な手(能力)を持って生まれた少女2人の対象的な人々への癒しの施しを描く「癒す人」も好き。

    乙一先生の短編集に近いものがある…と個人的には思うのだが。寂しくて冷たくて、でも不思議と優しさを感じる短編集


  • 一つ一つの物語が、解決したような、けむに巻かれたような、寂しくて不思議な終わり方をしていく。ふわふわとした感覚で読みました。
    表現が詩的で美しいですが、何度も繰り返し読まないと沁みてこないかも。


  • [捨てる短い本]
    [ #300ページ以下で捨てる本 ]
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    家が狭いこともあり 捨てる本/残す本 を感想を添えて紹介してます☺︎

    #燃えるスカートの少女
    #エイミーベンダー
    #管啓次郎 訳
    #thegirlintheflammableskirt
    #aimeebender

    刊行年:2007 / ページ数:272ページ/ジャンル:文芸作品 / 国:アメリカ / 価格:660円 /
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    「彼女は何かを得るよりも何かが足りないことのほうがずっと好きで、もちろん、男に関してもおなじだった。」

    この文に書かれていることが、収録されている作品に共通している気がした。

    女の子たちは、体の構造上、常に欠けている状態だ。
    持っているのが穴なので、「したい」という能動の感情が「受け入れる」という受動とイコールになる。
    そしてそれはどうしても、入り込まれる=自分の体を抉るという行為になり、ナイフを刺すように、傷つける行為とイコールになる。
    一方で自分が凹みがある性別だから、逆に凸側になってみたいと思う。だから女の子たちは、常に凶暴性を抱えることになる。
    でも現実は、その凶暴性を発揮できる性別ではないから、結果、自らの体を傷つけるしかなくなっていく。

    毎日見かけるお腹に肉のついた女の子をファックしたいと思いながら、見知らぬ老人に抱かれる女の子も、殺したかった父親が死んで、誰彼構わずセックスをしてみる図書館員も、みんな誰かに対して能動的になりたくてもそれができる性別でないから自分を傷つけるしかない。傷つけることで生と結びつくしかない。

    父親が死んだ日に腹部に大きな穴があいた男性と、反対に腹が膨れて、死んだ母親を出産した女性を描いている短編も、背中にこぶがある男のこぶが凹んだ部分に妊娠した腹をくぼめる女性を描いている短編も、どれも自分が凸側であることを望んでいてそれが敵わない現実に対する苦しさを叫んでいるのではないか。

    女の子たちの周りには、自分たちの体を象徴するかのように、何かが欠けたものばかりが登場する。
    戦争で唇を欠いた男性、人間から逆進化して猿、海亀、サンショウウオと変化していずれは見えなくなってしまう男性。そうした喪失と女の子たちが向き合う様は自分たち自身と向き合っているように見える。

    最終的に、女の子たちが究極に求めている関係というのは、自分を傷つける行為とも、出産という生産行為とも離れられる、性別のない誰かとの関係なんじゃないだろうか。
    だから、この短編集の中に出てくる女の子が本当に愛しているのは、一生の食い扶持に困らず、でも常に疲れたと言いながら一歩も家に出ず死にたがってる男の子だけなんだと思う。
    男の子には、その女の子以外に身寄りがない。2人に性的関係はなく、女の子は色んな人とデートをしながら、帰ってきた時に必ずその男の子が待っていることを期待している。

    一方で、凸と凹が完全に交わるように、手を結ぶと中和し合う火の子と氷の子を描いた作品では、2人の共存は成立しないことが描かれている。この作品集の中で、凸凹がしっかりと噛み合って成立している作品はほとんどない。
    だから、女の子たちは、欠け続けるしかないということなのだ。
    この作品中に描かれているのは、女の子達の性別のもつ永遠の叫びだと思う。


    #読了 #読書 #読書記録 #本棚 #book #本のある暮らし #断捨離 #残す本



  • 旅の途中で読みました。
    読みごごちが良く癖になります。

  • 日常の延長にあるファンタジー。
    『私の恋人が逆進化している。』とか書き出しが素敵。
    よく分からない結末の話も多いけど、全部愛だなあって感じがして好き。
    訳がちょっと読みにくかったから、原文だともっと詩的で世界観に浸れそう。
    「癒す人」という話が特に好き。

  • 短編16作。
    美味しそうなチョコレートを食べたら実はカカオ95%だったみたいな苦くて独特な風味。
    寂しいと思う気持ち、ここにないものへの愛情。
    「思い出す人」で心を掴まれる。
    「ポーランド語で夢見る」がとても印象的。

  • その多分に醒めた、乾いたお伽噺とも寓話ともつかない物語たちに、戸惑い、上手く呑み込めず、腑に落ちないままに任せておくしかないのだろうと思う。
    「思い出す人」「溝への忘れもの」が印象に残った。

  • 寂しさを貴方と縫い合わせ愛と呼んだ。キスの雨で優しく包み込む、貴方が何者にも何処へも行かぬよう。
    ドレスを切り裂き縛られ鑑賞されたのは私の方ね。遊んで欲しい御人形。
    最上の柔らかさよりプラスチックの曲線を愛してる。貴方はたった一輪のクチナシの花だわと私は泣いた。
    頭の鼠は砂糖を齧りパパは今日もイライラしてる。彼はオリーヴの実。可愛くて怖いからクローゼットに閉まっておくの。岩を担いだ私は何度も呼ぶのよ。コンコンコン。音楽が流れ可燃性のスカートが揺れ動く。炎に包まれ踊り狂う。最初で最後のその一瞬に、少女は熱く紅い薔薇の情熱を魅せる。

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著者プロフィール

1969年生まれ。カリフォルニア大学出身。小学校教諭をつとめた後、最初の短篇集『燃えるスカートの少女』(角川文庫)で鮮烈なデビューを果たす。2010年に刊行した長篇第二作目となる本作は全米ベストセラー入りを果たし、新たな代表作に。邦訳に長篇『私自身の見えない徴』、短篇集『わがままなやつら』がある。2013年には三作目の短篇集『The Color Master』を刊行。南カリフォルニア大学で教えながら精力的に執筆活動を続けている。ロス・アンジェルス在住 。

「2016年 『レモンケーキの独特なさびしさ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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