月と六ペンス (角川文庫 モ 5-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042973027

作品紹介・あらすじ

画家ゴーギャンをモデルに、芸術のために安定した生活をなげうち、死後に名声を得た男の生涯を描く。ストーリーテラーとしての才能が遺憾なく発揮された傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 強烈な自己昇華の前では、世間の常識や感情、当たり前な事など何一つ意味をなさない。社会からは見放されたとしても貫いていく力があるというのは、羨ましい事である。

  • ---06/8/6 (Sunday) 72/100mixi


    夏の学校の往復の時間で、サマセット=モームの
    「月と6ペンス」を読んでいました。
    かなりのめり込むようにして読んでしまいました。

    ストローヴの奥さんの心の変わり様の描き方とか、
    真に迫るものがありますし、
    挿入話として出てきた二人の医学生のその後の人生の歩みを対比して、
    何が幸せな人生なのかについて考察しているモームの感覚とか嫌いではないですね。
    人間性の奥に潜む不可解性を描いている、という評価は的を得ているかもしれません。

  • 後期印象派のゴーギャンをモデルとした作品。
    40代後半で家族や地位、名声も投げ捨てひたすら自分の希求する芸術と向き合った画家の軌跡をイギリス人作家がひたすら追う話。日常描写が多く、劇的な起承転結は無いものの、主人公画家の独特な感性や性格、芸術に関するひたむきな情熱に鳥肌が立った。晩年タヒチでようやく心の赴くままに芸術活動を行えたものの、悲壮な最期を遂げるゴーギャンを惜しいと感じる一方、彼の生き様にふさわしいとも思った。

  • 「月と六ペンス」というタイトルに惹かれたのと、イギリス文学を読みたい気分だったので。一番印象に残っているのは、人間の多面性について「作家である私」が気づいたくだり。古典的作品なので、人によって様々な切り口がありそう。

  • 人間の矛盾を深く、愛情をもって表している本だ。悲劇は喜劇的に見え、喜劇こそが悲劇だと。人間の中には優しく寛大であるにもかかわらず、常にヘマをし、繊細な心を持ちながらも立ち居振る舞いは無神経な人がいることを。女は献身的に見えて愛欲にまみれていることを。人はみな、美について軽々しく、適切な表現を考えることもせず安直に「美しい」と言い、自らで美の持つ力を失わせてしまうことを。すべて、すべてわかりながらも情熱には抗えないことを、この本では痛いほど味わった。

  • 2017年40冊目。(再読)

    これまでの人生で出会ってきた小説の中で、最も大切な作品だと、今回の再読で改めて思った。
    ゴーギャンをモデルにしたチャールズ・ストリックランドの「抑えがたい情熱」というテーマが、
    他の登場人物の中にも種を変え現れているのだと気づいた。

    大きな疑問は、ストリックランドは本当に、真から人の思惑を気にしない人なのかどうか、ということ。
    強すぎる情熱のあまり、人への配慮や感謝の念が入る隙すらない、というような描写が多い。
    でも、もしかしたら本当のところは、周囲からの疑念や気遣いにまともに応答しているうちに、世間に引き戻される誘惑が怖い、という気持ちもあったのではないか。
    それを抑え込むために、必要以上に破壊的に、冷徹になっているのではないか。
    ストリックランドの場合どうだったのかは分からないが、夢追い人の中で冷酷なほど一心になっている人の多くは、そうなのではないか、と思っている。
    どこかで安泰や周囲への同調の誘惑がささやいていて、それを振り払う克己のために身につけたものなのでは、と。

    いずれにしても、良心の奴隷にならず、避けがたい情熱を突き進んだ男の話は、この先もずっと胸に残る。
    ===================
    2016年18冊目。(初読:2016年3月6日)

    「止むに止まれぬ情熱」に、人は抗えるのか。
    ポール・ゴーギャンがモデルになっているというチャールズ・ストリックランドは、周囲の様々な関係を破壊しながら、それを意に介することなく、絵画への情熱に没頭していく。
    まるで「悪魔が取り憑いている」ように。

    すぐに手に入る実利、足元の六ペンス硬貨に、もはやこの情熱を止めることはできない。
    止むに止まれず、月へと手を伸ばさずにはいられない。

    情熱は、一度孵化してしまったら最後。
    そんな恐ろしさと同時に、それでも憧れる気持ちが膨れ上がる。

  • 解説に書いてあった通り、最初の一・二章が辛かった。ここを乗り越えてやっと作品に入る事が出来た。

    一目見て、その絵から何かを感じると言う経験は私には無い。
    美術館に行った事も行こうと思ったことも無いが、最近そういった感受性を揺さぶってほしい願望が強くある。
    けれどそれは前もって知った知識と一般的に広まっている巨匠という文字に引き起こされる幻覚に近い。

    主人公の私が、絵を描く前の傲慢なただの妻を捨てた男として、友人の妻を寝とった男として見た後で、ストリックランドの絵を見る。

    呪文はとけた。

    こんな経験をしてみたいと心から思いました。

  • 月が「理想」で、六ペンスが「現実」
    気の利いたタイトル。
    ストリックランドが失踪した理由を、あれこれ論じ合う夫人とマクアンドール、理想に生きる芸術家の苦悩と対比される、二人の凡庸さ、低俗さが、常識を外れた天才の蛮行にも肯定的な印象をあたえる。
    六ペンスを至上と考え、地面を這い回る人たちの中で、独り、すべてを省みず、魂の叫びを吐き出し続けるストリックランドに憧れと虚しさを感じる。

  • ポール・ゴーギャンの生涯を基にした芸術家の生き様そのものの描写もすごく印象的で深く響くものだったけれど、ところどころに散りばめられたモームの人生観や人間論のようなものも非常に興味深かった。

    崇高なものを追い求める人生というのはやはり素敵だと思う。
    彼のようにすべてを投げ捨ててそれを追い求めるようなことは自分には出来ないだろうけれど、少なくとも心のどこかにそんなものへの憧れを抱き続けながら、少しずつでも歩み寄っていけるような人生を生きたい。

  • 途中(ストーリー的なものがなくなったあたり)から読めなくなってしまった・・・。ストリックランドのモデルはゴーギャン。ゴーギャンの絵もなぜかあまり好きになれないという…

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