「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

制作 : 小高 尚子  小高 尚子  小高 尚子 
  • KADOKAWA
3.62
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本棚登録 : 664
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042977018

作品紹介・あらすじ

グーグルが何十億というウェブページから、探しているページをピンポイントで発見できるのも、正確な選挙結果の予測ができるのも、株式市場が機能するのも、すべて「みんなの意見」つまり「集団の知恵」のたまものである。多様な集団が到達する結論は、一人の専門家の意見よりもつねに優るという説を提示し、ウェブ時代の新しいパラダイムを予見。多くの識者に引用・推薦される、社会人必読の話題の教科書がついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に内容が濃い本。
    個人的にはここ10年間で読んだ本の中でベストワン。
    (大した量を読んでいないのも問題だけれども)

    本書の帰結としては「集団は答えを知っている」ということ。
    一見すると、バラバラに見える集団の知恵の働きは、
    我々の周囲に溢れているのに、見過ごされがちで有り、
    貴重な知識はごく少数の一部の頭の中にあると思われている。
    すなわち、
    「一般的な利益に関わる意思決定を下す」ように要請すると、
    集団や群衆が到達する結論は「一人の個人より常に知的に優る」
    ということ。
    言い換えれば、
    「ある一定規模の集団規模があり、多様な人々を集めた集団の多くは
    素晴らしいソリューションを考え出すことに長けている」のだ。
    逆説的に述べると、上記の集団が賢い判断をするためには、
    個々人が出来るだけ独自に考えて行動することが不可欠。
    フランシス・ゴールトンの実験によると、
    「一般的に集団の規模が大きければ大きいほど、正確な判断が下せる」
    とされている。

    ■集団が賢明な判断を下す4つの要素
    多くの場合、「平均的=凡庸」を意味するが、
    意思決定の際には、上記の図式が優秀であることに繋がる。
    「集団の知力が確かに存在しているからと言って、
    それが必ずしも良い方向に活用されているとは限らない。
    集団が精度の高い予想をするためには、
    「一つと方法の完成度を高めることではなく、
    集団が賢明な判断を下すために必要な、
    1:多様性 2:独立性 3:分散性 を維持すること。

    集団思考で重要な点は、
    「異なる意見を封じ込めるのではなく、
    何らかの形で「異なる意見が合理的に考えた結果、ありえない」
    と合意形成すること。
    つまり、多様性は独立性の確保に不可欠な要素なので、
    多様性がない賢明な集団は存在しえないのだ。

    つまり、個人の知識をグローバルに、そして集合的に役立つ形で
    提供できるようにしながらも、その知識が確実に
    具体的でローカルでありつづけるようにしなければならない。
    個人的な行動レベルで考えると、自分が何処へ行こうとしているのか
    全く見当がついていなくても、人間は、市場の一部に組み入れられると
    行くべきところに行き着くことが出来る生き物なのである。

    ■「協調」について
    協調しようとする人々の行動の根底には、。
    合理的・理性的には説明できない「何か」が存在する。
    では我々が協力し合うのは何故か?

    ロバート・ライトによると、
    「取引や交換と言うゲームは、勝者と敗者を生み出す
    「セロサム・ゲーム」ではなく、参加者全員のメリットになりうるのだ」
    という理論を我々は長い時間をかけて学んで来た。
    「信頼・協力・赤の他人への親切」の考え方は文化によって大きく異なる。
    しかしながら、ロバート・アクセルロッドは、
    「協力の基礎にあるのは、『信頼』ではなく『関係の永続性』である。
    「長期的にプレイヤー同士がお互いに信頼しているかどうか」は、
    「安定した協力パターンを構築できる条件がそろっているかどうか」
    という要素に比べれば重要ではないのだと述べている。

    すなわち、「うまく機能している社会的仕組み」においては、
    協力とは「同じ人間同士で繰り返されるやり取りの結果」に過ぎない。
    協力関係が成功するためには、まず人々がお互いに親切にして、
    進んで協力し合うところから始めないといけないが、
    同時に、非協力的な態度を直ちに罰する姿勢も必要となるのである。

    本当に信頼できることは、
    「相手が自分の自己利益を理解しているはず」と考えだけである。
    時間の経過と共に、相手への自己理解の関心は、
    それ以上の「何か」に変化し、そこに「協力」する意志が生まれる。
    なぜなら「協力こそが物事を進めるベストの方法である」
    と我々は知っているからである。

    ※この本を読み終わった直後に、東日本太平洋沖地震が発生した。
    この状況で、「協力こそが物事を進めるベストの方法である」
    というのは、ココロに深く染み入るものがある。

  • 集団の意見はヒステリックに偏り易いという偏見に対して、「あんがい」正しい、場合によっては優れた個人よりも良い結果を生むよという内容。「あんがい」というのがミソであって、必ずしも正しいわけじゃないし、衆愚になることはあるけど、使い方次第とのこと。ちゃんと読まないと、いろいろと誤解してしまいそうな本。

  • 時間があれば

  • [あれば読む] ★★★☆☆

    「集団の下す判断は愚かである」という意見が正しいと思っていたので、本書ではそうではないという立場を知れたのが収穫。

    賢い集団の特徴である4つ
    ・意見の多様性(それが既知の事実のかなり突拍子のない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)
    ・独立性(他社の考えに左右されない)
    ・分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)
    ・集約性(個々人の判断を集計して集団として一つの判断に集約するメカニズムの存在)

  • 「群れはなぜ同じ方向を目指すのか?」がいまいち不発だったので、読んでみる。書名は聞いたことがある。一時期ずいぶん読まれた本だな。

    Googleをはじめ、ネットの世界の「みんなの意見」が参考になるのは確かだ。ぼくもガジェットや家電製品などのややこしいものを買うときには必ずといっていいほどAmazonやカカクコムのランキングを参考にする。
    もっともランキング1位の製品を買うわけではない。上から順番に仕様を調べていって目星をつけて、気になる製品が見つかったら今度は口コミを確認する。結果としてランキングには乗っているけれど下の方(7位とか、12位とか)を選ぶことが多くなる。
    逆に、ランキングがまったくあてにならないのが、本、音楽、レストラン。ぐるなびで高得点をとっているレストランで満足したことがない。逆になんでこの店この程度の点数なんだろうと不思議に思うことはちょくちょくある。「蓼食う虫も好きずき」というけれど、個人の好みが強く反映される分野では総合ランキングは意味がない。その代わりになるのが、自分と好みの似た人のおすすめ。ぼくと同じ本を褒めている人のおすすめ本は、ハマる率が高い。

    本書は、素人の集合知が個人の専門家より優れた判断を下すための条件をいくつか提示している。意見の多様性が認められること、それぞれの意見が他者の意見に影響を受けないこと、「正しい判断」を下すための情報を、個人が(少なくともある程度は)持っていること、など。
    ぼくはそれに加えて、「正しい解答が存在すること」を条件に加えるべきだと思う。レストランガイドやおすすめ本にランキングが使えないのはそのためだ。ほかの人にとっての「正しい解答」がぼくにとっては「正しい解答」ではない。おそらく選挙制度もその一つだろう。普通選挙は(細かい問題はいろいろあるにしても)集合知の典型的な形であることは確かだが、それで選ばれたはずの大統領や首相をみんながベストと認めているわけではない。ナチスだって選挙で選ばれたんだから。もっとも選挙は「他者の意見に影響を受けない」という条件も満たしてないが。
    あと、知的なブレイクスルーが集合知から生まれることがあるのだろうか? たとえば天動説とか、相対性理論はどうだろう? 

    本書には集合知がうまく働かなかった例もそれなりに出てくるけれど、基本的には集合知がうまく働くための条件を満たしていなかったから、という論調になっている。この部分がモヤモヤするので、両手を上げて集合知に賛成、とは言い難い。「案外」正しい、というのが正直なところだ。

  • レビューが遅れたが、2017の読み納め。

    優秀な個人より、凡庸な集団の方がより賢明な判断を下すことができる。その集団が多様性、独立性、分散性をもつならば。
    著者がアメリカの方なので仕方ないが、例示がアメリカンでちょっとピンと来ないところがあり、自分の理解度が足りてない感じがする。それでも、なかなか読み応えがあったし、面白かった。

    今の自民党に、多様性と独立性と分散性はあるのか?

  • 集団の知恵。今で言うビッグデータ活用の裏づけと言うか、その起源と言うか… いくつかの事例が紹介されている。

    例として面白かったのは、牛の重さを測るコンテストで平均値が正解に近いことから、報酬を得られるシチュエーションにおけるみんなの意見は、正解に近くなるという逸話。

    集団の力が上手くいったケースとして、Linuxが挙げられているが、上手くいかなかったケースとしてCIAやらNASAやらで組織的な問題だったり意図的な操作だったりも紹介されているので、みんなの意見が必ずしも正しくなるわけではないところも言及されている。

    著者は、ジャーナリストのジェームズ・スロウィッキー。書籍はこれだけのようだが、TEDにも出ている。

    この本は、良い面だけを取り上げて、エビデンスをつけて、読みやすく煽る本ではなく、慎重に反対側の状況も書かれているので、ちとよみにくかった。

    集団の知恵なるものをしっかりと考えたい人向き。

  • 食肉の重さを推し量る話が、非常に大きな論争に変わるところからスタート。
    文字が多めでしたが面白かったのか、最後まで読めた。が、一貫して「条件が揃っていれば、集団は個に勝る」以外のことは言ってない。
    本来ならつまらない内容のはずが読み切れた。なぜだろう。

  • 集団で判断することが合理的な判断になることを様々な観点から考察した一冊。

    株式相場や様々な実験などから集団の意志がどのように形成されているかが書かれており、非常に勉強になりました。
    経済合理性はないのに、なぜか公共のために資材を捻出してしまうことなど一般的な理論では計算できない行動をしてしまうことや一人の秀才よりも集団は合理的な判断を行うことやその一人に強く影響を受けないことなども本書から知ることができました。
    あと、税金の話や科学者の論文の評価に関する話は新たな発見がありました。

    また、企業やチームなどの組織だけでなく、市場や民主主義の働く政治の舞台でも組織の論理を展開していることは面白いと感じました。
    非常にボリュームのある一冊で一度読んだだけでは理解できない部分もありますが、 集団の判断を合理的なものにするためには多様性、独立性、分散化された組織でありながらも意見を集約する仕組みもなければならないなどさまざまなハードルがあることも本書を読んで感じました。

  • 市場に出された牛一頭の重さを推測する実験。牛を育ててきた農家、市場の仲買人、肉屋などの「専門家」の意見より、見学にきていた一般大衆の意見の平均のほうが、より正確に推測できるというもの。これが成立する条件は「多様性、独立性、分散性」であり、これが担保されればその意思決定はかなり正確で信頼できる。多様性というのは単に肌の色とか年齢ということでなく認知的多様性でなければならず、独立性というのは感情的・本能的に確保が難しい(みんなが空を見上げていると自分も見上げてしまう)。また、これらが担保されない状況では、ヒステリー状態(いわゆる炎上)が起こってしまう可能性が高い。同種の書籍は数多あるが、ネガティブな面にも触れている本書はやはり必読。意思決定を組織やリーダーのあり方に参考になる。

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