- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784042977018
作品紹介・あらすじ
グーグルが何十億というウェブページから、探しているページをピンポイントで発見できるのも、正確な選挙結果の予測ができるのも、株式市場が機能するのも、すべて「みんなの意見」つまり「集団の知恵」のたまものである。多様な集団が到達する結論は、一人の専門家の意見よりもつねに優るという説を提示し、ウェブ時代の新しいパラダイムを予見。多くの識者に引用・推薦される、社会人必読の話題の教科書がついに文庫化。
感想・レビュー・書評
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集団は不思議なもので、単なる構成員から成るまとまりではなく、彼らとはまた違う、独立した生き物である。集団は時に単純であり、またある時には複雑で予測不可能でもある。個人より愚かな判断をすることもあれば、賢い判断もできる。「集団の意思決定」についての様々な事例を踏まえ、どういう条件を満たす場合に、賢い判断がなされるのかを考察する一冊。経済学に関する話が7割、心理学に関する話が3割。
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「多様性の科学」の内容に不満で、
こっちの本の方がより幅広い視点で書かれているような気がしたので、
読んでみました。(ただし、かなりの読み飛ばしです。)
※多様性の科学
https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4799327526#comment
「多様性の科学」では、「多様なだけじゃダメなんじゃない?」という自分の疑問に、
ちゃんと答えているような応えていないようなモヤモヤした読了感だったのですが、
こちらの本では、集団が賢くあるための条件を
明確に①多様性②独立性③分散性④集約性だと言っているのだ。
正否はともかく、こちらの方が格段に納得感がある。
(とは言え、「多様性の科学」同様、洋書特有の読みにくさは残念ながらある。。)
独立性っていうのが、「他社の考えに左右されないこと」で、
分散性が「身近な情報に特化し、利用すること」のこと。
独立性と分散性が多様性の条件のようにも自分には思えました。
逆に言うと、男女や国籍が多様であっても、同じ情報ソースに接していたり、
お互いの考えに感化されていたら、それは多様度がおちてしまうということか。
これはチームにとっては結構、難解な問題だなぁ。。
しかし、一番の難しさは、集約性にあるように思えた。
というのも、集約性は、
「個々人の判断を集計し、一つの判断に集約する”メカニズム”が存在する」ことをいうのだが、
この「メカニズム」ってのが結構ミソで、
集団の中に適切な仕組みをつくらないといけないということだ。
本の冒頭に、牛の体重当てクイズという中々センセーショナルな例が載っているが、
こういう集団の平均を扱う問題(別の言い方をすると、明確な答えのある問題)に対しては、
平均を取ればいいだけなのであまりメカニズムの心配をする必要はない。
一方、明確な答えのない問題に対しては、
多様な意見の中から適切な意見を選んだり、
いくつかの有望な意見をピックアップしてそれらを統合したりする必要があるのだが、
その手の問題に対するメカニズムを構築することを考えると途端に難しくなる。
残念ながら、自分の飛ばし読みでは、
上記に対する自分が納得できるような明確な解は
見つけられなかったが(自分が見逃しただけかも!?)、
それでも集団が賢くあるための考察としては、
結構しっかり出来ている本だと思います。
絶版となっているのが残念です。
ちなみに、「多様性の科学」では、
そのメカニズムのキモは、支配型のリーダーではなく、
尊敬型のリーダー(と心理的安全性)にあると
書いてあります。
そういう意味で、2冊合わせて読むと、
多様性についてより理解が深まるかと思います。 -
非常に内容が濃い本。
個人的にはここ10年間で読んだ本の中でベストワン。
(大した量を読んでいないのも問題だけれども)
本書の帰結としては「集団は答えを知っている」ということ。
一見すると、バラバラに見える集団の知恵の働きは、
我々の周囲に溢れているのに、見過ごされがちで有り、
貴重な知識はごく少数の一部の頭の中にあると思われている。
すなわち、
「一般的な利益に関わる意思決定を下す」ように要請すると、
集団や群衆が到達する結論は「一人の個人より常に知的に優る」
ということ。
言い換えれば、
「ある一定規模の集団規模があり、多様な人々を集めた集団の多くは
素晴らしいソリューションを考え出すことに長けている」のだ。
逆説的に述べると、上記の集団が賢い判断をするためには、
個々人が出来るだけ独自に考えて行動することが不可欠。
フランシス・ゴールトンの実験によると、
「一般的に集団の規模が大きければ大きいほど、正確な判断が下せる」
とされている。
■集団が賢明な判断を下す4つの要素
多くの場合、「平均的=凡庸」を意味するが、
意思決定の際には、上記の図式が優秀であることに繋がる。
「集団の知力が確かに存在しているからと言って、
それが必ずしも良い方向に活用されているとは限らない。
集団が精度の高い予想をするためには、
「一つと方法の完成度を高めることではなく、
集団が賢明な判断を下すために必要な、
1:多様性 2:独立性 3:分散性 を維持すること。
集団思考で重要な点は、
「異なる意見を封じ込めるのではなく、
何らかの形で「異なる意見が合理的に考えた結果、ありえない」
と合意形成すること。
つまり、多様性は独立性の確保に不可欠な要素なので、
多様性がない賢明な集団は存在しえないのだ。
つまり、個人の知識をグローバルに、そして集合的に役立つ形で
提供できるようにしながらも、その知識が確実に
具体的でローカルでありつづけるようにしなければならない。
個人的な行動レベルで考えると、自分が何処へ行こうとしているのか
全く見当がついていなくても、人間は、市場の一部に組み入れられると
行くべきところに行き着くことが出来る生き物なのである。
■「協調」について
協調しようとする人々の行動の根底には、。
合理的・理性的には説明できない「何か」が存在する。
では我々が協力し合うのは何故か?
ロバート・ライトによると、
「取引や交換と言うゲームは、勝者と敗者を生み出す
「セロサム・ゲーム」ではなく、参加者全員のメリットになりうるのだ」
という理論を我々は長い時間をかけて学んで来た。
「信頼・協力・赤の他人への親切」の考え方は文化によって大きく異なる。
しかしながら、ロバート・アクセルロッドは、
「協力の基礎にあるのは、『信頼』ではなく『関係の永続性』である。
「長期的にプレイヤー同士がお互いに信頼しているかどうか」は、
「安定した協力パターンを構築できる条件がそろっているかどうか」
という要素に比べれば重要ではないのだと述べている。
すなわち、「うまく機能している社会的仕組み」においては、
協力とは「同じ人間同士で繰り返されるやり取りの結果」に過ぎない。
協力関係が成功するためには、まず人々がお互いに親切にして、
進んで協力し合うところから始めないといけないが、
同時に、非協力的な態度を直ちに罰する姿勢も必要となるのである。
本当に信頼できることは、
「相手が自分の自己利益を理解しているはず」と考えだけである。
時間の経過と共に、相手への自己理解の関心は、
それ以上の「何か」に変化し、そこに「協力」する意志が生まれる。
なぜなら「協力こそが物事を進めるベストの方法である」
と我々は知っているからである。
※この本を読み終わった直後に、東日本太平洋沖地震が発生した。
この状況で、「協力こそが物事を進めるベストの方法である」
というのは、ココロに深く染み入るものがある。 -
「みんなの意見」は案外正しい
【感想等】
▶適切な状況下では集団は極めて優れた知力を発揮し、
それは往々にして集団の中で一番優秀な個人の知力よりも優れている。(集合知)
▶賢い集団の4つの要件
・多様性(各人が独自の私的情報を持っている)
・独立性(他者の考えに左右されない)
・分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)
・集約性(集団として1つの判断に集約するメカニズム)
⇒個々人が回答を出す過程で犯した間違いが相殺される。
【気になった点】
・知っていることと、知っていると思っていることには大きな溝がある。
・組織が小規模な場合、特定の偏向を持った少数の人物が不当に影響力を行使し、
集団の意思決定を歪めてしまう。
・「集団思考」⇒均質な集団は外部に意見から隔絶される。その結果集団の意見は正しいに違いないと思い込む。自分たちは絶対に正しいと思い込み、反論に対して何とか理由をつけて退けてしまう。確証バイアス。 -
多様性・独立性・分散性といった条件があれば、認知・協調・協力などの課題に「みんなの意見」が力を発揮する。逆に適切な条件を欠くと、いわゆる衆愚、バブル、情報カスケードといったネガティヴな事態に陥る。小集団内の多様性、独立性の大事さは個人的な感覚でも腹に落ちる。筆者の中庸でバランスの取れた語り口も読みやすかった。
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「群れはなぜ同じ方向を目指すのか?」がいまいち不発だったので、読んでみる。書名は聞いたことがある。一時期ずいぶん読まれた本だな。
Googleをはじめ、ネットの世界の「みんなの意見」が参考になるのは確かだ。ぼくもガジェットや家電製品などのややこしいものを買うときには必ずといっていいほどAmazonやカカクコムのランキングを参考にする。
もっともランキング1位の製品を買うわけではない。上から順番に仕様を調べていって目星をつけて、気になる製品が見つかったら今度は口コミを確認する。結果としてランキングには乗っているけれど下の方(7位とか、12位とか)を選ぶことが多くなる。
逆に、ランキングがまったくあてにならないのが、本、音楽、レストラン。ぐるなびで高得点をとっているレストランで満足したことがない。逆になんでこの店この程度の点数なんだろうと不思議に思うことはちょくちょくある。「蓼食う虫も好きずき」というけれど、個人の好みが強く反映される分野では総合ランキングは意味がない。その代わりになるのが、自分と好みの似た人のおすすめ。ぼくと同じ本を褒めている人のおすすめ本は、ハマる率が高い。
本書は、素人の集合知が個人の専門家より優れた判断を下すための条件をいくつか提示している。意見の多様性が認められること、それぞれの意見が他者の意見に影響を受けないこと、「正しい判断」を下すための情報を、個人が(少なくともある程度は)持っていること、など。
ぼくはそれに加えて、「正しい解答が存在すること」を条件に加えるべきだと思う。レストランガイドやおすすめ本にランキングが使えないのはそのためだ。ほかの人にとっての「正しい解答」がぼくにとっては「正しい解答」ではない。おそらく選挙制度もその一つだろう。普通選挙は(細かい問題はいろいろあるにしても)集合知の典型的な形であることは確かだが、それで選ばれたはずの大統領や首相をみんながベストと認めているわけではない。ナチスだって選挙で選ばれたんだから。もっとも選挙は「他者の意見に影響を受けない」という条件も満たしてないが。
あと、知的なブレイクスルーが集合知から生まれることがあるのだろうか? たとえば天動説とか、相対性理論はどうだろう?
本書には集合知がうまく働かなかった例もそれなりに出てくるけれど、基本的には集合知がうまく働くための条件を満たしていなかったから、という論調になっている。この部分がモヤモヤするので、両手を上げて集合知に賛成、とは言い難い。「案外」正しい、というのが正直なところだ。 -
集団の知恵。今で言うビッグデータ活用の裏づけと言うか、その起源と言うか… いくつかの事例が紹介されている。
例として面白かったのは、牛の重さを測るコンテストで平均値が正解に近いことから、報酬を得られるシチュエーションにおけるみんなの意見は、正解に近くなるという逸話。
集団の力が上手くいったケースとして、Linuxが挙げられているが、上手くいかなかったケースとしてCIAやらNASAやらで組織的な問題だったり意図的な操作だったりも紹介されているので、みんなの意見が必ずしも正しくなるわけではないところも言及されている。
著者は、ジャーナリストのジェームズ・スロウィッキー。書籍はこれだけのようだが、TEDにも出ている。
この本は、良い面だけを取り上げて、エビデンスをつけて、読みやすく煽る本ではなく、慎重に反対側の状況も書かれているので、ちとよみにくかった。
集団の知恵なるものをしっかりと考えたい人向き。
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集団の意見はヒステリックに偏り易いという偏見に対して、「あんがい」正しい、場合によっては優れた個人よりも良い結果を生むよという内容。「あんがい」というのがミソであって、必ずしも正しいわけじゃないし、衆愚になることはあるけど、使い方次第とのこと。ちゃんと読まないと、いろいろと誤解してしまいそうな本。
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比較的最近読んだ本で紹介されていて、買ってみた。
ちょっと表現がくどく感じる点もなくはなかったけど、まぁそうだよねと思うことが書かれている印象。
何か知見を得るのではなく、読み物として読んだ方がいいと個人的には思った。