脳のなかの幽霊 (角川文庫)

  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 916
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042982111

作品紹介・あらすじ

切断された手足がまだあると感じるスポーツ選手、自分の体の一部を他人のものだと主張する患者、両親を本人と認めず偽者だと主張する青年など、著者が出会った様々な患者の奇妙な症状を手掛かりに、脳の不思議な仕組みや働きについて考える。分かりやすい語り口で次々に面白い実例を挙げ、人類最大の問題に迫り、現在の脳ブームのさきがけとなった名著。現代科学の最先端を切り開いた話題作ついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 世界観を変える本に出会う体験が人生に何回あるだろうか。この本は間違いなくそういう稀有な本の一つで、自分が普段ながめている世界の在りかたに疑問を投げかけた。

    登場するのは、あるときは脳に損傷を受けた患者たちであり、またあるときは異常なまでに研ぎ澄まされた才能を備えた者たちであった。一つエピソードを挙げる。卒中を経験した患者の中には左手(なんと左手の場合だけである)に後遺症として残った麻痺を頑として認めない者がいる。彼らは「それは自分の手でなく死体の手だ」とか「本当は動くけれど、あなたを傷つけないために動かさないのだ。」といった支離滅裂なことを真顔で言う。笑い話ではなく、彼らは大まじめなのである。これは左脳による情報の組み込みと既存の記憶との整合化が、損傷を受けた(違和感に気付く働きをもつ)右脳頭頂葉の働きを圧倒するために起こる現象なのだと、筆者は主張している。

    読んでいくうちに脳という馴染みのある器官の、これでもかという複雑さを感じる。我々が見ている世界は(未知の働きをする)脳が処理した世界であり、脳へのちょっとした損傷で容易に捻じ曲がる世界である。見ようによってはこれは救いかもしれない。分かり合えない相手に悪意はないとえるかもしれないからだ(そもそも見ている世界が違う)。しかし自分の世界と,相手の世界が全くの別物であるという絶望感も,また感じてしまう。(人は永遠に分かり合えないのでは?) まあこれは本の内容から踏み出したごく個人的な感想だが。

    最後であるが、この本は文章もすばらしい(訳も)。書き手が研究を心から楽しんでいる様子に,こちらまで鼓舞される。人生は短い。自分が本当に興味を掻き立てられることをやってやろう、と思わせるような力強い文章である。

  • ここ最近読んだ科学の本でダントツの面白さでした。

    脳の損傷などの症例から、脳がどうやって世界を認識しているかを、患者の体験から辿って解き明かしていくのが面白い。

    挙げられてる障害はどれも現実離れしたもので唖然とさせられました。たとえば自分の左側にあるものを無視してしまう、片腕が自分を殺そうとする、視野の一部に幻覚が紛れ込んで現実と判別できない…etc

  • 前々から気になっていたのだが、こんなに面白い本だったとは!幻痛―切断されたはずの手足に痛みを感じる症状の分析から始まる本書は脳神経科学の観点からフェティシズムや視覚の機能、半身失調や宗教認識に至る人間の機能が脳の特定部位(またはその失調)によっていかに形成されるかを明らかにしていく。出てくる具体例の数々が衝撃的なだけでなく、それが哲学的見地から解釈されユーモア交じりの語り口で次々と紹介されていくのだからたまらない。自我や自意識、自らの身体感覚すら幻想かもしれないと思える瞬間、そこに知の閃きが待っている。

  •  シャルル・ボネシンドロームに関する記述 と「それを使ってマンガを描く男」の話あり。
     「自分の盲点を「見る」ための図」多数。

  • なるほど、これは「名著」の看板に偽りなし。あれこれ脳科学の本をつまみ読みしてきたけれど、やっぱりこれを真っ先に読んでおくべきだったと後悔しきり。

    まずは具体的な数々の症例が(不謹慎な言い方をあえてするが)面白すぎる。脳の一部などが損傷することで、こんなに奇妙きてれつなことが起きるとは! 筆者がそこから脳の機能について推論を進めたり、実験によってそれを確かめていく様が、非常に興味深くユーモラスに書かれている。

    その考察は、意識とは、心とはいったい何なのかということに及んでいくのだが、そこで「クオリア」という概念が出てくる。他の本で読んでも(茂木さんですね)よくわからなかったこのクオリア、今回初めて「そういうことか!」とわかった気がした。話の運び方、例のあげ方、特に、たとえ話の仕方がとってもうまくてわかりやすいと思う。

  • 幻肢(失われた四肢が痛む現象)から入って、いろいろな脳の障害の症例を交えて、最終的には「自己」の問題にまとめられています。が、専門書のように難解ではなく、一般の人向けに書かれていて(時にジョークを交えてたりして)とても楽しく読めました。(盲点の章は実際、盲点を見る(!?)ことが出来て吃驚した。。。!)
    作者はインドの方で、とてもヒンズー教的(東洋的?)です。キリスト教的なものが薄い分、なじみ易いかな? 養老タケシ氏の唯脳論とかお好きな方は是非。

  • 読了。幻肢痛の痛み止めとしての治療法を確立し原理を概ね解明した、アメリカのインド系神経学者の本。まあまあ良書、専門用語は少なく一般向け。治療法や実験も鏡とかペンとかコップ一杯の水とかで何とかしてしまうひと。結構分厚い。患者は、日常生活的には相当希少な病気のひとが50名くらい出てくる。人間の脳内で、他の誰かがいろいろな活動を勝手にやっている!という主張が多く、本のタイトルがそれだが、本書ではほとんどゾンビといっていて幽霊は出てこない。脳内では我々が思うよりもはるかに自動制御が多く、我々の思いや意志はちっぽけだとよく分かる。前も書いて消したが、物質を目撃した後、視覚情報は、オブジェクトとテクスチャに分かれて脳に送られる。分離の根拠も活動も概ねまったく分からない。脳について、我々はまったく分からないということが本書でよく分かるし、赤子のような神経学の未来に大いに期待しているとも言っている。我々にとって世界はバーチャルなものでしかないが、心が何処からか現実にはみ出したように露呈していて自然界に属するのか何なのか分からないままでいる。作者は度々精神分析学と哲学を批判している。わたしはあまり正しい意見を述べているとは思えなかったが、特に精神分析は患者を治す気などないというのが正常運転なので、誤解していると思われた(臨床に精神分析がいること自体間違い)。ラカンのように人間の極北へ行ってしまわず地に足の着いた医師である。

  • 幻肢から始まって人間の脳が世界をどのように捉えているのかっていうレベルの話を、医者としての臨床の経験からわかりやすく面白く語っている。
    人間の錯覚や幻覚って本人にはどんなに明らかでも分からなかったりするんだな、幻肢にしてもそうだし他にも家族が別人に入れ替わったとか。
    ちょっと古いのに脳科学に関して目をかっ開かれる名著。

  • VR商品などが出るようになり、改めて脳(をどう騙すか)にスポットが当たりつつあるように思い、手にとってみた。このテーマは、脳を司る「自分」とは何かといった問題にまで侵食し、終いに科学か哲学か分からなくなってくるが、VRゲームなどで未知を味わう体験などは、各自が持つその答えの1つになるのかもしれない。

  • 切断された手足がまだあると感じる。体の一部を他人のものだと主張する。両親を本人と認めず偽物だと主張する。著者が出会った様々な患者の奇妙な症状を手掛かりに、脳の仕組みや働きについて考える。

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