福沢諭吉「学問のすすめ」 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫 330 ビギナーズ日本の思想)

  • 角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043073030

作品紹介・あらすじ

国が独立存亡の危機にあった明治維新直後、福沢諭吉が、おおいに学問をしようと人々を励ましベストセラーとなった名著。近代国家へと邁進するなかで、近代人としての生き方を示唆したアドバイスは、国際化の進んだ現代にあっても、求められる日本人の姿を教えてくれる。

感想・レビュー・書評

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  • チコちゃんは聞きます。
    「学問のすゝめ」は何を書いている?
    「学問のすゝめ?知ってるよ。天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず、というヤツでしょ?明治の四民平等を広めた人だよね」
    そんな風にドヤ顔で答えてくる一般人のなんと多いことか。
    ボヤーっと生きてるんじゃねーよ!

    その人に聞きます。「貴方は学問のすゝめを最初から最後まで読んだことがありますか?」
    おそらくほとんどの人は読んでいない。私も、大学のゼミで、半年かけて読むまでは、福沢は四民平等を訴え、自由民権運動を理論面から支えた人だと思っていた。ところが、最後まで読むと福沢は自由民権運動にほとんど関心を持っていないことがわかる。何故こんなことになったのか?
    理由はある。福沢諭吉は、話しこどばで学術書を書いた先駆けであり、本書は明治のベストセラーになったので、簡単に読めるとみんな勘違いしているのだ。いざ紐解くと、かなり高度で幅広い問題を論じているので、ほとんどの人が途中で挫折するのである。或いは最初だけ読んで理解した気になっている。それは「読んだ」とは言わない。

    「四民平等」の「権理」(権利)を述べたのは、ほぼ最初のみ。
    そのあと、「自由」と「わがまま」の違い、や「政府が産業を起こすべきか」「民間が産業を起こすべきか」とか、国民はこれから「実業」を学ぶべきだとか、「人と人との付き合い」は「国と国との付き合い」につながるし、「一身独立」してこそ「一国独立」する、というような、現代でも「意見の分かれる事案」ではあるが「重要なこと」をつらつら、ほぼ4年間(1872-76)かけて書いている。全17巻の啓蒙書集である。明治時代初めてのベストセラーだった。一巻20万部も発行された。全て合わされば340万部も国内に出回ったという。当時の出版事情、識字率を考えれば、ものすごい影響力を持っていたとは言えよう。

    結果的に明治時代のブルジョワ資本主義を理論面から支えたのかもしれない。その方向が正しいのかどうか、そもそも日本は福沢の思った方向に行ったのか、その辺りを検証しようとすると、物凄く難しい学術書にならざるを得ない。

    福沢は「もし、国民が全員学問に志して物事の道理を知り、文明の風潮に進むならば、政府の法もいっそう寛大で情け深いものとなるでしょう。法が過酷になるか寛大になるかは、国民の品性によってどちらかの傾向が強まるのです」(佐藤訳)という。
    だから富国強兵は、福沢の当然の帰結であったし、イギリスの属国に成り下がったインドなどは絶対避けたい国の姿でした。

    この方向に、第二次世界大戦の日本の悲劇があると思っている私には、やはり漢文調の本を書き続けていた中江兆民の「小国主義」を対置してしまう。

    「学問のすゝめ」は何を書いている?
    一言では表せない、明治時代初めての国のグランドデザインを書いていた。

  • (2013.04.13読了)(2011.10.10購入)
    【4月のテーマ・[福沢諭吉を読む]その②】
    「「文明論之概略」を読む(上)」丸山真男著、を読んでいると、「学問のすすめ」がしばしば引用されるので、次(中巻)に進む前に「学問のすすめ」を先に読んでしまうことにしました。
    「学問のすすめ」というより、「人生論」というか、人間如何に生きるべきか、というようなことが書いてある本です。
    学問をして、自立した人間になり、自由な発想で、社会の進歩発展に貢献するような人間になりなさい。西洋の優れたところを取り入れるのはいいが、部屋で用便するとか、用を足した後手を洗わないとか、風呂に入らないとか、いうことまではまねなくてもいい。
    進歩発展のためには、自立した人たちの討論が有益だ。そのためにも言論の自由が必要だ。女性だからといって、男性より劣っているとか、学問する必要がない、とかいうのは間違っている。等々、今の日本でも実現していないような、主張がなされています。
    現代にも読まれ続けているわけがわかります。

    【目次】
    はじめに
    初編 学問をすれば、誰もが賢人になれる
    二編 才知と徳行を磨け
    三編 世界中すべての権義は平等
    四編 国の独立は民間事業の振興から
    五編 国民の独立心こそが文明の精神
    六編 国法は、なぜ貴いか
    七編 国民は、政府とどう対応すべきか
    八編 自分の考えで他人を束縛してはならない
    九編 未来へ文明の恩恵を遺そう
    十編 艱難に耐えて学問に励もう
    十一編 「偽君子」を看破する力を養おう
    十二編 談話・演説は書き言葉に勝る 見識・品行を高尚にしよう
    十三篇 「怨望」は不善中の不善、これ以上の悪はない
    十四編 人生にも「棚卸」が必要 「世話」をするには「保護」と「命令」の配分が大切
    十五編 信疑を見分ける事物を取捨できる力を養おう
    十六編 物欲を押さえて精神の独立を果たそう 「心事」と「働き」とのバランスを保とう
    十七編 人望を得る道は交際を広くすることから
    参考 『福沢全集諸言』「学問のすすめ」
    《解説ノート》
    エピソードからみた福沢諭吉
    福沢諭吉略年表
    読書案内
    あとがき

    ●役立つ学問(12頁)
    やらなければならないのは日常生活に役立つ学問です。例えば、いろは四十七文字を習い、手紙の書き方、帳簿の付け方、ソロバンの練習、はかりの扱い方などを覚えることです。
    地理学とは、日本国中はもちろん世界各国の風土の道案内をしてくれるものです。窮理学(物理学)とは、自然界すべての物の性質を見きわめて、その働きを知る学問です。歴史とは、年表を詳しくしたもので、世界各国の昔から現代に至る事柄を探求する書物です。経済学とは、一世帯の家計から国家財政に至るまでのことを説いたものです。修身学(倫理学)とは、自分の行いを正しくし、人とうまく交流して、社会人として生きていくための基本的なモラルを述べたものです。
    ●学術・経済・法律(45頁)
    現在の我が国の状況を考えて、外国に及ばないものを挙げるならば、学術・経済・法律の三つかと思います。社会の文明は、この三つと深くかかわっていて、これらが盛んにならなければ国の独立が不可能なことは、有識者の論を聞くまでもなく明らかです。
    ●商工業(66頁)
    西洋諸国の歴史書を読んでみますと、商工業のなかの、どれ一つとして政府の創業によるものはありません。そのもとは、みな中流の地位にある研究者の考案によるものです。蒸気機関はワットの発明、鉄道はスティブンソンの工夫、初めて経済学の原理を研究して商法を一変したのはアダム=スミスの功績です。
    ●学問は手段(68頁)
    だいたい人間の力量というものは、ただ読書からのみ得られるものではありません。読書は、学問をするための手段です。学問は、実際に事を行うための手段です。実地に体験して習熟するのでなければ、決して優れた力量は生まれません。
    ●法律(71頁)
    国民が政府に従うのは、政府の作った法律に従うのではありません。自分が作った法律に従うのです。国民が法律を破るのは、政府の作った法律を破るのではありません。自分が作った法律を破るのです。
    ●男も女も同じ人(102頁)
    今の世では、力ずくで人の物を奪ったり、人の名誉を傷つけたりすれば、罪人として刑に処せられます。それなのに、家庭の内では公然と人を辱めて、これまでとがめられなかったのはどうしたことでしょうか。
    ●社会のため(121頁)
    人間は、ただ一身一家の衣食が足りていることで満足してはいけない。人間の天性にはもっと高い務めを果たす力があるのだから、人間交際の仲間に入り、社会の一員として、その身分にふさわしい場で社会のために尽くさなければならない
    ●学問の本質(143頁)
    学問の本質は、生活にどう活用するかということです。活用のない学問は、何も学問しなかったのと同じです。
    ●学問に励む(145頁)
    観察・推究・読書することで知識を蓄積し、談話することで知識を交換し合い、著作・演説をすることで知識を一般に広めるのです。
    ●世話の意味(174頁)
    世話という言葉には二つの意味があります。一つは、保護という意味です。もう一つは、命令という意味です。
    ●「婦人論」(182頁)
    今日の人間社会においては、男子は外で働き、女子は家を守るというのがごく自然のようですが、スチュアート=ミルは『婦人論』を著して、遠い昔から動かすことができないものとして続いてきた、この習慣を破ろうと試みました。
    ●生き生きと明るく(214頁)
    表情や容貌が生き生きとして明るいのは、人間として守るべきモラルの一条件であって、交際上最も大切なものです。
    ●『文明論之概略』(254頁)
    文明の本質に関する体系的な考察
    ●読書案内(280頁)
    『文明論之概略』福沢諭吉著
    『「文明論之概略」を読む』丸山真男著、岩波新書、1986年
    『福沢諭吉伝』石河幹明著、岩波書店、1932年
    『福沢諭吉』小泉信三著、岩波新書、1966年
    『福翁自伝』福沢諭吉著
    『福沢諭吉の手紙』福沢諭吉著、岩波文庫、2004年

    ☆関連図書(既読)
    「福澤諭吉」西部邁著、文芸春秋、1999.12.10
    「「文明論之概略」を読む(上)」丸山真男著、岩波新書、1986.01.20
    (2013年4月18日・記)
    (「BOOK」データベースより)
    国が独立存亡の危機にあった明治維新直後、福沢諭吉が、おおいに学問をしようと人々を励ましベストセラーとなった名著。近代国家へと邁進するなかで、近代人としての生き方を示唆したアドバイスは、国際化の進んだ現代にあっても、求められる日本人の姿を教えてくれる。

  • 現代語に訳してあるので読みやすい。陳腐な言い方だが100年も前の人の言葉とは思えない。この本の内容を知ることが目的ならば、がんばって原書を読むよりもオススメ。福翁自伝も面白かったが、私はこの本を読み、考え方を知り、一気に諭吉ファンになった。

  • 諭吉さんのご本。優しい言葉で書かれてあったから、読みやすかったです。諭吉さんの全てに賛同はしませんが、為になる事も書かれてあります。でも、結局は「実行力」なんですよねぇ。。。

  • なぜ学問をするのか。そして、学問を修めた者の責務とは何なのか。福沢諭吉はその答えを、「文明の進歩のため」そして、「国家の独立を得るため」としている。

    学んだものは、活かさなければならない。少し学んだだけで、それをただのステップにして職に就き、日々の暮らしを保つのに腐心するだけでは、個人はそれでいいだろうが、文明が進歩するのに寄与するには至らない。福沢は例として、世の中のすべての人が、自分の家計をやりくりすることのみを考えていたとしたら、新しいものは生まれることなく、ずっと同じ文明水準のまま時代が過ぎて行くだろうとしている。

    原書は明治初期に著されたものである。元々、小冊子のような形で短い論評を断続的に発行した、「シリーズ本」であったようだ。発行当初のコンセプトは初学者に向けたメッセージであり、子どもに向けて話すような非常にわかりやすい内容であったが、次第に近代社会のあり方について、日本の当時置かれていた状況に強い危機感を持って読者に訴える内容となっている。

    そして、福沢が原書中で日本の将来について心配した内容は、後年になっておよそその通りの形で日本を狂わせ、現代に至っている。当時の学者とは、ここまで国の行く末を見ることができるほど学問を究めていたのかと唸らされたほど、福沢の指摘は的を射たものである。

    現在の日本はどうだろうか。福沢が主張した「国家の独立」は少なくとも保たれているとは言い難い。学問は文明を拓くためにではなく、大学の名前を得るために行われている。それをどこにも活かさずに仕事をし、まさに家計のやりくりに腐心するのみの人間が大多数である。
    全体が豊かになったことで、日本人は後ろ向きになったのではないだろうか。まさに今、文明を拓いた人々の論考に触れ、行動を起こすことが我々に、特に若い世代に求められているのではないかと考える。

    なお、本書の現代語訳は非常にこなれていて、やさしい言葉遣いになっているので大変読みやすい。これなら、中高生が読むのにも入りやすいと思われる。

  • 国の自立の為には個人の自立が不可欠。
    諭吉は国民皆が学ぶ事で国全体が西欧列国に並ぶよう、市民には実学をすることをすすめ、学者には役割を全うするよう訴えた。
    また、政治・法律については国と個人の役割分担を解説し、国のするべきことを個人が行う事の罪についても触れている。

    訳がやさしく誰でも読める内容なので、一読しといて損はないと思う!

  • おもしろいとは言えないかなぁ。
    至極まっとうなことがつらつら述べてあるという印象。
    そもそも現代の日本では、環境とか親の教育によって、
    努力することそのものへの見方が変わり、
    意欲格差が拡大しているから、
    この書の考え方はあまりに理想論的。
    たしかに民主主義というのは個々人が政治に参加してこそ成り立つものだけど、
    この書を読んだ人みんなが、政治に積極的に参加することは実現不可能だし、
    そもそも言論の自由とかデモが制限されている現状、そして日本人の同調傾向がある限り、
    何も変わらないだろう。

    「ただ文字を読むことだけが学問だと言うのは大きな間違い」
    「人民を為政者の方策に従わせることはできるが、その理由を理解させるのは難しい」
    「鎖国時代は人民が無気力なのは政治にとっては好都合、人民をわざと無知の状態にしておいて無理に従順にさせるという」

  • 訳者が現代語訳したことで、原文の切れ味の良さが表現しきれなかったと書いていたが、現代語訳でもすごく強い攻めた文章だなと感じた。女性に関する記述と、学問では、読書だけでなく実践を求めていく姿勢、闇雲に洋学をありがたがるのはどうかとヨーロッパと日本を置き換えてユーモアたっぷりに述べていた部分が印象に残った。しかし、付録の個人的なエピソードに関しては、真偽はともかく他人が大事にしてあることを無碍に扱うのは、非常に罰当たりで、よくないと思った。

  • 学問をすれば、誰もが賢人になれる。
    日常生活に役立つ実学を学ぶ。

    暴虐な政府の支配を受けたくないならば、学問に志し、自らの才知と徳行を磨いて、政府と同位同等に向かい合える力を持つ。

    国民に独立の気力がなければ、独立国家にはなれない。まずは国民一人一人が自立しよう。

    国民と政府とのあり方について述べている部分が多いのは、国がまだ若いからだと考えている。しかし、今にも通用する考えであることが分かる。

    道理を説いて政府に迫るのが上策。むやみに命を棄てても文明には何ら役立たない。

    自分の考えで他人を束縛してはならない。

    衣食住が安定して独立したということではない。未来へ文明の恩恵を遺す。
    人間は食べることだけで満足してはいけない。学問に励もう。

    見識や品行の高尚を目指し自ら妥協してはならない。

    怨望(恨みに思うこと)は、不善中の不善。これ以上の悪はない。
    政府も民間も自由な活動を妨げてはいけない。

    物欲を抑えて精神の独立を果たす。

    人望を得る道は交際を広くすることから。
    話す能力は大切。話し方や表情が大事。
    交際に必要なのは虚飾ではなくて真心。

    今にも通ずる話。そのためか、当時は批判を受けたとのこと。

    少し難解だが何度も読んでみたい。

  • 福沢諭吉は日本のため、強いては日本人のためを強く思う人格者だと思う。
    明治の頃からの悩みは現代まで続いている。昔も現代も日本人は時代は変われど本質は変わらないのかもしれない。
    福沢諭吉はひどく日本の未来を心配していた。その結果が現代に現れているように見える。少子化、外交問題、働き手の不足と鈍化、学び、日々の生活に活かす生き方をしない保守的で受け身な若者達。今の福沢が見たらどんなに悲観するだろうか。それとも、それでも自らがまた先駆者となって教鞭を振うかもしれない。本当の学びを知らない今の若者が多くいる日本はこれからどうなるのだろうと、これからの私達が今直面していて最も考えて行動に移さなければならないと痛感する一冊であった。

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著者プロフィール

1935~1901年。豊前中津藩(現・大分県中津市)下級藩士の次男として生れる。19歳の時、長崎に蘭学修行におもむく。その後、大阪で適塾(蘭方医、緒方洪庵の塾)に入塾。1858年、江戸で蘭学塾(のちの慶應義塾)を開く。その後、幕府の使節団の一員として、3度にわたって欧米を視察。維新後は、民間人の立場で、教育と民衆啓蒙の著述に従事し、人々に大きな影響を与えた。特に『学問のすすめ』は、17冊の小冊子で、各編約20万部、合計で340万部も売れた大ベストセラー。その他の著書に『西洋事情』『文明論之概略』『福翁自伝』など。

「2010年 『独立のすすめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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