新版 福翁自伝 (角川ソフィア文庫)

著者 : 福沢諭吉
  • 角川学芸出版 (2008年8月25日発売)
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  • レビュー :16
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043073047

作品紹介・あらすじ

福沢諭吉が60余年の人生を回顧した自叙伝。青年時代の緒方洪庵塾での猛勉強、学友を諌めるために書いた遊女の贋手紙、蘭学塾の創設、幕府の遣欧使節に随行したヨーロッパ巡検、洋学者を狙う暗殺者におびえた日々、拒み続けた新政府への仕官-。福沢は抜群の語学力によって教育に啓蒙にと文明開化を導いたが、また勇気と人情に厚い数々のエピソードを残した。話し上手な福沢の思い出話に世相がリアルに伝わる。

新版 福翁自伝 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 福沢諭吉が、最晩年の64~65歳頃(1897~98年)に書いたと言われる自伝。
    文字通り、全体としては、豊前中津藩の貧しい武士の家に生まれた福沢諭吉が、他人からの資金援助を受けずに勉学をして、一身の経済的独立を果たし、更に一国の独立を唱導する立場にまでなった自らの経験が記されているが、教育面で文明開化をリードした福沢諭吉の「自伝」らしい特徴をもっている。
    ひとつは、福沢諭吉には、本自伝を書くにあたり、「独立自尊への道を示す」という明確な主題があり、そのためには健康な身体が何よりも大事であるということや、権威や伝統、迷信を嫌うエピソードが、その主題に沿って語られていると思われる。それは、アメリカ合衆国建国の父の一人として讃えられるベンジャミン・フランクリンが、「成功者への道はいかにして開かれたか」というテーマをもって記した、アメリカのロング・ベストセラーの一つである『フランクリン自伝』の影響を受けているという。
    もうひとつは、「一身の独立」を果たすために、「身体の健康のためには、食事に注意し、適度な運動が必要」、「勉強は、理論の為ではなく、現実社会での実践が目的である」、「商売をして豊かになることは否定すべきものではない」、「子どもの教育には手間暇を惜しむべきではない」などの、実践的な人生訓が散りばめられているという点である。
    また、福沢諭吉の性格であろうが、基本的なトーンが明るく、楽観的に感じられる点も、本書を馴染みやすいものにしている。
    社会人になって読んでも十分に楽しめるが、望らくは学生時代に読んでおきたい作品であろう。
    (2010年6月了)

  •  あの「学問のすすめ」を著した福沢諭吉が、晩年に自身の人生を振り返った自伝である。
     しかし注意しなければならないのは、語られるべきだが触れられていない人々が数多いるそうだ。例えば福沢に実学を重視するという思想を植えたのは「海防学」で有名な野本真城だが語られていない。

     また、故郷中津藩にあった改革党は実学派と尊皇派の二派閥があり、福沢は後に学友から命を狙われた。そういう過去を隠したかったのか、中津の友人たちについては黙している。そういう意味で自伝とは言いながらも語っていない部分も多いのだということを頭の片隅においておかなければならない。

     それにしても福沢諭吉という人は偉大な人物だから、どんなに素晴らしい人生を送ったのかと思ったら、意外にもとんでもないことを種々やらかしている。大坂の緒方洪庵の適塾では、大酒を飲んで暴れたり、喧嘩を仕掛けたり、ひどいことをよほどやったようだ。

     そのかわり勉強もした。儒学、朱子学の系統を嫌い、蘭学を志した。そのうち蘭語があまり役に立たないと知ると、あっさり英語に転じ、米国へ何度も行って知識や情報を吸収してくる。帰国後、翻訳や著作を多くしたのは知られているとおりである。

     終始一貫しているのが「貧乏や身分制度など、一身の独立を阻害する敵を、品位を損なうことをせずにいかにして打ち破ったか」という一点に収斂されている。

     あの一万円札で有名な福沢さんがどんな一生を送ったのかを知るのに大変良い一冊である。

  • 司馬遼太郎は、「この国のかたち 六」の「言語についての感想(五)」で、本書(福翁自伝)について、「明晰さにユーモアが加わり、さらには精神のいきいきした働きが文章の随処に光っている。定評どおり自伝文学の白眉といっていいが…」と絶賛していたので、読むのを途中でやめてしまっていた本書を再読。
    本書を読んで感じる福沢諭吉像は、よく言えば独立独歩、悪く言えば唯我独尊、強情、意固地といったところか。ただ、解説によれば、諭吉は「フランクリン自伝」を参考にし、「独立自尊への道を示す」ことを主題として、この主題にそぐわない事実は取り上げなかったようであるから、政治や政府に積極的に関わるなど、実際の諭吉はもっと合理的でリーズナブルだったのかもしれない。

  • こちらの解説が興味深い。
    フランクリンの自伝からの影響。それも、彼の人生という物語そのものへの影響の話。

    二つの近代化の話。
    大隈と共にこの立場に立つところのイギリス式近代化と、プロイセン式の近代化。
    明治14年の政変が画期。なかなか面白い。

  • 福沢は一生を通じて一つのことしか考えなかった。日本の独立!彼は、そのために西洋崇拝者のそしりを受けて身辺に危険をもっていた。それでも彼はそういう危険を冒して西洋の文明を吸収することにつとめた。これをもって彼は愛国の方法としたのである。

    何か議論を始めて、ひどく相手の者が躍起となってくれば、こちらはスラリと流してしまう。「あのばかは何をいっているのだ」とこう思って、とんと深く立入るということはけっしてやらなかった。ソレでモウ自分の一身はどこに行ってもどんな辛苦もいとわぬ、ただこの中津にいないでどうかして出て行きたいものだと、ひとりそればかり祈っていたところが、とうとう長崎に行くことができました。

    その時には昼は写本を休み、夜になればそっと写し物を持ち出して、朝、城門のあくまで写して、一目も眠らないのは毎度のことだが、またこのとおり勉強しても、人間世界は壁に耳あり目もあり、すでに人に悟られて今に原書を返せとかなんとかいって来はしないだろうか、いよいよ露顕すればただ原書を返したばかりではすまぬ、御家老様のけんまくでなかなかむずかしくなるだろうと思えば、その心配はたまらない。

    これまで倉屋敷に一年ばかりいたがついぞ枕をしたことがない、というのは時は何時でもかまわぬ、ほとんど昼夜の区別はない、日が暮れたからといって寝ようとも思わずしきりに書を読んでいる。読書にくたびれ眠くなってくれば、机の上に突っ伏して眠るか、あるいは床の間の床側を枕にして眠るか、ついぞほんとうに蒲団を敷いて夜具を掛けて枕をして寝るなどということはただの一度もしたことがない。その時に初めて自分で気がついて「なるほど枕はないはずだ、これまで枕をして寝たことがなかったから」と初めて気がつきました。これでもたいてい趣がわかりましょう。これは私ひとりがべつだんに勉強生でもなんでもない。同窓生はたいていみなそんなもので、およそ勉強ということについてはじつにこの上はしようはないというほどに勉強していました。

    けれども緒方の書生は原書の写本に慣れて妙を得ているから、ひとりが原書を読むとひとりはこれを耳に聞いて写すことができる。そこでひとりは読む、ひとりは写すとして、写す者が少し疲れて筆が鈍ってくるとただちにほかの者が交代して、その疲れたものは朝でも昼でもじきに寝るとこういうしくみにして、昼夜の別なく、飯を食う間も煙草をのむ間も休まず、ちょっとのひまなしに、およそ二夜三日の間に、エレキトルのところは申すにおよばず、図も写して読み合せまでできてしまって、紙数はおよそ百五、六十枚もあったと思う。

    今まで数年の間死にもの狂いになってオランダの書を読むことを勉強した、その勉強したものが、今はなんにもならない、商売人の看板を見ても読むことができない、さりとはまことにつまらぬことをしたわいと、じつに落胆してしまった。けれどもけっして落胆しておられる場合でない。あすこに行われている言葉、書いてある文字は、英語か仏語に相違ない。

    すでに心に決定しておれば、藩にいて功名心というものはさらにない、立身出世して高い身分になって錦を故郷に着て人を驚かすというような野心は少しもないのみか、私にはその錦がかえって恥ずかしくて着ることができない。グズグズいえばただこの藩から出てしまうだけのことだというのが若い時からの考えで、人のこそいわぬ、私の心では眼中藩なしとこう安心をきめていましたので、それから長崎に行き大坂に出て修行しているそのうちに、藩の御用で江戸に呼ばれて藩中の子弟を教うるということをしていながらも、藩の政庁に対してはまことに淡泊で、長い歳月の間ただの一度も建白なんということをしたことはない。

    厚かましく深切を尽くして、厚かましく泣きつくということは、自分の性質においてできない。これで悪いというならば追い出すよりほかにしかたはあるまい。追い出せば謹んで命を奉じて出て行くだけの話だ。

    これを要するにどうしても青雲の雲の上には向きの悪い男であるから、維新前後にもひとり別物になっていたことと、自分で自分のことを推察します。ソレはソレとして、

    すべてこういう塩梅式で、私の流儀は仕事をするにも、朋友に交わるにも最初から捨身になってとりかかり、たとい失敗しても苦しからずと、浮世のことを軽く見ると同時に一身の独立を重んじ、人間万事、停滞せぬようにと心の養生をして参れば、世を渡るにさまでの困難もなく、安危に今日まで消光してきました。

  • ○この本を一言で表すと?
     意外なほど痛快な一万円札の人の自叙伝


    ○よかった点を3~5つ
    ・全体として、赤裸々に若い頃の行動(特に書生時代の活動)が書かれていて、最後まで楽しんで読めた。(特にいたずら:遊女の贋手紙P.88、欺いて河豚を食わせるP.91)

    ・目的なしの勉強(かつ真剣)だからこそ大成するというのが興味深かった(P.114)

    ・目標に適合したやり方で徹底的に勉強して習熟しているところに凄みを感じた。(長崎で砲術家に学び、大阪の適塾で学び、英語を蘭語と合わせて学び、英語の仕事で学んだ)

    ・目的が決まれば徹底的にやるところにも凄みを感じた(戦争中に塾を移転)。

    ・司馬遼太郎の「花神」では軽薄で鼻持ちならない、というキャラクターで登場していて、やったことはともかく人間性はあまり・・・という偏見を抱いていたが、この本を読んでこういう人もアリだなと思った。

    ・「花神」で「自由」という仏教用語を訳語にしたのは福沢諭吉だと書いてありました。「御免」だと誰かに許してもらっているような感覚に違和感があってそうしたとか。こういうバランス感覚を持っている人だなとこの本の読んで感じました。


    ○参考にならなかった所、または突っ込みどころ
    ・書生時代のいたずらはやりすぎなところもあると思います。若気の至りにしても凄い(笑)

    ・本気の喧嘩をしたことが若い頃の一度しかない、と書いていましたが、割といろんなところでキレてないか?と思いました(笑)


    ○実践してみようとおもうこと
    ・周りの常識、偏見に囚われず、自分の目で見、自分の頭で考え抜く姿勢を見習おうと思います。

    ・必要だと思ったことについての徹底ぶりも自分が何かを成す上で重要だと思いますので、ヘタレないようにがんばります。

  • 『学問のすすめ』を読む前に、と思って読んでみたけれど、なかなか面白かった。
    学者の人なのかと思ったけれど、というか学者なのだけれど、どこか英雄的だった。三国志の武将や幕末の革命家や武士たちのような、武力的な強さを持った英雄が好きな俺からすれば、少し「ムッ」と感じた部分もないではないけれど、学びながらも奔放に遊び、政府からいくら声をかけられても平民で通した彼も、わかりやすく英雄だろう。
    幕末の小説や資料はいくらか読んだが、彼らを見る福沢諭吉の視点は新鮮であり、それ以上に幕末という時代を見る福沢諭吉の視線が、とても面白かった。教養のためにと頭を固くして読むのでなく、ただの幕末小説が好きな人間として読んでみても楽しめる。

  • 面白かった。
    福沢諭吉さんのイメージが「お札に載ってる偉くて堅そうなヒト」から、「破天荒で変わった面白いお爺さん」に変わりました。
    福沢さんの生き方には、現代人にも十分役立つことが満載で、古さが全然感じられませんでした。
    特に、お金に関する考え方や、子供の教育に関する考え方について、とても参考になりました。
    高校生の時にこの本を読んでいたら、慶應義塾大学に行きたいと思ったかも!(行けるかどうかは別として)

  • 僕の人生の羅針盤の一つです。
    特に、教育や経営における思想あyスタンスや取り組みは
    この著に書かれているエッセンスが欠かせません。

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    本塾の旧生徒が、社会の実他に乗り出して、
    その身分職業の如何にかかわらず、物の数理に
    迂闊ならず、気品高尚にてよく独立の趣意を全うする者ありと
    聞けば、これが老余の一大楽事です。
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    実学に重きを置いた教育主義と同時に
    、独立(独立自尊、独立した視点など)論をちょいと
    した話の端にする。時には、それだけに時間を割き(演説)
    あるいは、筆記にしるし、その方針を導いたことは、
    今でも僕のモチベト-クの礎です。
    主義を唱えて

  • 学問のすゝめは洋学者福沢先生といった感じだが、こちらは近所の福沢爺さんという感じ。

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