新訳・茶の本―ビギナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)

著者 : 岡倉天心
制作 : 大久保 喬樹 
  • 角川書店 (2005年1月1日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043093038

作品紹介・あらすじ

芸術の域にまで高められた「茶道」の精神を紹介しながら、伝統的な日本文化の独自性を詩情豊かに解き明かした名著。日本文化が大切に育んできた自然と人間の調和共生の関係は、環境破壊の進んだ今日、わたしたちに心の豊かさと新たな文明の指針を与えてくれる。

新訳・茶の本―ビギナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 日本の美学を再認識しました。

    名著。

  • 茶をすすりながら読みたくなる本。

  • りおのまいりすとにいれておいた

  • 訳者の解説が加わり、本書の半分くらいが岡倉天心の言葉でしょうか。
    芸術鑑賞の章は新鮮な見解で目からウロコ。
    「琴馴らし」の話も印象的。

  • 〇以下引用

    私たち日本人にとって茶道は単に茶の飲み方の極意というだけのものではない。それは生きる術を授ける宗教なのである。茶という飲み物が昇華されて、純粋と洗練に対する崇拝の念を具現化する、目に見える形式となったのでありその機会に応じて主人と客が集い、この世の究極の至福を共に創り出すという神聖な役割を果たすことになる。

    茶室は、索漠とした日々の暮らしに潤いをもたらすオアシスであり、そこに会した旅人たちは、共に芸術鑑賞の泉を分かち合って疲れを癒すのである。茶の湯は、茶、花、絵などをモチーフとして織りなされる即興劇である。部屋の色調を乱すような言葉といったものは一切なく、すべての動くは単純かつ自然になされるー茶の湯が目指したのはこのようなものである

    →ある種の「遊動空間」の創出を目指していたことが窺われる。「境界」的な在り方を、そこに居座る個々人がすることで、コスミックな空間が成立していたのだろう


    茶室が簡素、純粋さをめざしたのは、禅の僧院にならった結果にほかならない。禅の僧院は、ほかの仏教諸派と異なり、僧たちの住まいとして造られている。その聖域は、祈りをあげたり、参拝したりするための場所ではなく、修行僧が議論したり瞑想をおこなうために集まる教場なのだ

    露地は、待合から茶室へと導く庭の小道だが、これも、瞑想の第一段階すなわち自己の目覚めへの移行を促すものだ

    ★簡素で俗離れした茶室こそは、わずらわしい外界から遮断された真の聖域にほかならない。ここにおいてのみ、人は自らを高め、何者にも妨げられることなく、美の崇拝に浸ることができるのだ。

    →この昨日は、現代においても非常に必要とされるものであるような気がする。簡素が「非日常」という視点はおもしろい。「ハレ」であるのにも関わらず、それが「簡素」という要素で成り立っている逆説。そういう空間を創出したい。

    日々の暮らしを、茶室で達成されたような高度に洗練された水準に保とうと心掛けた。どんな時にも平静な心を保ち、会話はその場の調和を破らないように運んでいかなければならない

    →茶室は、あくまで「避所」で、日常を円滑にするための「油」であり、「通過儀礼」の場であったのだろう。それが成功したのは、そこに「祝福」と「余白」があったからだ。「世界」との新たな関係性を生れさせる何がそこにあったからだろう

  • 岡倉天心という人の生涯についてなんとなく知ることはできた。

  • ・茶を飲むという日常の行為を、芸術の域にまで高めた茶道。
     ほとんど何も置かれていないままの茶室。室町時代末期~安土桃山時代、千利休によって完成されました。

     明治の思想家、岡倉天心は、茶室と人との関わり、宗教、そして茶室の一輪の花にも注目しています。


     「花を摘むのも手当たり次第ではなくて、心に思い描く芸術的造形にしたがって、注意深く一枝一茎(いっしいっけい)を選ぶものであり、
     もし、必要以上に切ってしまうようなことがあれば、恥じ入るほかはない。
     西洋では、花の展示が、富の見せびらかしの一部であり、つかの間の遊びであるように思われる。

     これら多くの花は、騒ぎが終わった後、どこにいく運命なのか
     色あせた花が、ごみの山の上に、無情にも散り出されている眺めほど、痛ましいものはない……」


     「茶人は、花を選びさえすれば、責任は果たしたとして、あとは花が、花自身の物語を語るのにまかせる。

     暑い、夏の日。
     昼の茶会に呼ばれていってみると、ほの暗く、涼しげにととのえられた床の間に、一輪の百合の花が、釣り花瓶に生けられているのに、出会うかもしれない。
     露に濡れたその花の様子に、人生のおろかしさに微笑んでいるかのようだ」


           (岡倉天心)





     茶や、花に通じる人々は、無闇に花を摘み取ることはありません。 花を人と同等に扱い、花に対する尊敬の念をもって、接しています。 しかし、西洋などからくる近代化の波によって、花の扱いが大きく異なっていると、天心は述べています。
     自然をできるだけそのままに、『やはり野に置け』というのが、花に対するもっとも叡智な人の態度なのだと述べているわけです。

     これまでの近代の西洋の建築は、かちっとしていて、人間の作った直線的で、シンメトリーな構図を最優先させてきました。しかし、当時の数奇屋(茶室)などは、わざと柱の角に皮を残したり、曲げたりして、周囲の自然との調和を目指しています。
     自然災害の多い日本では、感覚的に、自然には勝てないということを、分かっていて、逆にそれをうまく、取り込んで先取りしなければ生きていけませんでした。そして、そういったことが、日本の文化を作っていったのだと思いました。


     現代では、エコロジーの考え方によって、より自然に寄り添っていくようなあり方が、見直されつつあります。

     明治維新の直前に生まれた天心は、近代化が始まる中に生きてきた人なのですが、いずれこの近代化の動きは、行き詰まりに達することを見通していました。
     そしてその時にこそ、東洋の伝統文明、また日本の伝統文化の考え方というのが、再び意味を持つことになるのだと予見しています。

     天心が伝えようとしていたのは、茶道の芸術性と、茶人の自然と共に生きていく、という源流そのものにもあるのだと思いました。

     

  • 岡倉天心の「茶の本」及び「東洋の理想」の序章、終章と共に、「エピソードと証言でたどる天心の生涯」が掲載されている。

    岡倉天心は横浜商館手代(藩の特産品の輸出等を行っていた)の父を持ち、6歳からジェームズ・バラで英語を勉強しているバイリンガル。大学卒業後は文部省で伝統に本美術を推進し、古美術の収集や美術学校の開設を行った。

    多忙にしながらも、1年間欧州視察をして国立美術館構想・美術学校開設に向けた検討を行ったり、5ヶ月中国視察をしたり、インドを回るなど、自ら現地を訪れて気付きを得てその後の活動の原点としているところが、生き方で真似たいと思えた最も印象的な点。

    文明思想家として、晩年は英語で詩劇「白狐」も執筆。

    日本文化・美術の啓蒙家として、ボストンにあるイザベラ・ガードナー婦人とも懇意にしていた他、ボストン美術館の日本美術の目録作成や各種セミナーを開催するなど、明治末期〜大正にかけて日本の良さを海外に広めた第一人者であった。

    文明思想家としての考え方:
    引用「文明は、人間が生み出したものであると同時に、風土の産物であり、風土の特性を帯びている。文明は滅びても、その面影を風土のうちに見いだすことができる」「文明とは、人間と自然風土が共同して生み出すもの:伝統アジア的文明観」

    本書を初めて読み、まずは岡倉天心自身について学んだが、もう一度、彼が「茶の本」「東洋の理想」で何を訴えているのか、じっくり味わいたい。

  • 日本人が英文で、欧米人に茶道の精神を紹介。日本には翻訳書が逆輸入された。お茶を飲むという日常的な営みを、芸術に昇華させ、宗教的意義すら与えるところに、日本文化の特徴があると強調。日々の暮らしと、芸術、宗教が一体となった精神文化を、現代欧米の物質的な文明と対置させた。老荘思想の影響を強く受けた「オフの日本人」の姿が凝縮されている。

  • 日本がインド、中国の文化を昇華し、そのようなことができたのはそもそも東洋の理念ということが共通だからであるという天心の信念には唸らざるを得なかった。そして、陶器や書画など様々な芸術に茶人の息吹が潜んでいるということから、文化の形成にいかに茶人の業が影響を及ぼしたのか、ということに気づかされた。

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