- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043093038
作品紹介・あらすじ
芸術の域にまで高められた「茶道」の精神を紹介しながら、伝統的な日本文化の独自性を詩情豊かに解き明かした名著。日本文化が大切に育んできた自然と人間の調和共生の関係は、環境破壊の進んだ今日、わたしたちに心の豊かさと新たな文明の指針を与えてくれる。
感想・レビュー・書評
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岡倉天心(1863(文久2年)~1913年(大正2年)/本名は覚三)は、福井藩士の次男として横浜に生まれ、東大文学部を卒業後、文部省に入り、美術行政を担当する。1886~87年、東京美術学校設立のためにアーネスト・フェノロサと共に欧米を視察し、1890年に東京美術学校(現・東京藝大美術学部)の初代校長に就任。1898年に東京美術学校を排斥され辞職してからは、インド訪遊を経て、1904年以降ボストン美術館の仕事で頻繁に米国に滞在したが、晩年には茨城県五浦に隠遁し、1913年に日本にて永眠。
子どものときから学んだ英語と、優れた国際感覚をもって、日本・東洋の文化を内外に訴え、本書収録の『茶の本』は1906年にフォックス・ダフィールド社(ニューヨーク)から出版された『The Book of Tea』、『東洋の理想』は1903年にジョン・マレー書店(ロンドン)から出版された『The Ideals of the East-with special reference to the art of Japan』の、それぞれ邦訳である。中でも『茶の本』は、新渡戸稲造の『武士道』、内村鑑三の『代表的日本人』と並び、明治時代に日本人が英語で日本の文化・思想を発信した作品として夙に有名。
本書では、『茶の本』と『東洋の理想』(序章・終章のみ)の新訳に、訳者による、各章の「解説ノート」と90頁に亘る「エピソードと証言でたどる天心の生涯」が加えられており、作品についての理解を大いに助けてくれている。(角川ソフィア文庫は、岩波文庫や講談社学術文庫に既に収められている作品を新訳で出すものが少なくないが、充実した解説や参考資料が付されていることが多く、とても有用である)
『茶の本』は、1章:茶碗に満ちる人の心、2章:茶の流儀、3章:道教と禅、4章:茶室、5章:芸術鑑賞、6章:花、7章:茶人たち、という章立てとなっており、茶道を、道教、仏教(禅)、建築、華道などの関わりから捉えて、日本の文化・美意識・価値観を幅広く解説しようとしている。
出版後百余年を経て、日本人の我々が読んでも気付かされることが多いが、私が最も心に残ったのは、6章で、「死を栄光とする花」である桜は、「さようなら、春よ、私たちは永遠に向かって旅立つのです」と語りかけながら消えてゆくと語ったあとで、最終章の7章で、「美しく生きてきた者だけが美しく死ぬことができる」のだとして、千利休の最後の茶をとりあげて、「顔に笑みをたたえて利休は未知の世界へと旅立っていった」と締めくくられているところである。茶の達人の生死は、花の生死と等しく、人間と自然は究極的に合一する。。。これこそ、茶(と禅)の心ということであろう。また、死は生の完成であり、至高の芸術であると言え、利休の最期はまさにそうした典型であり、いわば、希代の茶人の最大の「茶事」であるとも言えるのだ。
茶~禅・老荘思想を柱に日本文化の本質を語った、現在でも読む価値の大きい古典である。
(2020年12月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の美学を再認識しました。
名著。 -
茶道というよりも思想、感性について。
P.65-66 「虚」については感銘を受けた。
いつもアートにしても映画にしても全て明白ではない、自分で考えたり感情移入出来る余白があるものに惹かれる理由がわかった。
P.92 「完全そのものより、完全を追求する過程を重視.....心の中で完全なものに仕上げようとする精神の動きにこそ見出される....」
常日頃思っていたことが記述されていて、それが禅の思想に繋がっていた事を知った。道教についても興味が出る。
The book of teaの英語原文も読もうと思った。
新訳を読んで受けた感想と原文を読んだ感想がまた違うのが楽しみだ。これも天心のいう「空白のまま残しておくことによって、鑑賞者はその空白を自分流に補い...」にリンクする。 -
難しかった。解説本が必要。一回でわかろうとするべきではないことを思い知った。
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「茶」を切り口に古代中国の道教思想から現代生活様式まで、作者の好きなように語った一冊。岡倉天心のやりたい放題ここに極まれり、で、意外と悪くない。
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忘れがちな日本の良さを再認識することができ、「茶の本」「東洋の理想」はとてもよかった。
ただ、最後は必要だったのかな?天心にとって基子は何だったんだろう。 -
”岡倉天心が英語で書いた本の和訳。新渡戸稲造の『武士道』で植えつけられたサムライの国 ニッポンのイメージ払拭も狙っていた?
明治開国前後で西洋化していくことへ対抗して古来日本に注目した感覚が、いま21世紀に未来への指針を提示しているのだという。
茶の歴史、茶室の作法、茶人 を説明しながら、禅の心、道教(老子)の教えがちりばめられている。
7章の「利休の最後の茶」の話にはグッとくる。辞世の句「よくぞ来た 永遠の剣よ!」
<キーフレーズ>
・利休は庭に降り立つと、一本の木をゆすり、庭一面に、秋の錦を切れ切れにしたような金と朱の葉を撒き散らした。 (p.86)
※利休と息子・少庵の露地掃きエピソード。求めたのは、美しく自然らしいこと
そしてこの禅問答。利休の内なる激しさも感じた。
・作品の質よりも作者の名前の方が重要なのだ。すでにもう何世紀も前にある中国の批評家がこう言っているほどだ。「人々は耳でもって絵を評価する」。このように本来の芸術鑑賞のありかたが損なわれてしまったことが、今日、どこを向いても、えせ古典主義的駄作につきあたるようになってしまった原因といえる。(p.111)
※うむ、手厳しい。しかし、スカッと小気味よい論評
<きっかけ>
2017年3月 人間塾 課題図書” -
2019/2/19 読了
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茶道の本ではありません。
茶道にほとんど触れずに茶道の考えを解説しています。
そのことで日本の文化を浮きだたせています。
1.この本を一言で表すと?
・「茶」を通した日本文化の精神の解説
2.よかった点を3〜5つ
・茶の哲学は・・・倫理や宗教と結びついている(p17)
→茶は単純に語れるものではなく、様々な背景が結びついたもの。
・生きる術を授ける宗教(p50)
→過程が重要ということ。茶を飲むことよりそこに至る過程が重要。人生も死という結果よりそこに至る過程が重要ということ。
・美しく自然らしい清潔さ(p85)
→常にまわりの環境を見て自然らしさを考えなければいけないということ。
・完全そのものより完全を追及する過程を重視(p92)
→結果そのものより過程が重視。普段の自分自身の生活でも取り入れたい考え。
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・「道教」が頻繁にでてくるが、それほど「道教」は普及していたのか?
・儒教を批判的にとらえているが、なぜ?
・煎茶が一般的になり、抹茶が特別なものになった現代は「茶道」の精神がかけ離れたものになった?
・天心の恋愛遍歴は茶の精神に反しないのか?
3.実践してみようとおもうこと
・花を愛でる
・美しく自然らしい清潔さ
・質素でありながら洗練された部屋
4.みんなで議論したいこと
・現代の日本に「茶道」の精神はのこっているのか
5.全体の感想
・これまであまり理解していなかった「茶道」の精神を理解するのに役に立ちました。
・「エピソードと証言でたどる天心の生涯」は天心がどんな人だったのかよくわかりました。自由奔放な恋愛をしているのが意外でした。 -
グローバルな視点があることの深みを感じる。
著者プロフィール
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