日本人とユダヤ人 (角川文庫 白 207-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043207015

作品紹介・あらすじ

砂漠対モンスーン、遊牧対定住、一神教対多神教など、ユダヤ人との対比という独自の視点から、卓抜な日本人論を展開。豊かな学識と深い洞察によって、日本の歴史と現代の世相に新鮮で鋭い問題を提示する名著。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;イザヤ・ベンダサンの正体は、山本七平氏(出版元店主)と言われている。山本氏は、大学卒業後、陸軍に入隊。ルソン島で終戦を迎え、復員後、山本書店を創立。「空気の研究」「常識の研究」等の論考書を多数執筆。政府諮問機関の要職を勤め、高い評価を得ています。
    2.本書;第1章(安全と自由と水のコスト)~第15章(三つの詩)の構成。日本人の特質を、ユダヤ人と対比して考察した日本人論。日本人の思考形態・行動様式を独自の論理で解明。ユダヤ人の潜在的願望が書かれている。日本人は「安全と自由と水が空気の様」「お互いに人間じゃないかと言える社会」「鍵も城壁も不要な国」と思っている。50年前の発刊だが、300万部を超える大ベストセラー。識者に“発売と同時に古典”と言わしめ、日本人論ブームの走りになった。文芸春秋賞・菊池寛賞を受賞。ユダヤ人とは、“ユダヤ教徒”又は“ユダヤ教徒を親に持つ者”と言われる。現在、全世界に1,340万人を超えるユダヤ教徒がいる。ユダヤ人には、アウシュビッツ強制収容所を始め、差別と迫害の日々という悲しい歴史があります。
    3.私の個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
    (1)『第1章;安全と自由と水のコスト』より、「自己の安全に、収入の大部分をさかねばならなかった民(ユダヤ人)と、安全と水は無料で手に入ると信じ切れる状態に置かれた民(日本人)、・・ だが、余りに恵まれるという事は、・・時にはかえって不幸を招く。・・過保護の青少年は、何かちょっとした事に出会うと、すぐに思いつめてしまう。大学受験に失敗して、自殺した等はその典型的な一例」
    ●感想⇒日本の警察の殺人事件検挙率は、96%と高率(⇔アメリカ;62%、中国;77%)。警察は税金で賄っているとはいうものの、意識的には無料と思う人が多いでしょう。水にしても、水道水は料金がかかると言っても、高額ではありません。私が初めて海外に行った経験です。買物で外出の際に、スリ集団にマークされ怖い思いをしました。水も、それなりのホテルでさえ生水は飲めず、何度もペットボトルを買いました。その時に、安全と水に対する意識が日本と外国ではこんなに違うのかと思いました。“百聞は一見に如かず”と言いますが、自分の眼で確かめ、その国の実状を理解する事が一番です。外人との仕事に大変役立ちました。次に、“余りに恵まれる”に関する点です。国内出張地で、ランチした時の事です。私が食事中に、4人の女子大生が、私の隣のテーブルに座りました。2つ残念な思いをしました。1つは、一人の女性が、私のテーブルの空席に断りもなくバッグを置いた事。もう一つは、4人共に同じような“サンドイッチと飲み物”を注文し、全員がサンドイッチを半分位食べ残しました。分けて食べればよいのに。礼儀と食物を大切にする心は、幼い時から家庭で教えなければ、身に付きません。豊かさの代償でしょうか。日本の将来が不安になります。
    (2)『第6章;全員一致の審決は無効』より、「日本人とは、日本教という宗教の信徒で、それは人間を基準とする宗教で、・・“人間とはかくあるべき者だ“とはっきり規定している」「[第8章]日本教の基本的理念は『人間』である。従って、神学は存在せず人間学が存在する。法外の法で規定され、言外の言で語られているため、言葉で知ることが非常に難しい」
    ●感想⇒私は、日本教という造語に驚きました。「日本教は世界で最も強固な宗教である。信徒すら自覚し得ぬまでに完全に浸透し切っている」と言っています。振返ると、上司から時々、「“言わなくてもわかるだろう”とか、“察しなさい”」とよく言われました。日本語自体も、英語に比べると、最後に肯定・否定を示すという、曖昧な言語です。流行りの“忖度”もしかり。私達は、知らずの内に、日本教の信者なのかも知れません。島国の単一民族であるが故でしょうか。良い面もあるでしょうが、言外の言だけを配慮せず、合理的な判断力を持ちたいものです。
    (3)『第12章;忍びよる日本人への迫害』より、「日本はいつのまにか、白人カルテルの重役になり、OECDに列し、南アでは公然と“名誉白人”になっている。ああ“名誉白人”。かつての労組員の彼にそそぐ目は複雑だ。一方、キリスト教・共産主義者白人カルテルも彼に気を許しているわけではない(その“におい”のに)」
    ●感想⇒日本には悲しい歴史があります。近隣諸国に対し、植民地政策など許されざる事をしました。この反省に立って、世界の黒衣となって、貢献しなければなりません。昨今の情勢は、米・ロ・中がきな臭い動きをしており、心配です。くれぐれも“死の商人”としての利潤追求だけはしてはいけません。私達は、良くない歴史を繰り返すことなく、時事と政治動向に関心を持ち、選挙放棄などせず、やれることを実行しましょう。“小事は大事に”を肝に銘じたいものです。
    4.まとめ;本書は、日本人の思考や行動様式、その理由を詳細に説明しています。内容は、決して陳腐化していません。普段あまり考えない“日本人”という枠組みを深く考察できます。本書の中に、日本教を理解するには、“西郷隆盛の生き方”、日本人を理解するには、“氷川清話(勝海舟)、日暮硯、草枕(夏目漱石)”を上げています。また、個人見解ですが、遠藤周作の「沈黙」にも日本教に通じる点があると思います。( 以上 )

    • seiyan36さん
      おはようございます。
      若い頃、手にした記憶がある本です。
      安全と水は無料だと、私も思っていましたね。
      内容はほとんど忘れてしまいました...
      おはようございます。
      若い頃、手にした記憶がある本です。
      安全と水は無料だと、私も思っていましたね。
      内容はほとんど忘れてしまいましたが、衝撃を受けた日本人論だったと思います。
      2022/05/17
    • ダイちゃんさん
      seiyan36さん、おはようございます。コメントありがとうございます。この本は、恩師が「発売と同時に古典だ」と、言われた本です。私も名著だ...
      seiyan36さん、おはようございます。コメントありがとうございます。この本は、恩師が「発売と同時に古典だ」と、言われた本です。私も名著だと思います。その後、山本七平さんの本を数冊読みました。
      2022/05/17
  • 学生時代
    いまはもう忘れられた人なのかなあ。

  • ●日本教:
    日本教は人間教であり、神学ではなく人間学=人間とはかくあるべきを基準とする。
    「ユダヤ人の神様は水くさいのね。
    血が通ってないみたい」
    律法よりも人間味。法外の法、言外の言。

    日本的思考はソロバン型。それは意識的思考を極力排除した放心状態であり、考え出した瞬間に動きは止まる。言葉を持つとは喋ることではない。一言も口を利かなくても頭脳の中で、あらゆる言葉を縦横無尽に駆使できるのである。他国民には到底想像もできない。

    日本人にとって人間という概念は物理的に存在する人間ではなく、ソロバンやユダヤ人にとっての神と同じもの。 

    日本人はソロバンのように会話の訓練をしていない。日本語は完璧だから。数式のようなラテン語のような訓練は不要。



    ●ユダヤ教:
    ユダヤ教の神と人間の関係は血縁なき養子縁組。契約に違反すれば子としての権利は失う。よって律法を一点一画まで守り抜く。いつも神がそこにいるので、信じるとか、ズルするとか言う発想はない。

    日本人にとってソロバンはそこに物理的に存在しなくても、確かに実存しており、それを駆使して得た答えは正確な成果として実際の生活に影響を及ぼしている。ユダヤ人にとっての神とその律法はこれと同様に厳然と実存しているのである。

  •  1970年に出版された本書は300万部を越えるベストセラーになったそうだが、妙に日本通の著者「イザヤ・ベンダサン」の正体に関する好奇心で読んだ人も多かったのではないだろうか。自分も学生だった頃(20年以上前)に本書を手にしているが、絶対にユダヤ人であれば書かないだろうという記述を読んで、正直、胡散臭い本という印象だけが残った。
     今では「イザヤ・ベンダサン」が山本七平氏のペンネームであったことは周知の事実であると思われるが、山本七平氏のことを小室直樹博士が天才と称していたことはあまり知られていないかもしれない。自分も小室博士の評価を知り、山本氏の書として改めて本書に向かい合ってみた。ユダヤ人に関するエピソードの真偽はひとまず置いておいて、注目すべきはやはり日本人論の方である。山本氏は独自の日本人論を展開するための補助線としてユダヤ人を用いたとすれば、本書を正く評価できると思う。山本氏の日本人論の中には「全員一致」のように既に失われた価値観もあるが、「理外の理」のように現代でも脈々と受け継がれているものが多い。「しのびよる日本人への迫害」は執筆された当時以上に、現在の日本に対する警鐘になっている。
     本書が執筆されてから40年以上が経過し、日本の国際化も進んだ…とされている。しかし、本当にそうだろうか。海外で生活する日本人が珍しくない現在だからこそ、山本氏の日本人論をもう一度、見直す価値がありそうだ。

  • 〝「外国人や外国文明に対する批評は、自己および自国民の潜在的欲望の表出である」とヤーシュヴ•ベン•ダーネルは言った。〟

    「はじめに」の冒頭のこの一文が琴線に触れたなら、そのまま読み続けて欲しい一冊。
    オンリーワンと言ってもそれは比較対象があって初めて認識できるもので、比較することそのものは決して悪ではないと思う。
    約50年前に書かれたという点で今となっては当てはまらない古き良き(?)日本像に偏っているところもあるけれど、それを差し引いても充分面白い。

  • 既に古典になったかもしれない一冊だが、指摘する所は普遍の日本人必読の書。 

    古典的な作品、初めてじっくり通読しました。

    日本人として当たり前に思っていた諸々の思考、それが世界的に独自なこと、「日本教」と定義てきるようなこと、今まで本書に向わずすみませんでした。

    日本人論を語るには必読の一冊でしょう。

  • 日本人とユダヤ人
    日本教とユダヤ教

    日本教の基本理念は人間=日本人にあるとのこと。
    従って神学は存在せず人間学が存在する。
    人間が中心なので
    法外の法で規定され
    言外の言で語られる
    そのため日本語をはじめとした言語で理解することは不可能に近い。

    日本人は無宗教と言われるが無宗教ではなく日本教信者だと。
    日本人キリスト教徒は日本教キリスト派
    日本人仏教徒は日本教ブッダ派

    日本人が生まれた時にお宮参りをしてキリスト教式で結婚式をして仏教で葬式をするのも何もおかしくないと感じますが世界では変なんですよね。
    僕は何でも取り入れるのが日本人やから普通と思ってましたがその「日本人」というのがいわゆる宗教的なものなんですよね。

    イスラエルでは宗教裁判所が家庭裁判所の役割を果たすそうです。
    それは宗教的な生活様式が統一されてるため法で裁けないから宗教裁判所で裁くとのこと。
    話し合いでまとまらなければ法律の裁判所に移管するそうです。
    詳しくは省きますが日本の家裁と全く同じ仕組みですよね。

    日本人が家裁で判断するのが「日本人として」という部分なんやと思います。
    そこに法外の法があり言外の言がある
    日本が移民を受け入れられないのはそこにも理由があると思います。
    移民が家裁で裁かれたら人権侵害とか言い出すんちゃいます?(笑)
    日本語を勉強しても文化を学んでも仮に帰化しても◯◯系日本人にしかならないんですよね。
    言外の言や法外の法を理解出来て初めて日本人になれるんやと思います。

    この本はユダヤ人を通して日本人をわかりやすく説明していると思います。

  • 日本人がこれまで歩んできた背景を知ることで、今も昔も変わらない日本人の気質や考え方の根本を理解できるとともに、ユダヤ人が歩んできた背景から考え方の違いや物事の捉え方の違いを知ることができる。
    今イスラエルとパレスチナの戦争も、日本人からしてみれば「なぜこの戦争は繰り返されるのか」となかなか理解できないことであって、宗教上の違いという話だけでなく、その歴史的な出来事から、繰り返されるべくして繰り返されているものであるということを知り、その繰り返されることへの意味を考える視点を持つことが大切だと感じた。
    他民族に虐げられ、虐殺されたことのない日本人。
    一方、これまで500万人以上の血を流したユダヤ人。同じ人間として生を受けたものの、積み重ねた歴史があまりにも違いすぎることを、日本人である私たちは知っておかなくてはならない気がする。

  • 日本教、法外の法、言外の言、人間性 のくだりは山本七平ならでは指摘で秀逸。本当に難しい国民だと思う。無理して欧米化せず、日本らしさで、突き進めばいいと思う。

  • スゴい❗

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