氷川清話 付勝海舟伝 (角川ソフィア文庫)

著者 :
制作 : 勝部 真長 
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 374
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043209019

作品紹介・あらすじ

現代政治の混迷は、西欧の政治理論の無定見な導入と信奉にあるのではないか――。先見の洞察力と生粋の江戸っ子気質をもつ海舟が、晩年、幕末維新の思い出や人物評を問われるままに語った談話録。略年譜付載。

感想・レビュー・書評

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  •  前半はおもしろかったのだが、後半になると説教くさくて閉口してしまった。やはり外交の天才で大政治家ではあるのだが、その神がかったところに共感できない部分も多くあった。現代と幕末では状況が大きく異なるし、この人の発言も手放しで賛同することはできない。そうはいっても、家族の問題が人を弱らせるとか、人道にはずれたことをするとやはり人を弱らせるといったことは分かる気がした。引きこもっていた時期に読書に精を出していたとのことは、今日の我々にとって唯一の慰めになることだと思われる。
     足利義満に対する評価が高い。名を売っても実を取るというしたたかさが我々日本人に求められているところだろう。

  • 赤坂の氷川神社は、勤務先の以前の事務所近くにあり、年始のお参りに行ったこともあります。この近くに住まう勝海舟の晩年の語録を集めたのが、この本です。

    江戸で生まれ育った勝の言葉は、平明で物事の核心を良く押さえています。一方、時勢や雰囲気といったものに飲み込まれることなく、客観的に物事をとらえることができる心根の強さも感じさせます。

    江戸末期から明治への体制の大きな転換の中で、時代の熱狂に巻き込まれることなく至誠を貫ぬいた勝ですが、実に明治32年まで存命しています。その間、顕職や栄達が盛んであった世情を、どのように思っていたのでしょうか。

  • お酒の席で会社の偉いおじいさんのすごい昔話を聞いているような感覚があり、楽しく読めた。
    ただ、後半は「最近の若者はダメだ」という感じの説教臭い話が多く、ややうんざりする部分もあった。

  • 半藤一利氏が座右の書として推されていたので手に取ったが、確かに抜群の一冊だった。人生の中で何度も読み返すことになると思う。

    私を捨て、公のために大きく考えることを突き詰めれば、誠を貫くというシンプルな生き方に行き着く。小賢しい知略は小さな利や目先の毀誉褒貶を得ることはあっても、国家百年の計の前には無力となる。

    その極意は、身命・勝敗を度外視し、危難に淡然として向き合う胆力。文武の「武」の重要性についても改めて考えさせられた。

  • ”<抄録(抜き書き)>

    <きっかけ>
    人間塾 2018年11月課題図書”

  • 勝海舟伝。勝が思う、要人たちの印象や人となりなどを、過去のエピソードと共に話した内容が書かれてある。西郷隆盛のイメージが少し具体化した。

  • 明治維新時の幕臣、勝海舟の晩年の語録。
    明治30~31年頃(勝海舟73~74歳頃)に赤坂氷川神社傍の勝邸において、弟子たちが聞いた回顧談をまとめたものと思われる。
    「・・・人間に必要なのは平生の工夫で、精神の修養ということが何より大切だ。いわゆる心を明鏡止水のごとく磨き澄ましておきさえすれば、いついかなる事変が襲うてきても、それに処する方法は、自然と胸に浮かんでくる。・・・それゆえに人は、平生の修行さえ積んでおけば、事に臨んでけっして不覚を取るものではない」
    「人には余裕というものがなくては、とても大事はできないよ。昔からともかくも一方の大将とか、一番槍の功名者とかいうものは、たとえどんなふうに見えてもその裏の方からのぞいて見ると、ちゃんと分相応に余裕を備えていたものだよ」
    「もしわが守る所が大道であるなら、他の小道は小道として放っておけばよいではないか。知恵の研究は、棺の蓋をするときに終わるのだ」
    「あてにもならない後世の歴史が、狂といおうが、賊といおうが、そんなものはかまうものか。要するに処世の秘訣は「誠」の一字だ」等
    その豪放かつ率直な物言いは、『プリンシプルのない日本』の白洲次郎を思い出させる。
    西郷隆盛との談判で江戸城の無血開城に導き、明治新政府でも旧幕臣の代表的役割を果たした勝海舟のプリンシプルが伝わってくる。
    (2009年8月了)

  • おじいちゃんの武勇伝を聞いている気分になる。歴史上の人物が身近に感じられる本だった。

  • 語り口は大言壮語風だが、江戸城を無血開城に導いた勝海舟の言葉だけに説得力がある。特に、外交についての考え方は、現代の我々にとっても大いに参考になると思う。特に、ロシアが対馬を占領しようとしたときの英国公使を使って英国から圧力をかけさせるなど 「夷を以て夷を制す」やり方は、さすが。
    勝が天下の人物として特に認めたのは、横井小楠と西郷南洲(隆盛) の二人とのこと。中でも西郷の胆力は繰り返し言及していてる。
    胆力を養え、無我の境地に到達せよ、余裕を持て等々、若者(当時の書生)への人生訓も多く含まれている。剣術と禅学の修行が役だったとのことだが、日頃の自己鍛練で身につくものだろうか。勝のような偉人の場合、天性のもののような気がする。
    巻末の勝海舟伝も併せて読んで、勝海舟の偉大さが改めてよく理解できた。勝と比べれば、福沢諭吉もだいぶ小さく思える。

  • 自分の勝海舟に関する知識は「咸臨丸でサンフランシスコに行った」,「西郷隆盛との会談で江戸城の無血開城に合意」ぐらいしかなく,維新後の表舞台での活躍もないため,印象が薄かったのだが,すごい人だ,この人は.僕は自分の不明を恥じているところである.貧乏旗本に生まれたが幕府に登用され,何度も幕府を頸になりながらも,幕府が難局に陥れば何度でも呼び出され,上の西郷との会談では幕府の全権として新政府に対する.日本を内線の混乱から救い,維新後に旗本らが路頭に迷わなかったのは勝個人の功績であるが,維新では幕府側は敗者なので,こういった事実は表には出てきにくい.何せこの人が何かに勝ったわけではないから.勝はある段階で幕府を見限っており,日本としての将来しか見ていない.おかげで旧幕臣からは裏切り者とののしられるわけで,本人も人に嫌われていることを自覚しているのだが,日本のためにやっているという信念があるので,批判には我関せずである.
    自分のように勝海舟についての知識がない人は,まず,付録の「勝海舟伝」から読むと良い.

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