わが闘争(上)―民族主義的世界観(角川文庫)

制作 : 平野 一郎  将積 茂 
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043224012

感想・レビュー・書評

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  • 誰がどう考えても間違っているとしか思えないことがなぜ起きるのか知りたい。そういう意味で、いつか読まなければならなかった本。

    ユダヤ人への憎悪。ドイツとドイツ民族(?)が生き残るためには、領土を広げ、敵を殲滅する必要がある、という認識。混血は民族を弱める、劣等者は子孫を残すな、という考え方。優秀な指導者が決め、大衆はついてくればよいという政治手法。ホロコーストにいきつくいくつかの曲がり角。

    主張はあるが、理由がない。たとえばユダヤ人は悪。アーリア民族(?)が偉大。その証明は行われない。これは驚いた。ナチスは誤った理由から出発したので、誤ったところに行き着いたのだとぼくは思っていたのだ。その理由はこの本に書いてあって、現代という歴史的な高所から見渡せば、その理由の欠陥が見えると思ったのだ。これはどうにもならない。論拠があれば論破できるが、根拠のない主張は無敵だ。しかも大衆は考えなくて良い、と「優秀な指導者から」免責されている。責任も指導者がとってくれる。大衆は安心して心地良く、誰か憎めばよい。
    論拠がないのだから、「ユダヤ人」のところは容易に別の言葉に置き換えられる。中国人とか韓国人とかに置き換えてみれば、どこかで聞いたような話になる。ナチスは死んだ犬ではないのだ。

    言論を封じてはいけない、異論を弾圧してはいけない、差別をしてはいけない、という理由は、おそらくここにある。場合によってはいささか行き過ぎに思えることもある自由の決まりごとの多くが、実はナチスへの安全装置なのだ。しかもそれはまったくのところ完全ではない。ナチスドイツにだって、ナチスに反対する人々はいたのだ。
    その結果、あの時代に起きたことを考えると、暗澹たる気持ちになる。せめて、ぼくは片棒を担がないようにしよう。せめて、せめて。

  • 演説の天才といわれるだけあって、大衆心理の分析や政情に対する持論などを自信と説得力に満ちた言葉が延々と並んでいる。独特の言い回しに加えて、「大衆への宣伝は単純化した一つの主張を徹底的に繰り返さなければならない」という法則に従って同じ論に帰結することがらを繰り返し述べているため、ページを読み解くのにパワーがいる。

    あえてこの本を手に取るような人は、書いてあることが全て事実だと思ったりそのまま真に受けたりする人はいないだろう。ヒトラーの主義思想の片鱗がわかる資料として価値がある本。悪を見極め悪から身を守るには、悪を知らなければならないのだと改めて思った。

  • 昔、読んだ時はナンとなく難しい内容だと思い込んでいたんだけど。
    最近、本棚にあった、この本を何気なく開いたら、とても分かりやすく、感情に響いてくる文章で、引きずり込まれるように夢中になって一気に読んだ。

    ちょうど石原莞爾の『最終戦争論』や、片山ナントカ?の『未完のファシズム』を読み終えた直後であり、北一輝 の『日本改造法案大綱』を読んでる最中だったせいかもしれない。
    または、リフレーションに関する本をいろいろ読んでる最中だったからかもしれない。

    一言で言うなら、ヒトラーは天才だ。

    どういう天才かと言えば、メディアと大衆を操る天才。

    昔、電通から内定もらった先輩と飲んでたとき、彼が、電通に入社して富士山に登るまでに『聖書』と『我が闘争』を徹底的に読んでおけと先輩から薦められて今読んでる最中だ、と話していた。

    『聖書』は世界一のベストセラーで、そこには、売れる要素やキャッチーなフレーズや、ようするに宣伝広告のエッセンスが詰まっている。
    そして『我が闘争』には、いわゆる「B層」を操る魔術が詰まっている、ということだ。

    ヒトラーに比べれば、安倍のショボい人気なんて、やっぱりボンボンにすぎない。

    安倍ボンボンがやろうとしている日本国憲法の改悪案99条には

    「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる(後略)」
    とある。
    これは、ナチスの全権委任法と同じ。

    全権委任法は全5条から成る。
    前文:
    国会(ライヒスターク)は以下の法律を議決し憲法変更的立法の必要の満たされたのを確認した後、第二院の同意を得てここにこれを公布す

    ①ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外に、ドイツ政府によっても制定されうる。本条は、憲法85条第2項および第87条に対しても適用される。
    ②ドイツ政府によって制定された法律は、国会および第二院の制度そのものにかかわるものでない限り、憲法に違反することができる。ただし、大統領の権限はなんら変わることはない。
    ③ドイツ政府によって定められた法律は、首相によって作成され、官報を通じて公布される。特殊な規定がない限り、公布の翌日からその効力を有する。憲法68条から第77条は、政府によって制定された法律の適用を受けない。
    ④ドイツ国と外国との条約も、本法の有効期間においては、立法に関わる諸機関の合意を必要としない。政府はこうした条約の履行に必要な法律を発布する。
    ⑤本法は公布の日を以て発効する。本法は1937年4月1日と現政府が他の政府に交代した場合、いずれか早い方の日に失効する。

    日本国憲法の改悪案99条も、ナチスの全権委任法も、非常事態に立法府が行政府に立法権を委譲する法律である。

    しかし、安倍のようなバカボンボンには、ヒトラーがやったようなことは到底できないだろう。
    途中で、お腹が痛くなって、投げ出すだろう。

    ヒトラーは扇動の天才であり、広告の天才であり、彼の分析は恐るべき鋭さだ。彼はすばらしく明晰で、すぐれた戦略家で、行動力もあった。
    ただ、ユダヤ人虐殺が、結果的に、彼を殺した。

    大衆の間にくすぶる差別意識をうまく利用して扇動する手法をサル真似したのが、石原慎太郎とかいうサルなんだけど、あまりにサルすぎて話にならない。

    慎太郎とかいうアホを見てると、ヒトラーが述べた通り、日本民族はサル真似しかできねえ低級な民族なんだと、つくづく悲しくなる。

  • この本を読み終え
    「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
    ビスマルクのこの言葉は真理だと思いました。
     
    当時のドイツの状況は現在の日本と合致する部分が多いです。
    敗戦の誤った自虐主観、近隣諸国との緊張、歪んだメディア、
    いじけた平和主義、行き詰った経済。

    ユダヤという言葉を、韓国・中国と読み替えれば、ここに書かれ
    ている内容が恐ろしいほど、しっくりと心に入り込んできます。
    思わず拍手を送りなくなる自分がいます。
     
    ですが、私達は歴史を知っています。
    この書に踊らされた大衆が恐るべき独裁者を生み出し、
    それが未曾有とも言える破壊の嵐を生んだ事を。
     
    この本は現代の日本人が、読むべき一冊だと思います。
     
    それにしても、この本は難解で読み辛い。
    原文を直訳しているからかもですが、1つの文章に複数の
    主語述語が散らばっていて、内容の把握に骨が折れます。
    誰もがストレスなく読めるような意訳版を出して欲しいですね。
     

  • ヒトラー 民族主義的な国家観を論述した本。国家観、読書の方法、多数決(議会制)批判、大衆運動や宣伝のコツ あたりは 興味深く読める

    国家観
    *国家の権威は 自己目的にあらず
    *人間としての権利は 国家の権利を破る
    *経済観、経済的発展とは無関係
    *自己存在の目標を達成するための共同社会組織
    *民族的な有機体
    *全体のために個人を犠牲にする能力と意思が 国家を形成する
    *資本に対する国家の課題は 資本を国家の召使いにして、国民の支配者であると思わせないこと

    読書について
    *歴史を学ぶとは 〜歴史的な事件の原因となった力を発見すること
    *読書は 本質を保持し、本質でないものを忘れる
    *読書は それ自身が目的ではなく、手段である

    大衆、多数
    *大衆の心理は 中途半端なものに対して感受性が鈍い
    *多数はいつも愚鈍の代表であり
    *世論の大部分は 啓蒙によって呼び起こされる
    *偉大な運動はすべて大衆運動

    宣伝
    *宣伝は手段
    *宣伝は ただ大衆に対してのみ行う
    *効果的な宣伝は 重点を制限しスローガン化する

  • ペストと結核
    帝国、社会主義、民主主義
    単一民族国家・多民族国家
    経営者と労働者、労働階級
    宗派対立
    宗教と政治
    ドイツ、オーストリア、チェコ
    兵役忌避
    教育と洗脳
    「新聞」が人々に与える影響力
    異種交配

  • 本訳本1973(底本1925)年刊。

     言わずと知れたアドルフ・ヒトラーの手による著。饒舌だが、後述の理由から内容には深みも面白味もない。
     すなわち、➀②に関わるが、事実を示さずに決めつける。ユダヤ人=マルキスト等、②批判・反論する主張(特にシオニズムとマルキシズム)の内容・定義を示さず、どこが批判の中核か不明、③外見上の不潔さがユダヤ批判の骨格となるというような、不合理・意味不明な批判。④民族以外が批判の根拠となっていない。かつ民族を定義づけしない。文章でなく、演説重視で政治活動を展開してきた意味が良く判る。

     なお、宣伝に付き、ⅰ)対大衆。ⅱ)大衆の注意喚起を目的。ⅲ)知的水準は届けるべき大衆の最低級が判る程度に。ⅳ)学術的多様さを付与するのは誤り。ⅴ)内容は絶対・主観的・一方的。ⅵ)受け手の大衆は、冷静な熟慮ではなく、感情的に考え方や行動を決め、その感情は複雑ではなく非常に単純で閉鎖的。つまり正誤・肯否・真偽・愛憎などであって、愛憎相半ばする、部分的に正しいという発想ではない。とのこと(文意に即し改変)。
     客観主張という殻を被る様々な宣伝を見抜くためにも役立ちそう。

  • ヒトラーの言う、種の最高の能力とは何か。動物と人間との違いは何なのか。食料自給率が国の存続に大きな影響を及ぼすのは確か。議論が一か十かという極端で乱暴。狂信的オーストリア、ユダヤ、平和嫌い。欲しいものは力で手に入れる子供のような発想。イギリス崇拝?憧れすぎて嫌い?翻訳がまずい。ほぼ直訳のように感じる。一つのセンテンスの中に「わたしは」は3回もいらない。これはヒトラーのことだと書かなくてもわかるし、日本語とはそういうもの。結婚の目的は種と人種の増加及び維持のみで、女子は受動的部分に過ぎない、なんて現代では袋叩きに合いそうな論理。昔はよかったなぁというおじいちゃん的意見。ものすごく狭い視野で自己中心的な解釈の部分もありながら、俯瞰で物事を冷静に分析しているところもあり、この一つの作品の中で視点が定まっていないよう。だから人種の高等下等って何なのよ。

  • 生々しい。きれい事や抽象的なことばかり書いてるわけではない。どこまでがホントでどこまでが後で創ったことかわからんけど、底辺生活の体験と鋭い観察と考察はホンモノっぽい。こういう実体験の下地がないと大衆を扇動する説得力のあることは言えないのかもね。

  • 読了

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