古典文法質問箱 (角川ソフィア文庫)

著者 :
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  • / ISBN・EAN: 9784043260027

作品紹介・あらすじ

高校の教育現場から寄せられた古典文法のさまざまな八四の疑問に、例文に即して平易に答えた本。はじめて短歌や俳句を作ろうという人、もう一度古典を読んでみようという人に役立つ、古典文法の道案内!

感想・レビュー・書評

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  • 古典文法質問箱
    著:大野 晋
    角川ソフィア文庫 241

    薄いですが、難読書でした。

    もともと 「日本語の文法<古典編>」から、Q&A部分を抜き出したものとあります。ということは、古代日本語の、本質の概要を知っていないと質問ができないということです。つまり、本書を読むことは、文法<古典編>の基本的知識をもっていることが前提になっています。

    なぜ、古典を学ぶのか、

    詩であるとか、和歌や、源氏物語、のように、精密な日本語で書かれたものは、現代語に訳してしまうと、作者が表した非常に微妙な意味合いをうまく表せない。
    そういうものがすくなくありません。言葉は、それを使った人が使った意味・心情をそのまま理解することがいちばん大事なことです。

    また、日本語は、語尾まで、聞かないとわからない。その意味では、本書後段に、助動詞、助詞の複雑で繊細で、微妙で、膨大な解説を伴います。

    ■文法の基礎

    ・日本語は時代に応じて変化している

    ・ワ行 ヰ(ウィ)、ヱ(ウェ)、ヲ(ウォ) ⇒ ア行 イ エ オ の区別がなくなってきた
    ・サ行 サ・シ・ス・シェ・ソ ⇒ サ・シ・ス・セ・ソ
    ・ハ行 ファ・フィ・フ・フェ・フォ ⇒ ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ

    ・歴史的仮名遣いの4つの発音 アウ⇒オー オウ⇒オー エウ⇒ヨー イウ⇒ユー

    ・撥音、促音 は 平安時代から

    ・日本語の特徴 語幹の下にあるものをたして品詞がかわる
     ひかる ⇒ ひかり 語幹 ひか
     はぢ(恥) ⇒ はづ(恥づ)、恥ぢる、恥づれ 語幹 は

    ・御 の読み方
     ①み 御子、御言、御名 御輿、御霊、御岳、:天・天皇・神・仏に関する
     ②み+大 大御歌、大御神、:天皇や、神に関する語を強調
     ③おん、お 御曹司、御身 御前、御方:女性語
     ④ご 御殿、御廟、御免 :漢語
     ⑤ぎょ 御意、御製、御物:天皇に関する

    ・品詞の分類
     
     他の語と組み合わない ①感動詞(ああ、いざ、いな、おう)
     他の語と組み合う 
      自立語
       活用しない
        主題となる   ②名詞(花、兼好、二本、こと)
                ③代名詞(われ、なんじ、こ、いづこ)
        主題とならない
         他の語を修飾
                ④副詞(いと、ひとへに、さだめて)
                ⑤連体詞(ある、いはゆる、あらゆる)
         文と文の関係を示す
                ⑥接続詞
       活用する
                ⑦動詞(咲く、あり、信ず)
                ⑧形容詞(清し、美し、悪し)
                ⑨形容動詞(はるかなり、堂々たり)
      付属語
       活用する     ⑩助動詞(けり、ず、たり)
       活用しない    ⑪助詞(が、ば、ばかり、かな)

     ※活用があるのは、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞 の4つ

    ■用言

     用言;それだけで、述語になりえる 動詞・形容詞・形容動詞
     体言:自立語で、活用がなく、主語となる語 名詞・代名詞

    ・活用とは何か 用言と助動詞が起こす語形変化のことを指す
     基本語=語幹+語尾 語尾が変化する

     未然形 実際にはおきていない事実を述べるための用法
     連用形 用言に連なるための用法 
     終止形 文の終止に使われる用法
     連体形 体言を修飾するための用法
     已然形 すでにそうなっていることを表すための用法
     命令形 単独で言い切り、聞き手への命令を表す用法、命令の他、許容、放任を表す場合もある

    ・形容詞

     ク活用 高し(高し;〇、く、し、き、けれ、〇 もしくは、から、かり、〇、かる、〇、かれ)
     シク活用 楽し、いみじ(いみじ:〇、じく、じ、じき、じけれ、〇 もしくは、じから、じかり、〇、じかる、〇、じかれ、)
     見分け方 なるをつけると 上が、く となるのが、ク活用、しく となるのが、シク活用

    ・形容動詞

     名詞+助動詞(なり、たり)

     ナリ活用 明らかなり、愉快なり (なら、なり、なり、なる、なれ、なれ)
     タリ活用 平然たり、悠々たり (たら、たり、たり、たる、たれ、たれ)

    ・動詞

     正格活用
     ①四段活用 語尾がアイウエの4段に活用する形式 (咲く;か、き、く、く、け、け)
     ②上一段 語尾が、エ段1段に活用する形式 (着る:き、き、きる、きる、きれ、きよ)
     ③上二段 語尾が、ウ段、エ段、2段に活用する形式(起く:き、き、く、くる、くれ、きよ)
     ④下一段 語尾が、イ段+る、れが添加する形で活用する形式(蹴る:け、け、ける、ける、けれ、けよ)「蹴る」1語のみ
     ⑤下二段 語尾が、イ段、ウ段+る、れが添加する形で活用する形式(受く:け、け、く、くる、くれ、けよ)

     変格活用
     ⑥カ行 イ、ウ、オの三段の音からなり、ウ段音に、る、れ、オ段音によのついたもの(来(く):こ、き、く、くる、くれ、こ)「来」1語のみ
     ⑦サ行 せ、し、す、する、すれ、せよ と活用するもの 2語のみ (奏す:せ、し、す、する、すれ、せ)
     ⑧ナ行 ナ行における母音の添加(ナ・ニ・ヌ・ネ)と連体形にる、已然形にれの添加を合わせた活用(死ぬ:な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ね)「死ぬ、往(い)ぬ」2語のみ
     ⑨ラ行 四段活用ににているが、終止形がイ段(り)におわること(有り:ら、り、り、る、れ、れ)いわゆる、「有り、をり、はべり、いまそかり」の4語

    ■助動詞

    ・日本語は、肯定・否定・推量・断定はどの判断を文末で表現します。
    ・用言の活用形も使いますが、それだけは不十分であるため、助動詞をつかって、種々の細かい判断が必要となります

    ・動作が自然的か、作為的か
     る、らる 自然
     す、さす 人為、作為

    ・敬意の表明
     きこゆ、奉る 謙譲
     給ふ 尊敬
     侍(はべ)り 丁寧

    ・動作の進行、完了

     り 進行
     つ、ぬ 完了

    ・話し手の判断 
     ら、らむ、けむ 推量
     き、けり 過去
     ず、じ、まじ 否定
     ずき、ずけり 否定+記憶

    ・話し相手への働きかけ

     な、よ、や、か、かは、かし、ぞ、ぞよ、ぞかし、を 等の助詞



     意思の助動詞 む、まし、べし、じ、まじ
     受身の助動詞 る、らる、ゆ
     打消の助動詞 う、じ、まじ
     過去の助動詞 き、けり
     可能の助動詞 る、らる
     完了の助動詞 つ、ぬ、たり、り
     希望の助動詞 まほし、たし、
     使役の助動詞 す、さす、しむ
     自発の助動詞 る、らる
     推定の助動詞 らし
     推量の助動詞 む、むず、らむ、けむ、べし、めり、まし、らし、じ、まじ
     尊敬の助動詞 る、らる、す、さす、しむ
     断定の助動詞 なり、たり
     伝聞推定の自動詞 なり
     比況の助動詞 ごとし
     様態の助動詞 めり

    ・助詞

     助詞とは、関係づけをする語

     格助詞 体言を承けて体言にかかる の、が、つ
         体言を承けて用言にかかる を、に、へ、お、より、から、にて、して
     副助詞 用言の述事にかかり、その程度、状態を限定する だに、さへ、すら、のみ、ばかり、まで、など、し
     係(けい)助詞 用言の述意にかかり、文の成立の仕方に関わる は、も、ぞ、なむ、や、か、こそ
     接続助詞 句を承けて下文にかかる ば、で て、して、つつ、ながら と、とも が、に、を、も、ばど、ども
     終助詞 そこできれる、文を終了させる か、かな、が、がな、かし、なむ、ばや、かも、がも、な、ね、に、こそ
     完投助詞 かかる所なく投入される や、よ、を、ろ、ゑ、

    ■諸品詞・敬語・修辞

    ・形式名詞 本来の意味から転じて、形式的、抽象的に用いられるようになったもの
     とき、時間⇒場合
     ところ 場所⇒こと
     ため 利益⇒目的

    ・コソアド ⇒ コ・ソ・カ・イツ・ド
     ココ、これ、こなた、コチ、、ソコ、これ、ソナタ、ソチ、カシコ、カレ、カナタ、アナタ、アチ、イヅコ、コズレ、イズカタ、イヅチ、ドコ、ドレ、コナタ、ドッチ

    目次
    文法の基礎知識
    用言(形容詞・形容動詞)
    用言(動詞)
    助動詞
    助詞
    諸品詞・敬語・修辞

    ISBN:9784043260027
    出版社:KADOKAWA
    判型:文庫
    ページ数:304ページ
    定価:960円(本体)
    発売日:1998年12月25日初版
    発売日:2014年07月25日14版

  • 必携の一冊になってしまった。
    学生向けだけど、改めて「なぜそうなったか」に立ち返ることが出来た。

    「御」は、「お」なのか「おん」なのか「おほん」なのか「ご」なのか「ぎょ」なのか。
    ルビ振ってあるし、とか、古語辞典にはこうあるし、ではない根拠があって参考になる。
    「土左日記」はずっと「にき」だと思っていたけれど、促音便はこの頃では表記しないから「にっき」ではないかと言われ、なるほど……。

    また、助動詞「る」「らる」に何故色合いの違う四つの意味があるか、という問いにも、出来るは元々「出て来る」で、日本人にとっての可能は、自然の成り行きとして「現れ出て来る」から来ているためだとしている。
    す、すごないですか⁈

    もちろん全てを鵜呑みにするわけではないけれど、比較検討する上でこれだけ古典文法を網羅していただいていることは、力強い。

    最近、小松英雄を読もう!と意気込んでいた所に、また一人。。。
    時間がどれだけあっても、足りない。
    しっかり消化せねば。日々是精進也。

  • 古文の勉強をするのに一通り読んでみたが、日本語がタミル語と何かしらの系統関係にあるというアヤシイ学説が前提の解説がいくつかあって辟易した。

  • 私が持ってるのは古い表紙の。
    どこまでも苦手な助詞以外の範囲は分かりやすく、たぶんしっかりと理解できたと思う。同じことを何度でも繰り返し説明してくれるので、「また?」となる反面、理解に至れる。
    文体も読みやすく、整然としていて、文法嫌いの私にはありがたいばかり。
    形容動詞の論争がどういうことなのかやっとわかった。

  • 11/10/25、ブックオフで購入。

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著者プロフィール

1919-2008年。東京生まれ。国語学者。著書に『日本語の起源 新版』『日本語練習帳』『日本語と私』『日本語の年輪』『係り結びの研究』『日本語の形成』他。編著に『岩波古語辞典』『古典基礎語辞典』他。

「2015年 『日本語と私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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