精神の発見 (角川文庫 (6152))

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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043271023

感想・レビュー・書評

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  •  梅原猛の膨大な業績を一覧する初心者のために最初に読むにふさわしい名著。
     1970年4月から1970年12月に渡って「熊本日日新聞」に連載されていたコラムをまとめたものらしい。
     新聞連載コラムだから1回の分量はそう多くもなく、一般の人が読むコラムだから内容も専門的過ぎなく読みやすい。
     取り上げるテーマも哲学者らしく当時の時事問題について論じたり、梅原古代学のさわりについて集中的に論じたりバラエティに富んでいます。
     本コラムが連載されていたのは『隠された十字架-法隆寺論』(1972年)『水底の歌』(1973年)が出版される前のようです。
     発表後に大論争を巻き起こす異端の新説が地方新聞の連載コラムで触れられていたとは、なかなか贅沢な連載です。
     梅原古代学は膨大なもので読むのが大変ですが、ご本人が新聞コラムという形で的確にアウトラインを解説して下さっているのですから、読まないと損というものです。
     最近、元号改元に関して万葉集が話題になりましたが、本書では万葉集についても論じられています。
    「(正岡)子規によってつくられた価値基準に反抗して、もう一度、日本の美を『古今集』にもどって考え直せと論じた」
     
    「子規をはじめとする多くの明治以来の文学者は、万葉集を全く誤解してきたのではないか」
      
     また別のところでは 
    「言葉とは過去との関係において別の意味が付与されているのである。つまりここで言葉は、二重性をもっている」
     
    という指摘もされています。「令和」のもととなったエピソードが暗愚の「安帝」を批判しているという都市伝説を思うと、意味深です。
     最近梅原猛さんが亡くなられて、今まで読んだことなかったけどどれから読もうと迷われている方がおられましたら、間違いなく本書はおすすめです。
       https://diletanto.hateblo.jp/entry/2019/04/23/064644

  • 1970年から71年にかけて新聞に連載されたエッセイを収録しています。

    後に『神々の流竄』(集英社文庫)や『隠された十字架』(新潮文庫)にまとめられることになる日本古代史研究の成果の一端を提出した、比較的固い文章と、万博や三島由紀夫の自殺といった当時の事件についての所感が語られる比較的柔らかい文章が混在しています。

  •  梅原猛『精神の発見』は1985年が初版。
     「他者の生命の軽視」では、「現代文明の本質は、生命を大切にしない文明だと思う」(12p)と、言い切る。機械は壊しても組み立てなおすことがでkるが、人間と物質だけの世界に目をむけ「現代文明の結果は、一つの恐るべき世界をつくってゆく」。
     「進歩とかわらないもの」は、「人間は互いの共通性を信じるものができた」と書いて、同時代における人間相互の共通性と相異なる時代における人間の共通性を指摘する。

     本書は、1970年4月から71年12月にかけ、「熊本日々新聞」に連載したもののを文庫本で刊行されたとある。 
     偏差値世代は、同世代のなかでの席次を懸命に確認するが、他者が自分の年代のときに《なにをしていたか》、関心をもとうとしないとも言われる。
     現代は、進歩の思想を優先させ、現代文明は「永遠なもの、変わらないものへの新港を失っている」(17p)とする。

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著者プロフィール

哲学者

「2020年 『完本・哲学への回帰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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