八月の博物館 (角川文庫)

著者 : 瀬名秀明
制作 : 影山 徹 
  • 角川書店 (2003年6月25日発売)
3.37
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  • 本棚登録 :420
  • レビュー :55
  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043405060

作品紹介・あらすじ

終業式の帰りにトオルが足を踏み入れたのは古ぼけた洋館。そこで不思議な少女・美宇と黒猫に出逢う。「ミュージアムのミュージアム」というその奇妙な洋館の扉から、トオルは時空を超え、「物語」の謎をひもとく壮大な冒険へと走り出した-。小説の意味を問い続ける作家、小学校最後の夏休みを駆け抜ける少年、エジプトに魅せられた十九世紀の考古学者。三つの物語が出口を求め、かつて誰も経験したことのない感動のエンディングへと至る!エンタテインメントの常識を覆した話題作。

八月の博物館 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  僕がこの本に出会ったのは、中学二年生の時です。それから何度も何度も読み返し、高校二年生のときに五十回を超してからは、もはや、数えていません。
     僕が小説を書くことに興味を作ってくれた大切な一冊で、いまでも、どうしても書けないっていうときの支えになってます。
     三つの物語が交錯し、たしかに物語はとても難しいかもしれません。でも、その三つの物語はお互いに干渉し合い、最終的にひとつの物語になります。それはまるで、どこからが空想で、どこからが現実なのか、分からなくなってしまう。そういう感覚です。まさに、「なんだって!」です。
     ちょっと分厚い本ですが、この面白さが癖になるとあっという間の時間です。だれもが好きになれる作品ではないですが、僕が自信を持っておすすめする一冊です。

    p.s.
     つい先日、上野の国立科学博物館で、大英自然史博物館展をやっていて、僕も見に行きました。そこにあった様々な展示品は、まさにこの物語の中で描かれていた「博物館の歴史」でした。国立科学博物館は作中にも登場します。フーこの振り子も、今も変わらず、僕が「地球の自転の音」を聞きに来るのを待っていました。物語を追体験しているような、貴重な体験でした。

  • 再読。どうしようもなく好きだ。
    理屈の通らないところもあるし、そんなのあり?ってところもあるし、ストーリーも描写も、決して完成度の高い作品とは言えないとは思う。
    思うのだけれど、やはりどうしようもなく好きなのです。
    夢見がちな少年期のわくわくするような冒険譚であると同時に、大人な自分が忘れがちな、あの頃空想した自分が主人公の物語。瀬名さんが今も追い続けている「物語」についての原型が、この作品にはすべて詰まっていると思うのです。普段は行かない通学路のさらに先で巡り合った謎の博物館と謎の少女美宇。友人啓太と異性鷹巣との人間関係。時間を超えて出会う遺跡発掘家のマリエットさんに、古代エジプトの聖牛までもがからみ、亨の小学校最後の夏休みは彩られ、忘れられない記憶を残す。そしてその記憶は、読者の僕にもまた、自分が少年期だった頃の風景を思い起こさせるのです。

  • 小説家志望の小学生トオルがミュージアムのミュージアムという全てのミュージアムに通じている場に踏み込んだことより始まる物語。そこに小説の意味を問う作家と、19世紀のエジピトで活躍する考古学者の物語が絡み合う。
    ミュージアムはありとあらゆるものが集まっている。しかしただ単に集めて並べているだけでなく、そこに見せ方の工夫が為されている。その見せ方によって物語が生まれる。物が語るから物語。そのことを思い知らされます。
    エジプト考古学者の話は亨の冒険に関わるものなので、それが多重的に描かれるのは判ったのですが、作家のパートでメタ・フィクション的構図を示された時、これは物語が創られることの意味合いを説明するにしてもちょっと興醒めだなと思っていました。わざわざ説明しなくても冒険を通じてそれが見えてくるだろうと。しかし終盤の展開に至り、なるほどこれは必要な要素だったのだと膝を打ちました。これは物語を紡ぐ人たちへの応援歌にもなる物語だし、物語を読む楽しみを再確認させてくれる物語でもあります。
    いやでもね、そんなこと全部無視して「小学生最後の夏休みの冒険」というだけでも充分面白いんですけどね。

  • ファンタジーSFの大長編。小学生の亨、エジプト考古学者のオーギュスト・マリエット、そして私。この3人の主人公が綿密に絡み合う物語は絶品である。特に亨視点での物語は純粋にファンタジーとして面白い。エジプト考古学に関する描写もかなり詳しく、相当な手間がかかっているように思える。ラストシーンはメタフィクションの応酬で内容が難しく、人によってはかなり困惑すると思う。しかし多くの読者が亨少年の大冒険を読み、彼の「小学生最後の夏休み」に共感・懐古できるのではなかろうか。

  • 不思議な博物館に迷いこんだ少年・亨、創作に行き詰まった作家、19世紀の考古学者の三人の視点で物語が進んでいきます。
    不思議な博物館は、今までの世界中のミュージアムとつながっていて、そこから亨と、博物館で出会った不思議な美少女の冒険が始まるのです。
    そこに、作家の物語、エジプト考古学者の物語が絡んできて、現在と過去、虚構と現実が入り乱れて、壮大なストーリーに、夢中になってしまいました。

    エジプトの遺跡の事等全く知識がないので、読んでもほとんど意味が分からず、またミュージアムのカラクリも、ご都合主義というか、行き当たりばったりで設定変わっていってるような…いまいち、まとまりがないように感じる部分もあったのですが、博物館やところどころに挟まれるエジプトの描写が魅力的で、引き込まれました。

  • 自分は決して理系の人間ではない。
    だから、『パラサイト・イブ』も『BRAIN VALLEY』も中学生の頭には、ポカンの一声だった。
    だが、文庫本570ページに及ぶ長編を食事も忘れ、文字通り高一の夏休みの二日間飲まず食わずで読み切ったのは、生涯この作品が最初で最後だろう。

    その作品が『八月の博物館』である。

    終業式帰りに「ミュージアムのミュージアム」という奇妙な館を見つけた小学生・トオル。
    エジプトに魅せられた十九世紀の考古学者オーギュスト・マリエット。
    小説とは何かを問い続ける理系作家。
    三つの話がそれぞれにスタートし、やがて“物語”の名の元に“同調”する。

    不思議な少女・美宇と黒猫・ジャック。謎の紳士リチャード・ガーネットに満月博士。
    幼馴染み、啓太と鷲巣。恋人の有樹。
    ハッサン、カンピュセス、カーとバー、そしてアビス。


    メタフィクションという言葉がある。だが、あくまで“物語”を神聖視し、出会った“物語”と生み出した“物語”、そして“物語”の中に生きるということを、ここまでファンタジックに書ける作家は、瀬名秀明しかいない。

    それは理系作家としての顔ではなく、ドラえもんのSF(すこしふしぎな)感性に触れてきた、物語作家としての顔が為せた作品である。


    物語にははじまりとおわりがある。
    終わってしまえば、その後には何も続かない。

    でも、あの八月の二日間。
    『八月の博物館』に出会った時のトキメキは、ずっと忘れない。

  • 博物館に行きたくなった

  • 素敵なタイトルに惹かれて購入。
    博物館を展示する博物館という発想は面白いし、博物館、美術館好きなら楽しめそうだなと思いましたが、ちょっと説明がくどいかな~。
    いろいろ博物館を紹介したい気持ちは分からないでもないけど。
    その内容とあわせて「オーギュスト・マリエット」の伝記的な要素、タイムトリップ、現在、過去、未来と時間軸の移動とちょっと内容盛りだくさんにしてしまった感があり、ラストまでストーリーを引っ張っていくリズムが乱れたように感じました。正直読みにくいです。
    作品中に出てくる「見せ方の工夫」をもっと工夫してほしかった。
    映像化したらけっこうおもしろそうなので、映像化に期待します。
    「アイーダ」が出てくるとは思わなかったので、目からうろこ!でした。

  • この本を読んで、国立科学博物館に入り浸った大学時代。

    未だに、フーコーの振り子の前でぼーっとするのが大好きです。
    久々に読み返し中。

  • この『八月の博物館』にはある重大な秘密が隠されています。その秘密が、私達がこの本を開かなければいけない、そしてラストまで読み終わらなければいけない理由です。

    その秘密をこの物語の中に見つけた時、私もこの冒険の中にいること、登場人物であること、この物語に組み込まれた存在であることを知り、ぞくぞくしました。その秘密は読者になることでしかわかりえないものでした。
    この『物語』は「書かれること」「読まれること」そして「読むこと」ではじめて「物語」になります。そしてそのために、この『八月の博物館』は書かれました。

    夏の恐竜展に出かけた小説家は展示されたフーコーの振り子に強烈な既視感に襲われ、少年時代のふしぎな夏を思い出します。

    小学校6年生の夏休みを過ごす小説家を夢見る亨はある日ふしぎな博物館と出会います。ふしぎな少女美宇と今にも動き出しそうな恐竜の骨、目の前を通り過ぎる魚群、何もかもがリアルに迫る展示物を、扉から扉、博物館から博物館、美術館から美術館、そして古代の神の化身アピス像をめぐり古代エジプトを駆け巡ります。

    そんな少年時代を題材に小説を書き進める小説家は自らの書く小説に重大な秘密を発見します。物語の作為性に疑問を感じ、押し付けの感動を嫌い、現実と物語のはざまで物語を書くことに悩む小説家は物語を書くことによりこの物語の秘密に気付き、自らの役割を果たそうと筆を走らせます。

    少年の亨がなぜ博物館にくる運命に至ったのか、そしてなぜ小説家はあの夏を題材に小説を書いたのか、そして『八月の博物館』はなぜ書かれたのか、なぜ読者である私たちは今、本のページをめくり物語を読んでいるのか。『物語』とはなんなのか。

    作中小説家はアラジンの名曲になぞらえ、作者と読者は「作者→読者」へ一方通行の感動をあたえるのではなく両者は同じ地平に立ち、同じ世界を見、感じ、感動をわかちあう存在だと語りかけます。飛行機の窓からのぞむ、雲の切れ間から射す太陽。読み手である私達もまた「登場人物」であると思うと、一気に物語が私達に多くのことを語りかけてきます。

    ミュージアムは展示品を展示する場です、しかしそれだけではミュージアムは機能しません。ミュージアムは展示場であると同時に、展示品の物語の語り手であり私達はその物語を読んでいます。

    とにかく猫!何はなくても猫!ジャック!ジャックかわいいやつめ。ぬこぬこ。

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