アンネ・フランクの記憶 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 561
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043410033

作品紹介・あらすじ

十代のはじめ『アンネの日記』に心ゆさぶられ、作家への道を志した小川洋子が、アンネの心の内側にふれ、極限におかれた人間の葛藤、尊厳、信頼、愛の形を浮き彫りにした感動のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 著者小川洋子氏が、「アンネの日記」を初めて読んだのが中学1年生の時だったそうだ。それからご自身も日記の中で、自己表現することを知り、それが作家業へとつながったと述べられている。

    著者は、自身の心の友であるアンネ・フランクの生涯に触れることのできる地を実際に訪れ、アンネを実際に知る人々と会って対話をし、最後はアンネの命を奪ったアウシュビッツを訪れるという8日間の旅を計画した。

    アムステルダムで、アンネがまだ少女として、そして家族の一人として暮らしていたアンネ・フランク・ハウス(隠れ家)を実際に訪れる。

    また、そこであらかじめアポイントをとっていた二人の人物に、取材というより会って対話をする。

    対話の相手の一人は、「アンネの日記」の中でヨーピーとして登場するアンネのユダヤ人中学時代の友人。もう一人は、「思い出のアンネ・フランク」の著者であり、アンネの父オットーの会社に就業してたというミープ・ヒースさん。

    アンネ・フランク・ハウスを訪問し、アンネを知るお二人との対話をしているときの著者は、ひたすら心の友アンネに対する想いを深めたいという気持ちが表れている。本書の中では「陽」の部分だ。

    本書の読者である我々も、著者とともに、明るいイキイキとしたアンネの生活を感じ取ることができる。

    しかし、後半アウシュビッツを訪れるところからは、一気に「陰」へと転ずる。ここからは、アンネの存在感は消えてしまい、ナチの人種差別による強制収容・大量虐殺の悲惨な光景が、著者の施設訪問とレポートによって再現されるのである。

    著者の目に入る「悲惨」を伝える文章から、イメージは再現されるものの、より理解を深めるため、その文章に沿ってインターネットの写真を検索しながら読み進めることにした。

    例えばこういう文章があった。
    「ただ単に人を殺すだけでなく、人間の存在を根こそぎ奪い去っていったナチのやり方がこの小さな子供用品を見ていると、わずかでも実感できる気がする。名前、メガネ、髪の毛、ブラシ、尊厳、人形、命、彼らは徹底的に合理的にすべてを強奪した。」

    強制収容所では、名前を登録され、メガネを外され、髪の毛を削がれ、所有のブラシやバッグやくつなどがすべて捨て去られ、それらが大量に廃棄された想像しがたい山の光景をインターネットの写真でも確認することができる。

    何の罪もない人々や、アンネの家族のように普通に幸せに暮らしていた家族から、尊厳を奪い、命を奪う。無残に、しかも機械的に奪っていったのだ。

    「一人の少女の命に思いをはせる心があれば、ナチのような暴虐はありえない」というような、著者のメッセージが感じられた本であった。

  • 「アンネの日記」は完全版を読んでいて、あまりにも生き生きしているので自分の友人のように感じ、その子が理不尽にも命を奪われたことが悔しくてならなかった覚えがある。そのアンネの足跡を小川洋子さんがたどる。これは読まねばならないでしょう。
    アンネにまつわる人々を訪ねていく様子を、比較的静かに淡々と描いてると思うんだけど、グッと来るものがあり、涙が知らず浮かんで来ることが多々あった。悼む気持ち。労る気持ち。でもきっと当事者の心の傷みを完全には理解できないという、負目のようなもの。それらが深い感情となって、胸を打つ。
    訪ねた先で小川洋子さんが尋ねる質問は、アンネの気持ちに寄り添ってないと出ないような内容で、だからこそ、ただの取材では聞き出せないようなこと、見せてもらえないようなものを見せてもらえているように感じる。お互いの友人を懐かしむように。

    その後、アンネをたどる旅はアウシュビッツへと向かう。この、人間の残忍さを凝縮したようなアウシュビッツ。人間って、ここまでしてしまうのか、とその事実に慄いてしまう。それを無かったことにせず、残して対峙し続けているところに救いがあるとも言えるけど…。一方で、アンネの周囲には、どうにかして友人を助けようとして奔走し心を砕いた人がいる。この人間の両極。両極は、表裏でもあるだろうし、いつ自分がどちらに転ぶかもわからない。恐ろしいけれど、この本を読むとそう感じます。

    願わくば、アンネの周囲の人たちのように暖かく強く、誇りを持って生きられますように。私の友人が、二度と理不尽に命を奪われることのありませんように。
    そう願う。

  • 「アンネの日記」に続いて、小学生ぐらいの頃に読んだ。その後、大学生ぐらいになってから「博士の愛した数式」を読んで、同じ小川洋子さんが書いたものだと知った。そう思って読んでみるとまた違った感じがありそうなので、もう一度読みたい本。

  • 途中から著者とともにアンネフランクについて知る旅に参加しているような気分になりました。ドイツとオーストリアは訪れたことがあるので街並も想像しやすかったです。それは決して"楽しい旅行"ではありませんでしたが、アンネフランクという人物をいままでのイメージであった「ナチスの被害者」としてではなく、ひとりの少女として向き合わせてくれる有意義な旅行でした。著者の人物・建物・景色etcの描写がとても素晴らしく、著者のみている世界を飛び越えてアンネがみていた世界も感じることができました。

    思い返してみると小学生の頃図書館で、アンネフランクの漫画版の伝記を読んだのが彼女との初めての出会いでした。しかしその時は「かわいそうな女の子」という印象しか持てず、彼女の文才や豊かな感受性には気づくことができませんでした。だからこそ今回の旅に出発して、著者がもっているアンネに関する豊富な知識を得つつ、アンネの新たな一面をみつけることができてよかったです。

    偶然にも私の祖母はアンネと同級生。誕生日も一ヶ月ほどしか変わりません。今日祖母の横顔を見つめながら「ああ、アンネも生きていたら私の歳くらいの孫がいたのかもしれないなぁ」と考えてしまいました。祖母からは戦時中の話を何度も聞いたことがありますが、同時代にヨーロッパでアンネが生きていたと考えるとなんとも不思議な気持ちになりました。

  • 小川洋子さんが、ものを書くということの力を見出す源となった、アンネ・フランクの日記。そのアンネの足跡を辿ってゆく旅の記録。小川洋子さんの視線から、アンネを捉え直すことができて、とても興味深い。日記をもう一度読み直そうと思う。

  • 写真とかあるわけじゃないのに、想像できる
    中学の頃朝の読書タイムの時、こればっかり読んでた

  • 6/22読了。小川さんと一緒にアンネの記憶をめぐる旅をしてきた気分。文章から「言葉を綴るのが好きな少女」だった小川さんのアンネへの思い入れの深さがひしひしと伝わってくる。アンネの日記をもう一度読み返したくなった。

  • 欧州を訪問、アンネの足跡をたどり、彼女の家族らを支えた人々から話を聞いた著者。そこから生まれたのが『密やかな結晶』。

  • この『アンネ・フランクの記憶』は小川さんがアンネの生きてきた跡を辿っていくエッセイだ。
    フランク一家の隠れ家や生家を順にまわって、その途中でアンネの友人やフランク一家を支援した女性と会い、アンネのことや当時のことを聞いたりしていく。

    アンネが日記の中だけでなく、実際に生きていたことが感じられた。それが嬉しかった。
    だけどそのあとのアウシュヴィッツ博物館で小川さんが見たもの、感じたものが本を通して呼吸が乱れるほど伝わってきた。本を持つ手に力が入り、息が荒くなって、喉の奥がきゅーっと締まっていく、本を閉じて深呼吸をしてまた開く。それを繰り返さずにはいられなかった。
    人間の尊厳を奪い、殺していく、どうしてこんなに惨いことができたのか分からない。

  • ちょっと期待はずれでした

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著者プロフィール

1943年 鹿児島県生まれ
1974年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位
取得退学

主な訳書
テオプラストス『植物誌1』(京都大学学術出版会)
フィンレイ編著『西洋古代の奴隷制』(共訳、東京大学
出版会)
クラウト編著『ロンドン歴史地図』(共訳、東京書籍)
ストライスグス『ギリシア』(国土社)

「2015年 『植物誌2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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