刺繍する少女 (角川文庫)

著者 : 小川洋子
  • KADOKAWA/角川書店 (1999年8月24日発売)
3.45
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  • レビュー :159
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043410040

作品紹介・あらすじ

母がいるホスピスで僕は子供の頃高原で遊んだ少女に再会、彼女は虫を一匹一匹つぶすように刺繍をしていた-。喘息患者の私は第三火曜日に見知らぬ男に抱かれ、発作が起きる-。宿主を見つけたら目玉を捨ててしまう寄生虫のように生きようとする女-。死、狂気、奇異が棲みついた美しくも恐ろしい十の「残酷物語」。

刺繍する少女 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 読みたい新刊がないときは、読みもらしてる小川洋子を補完。これは比較的初期の短編集ですが、いかにも小川洋子らしいモチーフ満載で安定感抜群でした。

    お気に入りは、謎めいた「収容所」へ入る条件として耳の奥から「ぜんまい腺」を取り出さなくてはならない『森の奥で燃えるもの』、自分がどこかの国の王女様だと思い込んでいる老女と彼女に仕える家政婦の狂気『ケーキのかけら』あたり。

    ゆきずりの他人の親切でふいに救われる『キリンの解剖』と『トランジット』も良かったなあ。前者は堕胎手術を受けた女性がジョギング中にクレーン工場の守衛さんに助けられる話、後者はナチスドイツの時代にユダヤ人だった祖父を匿ってくれた家を孫が訪れる話。とくに後者は、アンネ・フランクについての著書もある作者の思い入れを感じました。

    ※収録作品
    「刺繍する少女」「森の奥で燃えるもの」「美少女コンテスト」「ケーキのかけら」「図鑑」「アリア」「キリンの解剖」「ハウス・クリーニングの世界」「トランジット」「第三火曜日の発作」

  • 何度目かの再読ですが、今回も面白かったです。小川洋子さんは長編も短編も大好きです。奇妙さや狂気が、どのお話からも静かに漂ってきます。時に残酷な描写でも、ひっそりと感じられます。これまで書いてこなかっただけで、「ケーキのかけら」が大好きなのを発見しました。「森の奥で燃えるもの」の、時間から離れた不思議な世界観も好きでした。「キリンの解剖」「トランジット」も好きです。最近、本格的に喘息を発症したので「第三火曜日の発作」を身近に感じます。こんなに密やかな時間は過ごしませんが…。

  • 私だけかもしれないけど、小川洋子の小説を読んでいると、無音のホールの中心で一人きりで食事をとっている姿を思い浮かべてしまう。料理は冷めている。私の腰掛けている椅子は冷たい。
    私はできるだけ音を立てずに噛もうと、神経を顎の筋肉へ集中させるのに、不快な咀嚼音は私の口腔から脳に直接届いて、口を完全に閉じていても空間全体に響きわたっていくから、うんざりした私は食べるのをやめようかと思うけど、もう二度とそこへ行きたくないとは思わない。

    人からすれば歪で異常に見える。著者の解像度の高いレンズ越しに観ると、純度が高すぎるゆえに手に余る情念や執着心を狂気と呼ぶのかもしれない。最小限の構成要素にも似たそれ。
    《2015.07.01》

  • 10の短編からなる「残酷物語」
    小川さんワールド

    オカルト、では全くない
    薄気味悪い、とは少し違う
    不気味、ともちょっと違う
    子どもみたいな感想になるけど、きれいなのに気持ち悪い

    日常と非日常の交錯、歪み
    後味が良いのか悪いのか、なんとも言えない、静かで涼やかなのに目を背けたくなるような恋愛

  • 酒井駒子さんの装画が素敵すぎて衝動買い。写真と実物は異なります。奥付の日付が今年の1月だったので、どうやら新装版になったようだ。

    冷たい気配が漂う短編集。
    あまりにも美しいものが、時に近寄りがたい雰囲気を纏っているのと同じような感覚だろうか。
    ページを捲るたびに、行間に漂っている「死」の気配がぽろぽろと零れ落ちてくる。
    淡々として端正な描写の奥で、「ああ、でも最後には、きっと恐ろしい裏切りが待っているに違いない」という予感に息が詰まる。
    なんだかもう、「恐ろしいものを見てしまった」、という読後感だ。

    短編集だけどちびちび拾い読みをしないで、ぜひ全篇をとおして読んでほしい一冊。
    このただならぬ気配と緊張感に、どっぷり浸かってみてほしい。
    戻って来られなくなってしまう危険性は大いにあるが。

  • なんと美しい残酷物語。
    特に「図鑑」は金井美恵子の「愛の生活」を彷彿させる。
    小川洋子は、残酷な事、グロテスクな事を美しく丁寧な描写で書くのが本当に得意ですな。
    今回も小川洋子ワールドに浸らせて頂きました。
    トランジット、図鑑が特に好き。

  • どこに収着するのか予想できない。

    小川さんの描く登場人物たちの動作の描写、言葉の並べ方が優雅で独特。
    残酷でグロテスクな内容だけど、品があり、美しくも感じる。
    この独特の世界観を味わうことに趣を感じる。

    物語としては「美少女コンテスト」が特に気に入った。
    「第三火曜日の発作」。発作を美化して描かないところに共感した。人が離れていく心理がリアルだと思う。

  • 腐敗しない不気味で清潔な屍体のようだ

  • 2008年11月9日~9日。
    全く期待していなかったのだが。
    読みやすいし面白い。
    所々村上春樹を思い出させるが、気にはならない。
    この作家にもはまりそうだ。

  • 少し艶っぽくて、ブラックな短編集です。
    前に書かれた作品なので、「看護婦」や「助教授」という言葉が出てきます。

    ◆刺繍する少女
    表題作。
    末期ガンを患い、死を迎えるだけになった母親の付き添いで、主人公はホスピスに泊まる。
    そこで、子供時代に別荘先で会った女性と再会する。
    彼女は昔と変わらず、刺繍をしていた。
    女性はベッドカバーの刺繍が完成するまでホスピスに通うようだが…。

    彼女と会う時は、死が身近にあった。
    今回も例外ではなく、母親が亡くなったと同時に彼女が別れを告げてくる。

    女性の正体は死神なのかな。
    「世にも奇妙な物語」に出てきそうな話だと思いました。

    ◆森の奥で燃えるもの
    主人公が収容所に入ります。
    罪人なのかと思っていたら、自分の意思で来ているようです。

    収容所に入るには、耳の中にある「ぜんまい腺」を取らなくてはならない。
    収容所は静かで、ひと通りの設備が整っていた。

    収容所内にある炎は、どれも青くなる。
    そのことが気になっていた主人公だったが、森で赤い炎を発見した。

    正体は、「ぜんまい腺」を燃やした炎だった。
    「ぜんまい腺」はシャーレに入れて保管されていると思っていたが、実は捨てられていたことを知る。

    主人公は登録係の女性に惹かれるが、彼女は仕事で収容所にいるだけで、いつかは帰ってしまう。
    「ぜんまい腺」は時間を司るもので、それを取らないと永遠の一瞬を生きられない。
    ということは、収容所の時は止まっているのかな?

    ラストで主人公は、女性の「ぜんまい腺」を取ってしまいます。
    女性は、ハナから主人公と結ばれたいとは望んでいなかったのかしら。
    「いつかはここを去る」とハッキリ言っていたからね。
    女性は「ぜんまい腺」を取られたことに気付いたら、どうするんだろう。
    案外、アッサリと事実を受け留めるかもしれませんね。

    ◆美少女コンテスト
    主人公は、自分を美少女とは思っていない。
    しかし、母親は主人公を可愛らしく見せようと躍起になっていた。

    主人公は赤ちゃんコンクールで優勝したことはありますが、それが自慢になるかと言われると微妙ですよね。
    本人は物心がついていなかったから実感がないでしょうし、周りも「カワイイデスネ」以上のことはコメントしにくいと思います。

    主人公は、美少女コンテストに参加することになった。
    当然ながら、母親はノリノリである。

    控室に、目を引く少女がいた。
    美少女ではなくて、服装は地味、付き添いの人もいなくて独りきりだった。
    隣り合ったこともあって話し掛ければ、華やかな舞台の裏ではふさわしくない内容を聞かされる。

    ワンコの死>美少女コンテストなのか。
    そりゃあショッキングだし、ワンコが可哀想だけどさ。
    それならば、誰がエントリーしたのかしら。
    女のコ自らしたとは思えないし。

    主人公は優勝出来ませんでした。
    しかも言い付け通りにしかなかったので、お母さんはおかんむりです。

    ◆ケーキのかけら
    主人公は、泊まり込みでアルバイトをすることになった。
    仕事は、助教授の叔母の持ち物を処分することである。

    叔母さんは自分を王女様だと思い込んでいて、家政婦に色々な物を作らせたり取り寄せたりしています。
    服や装飾品はどれも安物で、趣味が悪いです。
    それらを寄付すると叔母さんに言い聞かせながら、捨てていきます。

    用意されたケーキを食べた叔母さんは、家政婦に浴室ヘ連れて行かれる。
    主人公が叔母さんが可愛がっていた亀をつつくと、先程まで動いていたのに死んでいた。

    亀はケーキの欠片を食べていた。
    叔母さんは、毒入りケーキを食べさせられたのかもしれない。
    …という疑惑が湧いたところで、物語は終わります。

    叔母さんには付き合っていられないと思ったんでしょうね。
    助教授の指図か、家政婦の自主的行動かは分かりませんが。
    それならば、二十五年も我慢しないか。

    ◆図鑑
    この作品集の中では、一番グロい内容です。
    冒頭から寄生虫ネタですから。

    主人公には旦那や娘がいるが、作家と逢瀬を重ねている。
    作家も妻子持ちだった。

    主人公の作家に対する執着心が凄まじいです。
    「そこまで惚れる程の男か」と思ってしまいました。

    バレエ教室で、作家が娘の着替えを手伝う姿に嫉妬したり。
    作家のワープロに「きせいちゅう」と入力しまくったり。
    最後は、作家に寄生したいと望んで、自分の眼球を取ってしまいました。
    色々な意味で痛い話です。

    ◆アリア
    主人公は毎年、叔母の誕生日を祝っている。
    叔母は以前、プロの歌手としてイタリアに渡っていた。
    今は小さな村に住み、化粧品のセールスをしている。
    主人公は、彼女と結婚寸前までいっていたが別れてしまう。

    叔母は華々しい人生を送っていたが、元旦那の暴力によって喉を潰されていた。
    誕生日の締めに、叔母は歌う。

    サラサラとした読感のお話です。

    ◆キリンの解剖
    堕胎手術をした主人公は、ジョギングをはじめる。

    ある日、主人公は無茶な走りをして、工場の前で倒れてしまった。
    主人公は工場の守衛さんに助けて貰う。

    守衛さんは、本日付けで退社するらしい。
    主人公は工場の中を見せて貰うように、守衛さんに頼む。

    ジョギングは、自分を傷め付ける行為に思えます。
    物語は淡々としていますが、内にある深い後悔が見えるようです。
    どうでもいいことですが、キリンの舌は黒かったと記憶しています。

    ◆ハウス・クリーニングの世界
    主人公は、ハウス・クリーニングのアルバイトをしている。
    本日派遣されたところの依頼主は、華奢な女性だった。
    彼女は、ずっと自分の仕事を見ている。

    話が進むにつれて、「この女、怪しいな」と思えてきます。
    赤ちゃんの世話は乳母がしているって、どこの金持ちだよ。
    しかも、赤ちゃんが泣いているようなのに、心配する素振りを見せません。
    本当に乳母がいるのかしら。

    家具で隠された場所の汚れは特に酷いです。
    その正体が生々しいの何の。
    ハエの体液やら、旦那の精液やら。
    いちいち教えながら消しておしまいって、どんなプレイだよ。

    ◆トランジット
    主人公は、祖父の母国であるフランスに向かった。
    祖父はユダヤ人で、強制収容所からの生還者だった。
    祖母からは、祖父の過去について色々と聞かされている。
    しかし、祖父自らが話すことはなく、ただただお菓子を作り続けていた。

    祖母の話を聞くと、祖父を匿っていた先のおかみさんには良い印象がない。
    でも、実際にフランスへ行けば、おかみさんは祖父が残していったショールを大切にしていた。
    どう考えても、祖父を密告したようには思えなかった。

    お婆さんも女ですね。
    おかみさんに嫉妬していたのかな。

    搭乗口で話した男の荷物の正体は木馬でした。
    もっと怪しいものかもしれないと疑った自分が嫌になります(笑)

    ◆第三火曜日の発作
    主人公は酷い喘息を持っているので、ずっと家にこもっている。
    作家の年表を見るのが好きで、様々な人間を装って病院が発行している機関誌に投稿していた。

    主人公は第三火曜日になると、特急列車に乗って大学病院に通う。
    列車内でのハプニングがキッカケで、宝石商の男と話すようになった。
    肉体関係になるが、逢瀬中に主人公が発作を起こしてからは男が姿を見せなくなる。

    怖くなったんでしょうね。
    喘息の発作は辛いし、傍から見ていても辛いだろうから。
    それでも、宝石商の男は体目的にしか思えません。

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