刺繍する少女 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 1377
レビュー : 161
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043410040

作品紹介・あらすじ

母がいるホスピスで僕は子供の頃高原で遊んだ少女に再会、彼女は虫を一匹一匹つぶすように刺繍をしていた-。喘息患者の私は第三火曜日に見知らぬ男に抱かれ、発作が起きる-。宿主を見つけたら目玉を捨ててしまう寄生虫のように生きようとする女-。死、狂気、奇異が棲みついた美しくも恐ろしい十の「残酷物語」。

感想・レビュー・書評

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  • 読みたい新刊がないときは、読みもらしてる小川洋子を補完。これは比較的初期の短編集ですが、いかにも小川洋子らしいモチーフ満載で安定感抜群でした。

    お気に入りは、謎めいた「収容所」へ入る条件として耳の奥から「ぜんまい腺」を取り出さなくてはならない『森の奥で燃えるもの』、自分がどこかの国の王女様だと思い込んでいる老女と彼女に仕える家政婦の狂気『ケーキのかけら』あたり。

    ゆきずりの他人の親切でふいに救われる『キリンの解剖』と『トランジット』も良かったなあ。前者は堕胎手術を受けた女性がジョギング中にクレーン工場の守衛さんに助けられる話、後者はナチスドイツの時代にユダヤ人だった祖父を匿ってくれた家を孫が訪れる話。とくに後者は、アンネ・フランクについての著書もある作者の思い入れを感じました。

    ※収録作品
    「刺繍する少女」「森の奥で燃えるもの」「美少女コンテスト」「ケーキのかけら」「図鑑」「アリア」「キリンの解剖」「ハウス・クリーニングの世界」「トランジット」「第三火曜日の発作」

  • 何度目かの再読ですが、今回も面白かったです。小川洋子さんは長編も短編も大好きです。奇妙さや狂気が、どのお話からも静かに漂ってきます。時に残酷な描写でも、ひっそりと感じられます。これまで書いてこなかっただけで、「ケーキのかけら」が大好きなのを発見しました。「森の奥で燃えるもの」の、時間から離れた不思議な世界観も好きでした。「キリンの解剖」「トランジット」も好きです。最近、本格的に喘息を発症したので「第三火曜日の発作」を身近に感じます。こんなに密やかな時間は過ごしませんが…。

  • 私だけかもしれないけど、小川洋子の小説を読んでいると、無音のホールの中心で一人きりで食事をとっている姿を思い浮かべてしまう。料理は冷めている。私の腰掛けている椅子は冷たい。
    私はできるだけ音を立てずに噛もうと、神経を顎の筋肉へ集中させるのに、不快な咀嚼音は私の口腔から脳に直接届いて、口を完全に閉じていても空間全体に響きわたっていくから、うんざりした私は食べるのをやめようかと思うけど、もう二度とそこへ行きたくないとは思わない。

    人からすれば歪で異常に見える。著者の解像度の高いレンズ越しに観ると、純度が高すぎるゆえに手に余る情念や執着心を狂気と呼ぶのかもしれない。最小限の構成要素にも似たそれ。
    《2015.07.01》

  • 10の短編からなる「残酷物語」
    小川さんワールド

    オカルト、では全くない
    薄気味悪い、とは少し違う
    不気味、ともちょっと違う
    子どもみたいな感想になるけど、きれいなのに気持ち悪い

    日常と非日常の交錯、歪み
    後味が良いのか悪いのか、なんとも言えない、静かで涼やかなのに目を背けたくなるような恋愛

  • 酒井駒子さんの装画が素敵すぎて衝動買い。写真と実物は異なります。奥付の日付が今年の1月だったので、どうやら新装版になったようだ。

    冷たい気配が漂う短編集。
    あまりにも美しいものが、時に近寄りがたい雰囲気を纏っているのと同じような感覚だろうか。
    ページを捲るたびに、行間に漂っている「死」の気配がぽろぽろと零れ落ちてくる。
    淡々として端正な描写の奥で、「ああ、でも最後には、きっと恐ろしい裏切りが待っているに違いない」という予感に息が詰まる。
    なんだかもう、「恐ろしいものを見てしまった」、という読後感だ。

    短編集だけどちびちび拾い読みをしないで、ぜひ全篇をとおして読んでほしい一冊。
    このただならぬ気配と緊張感に、どっぷり浸かってみてほしい。
    戻って来られなくなってしまう危険性は大いにあるが。

  • なんと美しい残酷物語。
    特に「図鑑」は金井美恵子の「愛の生活」を彷彿させる。
    小川洋子は、残酷な事、グロテスクな事を美しく丁寧な描写で書くのが本当に得意ですな。
    今回も小川洋子ワールドに浸らせて頂きました。
    トランジット、図鑑が特に好き。

  • どこに収着するのか予想できない。

    小川さんの描く登場人物たちの動作の描写、言葉の並べ方が優雅で独特。
    残酷でグロテスクな内容だけど、品があり、美しくも感じる。
    この独特の世界観を味わうことに趣を感じる。

    物語としては「美少女コンテスト」が特に気に入った。
    「第三火曜日の発作」。発作を美化して描かないところに共感した。人が離れていく心理がリアルだと思う。

  • 腐敗しない不気味で清潔な屍体のようだ

  • 寄生虫は寄生するところを見つけたらなんのためらいもなく目を取る
    それを不倫相手の前でする結末にゾッとした

  • 死の匂いや狂気がひっそりと織り込まれた短編集。

    筆者の初期作品にも触れてみようと手に取った。
    一番気に入ったのは、喘息の少女と宝石商の『第三火曜日の発作』。
    『刺繍する少女』『ケーキのかけら』『トランジット』も好き。

    <収録作品>
    刺繍する少女/森の奥で燃えるもの/美少女コンテスト/ケーキのかけら/図鑑/アリア/キリンの解剖/ハウス・クリーニングの世界/トランジット/第三火曜日の発作

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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