偶然の祝福 (角川文庫)

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レビュー : 278
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043410057

感想・レビュー・書評

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  • 短編小説が連作となって一つの小説を構成している。一つ一つの短編にはそれぞれの音色があり、全体を通してとても面白い小説であった。
    自分として特に良かったのは「キリコさんの失敗」と「涙腺水晶結石症」であった。「キリコさんの失敗」は幼い日常の視点から優しく包み込んでくれていたキリコさんとのエピソードを柔らかく描く。また、「涙腺水晶結石症」は積み上げられた困難に立ち向かう先に救いが現れる有様を繊細なタッチで描く。本作は本書を読み進める中で連作なのだと実感できた作品でもあった。(笑)
    「盗作」と「エーデルワイス」は小川洋子さん独特の世界全開となっておりとても楽しめる作品となっている。
    最後の2作「時計工場」と「蘇生」は、本書短編全体を結びつける役割があるのと、主人公が作家で、小川洋子さんの別の著作「ホテル・アイリス」と「貴婦人Aの蘇生」がそれぞれ登場し、とりわけ「時計工場」での作家としての境地を描く場面から、本人自身と交錯する硬質で内面に迫るような作品になっている。「貴婦人Aの蘇生」は「蘇生」の外伝か後日譚のような位置づけと思われ、なかなか楽しい。
    全体を通して思ったのは、この小説は演奏会を意図したのではないかということである。あえて短編連作とし、さまざまな小川洋子風メロディの調べを聴かせてくれる。そういえば主人公の恋人も指揮者だ。長くこの演奏会に浸っていたいと思えるような贅沢な作品群だ。

  • 何度読んでもひっそりとしたお話たちが好きです。
    小説家が主人公で、彼女の書くお話が小川洋子さんが書かれてきたお話なので、私小説のような空気です。
    「時計工場」の最後の一文に、今回は目が留まりました。素敵な一文です。
    小川洋子さんと同じくらい大好きな川上弘美さんの解説も良かったです。川上弘美さんも、小川洋子さんの新刊が出たら必ず買うのか…わたしもです。

  • その人にだけ見える存在。

  • ああ、エッセイかと思って読んでいたから!
    すごいハラハラしちゃって。
    いまも、ほんとはエッセイ?とちょっと思ってる。
    作品と現実の境界線をいい意味で曖昧にしちゃったすごい作品だ。

  • 一人の女性の身に起こる、日常と非日常の間を行き来するような奇妙な出来事が時間軸がばらばらのまま織り成される。全てに通じて感じるのは、どこかひっそりとした喪失の匂い。
    捉えどころのないたおやかな空気の静謐さ、小説にしか描けない時間と空間の切り取り方、手触りに引き寄せられました。

  • すごいな…盗作のオチはなかなか鳥肌が立った。うーん。きっと私には読解力が足りない。もっとなんかあるはずだしそう思わせるのだから実際にあるのでしょうが。ふうん。

  • ひとりの作家の生活が切り取られている。

  • 自伝?

    という疑問が常に頭を過りつつ読んでました。
    小説とはなんだか思えなかった。
    けど裏表紙には連作短編小説って書いてあるのね。


    大好きなこの人の文章のリズムにゆらゆら浸ってました。
    ちょっと普通じゃないかんじ
    だけど全部あるべきところにあるかんじ
    丁寧に、ワンシーンずつ切り取っていくかんじ

    あぁもう大好き。

  • 過去に読んだ本。小川洋子さんの短編集。

    小川さんの書く話は、硬質な寓話っていう感じ。その硬質さが好きだ。

  •  数々の受難に遭う作家の転機にいつも訪れる、ささやかだけれど意味のもった『幸福』。あっさりと読めてしまうものですが解釈のしように寄ればとても深い作品だと思います。前向きで背中を押してくれる作品ではないけれど、いやなことがあって落ち込んだ日の夜などに読んで欲しい、そんな作品です。

著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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