もの食う人びと (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043417018

作品紹介・あらすじ

人は今、何をどう食べ、どれほど食えないのか。人々の苛烈な「食」への交わりを訴えた連載時から大反響を呼んだ劇的なルポルタージュ。文庫化に際し、新たに書き下ろし独白とカラー写真を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 約30年前に「食」をテーマに世界中を旅して感じたことをまとめたルポルタージュ。

    出だしは「深夜特急」の楽しさを彷彿とさせる東南アジアの旅のワクワク感から次第に東欧やアフリカの紛争地域やロシアや韓国などその時代に世界の注目を集めた所に飛び込んで現地の人達との「食」を通しての交流が描かれています。

    世界一の大きいレストランからアフリカの困窮地域やエイズ蔓延地域の大変貧しい食事まで様々な「食」があることを知りました。

    食べることが大好きな私に取って、この書籍と取り上げられた様々な辛い食事を取って暮らしていた人々の暮らしが少しでも改善しているといいなと思いました。

  • 食を通じた世界各地、場末の、戦場の、極限の、苛烈な記憶の中の食と生のルポ。1992年末~94年春にかけて、バングラデシュ、フィリピン、タイ、ベトナム、ドイツ、ポーランド、クロアチア、セルビア、オーストリア、ソマリア、エチオピア、ウガンダ、ロシア、ウクライナ、そして韓国を取材したもの。

    う~ん。著者の素直な感想が綴られているだけなのだろうが、ジャーナリスト臭い語り口がプンプン。もったいぶった言い回し。どうだ、というような上から目線の思わせ振り。著者の見方を強制される強引さ。傍観者なのに無責任に踏み込んだコメント。こういう文章、素直に受け取れないなあ。名著と高く評価されている本のようなのだが…。読み方、ひねくれてきたのかな?

  • 辺見庸氏が世界中に出かけ、その土地ならではの食べ物を食べる紀行。決してグルメレポートではない。時は1992年から1994年。バングラデシュで残飯を食べ、ドイツの刑務所で囚人食を食べ、飢餓のソマリアやエイズのウガンダを訪れ、戦争時の人肉食や従軍慰安婦の記憶に触れる。普通に食べたい物を食べられるのが、なんと幸福なことだろう。

  • 小田実の『何でも見てやろう』を彷仏とさせる世界紀行。何でも食ってやろう。そして、その情熱に纏わる事件を楽しもう。

    目的をもって旅をするのは良いものだ。何かしらのロールプレイングゲームみたいだ。私も昔、世界中の猫のグッズを購入しようと旅の目的にした事があったが、そんな事を思い出した。

    さて、それは良いとして、本著に登場する食べ物を紹介しておこう。ダッカの残飯、ピター、ジュゴンの肉、スズメ、ドイツの囚人食、塩コーヒー、ロシア軍の給食、択捉島のカーシャ、エイズ村のマトケ、などなど。著者ではないが、人間を食べた話も出てくる。感慨深い。

    美味しそうに感じたのはジュゴンの肉くらいか。美食を楽しむというより、ゲテモノを味わうマゾヒスティックな旅だ。そう言えば、私も一時期、日本でゲテモノを食べられる店を探しては挑戦した時期があった。好奇心の赴くままに、何故か昔の挙動を思い出した本だった。

  • 紀行文・旅行記として読んだが、テーマは「食べること」である。
    旅行の行き先と、そこで食べるものは、普通でないものが多い。例えば、バングラディッシュ・ダッカで残飯を食してみる。統一直後のドイツの旧東ドイツ側の刑務所で、囚人が食べる食堂の食事を試してみる。チェルノブイリで放射能に汚染されたスープを食べてみる。全て意表をつく場所と食事が選択されている。

    それは、なかなか面白いのであるが、私は「ノンフィクションにおける時代」ということについて考えさせられた。本書は、もともと1994年6月に刊行されたものであり、刊行から30年程度が経過している。筆者は、ベトナムのハノイからホーチミンまで48時間かかる長距離列車に乗り、列車の中での食事について書いている。私は、1992年にホーチミンに行ったことがあり、また、2010年代にはホーチミンを再訪し、また、2019年にハノイを訪れている。その間にホーチミンは大きく変わっているし、ハノイも大きく変わっているはずであり、その間を結ぶ長距離列車の様相も変わっているはずだ。私がこの本で読んでいるのは、1990年代前半のベトナムという国のある側面についての描写であり、それは、これを読んでいる現在では、既に存在しないというか、少なくとも大きく変わっているはずだ。
    何十年も前のことを題材にしたノンフィクションを今になって読んでも、とても面白く読めるものも多いだろう。それは、例えば、第二次大戦のような史実をベースにしたもの、あるいは、大きな事件を題材にしたもの、そういったものは、その時点の事実そのものを読む対象にしているのだから、いつ読んでも時の影響を受けにくいはずだ。一方で、この本のように、「その時々の、その場所の、そこに住んでいる人の様相」的なものには、読むにあたっての「旬」とか「タイミング」が存在するのだろう。
    「今はこのような光景はなくなっているのだろうな」と思いながら読むのは、やはり面白さを減じる。

  • 若いうちに出会えてよかった。
    この本を読んで、すべての国際ニュースが対岸の火事ではなくなった。
    私の国際感覚の基盤になった本。

    この本に出会えたから大学に行って良かったと思う。
    大した者にはなれなかったけど、今の仕事を選ぶことになったのもきっとこの本に出会ったから。

    そして驚きの事実。
    大好きな推しにとっても長年の”一番大切な本”だったことが明かされた。
    私がこの本に出会って10年後、推しに出会って5年後。
    もはやバイブル。
    でも偶然じゃない、だから好きになったんだよなー

  • 情景の中からドラマを切り抜くのが上手。観察眼と表現力に優れている。
    時代と場所が変わっても世界のどこかで同じようなドラマが繰り返され続けているのだろう。

  • 壮絶。ここまで探求できる何かがあるだろうか。

  • 読んだのはもう20年ほど前。でもいまだに読んだときの衝撃は残っている。
    自分の知らない世界がまだまだあって、知らないじゃすまされないんじゃないかと思った記憶が鮮明に残っている。
    高校生、大学生の若者にぜひ読んでもらいたい。

  • ものすごく好きな本。
    辛いと思う部分はありながらも、率直に書かれていて、
    読んでいて、とても気持ちのいい本。
    貧困、犯罪、病気などの中でも、食べることは尽きないことであり、食べるものがいかにその人を表しているのかも表れていると感じた。特に、ソ連崩壊の影響を受けている地域では、とてもリアルに人々の生活や苦悩が描かれていて、衝撃を受けた。

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