冬のオペラ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 964
レビュー : 98
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043432059

作品紹介・あらすじ

名探偵はなるのではない、存在であり意志である――名探偵巫弓彦に出会った姫宮あゆみは、彼の記録者になった。そして猛暑の下町、雨の上野、雪の京都で二人は、哀しくも残酷な三つの事件に遭遇する……。

感想・レビュー・書評

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  • 存分に味わった。「遠い唇」繋がりで手にしたこちらの作品。

    物語が醸し出す雰囲気、テンポ、推理、北村さんの言葉選び、それらを存分に味わった。

    そして名探偵 巫さんの静かな佇まい。
    わたし、のあくまでも記録係に徹する姿。

    この二人の姿、醸し出す距離感と空気感が特に柔らかさを感じて好き。

    「蘭と韋駄天」はニコライ堂を思わず確かめたくなる衝動に駆られるほどの推理。

    表題作「冬のオペラ」は推理よりもせつなさに心掴まれた。

    ハッとするほど胸に刺さる言葉、力強さとせつなさを携えた言葉が心に静かに舞う。

  • 覆面作家の夢の家
    で、北村薫さんのファンになり、この本で2冊目でした

    独特の言い回しが癖になり、どんどん読みました

    話の展開のされ方もですが、
    種明かしの仕方が特にオシャレだなと感じました
     
    まだまだ北村薫さんの本を読みたいなという気持ちになります☺︎

  • とても好きな雰囲気。主役二人のキャラクターが良い。著者の作品は本作が初だが、ファンになった。乾いた風がサァッと吹くような名探偵と、そっとまっすぐ咲いている花のような助手。

  • 名探偵と名乗り、普通の事件の依頼は受けない。そんな事務所があゆみの勤める不動産会社の入ったビルの2階に入った。けれど、世に名探偵を必要とする事件は滅多に起きない。だから名探偵は神出鬼没なフリーターとして生計を立てている。そんな名探偵が気になって仕方がないあゆみ。名探偵の記録係に立候補して、数少ない事件を名探偵の耳となり目となりまとめていく。

    短編2つ、中編1つの連作集です。探偵との出会い、最初の事件、さらなる出会い、そして・・・ とつながっていきます。コージーなミステリかと思いきや、最後はとても深いテーマに。切ないというか、なんともやりきれない思いになりました。冬の京都に出かけたくなります。

  • そぼ降る雨が、町を濡らしている。

    地下を抜け出した。
    ゆっくりと助走し始めた、新幹線から見えた東京の下町の風景だ。

    あれは、大学生のときだった。これから帰省するのだ。


    その車中で読んだ「冬のオペラ」。
    記憶の中の画と、そのときにあった空気とが一緒くたになってしまわれている本がある。
    この物語もそうだ。


    読んでみれば、あっという間に、その瞬間の印象が、感触がどんな長い時間をも軽々と越えて、ふんわりと浮かび上がってくるみたいな気がする。


    北村薫の本が、持っている情緒や柔らかさ。
    登場人物と、彼らのやり取りから手渡されるようなその雰囲気が、いつだって、心をじんわりと温かくしてくれるような、そんな世界を描いている。


    今みたいに、何かを得るために本を読む、ということではかった。ただただ、本を読むということが楽しくて、いつまでも本を読むことがやめられなかったあの頃。何も知らなかった、全然賢しらでもなかった。世界はまるで小さかった。それでも、そんなあの頃のほうが、何にでも心地良いくらいに跳ね返って、反応して、そんなまっさらでするどくて、瑞々しい心をもっていたような気がしてならない。

    いまこの目に映す、世界のうつろさを思えば尚更だ。


    北村薫の本を読んだ。
    蘇ってきた。まだあったんだ、と気づいた。
    それは決して、失なるようなものじゃないのかもしれない。消えたりなんかしない。いつだって取り返せる、自分さえ思い出せば。そんな風に思えたことが、また気持ちを軽くしてくれた。


    そうだとするならば、続けて読もう。
    いつか手元から消えてしまった、「円紫師匠と私」シリーズを。

  • 自称名探偵の巫(かんなぎ)とワトソンたりたい姫宮あゆみが活躍する三話連作短編集。巫は(かんなぎ)と読むんだぁ。
    一話目「三角の水」は随分軽いスタートだなと思ったけれど、これは主人公の探偵を引き出すための呼び水みたいなものなんだなあ。
    2編目も読者を最終話に導く導入か。
    三つの作品の底に流れる足疾鬼と韋駄天エピソード。
    さながら仏舎利を盗んだ犯人は足疾鬼、その襟首に指をかける韋駄天が巫なのか。
    最終話、大学講師椿女史憧れの学者先生は実は老いのおびえに動揺するつまらない男だったと男女の仲になってわかってしまった。
    そんな男ではなかったはず、そんなおびえは超越した男だったはずだという彼女の落胆する気持ちもわかる。
    しかし齢を重ねこのまま老いて、このまま消えて行ってしまうのかというおびえは私にもある。
    この怯えから逃げたくて年若い女性を求めて時を戻そうとした男の悲しみがわかる。

  • 派手じゃないけど、面白い。
    表紙を見ても分かるように、どこか力が抜けるような印象を受ける。事件自体も、人は死んでいるものの、肩肘張るような作品ではない。しかし、読者の興味を途切れさせる事なく進められているのは、さすが。キャラクターも、決して派手でないのに不思議な魅力があるのは何故だろう。

    表題作「冬のオペラ」が一番。
    大学の研究室で起きた殺人事件。密室の中でこと切れていたのは、仏文教授の水木。服を纏わぬ彼の遺体、窓から垂れたザイル、その下に撒き散らされた彼の衣服…数々の謎を、巫はどのように解き明かすのだろうか。舞台が冬の京都の描写が巧みで、あの底冷えのする寒さ、時折首元を撫でる刺すように冷たい風が、ありありと思い出せる。

    巫探偵は、シリーズ化はしていないのだろうか。
    アルバイトに勤しむ生活感がある探偵は、物珍しくて好きだったのだが。探偵や犯人の大立ち回りも無く、地味なのに好きな作品というのも珍しい。作者の手腕が伴えば、こういう作品もありなのか。北村薫の凄さを感じられるシンプルな作品。

  • 2020年4月18日購入。

  • あらすじ
    名探偵はなるのではない、存在であり意志である――名探偵巫弓彦に出会った姫宮あゆみは、彼の記録者になった。そして猛暑の下町、雨の上野、雪の京都で二人は、哀しくも残酷な三つの事件に遭遇する……。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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