- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043432059
作品紹介・あらすじ
名探偵はなるのではない、存在であり意志である――名探偵巫弓彦に出会った姫宮あゆみは、彼の記録者になった。そして猛暑の下町、雨の上野、雪の京都で二人は、哀しくも残酷な三つの事件に遭遇する……。
感想・レビュー・書評
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存分に味わった。「遠い唇」繋がりで手にしたこちらの作品。
物語が醸し出す雰囲気、テンポ、推理、北村さんの言葉選び、それらを存分に味わった。
そして名探偵 巫さんの静かな佇まい。
わたし、のあくまでも記録係に徹する姿。
この二人の姿、醸し出す距離感と空気感が特に柔らかさを感じて好き。
「蘭と韋駄天」はニコライ堂を思わず確かめたくなる衝動に駆られるほどの推理。
表題作「冬のオペラ」は推理よりもせつなさに心掴まれた。
ハッとするほど胸に刺さる言葉、力強さとせつなさを携えた言葉が心に静かに舞う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
巫弓彦のことを久しぶりに思い出し、でも話は覚えていなかったので再読。
人生には、どうしようもないことというのがあるのだなあ。 -
覆面作家の夢の家
で、北村薫さんのファンになり、この本で2冊目でした
独特の言い回しが癖になり、どんどん読みました
話の展開のされ方もですが、
種明かしの仕方が特にオシャレだなと感じました
まだまだ北村薫さんの本を読みたいなという気持ちになります☺︎-
私も北村薫さん好きだなあ。
儲からない探偵巫。
巫って「かんなぎ」読むんだぁ、って知りました。
面白かったですね。私も北村薫さん好きだなあ。
儲からない探偵巫。
巫って「かんなぎ」読むんだぁ、って知りました。
面白かったですね。2021/10/19 -
2021/10/19
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とても好きな雰囲気。主役二人のキャラクターが良い。著者の作品は本作が初だが、ファンになった。乾いた風がサァッと吹くような名探偵と、そっとまっすぐ咲いている花のような助手。
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名探偵・巫(かんなぎ)弓彦と、その記録者である姫宮あゆみが遭遇する、三つの事件を描いた連作短編集。
人を陥れる悪意が、短い物語の中でしっかりと表現されているところや、全体的な雰囲気が『空飛ぶ馬』から始まるシリーズの、「円紫さんと私」に近いものを感じました。
中編の分量がある表題作では、舞台を冬の京都に移し、殺人事件も起こるのですが、情景描写の美しさと静謐な空気感が、真相の哀しさをより際立たせているように思います。
シリーズ化されてないのが残念ですが、いつかまたこのコンビに会えることを、願わずにはいられません。 -
北村薫さんらしいミステリだと、読んでいて思いました。特徴的な探偵像、語り手の女の子の人物描写、そして事件と人間の悪意に対する距離感。いずれも絶妙で、静謐な空気感が残る、北村さんらしい読後感。
収録作品は三編。日常の謎系が二編と殺人事件が描かれる中編が一編。
探偵役の巫弓彦は名前からして特徴的で、探偵事務所を開いたにも関わらず、名探偵が必要な依頼しか受けないと話し、普通の浮気調査や人探しは断るという徹底ぶり。そんな巫に興味を持ち、彼の記録者になった姫宮あゆみ。
これだけだと探偵のキャラクターの強いミステリになりそうだけど、北村さんはあくまで事件の中の、そして事件の関係者たちの悪意に焦点をあてます。
描き方によっては、読後感が悪かったりドロドロしたりしそうなのですが、事件から完全に部外者である二人から描くためか、ドロドロとした雰囲気がいい具合に中和されている印象です。
人間の悪意や事件の哀しさに、ひんやりとした空気感こそ感じるものの、そこから暗い気分にはならない。あくまで静謐さを保っている。その空気感がとにかく絶妙でした。
北村作品に共通しているのは、悪意や哀しさをことさらセンセーショナルに描かない一種の品の良さがある気がします。それがよく表れた作品だったと思います。 -
そぼ降る雨が、町を濡らしている。
地下を抜け出した。
ゆっくりと助走し始めた、新幹線から見えた東京の下町の風景だ。
あれは、大学生のときだった。これから帰省するのだ。
その車中で読んだ「冬のオペラ」。
記憶の中の画と、そのときにあった空気とが一緒くたになってしまわれている本がある。
この物語もそうだ。
読んでみれば、あっという間に、その瞬間の印象が、感触がどんな長い時間をも軽々と越えて、ふんわりと浮かび上がってくるみたいな気がする。
北村薫の本が、持っている情緒や柔らかさ。
登場人物と、彼らのやり取りから手渡されるようなその雰囲気が、いつだって、心をじんわりと温かくしてくれるような、そんな世界を描いている。
今みたいに、何かを得るために本を読む、ということではかった。ただただ、本を読むということが楽しくて、いつまでも本を読むことがやめられなかったあの頃。何も知らなかった、全然賢しらでもなかった。世界はまるで小さかった。それでも、そんなあの頃のほうが、何にでも心地良いくらいに跳ね返って、反応して、そんなまっさらでするどくて、瑞々しい心をもっていたような気がしてならない。
いまこの目に映す、世界のうつろさを思えば尚更だ。
北村薫の本を読んだ。
蘇ってきた。まだあったんだ、と気づいた。
それは決して、失なるようなものじゃないのかもしれない。消えたりなんかしない。いつだって取り返せる、自分さえ思い出せば。そんな風に思えたことが、また気持ちを軽くしてくれた。
そうだとするならば、続けて読もう。
いつか手元から消えてしまった、「円紫師匠と私」シリーズを。 -
自称名探偵の巫(かんなぎ)とワトソンたりたい姫宮あゆみが活躍する三話連作短編集。巫は(かんなぎ)と読むんだぁ。
一話目「三角の水」は随分軽いスタートだなと思ったけれど、これは主人公の探偵を引き出すための呼び水みたいなものなんだなあ。
2編目も読者を最終話に導く導入か。
三つの作品の底に流れる足疾鬼と韋駄天エピソード。
さながら仏舎利を盗んだ犯人は足疾鬼、その襟首に指をかける韋駄天が巫なのか。
最終話、大学講師椿女史憧れの学者先生は実は老いのおびえに動揺するつまらない男だったと男女の仲になってわかってしまった。
そんな男ではなかったはず、そんなおびえは超越した男だったはずだという彼女の落胆する気持ちもわかる。
しかし齢を重ねこのまま老いて、このまま消えて行ってしまうのかというおびえは私にもある。
この怯えから逃げたくて年若い女性を求めて時を戻そうとした男の悲しみがわかる。 -
2020年4月18日購入。