水辺のゆりかご (角川文庫)

著者 :
制作 : 谷口 広樹  二石 友希 
  • 角川書店
3.19
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043437054

作品紹介・あらすじ

昭和四十三年、夏至の早朝、在日韓国人夫婦のあいだに一人の女の子が生まれた-。家族のルーツ、両親の不仲、家庭内暴力、苛烈をきわめた学校でのいじめ、そして自殺未遂…。家庭や学校、社会との、絶え間ない葛藤と軋轢のなかで歩んできたみずからの姿を見据え、類いまれな"物語"へと昇華した感動の一冊。作家としての豊かな資質を示し、読者に生命の力を吹き込んだベストセラー作品、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいて苦しかったなー。いまこれを読んで良かった。20代とかで読んでいたら共感し過ぎて死んじゃったかもしれない。いまだから読めた。


    これを読んでよ~くわかった。うちは在日でも二世でも何でもないけど、日々の両親の怒鳴りあいや虐待はすさまじかった。いじめも壮絶だった。日常は非日常。安定は不安定。なので安定した安全な生活になると事を起こさずにいられない。良いことは悪いこと。悪いことがよいこと。すべてが逆転してしまう。生きにくい苦しいことだ。すべて親に体に叩き込まれ教わったことだ。

    そんな中でやはり「自分は特別」「自分は選ばれた」というおかしな価値観を自分で構築してしまい、自分で自分にそういう歪んだ価値観を与えないと、きっと生きていけない…。または存在していられないって本能で思ったんだろうな…。同調し過ぎてしまう部分が多かった。

    国籍とか関係ないって思った。「ファミリーシークレット」も心に刺さったけど、やはりこの人の書く作品、私は好きだな。読むの息苦しいけど何か止まらない。こんなに辛い体験なのに文章が無感情だから読めるんだと思う。そのぶん抑圧されているんじゃないかとも感じるけど…。「恨(ハン)」がぎゅっと詰まっているけど淡々としている。底抜けてしまったような無常観。


    自意識過剰っていう部分は反感も覚えつつ、うっすらとそうなのかもしれない…と少し感じた。林真理子さんの「あとがき」に深く共感した。骨が見えるまでその身を削らずに、折り合いをつけて危ういながらも生きてほしい…作品を読むたびにそう願う。

  •  柳美里、著。在日韓国人として生まれた著者の自伝的小説。幼少時代から大人になるまでの彼女の生活が語られる。
     壮絶と言うべきか、数奇と言うのべきか。いや、在日という環境を踏まえ、複雑というべきだろう。しかし話自体は思ったよりも在日の感傷に頼っているわけではなく、あくまで一日本人、一女の子としての陰鬱な生活をあっさりとした文体で淡々と語っている。だから自殺の場面も迫力には欠けるが、「無駄に感傷的にならない」ということならこういう描写もありなのだろう。
     ただ、これは近年の日本の私小説全般に言えることだと思うが、特異な題材であれ日常的な題材であれ、特別変わった視点をとるわけでもなく淡々と物事を描写する意味はあるのだろうか。私はいつもこういった小説に、文章の上手いロボットが作った無言のシナリオ、といった印象を受けるのだ。

  • 柳さんのプロフィール的なことは何作か著作を読んでいて知っていたんだけど、改めてこういう形で読むと、「濃い」と思った。
    家庭環境や学校でのいじめ、って箇条書きみたいにしちゃうと平たく感じちゃうんだけど、読んでる間、最初から最後まで薄闇の中で目を凝らしているような重苦しい感覚なのに、なぜだか軽快に読み進めることができた。
    私も柳さんと同じく高校を中退してモラトリアムと言えば聞こえはいいけど何もせずにただ家に居た時期があった。
    今はこうやって冷静に感想を書けるけど、きっとその時期に読んだら心が揺さぶられすぎていたんじゃないかと思う。特に前半。

  • あるひとは〈自伝〉だといい、あるひとは〈小説〉だといい、〈エッセイ〉だというひともいるかもしれない。(中略)私はいおう、これは言葉の堆積である、言葉の土砂であると――。作者はこの作品についてあとがきでこう記している。いずれにしても作家柳美里のルーツが分かる一冊。
    この作家はかなり壮絶な人生を送ってきているらしいとあらかじめ聞いていたが、正直、読んでみてそんなに壮絶かなぁと思ってしまった。確かに在日韓国人の家庭に生まれたことや、学校でのいじめ、自殺未遂などは波瀾の人生と呼ぶにふさわしいかもしれない。しかし、決してそれが彼女のウリというわけではないと思う。その悲惨な人生をしたたかに見つめ文章にしてしまうところが、作家としての彼女の価値なのではないかと思うのです。

  • 柳さんのルーツのきれ端が見える自伝(私は“自伝”として読んだ)。
    『ゴールドラッシュ』の舞台となった、巨大なパチンコ店のある黄金町で過ごした十代の一時期は、『ゴールドラッシュ』での風景描写を本作に投影したため、非道く心苦しくなった。

    林真理子女史の解説は私の感じていた“柳美里”という作家を気遣う思いやりで充ち、なんだかとても愛おしい。

  • しっかり明確に物事をみてる賢い文章です。でもやはり実名に近いものを出すのはあまりよくない気がします。その人たちも生きてるのですから。

  • 彼女はまさに同年代なのだが、あまりにも濃く詰まった人生で、何ともやるせない。だからこそ、多くの傑作を発表できたのだろうし、作家としては、与えられたものは多いんだろう。彼女に見つめられたら、私の薄っぺらさを見透かされそうで怖い。でも、心安らぐことはあるんだろうか。闘わずに生きて欲しい、破綻せずに、と思ったりもする。

  • どんな話だったのか全く記憶にない。話がどろどろしてたのと、全体に漂ってた生ぬるい湿っぽい空気感は覚えてる。

  • 自分の人生を切り売りするような、読んでいて苦しくなる本。それだけ書くということに懸けているのかな、と思います。最近では、重いテーマを扱ったおはなしも淡々と書く小説家が多い中、この小説はドラマチックだなーと思いました。この人の作風か、時代か。

  • 家族のルーツ、家庭内暴力、苛烈ないじめ、自殺未遂・・・

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