雨と夢のあとに (角川文庫 ゆ 5-8)

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043437085

作品紹介・あらすじ

蝶の撮影で海外に出かけたきり、10日間も音信不通だった写真家の父が帰ってきた。ひとりで留守番していた12歳の少女・雨は喜びも束の間、右手に火傷を負ってしまう。手当てをしてくれたのは隣室の女性・暁子だった。父との楽しい毎日が戻ったかに見えたが、雨の周りでは奇怪な出来事が次々と起こる。そして、突然現れた実の母親が、雨に衝撃の事実を告げる-。精緻な筆致で家族とは何かを問う幻想ホラー小説。

感想・レビュー・書評

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  • キャラメルボックスの舞台と、ドラマを見て、かなり前に原作を買ったけどず~っと積んでおいた本。

    舞台・ドラマとは違って、基本的に主人公である雨の一人称で物語は展開する。
    早川一家との関わりも、暁子さんからの告白も、父親と暁子さんのやりとりも、父親と一緒に死んだと聞かされていた祖父母に会いに行くエピソードも、父親の抱える切なさも、母親の身勝手さも(これは原作にも少しあるが)、全部舞台&ドラマの脚色だったとは。。。
    でも、この原作をそのまま舞台化どころか映像化することなんてとてもできない。
    中盤、一ヶ所だけ話者が違う部分がある。
    暁子さんが恋人に宛てた手紙、そしてそれを読んだ恋人が暁子さんの家に足を踏み入れるシーン。
    もう、グロくてエグくて、まともに読むのが大変だった。
    暁子さんの死因も原作とは違ったけど、これも特にキャラメルの舞台でそのまま演ることなんて絶対にできないだろう。

    【脳内再生キャスト】

    桜井雨:福田麻由子(12歳当時)
    桜井朝晴:岡田達也
    月江:岡田さつき
    暁子:岡内美喜子

    初演の舞台版だなー、これ。

  • 主人公の名前が「雨ちゃん」
    独特の文章だけど、読みやすい。

    お父さんはやはり亡くなってて、死後49日の間だけ雨ちゃんのそばにいてくれた。
    お隣のお姉さんも自殺して亡くなってた。
    婚約者の一度の浮気が許せなかったのだ。
    死体はうじに食い尽され、部屋は悪臭とゴキブリだらけだった。
    生々しく、想像するだけで気持ち悪い。
    あらすじだけだとホラー。だが、少女からみた孤独と葛藤が、静かに伝わってくる作品。

  • ホラーやけど、寂しい・悲しい感じのが強い。。
    後半の一部、描写が少しエグイ感じのところがあって、そこはちょっと...やったけど、全体的には本当に切ない内容。
    ハッピーエンドではないけどすごく心に残る。
    親娘の関係が羨ましいくらいにすごくいい。
    登場人物の話し方とか好き嫌いあるかもやけど、わたしはあーいう感じいいと思う。
    メールの打ち方とかなんかは、自分も昔はあんな感じの文章打ってた時あったなーとか。。
    子どもっぽい、そーいう感じの。

    本当に悲しいけど、親娘の愛がすごく伝わってきました。

    ドラマは、雨ちゃん役の黒川智花ちゃんがすっごくかわいい。

    原作とドラマやっぱりちがうところあったし、もう一回ドラマもみたいな〜。

  • 12歳の女の子視点の物語。奥田美和子さんの雨と夢のあとに、という曲が好きで、曲だけ知っている状態で読み始めた。

    曲の歌詞を知っているだけに、
    ずっと嫌な予感や心にざわつきを感じながら読み進めていた。
    初めは12歳の女の子視点の文体に読みにくさも感じていたが、確かに12歳の頃ってこんな感じだったと思うし、彼女が周囲のおかしさを感じ始める頃には文体も受け入れられたのか、雨のことが好きになっていた。

    おかしさに気づきながらも、それを見ないフリをしている雨を見るたびに切なさを感じたけれど、同時にこの時間がずっと続いて欲しいし、誰も事実を告げないで欲しいと思ったので、電話がかかって来た時、ああ終わりが来たんだと思い泣いてしまった。


    49日を迎えて、お父さんはいなくなってしまうけれど、
    作中にもあった通り、過去と未来、時間は繋がっているのだから、今も12歳の誕生日を迎えている雨と朝晴は一緒にいる。

    思い出はだんだん薄れるかもしれないけど、
    思い出せさえすれば、そこにいないけど、いる。

    大切な人と別れたあとに読むとまた違った感想が得られそうな作品だった。

  • n

  • 初めは主人公のくるくると変わる心の動きや子供らしい言葉遣いに読みにくさを感じましたが読み進めるうちに父と隣人の不可解さから何となく感じている真実を否定しようと頑張る姿に読みにくさは消えていました。
    複雑な家庭環境、交友関係の中での父親との繋がりの大きさは彼女をどれだけ救っていたのか。その父親は彼女を置いて逝ってしまうことをどれだけ無念に思っていたのか。
    切ない物語でした。

  • 150405

  • なんだかいつも柳先生の文章には「引き込まれる」という表現がぴったりきますね。

  • 中学生のときにやってたドラマがすきでした。
    いまさらですが、原作の方をば。
    でも、えぐいシーンがあるから、読んだのは今でよかったなあと思います。中学生のとき読んでいたら、そこにばかり目がいって、怖いお話、という印象になっていたかも。
    ドラマとはだいぶ設定が違うのですね。
    このお話は、雨ちゃんがその年だからこそよりぐっとくるんだなあと思いました。
    ドラマを見返したくなりました(*´`*)

  • 親子の絆、人間の性、愛する者への情、

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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