スワロウテイル (角川文庫 い 42-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043441020

作品紹介・あらすじ

円を掘りに来る街。それがイェンタウンだ。日本人はこの呼び名を嫌い、自分たちの街をそう呼ぶ移民たちを逆にイェンタウンと呼んだ。ヒョウとリンとフニクラは墓荒らしで小金を稼ぎ、グリコは売春で生計を立て、身寄りのないアゲハを引き取った。ある日、客のひとりがアゲハを襲い、隣人のアーロウが客を殺してしまう。すると腹の中からテープが飛び出し、代議士のウラ帳簿が見つかる。飽和状態のイェンタウンで、欲望と希望が渦巻いていった。映画『スワロウテイル』の岩井俊二監督自身によるもうひとつの原作小説。

感想・レビュー・書評

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  • 不法入国者たちが集う街、円都(イェンタウン)。
    そこに住む人々の営みの中で起こる事故と事件が混ざり合う。希望と絶望が交錯する物語だった。

    世界観はすごくおもしろい。荒廃した街が頭の中で想像できるし、どこか某漫画の世紀末感を思い浮かべずにはいられなかった(笑)

    個人的には登場人物への考察に苦労した。もう少し詳しく人物を描いてくれれば、色々と深入りできたような気がする。

    スワロウテイルズというバンドは物語のほんの一部。ほんの一瞬の光だった。

  • 2008年からの積読です。
    当時好きだった人が、岩井俊二監督を好きで、
    その影響を受けて買ったと思われます。
    裏面のあらすじを読んで、なかなか手が出ずここまで積読に。苦笑
    ラブレター、四月物語、花とアリスとかは好きでした。

    移民たちは日本をイェンタウンと呼ぶ。
    円を堀に行くから。
    日本人たちはそれを嫌い、移民たちを円盗(イェンタウン)と呼ぶ。

    荒廃した町で、
    墓を荒らし、身体を売り生きている。
    ヒョウ、リン、フニクラ、そしてグリコ。
    そこに身寄りのないアゲハが加わる。

    自分たちで判断し、
    自分たちがすべてでしかない。
    やられたらやり返すし、
    力のないものは逃げるしかない。
    わかりやすくて潔いけれど、
    とても過酷な世界。
    人間に上も下もないはずなのに、
    金と価値が取引される。

    1996年刊行の作品ですが、
    今でも通じてしまう部分が沢山あって、
    変わらない部分に苦しくなりました。

    本作自体は、色々事件が起こって、
    理不尽と暴力もあるし、
    その余韻は消えないんですが、
    読後は青春群像劇のようになぜかさわやかでした。

  • ほんとによかった。アンダーグラウンドな世界観が好きすぎる。映画見るの苦手だけど、岩井俊二監督作品はみたいな。

  • 映画が大好きで小説も読んだ。面白かったけど、やっぱり映像にしてこそ価値のあるお話だなと思った。

  • またしても失礼な物言いなのだけれど、岩井氏は映画を撮るよりも小説を綴る方が向いているのではないかと思っている。
    根拠は単なる私の好みなのでごめんなさい、なんだけれど、この作品も全体的には映画より小説が好き。
    ラブレターはどちらも同じくらい好き。
    リリィ・シュシュは、申し訳ない、映画は嫌いだけど、小説は良かった。
    ただ、このスワロウテイルも、Charaが歌う場面や蝶が「空を舞う」場面は映像でなくては叶わない表現で、岩井氏はそれに憧れているのかなと思う。
    小説よりも映画の方が、岩井氏が楽しんでいるなと感じるから。
    人間とは難儀なものだな、という話。
    作品自体から離れた感想で、またごめんなさい。

  • 映画 スワロウテイルを観たのがいつかは定かではないがおそらく30年近く前なのだろうけれど、世界観と音楽とが圧倒的に好きで印象に残りまくった作品で、それから何回か見直したはずだけど、なぜかストーリーをうっすらとしか覚えていない作品です。

    改めて小説を読んでみたくなり、記憶を遡りながら読みました。

    どうやらキャラクターの設定が何人か違うようではあるが、大筋はそのままの様に思います。

    読みながらもどうしても映画の場面を思い浮かべてしまうのですが、架空の円都で描かれる世界観になぜか不思議な懐かしさやノスタルジーを感じるのと同時に、決して幸せとは言い難い環境や時代を見て何故か羨望感を抱き、それぞれのキャラクターがカッコよく美しく虜になってしまいます。

    小説だけ先に読んでいたらどう感じたか、もう確かめる術はなく正直感想を書くのもとても難しいですが、間違いないなと思うのは、映画は小説では文字だけでは感じ取りにくい雰囲気や情景を何倍にも表現していた様に思います。でももしかすると映画よりはストーリーはわかりやすいのかもしれません。

    キャストのCHARA、三上博史、渡部篤郎、江口洋介、そして小林武史作曲のスワロウテイル・バタフライがただただ印象深く忘れられない作品です。
    映画も再度見直したい気持ちはあるが、決してハッピーエンドではなかった記憶があるので若干躊躇いもあります。機会があれば見てみたいです。

  • 岩井俊二さんの作品は映像も小説も触れたことなかったので初体験。

    不法滞在の外国人たちが暮らす血生臭くアングラな街「イェンタウン」が舞台の作品。
    そこで人が死んだり駆け引きが生まれたりする。そこに明るい希望は見えづらい。
    なのにそこに雨の日の空気みたいに靄がかって優しい異国情緒のような「におい」を感じるのはなぜだろうか。
    映画版の劇中歌「スワロウテイル・バタフライ」のイメージのせいなのかしら。
    (2016.9.22)

  • 読んでいてもいまいち入り込むことができなかった。あとがきが一番印象に残ってしまう程度の読書感。映画の設定、登場人物に沿って作られた話ということなので映画を見ることで感じ方が変わるかもしれない。

  • 「映画の企画書」というだけあって、文章がとても簡潔でシンプルなのだが、過装飾な三島文学かぶれの私にも気持ちよく読めた。これは小難しい文章に食傷気味の脳からの無意識のSOSなのかしら!
    著者によるあとがきが好きでした。ツバメと蝶のくだり。本好きで内気な、外見は整っているのに陰気さが滲み出している繊細な少年。というのが岩井氏への身勝手なイメージ。
    また映画も観てみよう~ あれはCHARAがすごく可愛かった。そこしか覚えていない。

  • 語り手がコロコロ変わるのに加えて話の展開が早くてちょっと入り込みづらかったです。盛りだくさんのあらすじだけ読んだような印象。


    グリコが歌手になるのがメンバーにとって大きな転機になるのだけど、いきなりそんな展開になってびっくりした。歌がそんなに上手いならもう少し最初からにおわせておいて欲しかった。

    そんな風にちょっと置いてきぼり感を感じたので評価は低めですが

    登場人物達の何をしたって生きるんだという、それでいて冷めているパワーは好きです。

    いつも一生懸命なグリコ
    自由奔放なヒョウ
    クールで格好良いリン
    優しくて、いつも悲しい役どころのフニクラ

    皆に見守られてなんだかんだと強く成長していくアゲハ

    皆で幸せになって欲しかったな…。

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著者プロフィール

映像作家。1963年1月24日仙台市生まれ。横浜国立大学卒業。主な作品に映画『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』『花とアリス殺人事件』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など。ドキュメンタリーに『市川崑物語』『少年たちは花火を横から見たかった』など。「花は咲く」の作詞も手がける。

「2017年 『少年たちは花火を横から見たかった 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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