ウォーレスの人魚 (角川文庫)

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  • 角川書店 (2000年10月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784043441037

みんなの感想まとめ

進化論をテーマにしたこの作品は、人魚と人間の関係を深く探求し、科学的視点から描かれています。実在の博物学者をモデルにした架空の設定を通じて、人魚の生態や進化の過程がリアルに描かれ、物語が進むにつれてそ...

感想・レビュー・書評

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  • 十数年ぶりに再読したけど、ここまで面白かったのかと驚かされた。
    題名に「人魚」と付いてるけど、話はファンタジーではなく人魚を進化の途中で人間と枝分かれした近縁種と捉えたSF。

    この作品で描かれるのは、壮絶な生態を持つ「生物」としての人魚。
    グロテスクで、儚くて、人の倫理観に照らせれば残酷ですらあるのに、それでも人の心を惹き付けてしまう危険な存在です。
    その辺りの二面性は高橋留美子の「人魚シリーズ」に通じるものがあるな、と思った。

    内容に辻褄が合わない部分(なぜウォーレスが人魚の生殖のメカニズムに気付かなかったのか)やご都合主義なところもあるけれど、
    ライアンとそのチームの面々といった登場人物たちが魅力的で話にどんどん引き込まれて、先が気になって一気に読破してしまいました。
    たとえ禁断の愛であっても密とジェシーには幸せになってほしいな。


    年をとらない少女に肉体を吸収され、文字通り一心同体となり、何十年も共に生きて最後は一緒に死ぬ、っていうのはある意味究極だよな、と読んでて羨ましくなった。

  • 高校生あたりから、進化論の話が大好きだったし、急にシャチが気になって、取り憑かれたようにシャチの図鑑、書籍、動画で勉強中の私にどんっぴしゃの作品でした。アクア説、エコー、クイック、高周波、クジラの声は低周波などなど、この部分的な説明だけで大好きな分野がどんな文献よりもわかりやすい。作品見終わったあとに人魚がいるかいないかなんて愚問すぎ!いるやろ!ってなっちゃった(入り込みすぎ

  • 人魚と人間の物語であり、人魚の進化(人間の進化も含まれている。)といったことが主眼として書かれた物語。
    はじめは少し難しい話が続いてて飽きそうになったけど、読み進むにつれて、物語の核心部分に触れていく辺りは面白く読めた。最初の難しい話も、後になって、なるほど!と、思うような感じ。
    人と人魚の愛しかた、人魚の生きるための本能や進化は理解が難しいとも思うけども、わからないこともないなとか、どことなく温かさを感じる作品でもあったと思う。
    個人的には、岩井さんの作品の中でも少し違った印象を受けるので、割りと好きな作品。

  • グロテスクだけど幻想的な人魚の小説。

    なかなか読みごたえのある作品でした。
    が、本書を読んだことで童話の人魚のイメージが…

    ウォーレスの遺した文書「香港人魚録」が最後までカギとなっていてリアリティーがありました。

  •  映画監督・岩井俊二が書き下ろした、SFミステリ風味の現代版人魚伝説。
     実在の博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォーレスが中国大陸で人魚を発見し、『香港人魚録』を著して、富豪に譲渡したという架空の設定から始まり、セント・マリア島で捕獲された別個体の人魚ならびに人魚と交配した一族の末裔を巡り、世界各国の科学者の思惑が絡み合う。
     人魚を空想上の存在としてではなく、あくまで進化論の過程に位置付けられる生物=「ホモ・アクアリウス」として捉え、その生態を生物学的かつ科学的に、徹底してリアリスティックに活写している。
     人類のミッシング・リンクを解明しうる仮説対象に加え、高周波および幻覚とローレライ現象、深海に棲息する稀少生物ゆえの生殖行動など、生々しい在り様が赤裸々に描かれ圧倒される。
     終盤に明かされる、ロマンティックな精神性と、グロテスクな形態を両立させた、異類婚姻譚の実態は本書の真骨頂だろう。
     また、学問的探究心の意義と、研究活動に覆われた野心的な残酷さも、容赦なく抉り出される。
     妖しく幻惑的に、人を狂わせ、尚も魅了せずにはいられない、人魚という生物性に惹き込まれ、一気に読ませる力作である。

  • 岩井俊二ということで手に取った一冊。どちらかというと映画の補完になりやすい岩井作品だけれど、これは一冊でかなり濃厚なsfとして仕上がっていた。詩的な世界観だけでなく、進化に関するsfとしても楽しめる一冊。

  • 初岩井俊二。こんな本も書くんだという感想。
    1997年刊行。まだ香港がイギリス領だった時代の話か。人魚の進化と身体の仕組みに迫る(陰謀を隠す)科学者のSF仕立ての本。人間と人魚がものすごく近い生物のように書かれてる一方で高周波とか癒合とか人間とはかけ離れた宇宙人のように書かれてる場面もあってそのチグハグさや結局ミッシングリンクは?マリア1号はどこから来たの?そもそも海家の人の名前と関係が覚えづらい!とか細かな疑問はあるけど、そういうことも気にならないくらい骨太の構想でぐいぐい読んでしまった。クジラやアザラシが哺乳類でいながらあんなに進化して海に順応する生物になったように、人間も同じ方向に進んでいたらどうなったか興味深いなとロマンを感じた。

  • 想像を絶する人魚の生態。
    今のところ空想ではあるけれど、それがあまりにも現実味を帯びていて良い意味で気持ち悪くなった。
    イルカの高周波コミュニケーション、アンコウの交尾の特徴など事実を元に人魚の特性を創造することによって、より読者が受容しやすいように工夫されていた。

    全ての生き物の元を辿ればひとつの何かに回帰して、その変遷の記憶は私たちの深層心理の中に身を潜めているのかもしれない。みんなどこかで繋がっているんだと考えると心が穏やかになった気がした
    酸素が不必要でいつまでも液体の中で漂っていられる感覚は、再び胎内に抱擁されるような心地良さなのかな。

    久々に小説に没入して楽しく事ができて嬉しかった!

  • 面白くて一気読みした作品の1つ。読んでる最中独特の雰囲気似まとわりつかれた不思議な気持ちになった作品。

  • 最高… 感謝… 愛… ラブ… 湧……

  • 学生時代に読んで衝撃を受けた作品。こんな世界観を作れる人間がいるのだ、と。

  • 岩井俊二監督は私の青春に大きく根ざした存在なので、過大評価になってしまうかも知れないけれど化学的な静けさや単調さを見せつつも、非科学的な熱い人間身、生々しい感情の描写
    ”情愛”と”尊厳”、慈しみをありありと描いている、全ての隔たりを払拭してくれる良作

  • 1996年8月31日に劇場公開された映画「ACRI」(監督・原案・ACRIデザイン:石井竜也)の原作として執筆が開始されたものの、間に合わず映画完成の後に刊行された一冊。(この原因に付いては、本書の後書きで著者が記しているので参照して下さい。)
    映画は美しい南の海の映像と、浅野忠信の演技が印象的でした。
    小説は最新の進化論と生物学をふんだんに盛り込んだサイエンス・フィクションの要素に岩井俊二独擅場の恋の物語が堪能できる、四百頁を超える大作。舞台も南太平洋、沖縄、香港、アラスカと、太平洋を囲む広範囲に渡っています。スケールの大きさは、映画を凌駕しており、映画の原作としての制約を解き放たれた著者の作家としての才気が豊かに味わえます。
    サイエンス・フィクションとしては、生物が利用する「音」=超音波領域を含む声帯が作り出す「音」と、人魚の可能性として「人類海洋生物説」を取り上げています。
    いずれも、僕が好んで読む進化論、生物学ノンフィクションで目にしたものです。例えば「音」に関してはリチャード・ドーキンス著「ブラインド・ウォッチメイカー」1993/10早川書房[上]p166~が、エコロケーション(自ら発する音波による、視覚)に触れています。さらに突っ込んでp168では
     ”イルカについては、おもしろい示唆がなされてきた。もしエコーをその気で使うなら、イルカは、相手に自分の「心像(メンタル・ピクチャー)」を苦もなく伝えられる手だてを潜在的にはもっているというのである。彼らは、そのきわめて多彩な声を使って、特定の物体からのエコーによって生じるであろう音のパターンを擬態しさえすればよい。このようにして、彼らはそうした物体についての心像を互いにつたえることもできるというわけだ。”
    とあります。
    つまり、僕ら人間が見る「光」は、太陽や電球などの反射でしかないけれども、エコロケーションを利用するイルカが見る「音」は、自らが声帯で発したものの反射。自分で作り出せるわけです。もし、人間が光を発することが出来るなら、横に座る恋人に、音声によるメッセージに加え、テレビのような映像によるメッセージが送れるのと同じ事です。
    なるほど、この小説で空想的に語られる「心像」の伝達は「あるかもしれない。」と思えます。
    また、人魚の可能性としての「人類海洋生物説」は、竹内久美子著「男と女の進化論」1994/02新潮文庫p21「背の高い男は何故モテる?」で、「水生人間説」として紹介されています。ここでは、「化石などの直接的証拠はというと、これが何一つとして出てこない。」のが残念ですが、もし、そうであったなら、そのまま海洋生活を続けた人間(?)が伝説の人魚として別の進化を遂げていることも「ありそうな」事です。
    ちなみに、~もう、探すのが面倒だから、出典を明記しませんが~リチャード・ドーキンスの著で、「雪男」の可能性を取り上げ、現在まで生き残った「旧人」または「原人」の子孫ではないか。としています。この推測は、まさしく本書「ウォーレスの人魚」での人魚に対する推測と事を同じくするもので、岩井俊二のSF的思考が、現代の進化論第一人者である「リチャード・ドーキンス」に匹敵するものであることが伺えます。
    二十世紀半ばのSF(サイエンス・フィクション)が、まさに日進月歩であった宇宙物理学に根を下ろしたものであったのに対し、現代の(例えば本書の)SFが、現在日進月歩の生物学に由来しているのが楽しいですね。
    「サイエンス・フィクション」としての本書について長々と書いてしまったので、切り上げますが、その他に
    「未知の生物を理解する」とはどういう事か?
    また、
    「愛」とは?
    について、感じることが多かった本です。
    前半を過ぎたあたりから、読書を中断することが出来なくなり、次の日は仕事だと言うのに徹夜して、読みつづけ、今日に至りました。
    未知の生物を理解し、愛を育むと言うことは、身近な未知の生物=異性を理解し、愛を育むことに応用できるということです。この本を読むと、恋人の不可解への理解への一助となる可能性がありますよ。と、誰に言って良いのか解からないメッセージにて、この感想を終わりにします。

  • 面白い。一気に読んでしまった。
    進化論含めてベースもしっかりしてて良い。

  • 読み始めてすぐに
    「人魚は存在するか否か」の問題より
    「この場合、人魚はどう行動するか」の問題になり、最後には
    「人魚として海に帰るか、それとも人間として地上に残るか」
    を論点にしている自分に気づく。
    つまり、人魚は存在するのだ。

    …というのをうっかり信じ込まされてしまう危ない小説。
    秀逸です。

  • ◆◆思いっきりネタバレがありますので未読の方はご注意ください

    進化論をベースにした人魚のストーリーは自分でもかつて考えていたことがあるのでどうだろうと思って読み始めたが、ウォーレスの実話というか伝説というかと近未来の科学的視点からの人魚の描写の緻密さに驚いた。進化論的な味付けもおもしろくグイグイと引き込まれた。やはり自分はこういう「科学=現実領域」と「人魚=幻想領域」が接するようなところで展開する物語が好きな
    のだなと改めて実感。密とジェシーが出会ってすぐにお互いを求めあってしまう廃屋のシーンもふたりの感情の描写がうまく、なぜかすんなりと納得させられてしまった。

    圧倒的だったのはやはり海洲化と海鱗女の「癒合」という衝撃的な愛の形である。人魚という幻の存在を生物学的にここまで描いた作品はおそらくこれまでなかったであろう。このシーンを含む洲化と鱗女の記憶が密とジェシーに伝わるパートは香港というエキゾチックな舞台もあいまって非常に美しく且またエロティックであり、作者の映像的美意識が発揮されている。

    [ジェシーの涙がいくつも床に降った。ジェシーは震える声でこういった。「先生…あたし…彼が好きなんです」]という彼女の告白も感動的である。普段は恋愛感情描写にはあまり心を動かされないのだが、作者はこういう切なさのようなものを映像的に描写するのがさすがにうまい。

    そして拉致された密を探すために人魚として覚醒することを決心するジェシー…。



    ……と、ここまではストーリーテリングも緊張感があり非常によかったのだが、なぜかここから先がよくあるファンタジーっぽさとアクションになってしまうのだ。

    高周波を使ってテレパシーのように言葉を交し合う密とジェシーは、まあイルカなどの海洋生物を考えればまだそうでもないが、その高周波を使って氷を割ろうとするところなどはちょっと…。

    斎門教授一味との甲板での場面やそこで斎門が語る人魚をクローニングしての臓器売買などはちょっとステレオタイプ。ただアレキサンダーの「みんな海の上で起きたことだよ」というのはちょっとかっこいい。

    溺れたビリーの太古の記憶を呼び戻して冬眠させるというところは人間がかつては人魚だったということを意味し、この作品の一番のテーマを象徴する部分であるが、それまでの様々なシーン描写の迫力に比べるとどうにも弱い。

    そして最後の


    ジェシーは密の手を握った。
    「……海に帰る?」
    ダークブルーの世界に包まれながら、二人は抱擁した。


    も、なんだかこれだけの物語のラストシーンとしてはちょっと平凡。密とジェシーが愛し合っていくのならそこには「癒合」という非常に重い十字架が待っているのかもしれないし、人魚とはなんなのか? 人魚として生きていくということはふたりに何をもたらし何を失わせるのか? といったこの作品のテーマからするとちょっと軽すぎる。

    また人間がかつて両棲動物であり、人魚世界に別れを告げて陸に上がってきたのであれば、そうした進化の過程での別離と再びの遭遇、そこで起きた悲しい事件を通してかつては同じであったのに今ではお互いが理解できないところまできてしまった種としての運命的な哀しみのようなものをもっと強く描いてほしかった。まあ、これはかなり個人的な好みが入ってしまっているが。


    他にも以下の点が気になった。

    ◎「癒合」に関連するのかどうかわからないのが、密と志津香が漂流中に立ち泳ぎのままセックスをするということ。このシーンの意味は? これによって密の人魚としての覚醒のスイッチと捉えるべきか、それとも密とジェシーの間に「癒合」という特質は現れないということの暗示なのか?

    ◎双子として生まれた密とジェシーはなぜ別々に引き取られなければならなかったんだろう? (まあストーリー設定上ということはわかるんだけど…)

    ◎リック・ケレンズの説明によれば人魚は人間から枝分かれした種に間違いなく、それは400万年前ぐらいらしい。しかし興味深いのは人間の祖先といわれているアウストラロピテクスと比べ、人間とホモ・アクアリウスがまるで同じ種であるかのようによく似ているということ。400万年水中で進化してくれば人間よりはイルカのような形態になっていくのではないか。リック自身、これはどうしたことだろう? と言っているがその後その答えは描かれなかった。


    いかんせん途中までがかなり個人的な好みにぴったりだったので、なおさら最後が残念。

    余談だがウォーレスと人魚のくだりは山田章博の人魚の話を思い起こさせられ、またジェシーのイメージがなぜかエヴァンゲリオンのアスカとずっと重なったままだった。

  • 常識をくつがえす。フィクションであっても真に迫るリアリティでそれでいて頭に浮かぶ映像は美しくて、岩井俊二さんの小説作品は初めてだったけどリリィシュシュのすべて、だとか映画作品に通じるするどい透明感を感じた。胸のどこか奥がキュルキュル軋むような痛むようなガラスの綿で締め付けられるような。現実と非現実のはざまの自分がどこにいるのかわからなくなるかんじ、印象的。

  • 人魚の存在を進化論的な側面から描写し、本当に人魚いるのかも?っと思わせる。人魚の繁殖行動も壮絶な描写でありながら、自然界に実際にある繁殖なので科学的説得力もあり。後半は完全にSFものになっちゃうけど、全体的にとても面白い内容だった。

  • 岩井監督やはり天才!!
    壮大なファンタジーでありサイエンスミステリーでありオカルトでもあるラブロマンス!!

    架空のストーリーなのにリアリティを感じさせるのは常にその映像が脳内にありありと浮かんでくるからだろう。
    あまりに大きすぎるテーマのためにたぶん映画化は無理だけどこのまま小説だけであって欲しいとも思う。大切な一冊になった。

  • 何度も何度も読み返してしまう本。岩井俊二さんの本を読むと、いつもその世界観に深く吸い込まれてしまう。
    文字通り、愛する人と「一つになる」という激しい愛の形。そこまで愛する覚悟はどれほどのものなのだろうと思う。

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著者プロフィール

映像作家。1963年1月24日仙台市生まれ。横浜国立大学卒業。主な作品に映画『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』『花とアリス殺人事件』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など。ドキュメンタリーに『市川崑物語』『少年たちは花火を横から見たかった』など。「花は咲く」の作詞も手がける。

「2017年 『少年たちは花火を横から見たかった 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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