夜光虫 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.52
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  • (4)
本棚登録 : 469
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (816ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043442034

作品紹介・あらすじ

プロ野球界のヒーロー加倉昭彦は栄光に彩られた人生を送るはずだった。しかし、肩の故障が彼を襲う。引退、事業の失敗、莫大な借金……諦めきれない加倉は台湾に渡り、八百長野球に手を染めた。

感想・レビュー・書評

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  • 台湾の野球賭博に足を踏み入れた主人公の転落。このあたりを書かせると馳星周は本当にうまい。

  • なんつー、重く哀しく辛い話なんだ....。

    人生が狂いどんどん堕ちていくあたりは、もう止めてくれと心は叫ぶが、
    手はページを勝手にどんどんめくってしまい、
    貪るように読んでしまった。
    もー凄まじいインパクトある物語。

    救いはラスト、女性と会うシーン。
    彼女のとった行動と、主人公の対応がこれまた泣ける。
    かっこ良すぎだろ。

    久々に本読んだって気にされる逸品。(話が長いのもある)

  • 【作品紹介】
    馳星周ノワール全開、八百長野球に手を染めた男の破滅
    重たい負の疾走感、とでも言えばいいだろうか。文字通り徹夜の一気読みを強いられたのだ。馳星周が約20年前に発表した『夜光虫』である。
    舞台は台湾。主人公の加倉は日本から同地に渡ったプロ野球投手だが、黒社会の仕切る八百長に手を染め、大金をため込むまでになった。だが彼を慕う青年・俊郎が、その純朴な正義感ゆえに加倉を守ろうと八百長の件を警察に通報しようとしたことで、破滅への転落がはじまる。
    加倉は衝動的に俊郎を殺す。八百長が暴かれることへの恐怖と、美しい俊郎の妻・麗芬(リーフアン)を自分のものにしたいという邪念のゆえだった。俊郎殺しを隠し、麗芬に近づく加倉。俊郎殺しを嗅ぎつけ、加倉に八百長を強いる黒社会のボス。そして加倉の後ろ暗い秘密をすべて知るメフィストフェレスのごとき老人・王東谷。加倉は追いつめられ、同僚を八百長に引き込み、さらに追いつめられる。だが恋慕する麗芬の前では潔白を装わなくてはならない。しらを切れ、ごまかせ、丸め込め。加倉は呪文のようにそう唱え続ける。
    まるで真っ黒い壁が四方から迫ってくるような窒息感。これがページを追うごとに加速する。ここから脱するために邪魔なやつらを殺して殺して殺してしまえ――そんな加倉のデスペレートな精神が、馳星周の異様に熱っぽい文体によって読者にも伝染するのだ。熱帯の禍々(まがまが)しい風土病のように。
    毒々しい糖蜜の中を落下してゆくかのごとき暗い破滅の感覚。それをここまで恐るべき吸引力で描き切った作品はない。魂の暗い底の底に何が待っているのか。見届けずにいられなくなる。徹夜で本書を読み切るまで、私は呼吸を忘れていたような気がする。(紺)
    評者:徹夜本研究会

    【感想】
    「不夜城」依頼久々の「馳星周」の作品。
    安易に人を殺しすぎな感じがするが、期待を裏切らない裏社会ぶりが面白い。

  • 少し長いかな.

  • 2017/12/17読了。

  • 冒頭から、主人公・加倉の転落の描写の歯切れのよいこと。これで物語にスムーズに入っていくが…。
    ”主人公”であっても良心の人でも正義の人でもなく、一般的な基準で言えば、どうしようもない悪党。そんな言葉が生易しくなるほどの犯罪者となっていく、その軌跡をつづった物語と言っていい。
    しかもバイオレンスも性描写も短いながら、フラッシュのように情景を切り取り、映し出し、嫌悪感すら覚える。

    それでいて読み続けるのは、加倉の想いや本能にどこか共感を覚えずにはいられないからだろう。デフォルメされ普通の人だったら抑制される臨界点を軽々と超えて行くところだけが違うのであって、金・欲に対する欲望自体は変わらないのだから。

    しかも登場人物は、ほとんどが悪党。最初の臨界点を超える殺人だけがまともな相手だけにあとは加倉を食い物にしようという犯罪者だらけ。もみくちゃにされ血を這いつくばりながらも本能に導かれ屍を乗り越えていく加倉の生きざまはすさまじいばかり。

    前半、物語があまり動かないのだが、後半は疾走感もあって一気読み。そして意外なことに余韻の残るラストが今までの殺戮と対照的で見事に物語を締めくくっている。
    モラル的には賛否もあろうが、間違いなく傑作。

  • 加倉昭彦は日本のプロ野球で活躍したが,故障が続き台湾のプロ野球に転ずる.台湾では八百長が横行しており,放水と呼ぶ.通訳の王東谷は戦前の日本統治下で山村輝夫という名を持っていたことなどから,昭彦に良くしてくれた.同僚の台湾人・張俊郎と懇意になるが,真面目な俊郎が放水を警察に密告することから話が展開する.昭彦は王國彦や袁,陳らの取り調べに対して放水はやっていないと供述するが,黒幕が順次登場する.徐栄一からは様々な飴や鞭を受ける.昭彦は経営しているバーの女 リエ(温晶晶)を良い仲だ.徐から高級時計をもらったところを俊郎に見られ,彼を殺してしまう.リエにアリバイ工作を依頼し警察の追及を逃れるが,俊郎の妻麗芬と恋仲になる.その後,同僚のロパスやリエを殺した昭彦は,徐から難題を吹っ掛けられ苦悩する.取り巻きの経歴を調べるうちに意外な事実が次々を判明し,話は急展開する.台湾の裏社会のどす黒い面を克明に描写しており,ある程度のフィクションはあるにしても,このような実態はあるのだろう.不幸な生い立ちが昭彦や周りの登場人物に付きまとう点は,振り払いたいのにどうしようもない感じだ.文庫本で805頁だが一気に読破できた.面白かった.

  • めちゃくちゃ厚くて重い本。ジャンルは「ハードボイルド」としたが、本当は「ノワール」という、「犯罪者小説」というジャンルだそうな。ハードボイルド小説っていうのは、アイテムの描写にこだわりがあったり、主人公のこだわりが強いことで、キャラクターが立ってくるところが有るのだが、本作にはない。自分の知っている言葉で表すのなら「ヤクザ小説」。

    本作は、台湾に渡った日本人野球選手が、ヤクザがらみで八百長をして云々というストーリーであり、検索するとそれなりに物議をかもしたようだ。

    そしてこの作品、登場人物が全て嫌なやつ、いや、人間のクズと言っても良いのしか出てこない。前半は特に「もう読むの止めようかな」というくらい嫌になるような話が続く。そしてちょうど半分くらいに来たところで小休止し、そこからは描かれているシーンとは裏腹に、かなりスムーズに読めた。慣れというよりも描写が軽くなったからではないかと思う。

    そう、全体を総じて、文章は軽い。メリケンサックで頭を割られたり銃で撃たれたりする割に軽い。そういう意味で、厚さの割に読みやすいと感じる。かと言って、繰り返し表現が鼻についたりすることもないので、語彙力も有るようだ。

    ただその分、葛藤なんかの描写が「あれ?」と感じるほど無く、伊坂幸太郎や安部公房のように、同様に嫌なやつが活躍する作品よりも浅く感じてしまう。ましてや、こだわりでキャラクターをつくり上げる大藪春彦には遠く及ばない。

    井上三太の「Tokyo Tribe」や、Vシネマ的な映画もそうだけど、理由もなく銃をぶっ放したり、仲間だと思っていた人間が突然裏切って殺されそうになるような、闇討ち的な恐ろしさはあるが、人間としての恐ろしさは全く描かないのが、現代のヤクザ小説なのかもしれない。

    読むのは大変ではなかったが、量も内容も結構疲れさせられた。まあ、自分とは関係ない世界の小説という意味で収穫はあったし、悪い小説でもないのだけど、もう1冊買ってみるかと言われると微妙。

  • 2002/3/15 読了

  • 『不夜城』衝撃がかなり強かったので、続編の『鎮魂歌』を買ってきてそっち先に読むかも(u_u )

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。編集者、フリーライターを経て、96年『不夜城』で小説家デビュー。97年、同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年『鎮魂歌 不夜城II』で第51回日本推理作家協会賞、99年『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年『少年と犬』で第163回直木賞受賞。ノワール小説だけに留まらず、さまざまなジャンルの作品を執筆、高い評価を得る。近著に『蒼き山嶺』『雨降る森の犬』『ゴールデン街コーリング』『四神の旗』などがある。

「2020年 『文庫 神の涙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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