蠅の王 (角川ホラー文庫 58-2)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (646ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043465026

感想・レビュー・書評

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  • 田中啓文の伝奇ホラー長編小説。
    イスラエルの遺跡で日本人考古学者が大量の赤子の遺骨を発掘した時、世紀末の扉が開かれたる。
    解き放たれた邪悪が日本を襲い、東京では大量の虫が蠢き凄惨な幼児殺人が連続する。そんな大騒ぎする世間を余所に、極度の虫嫌いである16才の少女・瀬見は、身に覚えのない妊娠をしてしまう。
    彼氏と最後にしたのは三ヶ月前、しかし妊娠は二ヶ月目であるという。思い当たることと言えば、二ヶ月前から夜な夜な夢の中で光り輝く男に犯され続けてきたことだったーー。

    キリスト教、神、悪魔、黙示録、伝説、エログロ、etc.
    中二病が好みそうな要素がたっぷり入った伝奇ホラーで、話自体は非常に面白くて大好きな出来だった!

    ただね、これだけは言わせて欲しい。気色悪い!!
    これでもかっと言わんばかりに大量の虫がうじゃうじゃうじゃうじゃうじゃうじゃぶんぶんぶんぶんぶん、本気で気色悪いったらありゃしない! こんなきしょくて汚い本を読んだの初めてだよ!!(褒め言葉)
    本気で虫嫌いな人達は絶対に読んじゃダメ。あまりに執拗かつ汚い描写を目にして卒倒しかねない。さすがの私でも若干引いた。人間の本能的な嫌悪感を見事に引き摺り出してゆくものがある。

    でも、そういった事を抜きにしても、この作者の小説は面白いと感じてしまう。
    キャラクターも皆独りよがりで活き活きしてて面白い。虫による気持ち悪さで背筋がゾワゾワしてるのに、謎が解き明かされ衝撃の結末に辿り着いたときには今度は激しい興奮のためにぶるりと身体が震えていたりする。
    オカルトチックな内容が好きで、虫と邪悪と汚物に耐性がある人には超おすすめ。

    話自体は好きなんだけど、あまりに虫がきしょかったので☆4つ。

  • 完全に身構えてしまった。600数十ページにも及ぶ厚さとキリストもの伝記ホラーという事で、眉間にシワを寄せ序盤から1ページ1ページを大事に噛み締めながら読む。面白い。歪んだ世界観の描写は素晴らしく、お得意のグロ描写も斬れ味抜群だ。しかし田中啓文はこれで終わらないのだ!終盤は今迄のは何だったんだ!?とハチャメチャにブチ壊した展開になるのだ。もう東宝特撮シリーズなのだ。虫や臓物のグロさ、性的描写のキツいエロさ、架空の表現や駄洒落のくだらなさ。田中ワールド全開の超スペクタルキリスト伝記お下劣脱糞クソ虫ホラーはいい意味で裏切られた。

  • 田中 啓文 『蠅の王』
    (原題『ベルゼブブ』・徳間書店・2001年11月/角川ホラー文庫・2008年1月)

    ある遺跡で、無数の赤子の骨と一つの壷が発掘された。
    その封印が解かれた時、この世は底知れぬ“悪意”で満たされた。
    突如、東京で頻発しだした奇怪な児童殺人。
    地底から幼児の呪歌が湧き上がる異常の街に、悪魔教団が姿を現す。
    その頃、一人の少女が身に覚えのない妊娠をした。
    生まれ出ようとしているのは何者なのか?そして、巨大な呪いは誰のものか?
    想像もつかぬ真実がついに解き明かされたとき、“蠅の王”が出現した。(セブンアンドワイHPより)

    この伝奇ホラー、というジャンル、当たりが少ない籤をひくようなものだと認識しているので敬遠気味であったのだが、あの田中啓文が・・・、と思わず手にとってしまった。
    「あの」田中啓文と言っても、最近は落語やジャズを題材にしたミステリの方で注目されてたのでそのイメージしかなかったのだが、そういえば『ミズチ』も角川ホラー文庫だし、SFもいろいろ書く人だったはず。『馬子』や『蹴りたい田中』もたしかこの人だったなぁ。

    で、肝心の内容はと言うと、可もなく不可もなく、であった。
    蠅や蜂、蛾、蟻に蓑虫と、これでもかと虫が出てきて、これでもかと人が死ぬ話。
    生来の虫嫌いの私には刺激が強すぎると思っていたが、「怖いモノ見たさ」で結構楽しめた。
    無論、これが映像化などされようものなら、それこそ失神もしくは瀕死状態は不可避だったろう。
    しかし深層意識の虫バリアーが脳内での映像化を固く拒否してくれたので、無駄なエネルギーを使うことなくスラスラ読めた。
    田中啓文はもともとエログロダジャレの人なんだから、こんな省エネな読み方は邪道なわけで、本来味わうべきカタルシスの何分の一しか味わえていないだろうが、もう満腹、ごちそうさま、である。

    キリスト教信仰と悪魔信仰、カルト教団と言った具材に、SF的要素を味付け程度に加え、うまく料理している気もするが、そこの掘り下げというか、ビックリ感が希薄であったのが惜しい。
    これだけの筆力があるのなら、もっと荒唐無稽な展開、驚天動地の真相を、と期待してしまう。
    と言っても、あとがきを読むと、これからもこのタイプのやばい伝奇ホラーをばんばん書く、と宣言してらっしゃるので、このまま期待外れに終わることはまずないだろう。
    次は何とぞ虫以外でお願いいたします。

    ところで、こんなダークな話なのに割と核心に近いところにダジャレを入れてくるその勇気は買い、だ。
    あと、神様の造形も出色!最後のほうのセリフなんて、ただのおっさんになってて爆笑モノであった。

    70点(100点満点)。

  • 虫とはなにか?
    宇宙の外からやってきた
    異星人なのか?

    少女は妊娠したが、
    その子は神で、
    「世界を救え」という。

    人類は、虫の脅威に曝される。
    少女は、世界をすくえるのか?

    ベルゼブブはいったい何者なのか?

  • ぐろかったです…

  • くだらない内容だった。怖いと感じる要素は乏しく、趣味の悪い表現を連ねているだけだった。ま読みやすかったけど

  • 『水霊』の田中さん、久々のホラー文庫です。
    帯に「超B級ホラー」と書かれていて何だそれは~と思っていたのですが。
    ……本当に最高級のB級ホラーでした。笑


    簡単な粗筋。
    ある遺跡で無数の赤子の骨とひとつの壺が発見され、悪魔の封印が解かれた。
    異常な事件が立て続けに起こる異常な事件には、必ず虫が大量発生する。
    そんな時に、ひとりの少女が身に覚えのない妊娠をし――


    分類するならカルトホラー。
    旧約聖書、悪魔信仰、隠れキリシタンなどなど、宗教的なもの満載です。
    けれども何が重要かというと、タイトル通り「虫」なんです。
    うじゃうじゃ虫だらけのストーリーです。

    が。

    もう何がアレってとにかくグロイ。
    しかし血みどろのグロテスクじゃなく(や、それもあるが)、一番目に付くのは「汚物」のグロさ。
    嫌悪感溢れる表現ばかりで、苦手な人にはとことん駄目なんじゃないかと思うほど。
    殺人シーンだけでなく性的描写もえげつない書き方をしてますし。
    私自身も「ここまで書くか」と思ってしまったくらいです。

    おかげで「虫が怖い」とか思うよりも、感想は「グロイ」だけになりました。
    虫が大量発生するシーンなども、その殺され方の方が印象的ですしね。


    まぁそんな話だからこそ、人に薦めるには人間性を疑われそうですが、
    さすがは田中さん。とにかく知識がすごい。
    長さもありますが、悪魔信仰の話などはかなり読み応えのあるモノです。
    話自体も面白いんですよ(ラストは少しぐだぐだでしたが)。
    軽々しく「読んでみてー」とは言えないけれど、興味があるなら是非。



    それにしても想像すれば綾辻さんの『殺人鬼』など目じゃないほどグロイのに、
    眉をしかめるほどではなかったのは、あっさりした書き方だったのかオイラがおかしいのか。
    慣れって怖いですね。

  • 目的がないようなグロさの描写で正直気が滅入った。

  • 表現がかなりグロい
    読んでいると気持ち悪りましたが、なんとか読みきろうと努力して
    読破しました。
    リアル世界とは隔絶された世界の話なので、感情移入することなく
    読んでしまった感じです。

  • 水霊よりは面白いとは思わなかった。虫系、スプラッタ系の気持ち悪く不快感を煽られたい方ぜひ。ちなみに私はそういう分野は嫌いではありません。

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著者プロフィール

1962年大阪府生まれ。神戸大学卒業。93年「凶の剣士」で第2回ファンタジーロマン大賞佳作入選、短篇「落花する緑」で「鮎川哲也の本格推理」に入選しデビュー。2002年「銀河帝国の弘法も筆の誤り」で第62回日本推理作家協会賞短篇部門を受賞。ミステリー、ホラー、伝奇と様々なジャンルで活躍し、時代小説では「鍋奉行犯科帳」「浮世奉行と三悪人」などのシリーズなどがある。

「2023年 『貧乏神あんど福の神 秀吉が来た!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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