玩具修理者 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 3325
感想 : 388
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043470013

作品紹介・あらすじ

玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちにどうにかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く…。現実なのか妄想なのか、生きているのか死んでいるのか-その狭間に奇妙な世界を紡ぎ上げ、全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 「玩具修理者」と「酔歩する男」の短編2作品です。

    「玩具修理者」
    会話の中での子供の頃の奇妙な思い出話。
    そこで出てくる「玩具修理屋さん」は、壊れた物を親に内緒で無料で直してくれる。
    謎の修理屋の風貌も発言もとても奇妙で、死んでしまった猫も直してくれるというホラー要素満載の短編でした。
    好みのグロで、オチも最高でした。

    「酔歩する男」
    この話がメインでいいんじゃないかと思った程面白かったです。
    時間と波動関数の収束、過去と未来のつながりや、脳と記憶と精神の関係。
    私の大好物な類のSF作品でした。
    この類が、ある意味普通のホラーよりよっぽどホラーだと思っています。

  • 私は、いつの時間を生きているのか?昨日と今日の私は、同じ意識を持った私か? 何の問題もなく生きてきた男が、親友を名乗る男の話によって狂気の世界へと連れ込まれる。連れ込まれた?本当はずっと前からその世界にいたのでは?酔歩する男は、読めば読むだけ不安になる。 とにもかくにも読んでいるだけで気分が悪くなる。自分と世界の境界が曖昧になってじわじわ侵食されていく。時間のなかをうつろうなどできるはずもないが、本当にそうなのだろうか?という気持ちにさせられる。無限ループって怖くね?とかよく聞くけどそんなものは生易しい。

  • より、たのしむためには、先にラブクラフトのクトゥルフ神話を読むことをおすすめします。
    が、予備知識がなくても十分楽しめます。
    時間的SFと、ちょっとゾクリとするホラーとクトゥルフ的要素がうまく混ざり合い、短編ならではの読みやすさも相まって面白い作品。


  • 表題作の「玩具修理者」はグロテスクでちょっと目を背けたくなった。

    「酔歩する男」はすごい気持ちが沈む(笑)
    私が今いる世界は大丈夫?昨日と今日は繋がってる?色々考えてしまう。今まで当たり前のようにあった日常や風景がまるで知らないものにみえてしまう。
    どうしても手児奈の存在がよくわからなかった。

    Wikipediaに「手児奈」の項目がある。
    奈良時代以前に暮らしていた女性で男性たちの間で自分をめぐって争いが起こったから入水自殺したらしい。名前は明らかにここからとってるみたい。
    、、と思ったら、小林泰三の「酔歩する男」は手児奈伝説をもとにする、っていう記述もあった。
    でもこの伝説をもとに現代を舞台にこんな突拍子もないホラーが書けるなんて。
    すごい。

  • 「玩具修理者」は印象としては、「文体がまともな矢部崇」という感じ。気持ち悪い描写とかはまさにそうだった。オチで「えっ?」となり、その意外性かエンタメとしても良作だと。
    「酔歩する男」は読後、頭をフル回転させて解釈をするが最終的に理解できているのかできていないのか分からない、その不確かな感覚にモヤモヤ感や不安感を感じる作品だった。『ドグラ・マグラ』の読後感に似ている。

    解釈メモ(合ってるか分からん)

    一般人
    ・→→→→・→→→→・
    C B A
    それぞれのポイントごとの事象は、時間を逆行することがないので、波動関数が発散することがない。したがって確定した事象は変わることはない。
    小竹田がA地点からB地点に逆行して事象aがなくなったとしても、B地点にいる一般人は事象aを知り得ない。この人たちにとったら、A地点に来たときに生じる事象a'が確定事項となり、波動関数が収束する。そしてこの人たちは時間を逆行することはないので、波動関数が発散することはない。

    小竹田
    ・→→→→・→→→→・
    C B A
    A地点からB地点に逆行した際、A地点で確定していた事象aはなかったことになる(波動関数の発散)。小竹田が再びA地点に戻ってくる、あるいは別の意識の小竹田がA地点に来たときには、事象aではなく別の事象a'が起こる。

    血沼
    ・→→→→・→→→→・
    C B A
    時間を逆行することがないので、時間意識などには異常を感じていない。しかし、波動関数を再発散させない能力が欠落してしまっているため、小竹田がA地点からB地点に逆行すると、血沼にとって確定していた事象aがなくなり、時間意識が連続しているものの事象a'にすり替わってしまっている。そのため同僚との認識にズレが生じたり道が変わってしまう現象が生じる。


    っていうこと????全然分からへん。書いてて頭バグりそうになった。

  • 裏表紙のあらすじを読んで、なんとなく気になって購入。
    読み進めているうちに、あ、ホラーか…と気付くくらい、著者への知識がなかったのですが、グロテスクではあるけれど、ホラーが読みたい方ならこれではないかと思います。
    読みやすくてサクサク読めました。
    一つ目の短編のラストはまぁまぁ気に入っています。
    二つ目の話の方が小難しくはあるけど、それでも引き込まれてあっという間に読了。

  • 積読崩しました。いい感じに気持ち悪かった……。
    にしてもこの作者さんの会話文は独特ですね。倒置法が癖なのかな。あと凄く芝居掛かっているように見える。

    「玩具修理者」
    女の語り口が怖い。人体解体シーンはこうなるだろと流れ的に分かっているのにも関わらずいざ目にするとうぇぇ……と生理的にくるものが。淡々と詳細に描いている感じがよかった。オチもそうくるか! という感じで、珍しくはないんだけど綺麗にまとまっていました。その後がとても気になる話。

    「酔歩する男」
    頭おかしくなりそう~ドグラマグラを読んだ時の感覚と似ている。途中から現れる専門用語の波も相成ってなんだかくらくらしてきます。解釈にかなり頭を使う話なのでそのうち改めて読み返したいな……。自分の立ってる位置があやふやになりそうな不思議な読後感がとても良いので現実を離れて架空の世界にどっぷり浸りたい時にオススメです。

  • 男女の軽い会話の中のグロテスクな描写が面白い。
    そしてその男女とは?
    軽妙なオチ。

  • 懐かしくなって再読しました。表題作の方は覚えていたけど「酔歩する男」は覚えていなかった…倍以上分量ある。。
    「玩具修理者」は損壊描写はウッとなるけど、お話はダークファンタジーで好きです。悲しいお話ですし。修理者の呪文がクトゥルーな事を、長じてからクトゥルフ神話読んだので(…そうなんだ!)となりました。そう見ると、玩具修理者の外見もそれっぽい。
    「酔歩する男」は難しかったです。タイムスリップ、前後に移動する度に分岐が増えていくって事かな…もう同じ相手とは会えないのは。2人が時間を保持出来なくなるきっかけになった手児奈さんが、そもそものきっかけではなく、タイムスリップするようになって発生した…みたいなのがわかりませんでした。ううむ。。
    「玩具修理者」が小林先生のデビュー作みたいですが、この頃はまだそんなにグロくなかったんだな、と思いました。早いご逝去が悔やまれます。

  • 積読を消化しようと思い、ひとまず薄い短編集から消化。小林泰三を読むのは初。
    事前知識なく読み始めたところp.9めでいきなりヨグソトースが降臨し面食らった。読了後に調べてみたが小林泰三は有名なラブクラフトフォロワーとのこと。

    表題作の玩具修理者はかなり軽くさらっと読める。文体は、特に前半の会話部分は翻訳小説を読んでいるようなぎこちない感覚があった(後半以降その違和感はなくなるので意図的なものか、単に会話文が冗長なのかはよくわからない)。内容的には先の想像はつくものの、それでも読ませる文章力がある。また語り手の男の茶々を入れずにいられないが望んだ答えを最短で得られないとすぐ癇癪を起こすような性格は絶妙に気持ち悪く、こういう親の元で贔屓され甘やかされて育つとこうなるのかなあという人物背景の広がりを感じられてよかった。
    酔歩する男の方でも登場人物の描写が生々しく気持ち悪い。人間の負の情動を描くのが上手い作家だなと感じた。脳を破壊するシーンでは数行ずつの短い不思議体験を勢いよく読者に次々叩きつけることでラブクラフト世界観独特の発狂状態を再現していて面白かった。
    また名前を軽く調べたところ菟原処女伝説や真間手児奈伝説など妻争い伝説をいい感じに合体させたものが元ネタらしく、伝承や説話には明るくないためこの辺りもそのうち調べてみたい。
    精神が時の流れから迷子になった血沼は、ラブクラフトのヘンリー・アーミテッジだったりダーレスのラバン・シュルズベリだったり、自作品内の所々で名前が引用されるような立ち位置を感じる。他作品を読んでいないので実際のところはわからないが、どこか別の作品でひょっこり会いそうな予感。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2022年 『未来からの脱出』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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