玩具修理者 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 3872
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043470013

作品紹介・あらすじ

玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちにどうにかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く…。現実なのか妄想なのか、生きているのか死んでいるのか-その狭間に奇妙な世界を紡ぎ上げ、全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 「玩具修理者」と「酔歩する男」の短編2作品です。

    「玩具修理者」
    会話の中での子供の頃の奇妙な思い出話。
    そこで出てくる「玩具修理屋さん」は、壊れた物を親に内緒で無料で直してくれる。
    謎の修理屋の風貌も発言もとても奇妙で、死んでしまった猫も直してくれるというホラー要素満載の短編でした。
    好みのグロで、オチも最高でした。

    「酔歩する男」
    この話がメインでいいんじゃないかと思った程面白かったです。
    時間と波動関数の収束、過去と未来のつながりや、脳と記憶と精神の関係。
    私の大好物な類のSF作品でした。
    この類が、ある意味普通のホラーよりよっぽどホラーだと思っています。

  • 玩具修理者:女がサングラスを掛ける理由を語る。幼少期,玩具修理者に死んだ弟を治して貰った話。淡々と語る怖さが良い。
    酔歩する男:菟原処女伝説をもとにした話。タイムトラベル。難解。

  • 『玩具修理者』と『酔歩する男』の2編。『玩具修理者』のほうは、何語だかわけのわからない言葉を言う玩具修理者がグロくて怖くて気持ち悪い。そしてテンポよく進む会話は不気味で、最後の1頁、驚きと共にかなり怖い。
    『酔歩する男』は、読んでて脳がぐるぐる回る感じ。タイムトラベルにまつわるSFで全部が夢だと思いたいような…。さほど怖いというのはなかったけど、こちらも最後のオチに衝撃受けた。『玩具修理者』のほうが面白かった。こんなに短いストーリーでここまで恐怖なのはさすが。

  • ホラー小説の中でも特に好きな一冊です。表題作の玩具修理者もそうですが、酔歩する男が最高に面白い。高校生のときに読んで衝撃を受けた本。

  • 死なせてしまった弟を修理してもらう『玩具修理者』とタイムトラベルものの『酔歩する男』の二編。それぞれに出てくる<ようぐそうとほうとふ>と<てこな>の名前が世にも奇妙な物語に出てきそうで忘れられない。最初の話は少しグロテスクだったし、二つ目は延々と続く地獄だったけど面白いSFホラー小説でした。

  • 私は、いつの時間を生きているのか?昨日と今日の私は、同じ意識を持った私か? 何の問題もなく生きてきた男が、親友を名乗る男の話によって狂気の世界へと連れ込まれる。連れ込まれた?本当はずっと前からその世界にいたのでは?酔歩する男は、読めば読むだけ不安になる。 とにもかくにも読んでいるだけで気分が悪くなる。自分と世界の境界が曖昧になってじわじわ侵食されていく。時間のなかをうつろうなどできるはずもないが、本当にそうなのだろうか?という気持ちにさせられる。無限ループって怖くね?とかよく聞くけどそんなものは生易しい。

  • 玩具修理者は何でも直してくれる。独楽だってラジコンだって死んだ猫さえも。ある日私は弟を死なせてしまった。玩具修理者の元に持っていくと…

    2編入っていましたが私は玩具修理者の方が面白かったです。分かりやすい狂気で。酔歩する男は専門用語多めです。

  • より、たのしむためには、先にラブクラフトのクトゥルフ神話を読むことをおすすめします。
    が、予備知識がなくても十分楽しめます。
    時間的SFと、ちょっとゾクリとするホラーとクトゥルフ的要素がうまく混ざり合い、短編ならではの読みやすさも相まって面白い作品。

  • 「玩具修理者」は印象としては、「文体がまともな矢部崇」という感じ。気持ち悪い描写とかはまさにそうだった。オチで「えっ?」となり、その意外性かエンタメとしても良作だと。
    「酔歩する男」は読後、頭をフル回転させて解釈をするが最終的に理解できているのかできていないのか分からない、その不確かな感覚にモヤモヤ感や不安感を感じる作品だった。『ドグラ・マグラ』の読後感に似ている。

    解釈メモ(合ってるか分からん)

    一般人
    ・→→→→・→→→→・
    C B A
    それぞれのポイントごとの事象は、時間を逆行することがないので、波動関数が発散することがない。したがって確定した事象は変わることはない。
    小竹田がA地点からB地点に逆行して事象aがなくなったとしても、B地点にいる一般人は事象aを知り得ない。この人たちにとったら、A地点に来たときに生じる事象a'が確定事項となり、波動関数が収束する。そしてこの人たちは時間を逆行することはないので、波動関数が発散することはない。

    小竹田
    ・→→→→・→→→→・
    C B A
    A地点からB地点に逆行した際、A地点で確定していた事象aはなかったことになる(波動関数の発散)。小竹田が再びA地点に戻ってくる、あるいは別の意識の小竹田がA地点に来たときには、事象aではなく別の事象a'が起こる。

    血沼
    ・→→→→・→→→→・
    C B A
    時間を逆行することがないので、時間意識などには異常を感じていない。しかし、波動関数を再発散させない能力が欠落してしまっているため、小竹田がA地点からB地点に逆行すると、血沼にとって確定していた事象aがなくなり、時間意識が連続しているものの事象a'にすり替わってしまっている。そのため同僚との認識にズレが生じたり道が変わってしまう現象が生じる。


    っていうこと????全然分からへん。書いてて頭バグりそうになった。

  • 迫力ある対話による緊迫感、そして衝撃。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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