- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043470020
作品紹介・あらすじ
臓器移植の専門医である父から、ブタの臓器を次々に移植された少女。父の死後、残されたビデオと資料から見えてきた身も凍る秘密とは……第2回日本ホラー小説大賞短編賞作家の第二作品集。
感想・レビュー・書評
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1話目、人獣細工
先天性疾患により、豚の臓器を移植し続けなければいけない少女と、その手術を執刀する父親。
病気を治すために仕方がなく、愛を持って行われる実験と手術の日々かと思ったが、まさかのまさかのまさか。
じわじわと終盤になるにつれて、いやまさかそんなことはないよなって思いが過ったが、その通りの悪趣味。
初めていい意味でこんな気持ち悪い作品を読んだ。
2話目、吸血狩り
8歳の時の祖父母宅で過ごした狂気の夏の思い出。
子供から見た世界はファンタジーに満ち溢れているから、多分虚構なんだろうなと思い読んだ。
従姉の言動や状況から、現実ではこうなんだろうと想像しながら読み進めた。子供の想像力はおそろしい。
3話目、本
小学校の同級生から郵送された謎の本の話。
何段階にも頭の中に?が浮かんだ。
私にはいまいち理解できなかったが、面白いことに変わりはない。
それに、面白くなかったとしても、この話は私の中にインストールされた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
醜悪極まりない短編集。
「人獣細工」は父親の執着こそが最もグロテスク。
「吸血狩り」は従妹を奪われまいとする少年の妄執こそが邪悪。
「本」は読んだ者が芸術に汚染されていくが、その本こそはこの本なのかもしれない。 -
三作収録の短編集で、「本」が一番面白かった。こういうふふふっと笑える終わり方が好き。
平和なんだか平和じゃないんだか、みたいな。
表題作は凝りすぎてて次節よくわからなかった。最後は切なかったけど。
「吸血鬼狩り」はすらすら読める内容。怖くない。 -
個人的だが、ミステリーの小林泰三より、ホラーの小林泰三が好き。 そぅ、思わされた一冊。
前に読んだ『アリス殺し』より、コッチの世界観が合ってるんだろな……。
収録順に簡単な感想。
人獣細工:「人間とは?」的テーマの裏で、家庭環境、発表されない研究、その辺でオチは予想出来ました。表現や世界観は大好物。
吸血狩り:インパクトのある冒頭と、ソレに呼応したラスト。少年の語り(作文)のような文体でサラっと読めてしまい、解説を読んで、そぅいう読み方もあるな、と全く気付かなかった。そして、八才の少年はどうやって十字架を作ったのだろう?
本:「夢オチ」が21世紀になり、「上位概念オチ」「ヴァーチャル世界オチ」と進化をして、ソレらにも少々、辟易してたが、コレは納得。そして、麗美子、美香のその後は……。含みのある二重のエンディング。 -
中短編・3つ。
父親は、幼い私のために臓器移植を続けてきた。豚の臓器を。
気持ち悪くて怖い、不安になる、自己がわからなくなる話。
胃、肺、胆臓、肝臓、皮膚、子宮、網膜、耳、ありとあらゆる臓器が豚のものであるなら、私は豚ではないのか。
「人格」とか「自分」を決定するものは何か悩ませる表題作「人獣細工」。
8歳の少年が従姉妹を守るため吸血鬼と戦う「吸血狩り」
突然、中学生時代の同級生から送られてきた不可思議な本の呪いにあう「本」
どれも気味が悪くて怖くて、不安になるけれど面白い話でした。 -
絶対に、豚肉を食べながら読んではいけない。
「人獣細工」は、タイトルから予想されるほどグロテスクな話ではなかった。礼儀正しい端正なホラー小説。
「本」という題の中編では、インターネット黎明期の用語が飛び交うシーンに吹いてしまった(笑)90年代あるある的な微笑ましい描写がホラーテイストを和らげてくれる。
「吸血狩り」は読み返してゾッとした。最後の一行が怖い。 -
『本』の話電波感があって好き。
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読後感がすっきりしない短編集でした。何だろ、読みが浅いのか、それぞれの主人公の思考や行動の切っ掛けが理解できず、かなり置いてきぼりをくらってました。「~殺し」シリーズは、最初から変な人たちと認識して読んでいたから全然気にならなかったんですけど、この作品はよく分からなかったなー。最後「で?」ってなった。
著者プロフィール
小林泰三の作品





