家に棲むもの (角川ホラー文庫 59-5)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 559
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043470051

作品紹介・あらすじ

ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞える。食事ももう一人分、余計に必要になる。昔、この家は殺人のあった家だった。何者が…。不思議で奇妙な出来事が、普通の世界の狭間で生まれる。ホラー短編の名手、小林泰三の描く、謎と恐怖がぞーっと残る作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 小林作品の中では割と地味かと思いますが、面白かったです。小林作品の好きなところはシュールさで、いつも俯瞰で読んでいかないとわけがわからなくなってしまうくらいに読むものを飲み込んでいく力がある。
    グロいところもあるけれど、決して品が悪くならない筆力を感じます。

  • 小林泰三ワールド全開のホラー短編集。
    ただ怖いだけじゃなくて、ネットリした気持ち悪いおぞましさ的な(褒め言葉)。

    6作品のうち個人的好みは「食性」と「お祖父ちゃんの絵」かな。
    「食性」…菜食性対肉食性。肉食性はやや誇張しすぎだけど、菜食性でビーガン主張する話は最近いくつか読んだ本にもネタとして使われてるし、もし実際に身近で菜食性を強要する人がいたら嫌だなぁと。
    「お祖父ちゃんの絵」…私のイメージの中で一番小林さんらしい作品だと思う。グロっぽさとお祖母ちゃんの壊れっぷり(自分の世界の基準でしか物事見えない登場人物ならではの)。

  • ホラー短編集。不安と狂気に満ちてるのに、どこかユーモアがある。
    一話目の表題作「家に棲むもの」が秀逸。嫁いだ先の旧家には見えない何かが潜む。過去の住人の話も織り込みながらじわじわ不安を煽ってくるサイコサスペンス的な進行と妙に生々しい描写が怖い王道の屋敷ホラー。オチを生かす構成と伏線も上手い。
    「お祖父ちゃんの絵」も好み。じわじわ狂気が滲み出てくるサイコホラー。ラストの解釈に少し悩んでいる。

  • 「この家には≪何か≫が居る」っというホラー作品の王道を綴った表題作『家に棲むもの』をはじめとした小林泰三によるジワジワ『来る』7作から成る短編集。
    ≪食べ物≫とは他の命を屠り、生存権を奪って己の栄養分とする人間の利己的な行いに対するその罪とは?を独特の「屁理屈」とロジックで綴る『食性』。
    それぞれ微妙に異なる四人の視点による一つの殺人事件の状況とは?『5人目の告白』
    先出の「肉食屋敷」登場するウルトラマッドサイエンティスト、丸鋸遁吉(まるのことんきち)先生が登場する作者自身によるセルフパロディー作品『肉』。
    「裏・赤ずきんちゃん」なエロティシズムホラーの『森の中の少女』。
    現在と過去、現実と妄想、そして男と女。というアダルトホラーな『魔女の家』。
    小林泰三の得意とする淡々とした語り口による回顧譚はやがて狂気の所業による描写にすり替わってゆくという作者の得意とするロジックを堪能できる『お祖父ちゃんの絵』。
    恐怖やホラーというよりも、生理的嫌悪のドロドロ、グチャグチャな描写で、少しずつ崩されて行く正常な感覚を認識しながら読む事で得られる「活字による快感」が体現できる一冊。

  • 2015年の二冊目は、昨年下半期、最も多くの作品を読んだ、小林泰三のホラー短編集。七編収録。
    この短編集も振り幅が大きい。
    「森の中の少女」、「魔女の家」はダーク・ファンタジー的。
    「五人目の告白」は、ミステリーホラー的。
    「家に棲むもの」も、ミステリーホラー的だが、この中では、王道的なホラーの部類かな?!
    残る三作が自分としては、好み。
    「肉」は少々天然なリケジョの物語。味付け的気持ち悪さもあるが、ソレも含めて、コメディ・タッチ。
    「お爺父ちゃんの絵」はヤンデレなお婆母ちゃんの話。展開は想像出来たが、ソゥいう大オチか……。オチはコレが一番かも?!
    「食性」コレを書いた時点では、「肉食女子」「草食男子」なんて言葉はなかっただろうに……。「お爺父ちゃんの絵」と逆に大オチは予想通り。ラスト、不自然に感じる部分もあるが、この中では一番好みかな?!
    後半紹介の三編は再読すると順番変わるかも?って感じ。
    全体的に今作も、安定的な面白さ。ただ、「コレ!」という目玉作はなかったのが、残念な気がする。そこで、評価は★★★☆☆。

  • 何だこれ?
    読者を怖がらせようとするあからさまな表現がてんこ盛りで全く怖くない。
    子供が書いたという設定で書かれた話しがいくつか収録されているが、オトナがこどもの振りをして書いたことがモロバレの不自然さ。舐めんのもいい加減にしろ。
    ただ、異形の化物の登場シーンは一読の価値がある。クローネンバーグの映画を小説に置き換えたようなグチャドロネバネバはただただ不快。
    かなり擦れているおれでさえ、こういうのには不快感を示すもんなんだということに気づかせてもらったのは良かったかな。ということで★ひとつ。

  • 私の家には、私の家族以外の誰かがいる。家鳴りにしては嫌に大きな音がなるし、視線を感じるのだ。そして、私がそれに気づいた同時期に一緒にすんでいる姑の様子がおかしくなってしまった。これは、この家に巣食う何者かの仕業なのだろうか?




    この作者はの作品は二冊目だが相変わらず読んでいて怖くて、気持ちが悪くなる作品ばかりだった。そのくせ書き方は非常にシンプルなのでスラスラ読めた。信用できない語り手が多く、読みながら脳味噌をかき回されているような感覚だった。一つの事件を複数の証言者が証言しているのだとはじめは読んでいたが、どの話も繋がっているようでつながっておらず、矛盾が多く、読んでいて落ち着かない。整合性を求めようとして読めば読むほど思考は迷宮の中に閉じ込められてしまった。読み返してみても、わからず、仕方なく最後まで読んだがその落ちは反則だ。でもそうだったら確かに、説明がつくなあとも思う。でも反則。しかし、それでも面白いので腹が立たない。不思議だ。結局事件は本当にあったのか、それとも語り手たちの妄想なのかわからないが、相手の行動があまりに人間離れしているから妄想だったのかも。 最後の話はこれは常軌を逸している話。対人コミュニケーションがうまくいかず、妄想をこじらせた独りよがりの人間の狂気。本当に狂気の沙汰。犠牲になった人があまりにも可哀そう。読んでいて嫌悪感募るばかりだった。行動も非常に猟奇的で最後の最後で孫が消えたのも結局妄想?最初から犠牲者以外は誰もいなかったのかもしれない。最後の話は自分の事ばかりで本当に気持ち悪かった。

  •  家に隠れ棲む全裸の老婆、過度の肉食、遺伝子変性奇形種、監禁。グロテスクホラー

     これを読んで以来、家鳴りが怖い

  • 好きな人はすごく好き、小林氏らしい内容の短編集。面白く読みました。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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