- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043470082
作品紹介・あらすじ
何をやってもうまくいかず、悲惨な生活を送る直人は、幼い頃よく見た夢の中を彷徨う。直人の恋人・博美は、腹話術に盲執する男の姿に幻惑される。直人の親友・二吉は、記憶障害となり人生の断片をノートに綴る…。彼らの忌まわしき体験は、どこまでが現実で、どこまでが幻想なのか。読者を狂気の世界へと誘う禁忌の三重奏…。著者初の連作ホラー。
感想・レビュー・書評
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「記憶破断者」の二吉が本作に出ていたと知り、順番は逆ですが、手に取ってみました。3つの中編。「奇憶」二吉の友人でありダメな男、直人。彼が幼いころ見ていた景色を徐々に思い出し、最終的にたどり着くのは…。「器憶」直人の恋人だった女性と腹話術に夢中になった男性との話。このオチはなかなか強烈です。この後どうなったのでしょう。「?憶」二吉が前向性健忘になった理由と、肉の秘密が少しわかります。実は3作のなかでこれが一番怖かったです。ひいっと叫ぶような怖さではなくじわじわと沁みる気味の悪い怖さ。でもこういうの好きです。
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初小林泰三。おすすめにあがる「脳髄工場」はスプラッターっぽい?のでなかなか手を出せず、まずは短編からーと思ったけどぉぉぉ。
食後に読んでみたら、もどすかと思った。最初、きつい。潔癖症でもない私でも、直人の部屋には住めない。作者が思い描く映像を、読者が受け取って脳内で組み立てるとき、言葉選びがどんぴしゃすぎて、もうほんと汚い。
最後の二吉編は好きでした。直人の友人であったばっかりにぃ。 -
「記憶破断者」のスピンオフ作品収録と聞いて(「垝憶」)読んだら、更に「遺体の代弁者」があるらしい。どんだけ引っ張るかな〜。
奇憶→器憶→垝憶と、一応連作の体を取ってはいるが、登場人物が重複するだけじゃんか。。。と思ったら、「器憶」の入れ替わり(←コレ自体はどこかで読んだネタだけど)を伏線に、イヤな終わり方がステキ。あ、冷凍肉はちゃんと(?)お約束@グロホラーの使われ方をしています、特別料理って奴ね。 -
記憶破断者の方から読んでしまったけれど、二吉が記憶を失うまでが多少なり補完できてよかった。
「奇憶」「器憶」「垝憶」の三つの記憶にまつわる連作短編集。
奇妙で奇怪な別の世界にいってしまったどうしようもない男の「奇憶」がわりと好きだな。ああショゴス二号。 -
2015年15冊目は小林泰三の連作短編。
「奇憶」
何をやってもうまくいかない主人公、直人はつれづれなるままに幼少期の記憶を遡ってゆく。ソコには……。
「器憶」
直人の元恋人、博美。その現在の恋人が腹話術に没頭するあまりに陥ってしまったコトとは……。
「土危(←変換できず)憶」
直人の唯一の友人、田村二吉は「前向性健忘症」となり記憶をつなぎ留めるためノートを持ち歩いている。しかし、そこに書かれていたこととは……。
最初の「奇憶」の登場人物をスピン・オフしたかのような連作短編。
中身的には「土危憶」、オチは「器憶」で、個人的好みは並びの逆順かな。 どれも小林泰三的造りと世界観だが、「コレ」というインパクトには欠けてたかな。 -
"二吉は頭に触れてみた。
予想した激痛はなかった。
ただ少し歪になっているような気がする。
その時になって、膝の上にノートが置いてあることに気が付いた。
表紙には、「重要!まず一ページ目から読むこと」と大きく赤字で書いてある。
表紙を捲る。"[p.174_垝憶]
「奇憶」
「器憶」
「垝憶」 -
まさに“忌”憶。モノゴコロがいつ付いたか思い出せないなぁと思いながら。
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いつものグロさがなくて残念。でも連作で、特に博美の腹話術の話は面白かった。結局冷凍庫の死体は誰?最初は直人かと思った。あと、直人の性格にイライラ。でもいるよね、こういう人。
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自己とは、継続的情報の積み上げ一一「キオク」から成り立っている。
現実と夢は違う。
では、記憶のなかでその境界線が見えなくなったら?
自分が動かせる体が自分。
では、その大前提が脆くも失われてしまったら?
過去の経験から今の私がある。
では、その一本の糸が綺麗に断ち切られてしまったら?
「私」とは。
人の「キオク」にまつわるホラー三部作。
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面白いです。
今の自分を認識するにあたって、言うまでもない根本。それを覆すことで見せられる恐怖は、人の本質的なところを突いている気がします。
ちなみにこの星4つは3つめの作品に。秀逸でした。
ホラーってこういうことをいうのかもしれない。 -
―――何をやってもうまくいかず、悲惨な生活を送る直人は、幼い頃よく見た夢の中を彷徨う。
直人の恋人・博美は、腹話術に盲執する男の姿に幻惑される。
直人の親友・二吉は、記憶障害となり人生の断片をノートに綴る…。
彼らの忌まわしき体験は、どこまでが現実で、どこまでが幻想なのか。
読者を狂気の世界へと誘う禁忌の三重奏…。著者初の連作ホラー。
久しぶりに小林泰三の短編
前のレビューでも書いたけど、小林泰三の物語は最初こそ確かな現実に基づいてるんやけど、読み進めるうちにいつの間にか「関節の外れた世界」へと誘われる。
この不気味さは彼の作品ならではやと思う
この本の中では最後の『き(土編に危)憶』が一番好きやな
前向性健忘症が、ホラー要素とこんなに高い親和性を持つとは思わんかった(・∀・)
”わが世界へようこそ”