臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043470105

作品紹介・あらすじ

彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物語を持っているという。彷徨い人はこの怪しげな「臓物の物語」をきこうとするが…。グロテスクな序章を幕開けに、ホラー短編の名手が、恐怖と混沌の髄を、あらゆる部位から描いた、9つの暗黒物語。

感想・レビュー・書評

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  •  グロさに定評がある小林泰三作品の中でも特に血生臭い作品。「透明女」は女性を解体している描写が妙にリアリティがあって読んでいて痛みを感じるような錯覚に陥った。

  • あまりのグロ描写に途中で休憩中。

  •  1999年から2007年に発表された短編に、2009年のこの文庫刊行時に書き下ろし数編を加えたものと思われる。
     巻頭の「透明女」(2009)が、デビュー作『玩具修理者』(1995)と同レベルのグロテスク趣味炸裂のホラーとなっていて、良かった。やはり「突き抜けた」感は痛快なものがある。
     他では「攫われて」(2002)が、誘拐された少女たちの苦悶に満ちた閉所での時間が、悪夢的なインパクトだった。
     一方「SRP」(2005)は、カプセル怪獣ならぬカプセル妖怪や、科特隊の出来損ないみたいのが出てきて、懐かしくも楽しい。同著者で未読ながら『ウルトラマンF』なる作品があるようだが、それと通じる世界なのだろうか。笑わせて貰った。
     他はホラーよりSFに入りそうな作品が多く、あまり良くないものもあったが、全体としては楽しめる作品集だった。

  • 臓物である必要はどれぐらいあったのだろうか。
    ただグロい感じがするから臓物ってだけなんだろうか。
    オープニングからの流れはもう少し膨らませて欲しかった。
    たまにグロに走る星新一もどきみたいな。
    グロに走るのが安易な逃げだと思われないといいなと思う。
    私は少しそう感じた。
    理屈が分からない怖さというのは確かにあって、説明されないまま終わるから怖いというものもあるのだろうけど、これもまた、安易に投げっぱなしするのとは違うと思うのよね。
    著者の中には形がはっきり見えていて、それを直接言及しないまでも、それが存在するからこそできた物語ならいいのだけど、とりあえずなげときゃいいやー、みたいなものだと残念だ。
    この本の物語がどちらなのかは私にはわからなかったけど、グロの使い方は安易かなと感じた。

  • 冒頭の「透明女」がグロすぎで心折れそうになりますが、それを除くと、SFありミステリありのちょいグロバラエティ短編集といったところ。「悪魔の不在証明」は、緻密な論理展開とちゃぶ台ひっくり返しラストが小林泰三氏らしくて素晴らしい。読んでください。

  • 小林泰三的グロテスク短編集

  • 彷徨い人がうらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」そこに展示されている臓物は一つ一つ己の物語を持っているらしい。彷徨い人は「臓物の物語」を聞こうとするが…というプロローグで始まる物語なのですが、読んでみるとスプラッタありSFあり、別に臓物関係なかったりで、あんまり統一性のないグロめの短編集だった。星新一的な「釣り人」「造られしもの」がおもしろかった。オチがよくわからないのが多かったので★2。

  • 『悪魔の不在証明』が最高

    この中に神の存在「賛成派」「反対派」の意見が全て載っている。

    常に議論のテンプレとして携帯しておきたい。

  • "牙を剥いた八岐大蛇の顔が視野いっぱいに広がった。
    三人は目を瞑り絶叫した。
    いつまでも絶叫が続いた。
    三人とも、さすがにこれほど絶叫が続くのは妙だと思った。
    ついに息が続かず、絶叫が途絶える。
    ユリコは息継ぎをして、また絶叫を始めた。
    ブキチは恐る恐る目を開いた。
    目前三メートルのところに八岐大蛇の顔が迫っていた。
    だが、その位置からは前に進むことができないようだった。全身が激しく振動し、表皮が波打っている。
    「二人とも目を開けてください!さあ、逃げましょう!!」"[p.259_SRP]

    前半はけっこうぐろねちょと。

    「プロローグ」
    「透明女」
    「ホロ」
    「少女、あるいは自動人形」
    「攫われて」
    「釣り人」
    「SRP」
    「十番星」
    「造られしもの」
    「悪魔の不在証明」
    「エピローグ」

  • 「腹が立つ」「腹の虫が収まらない」「腹に据えかねる」「腸が煮えくり返る」「腹黒い」「腹を決める」の言葉があるように、腹、腸(はらわた)は古来、日本人にとって脳や胸(心)よりも怒りや恨み、または強い欲望の『意識』が在る臓器なのだとする小林の着想と感性で綴られる9話で構成される恨みと復讐のホラー小説短編集。表題をストレートに解釈するとさぞやと思われるが、内容は確かにグロテスクなホラーも在るもののSFテイストに満ちた奇異なストーリーで構成されている。
    エジプト神話の≪ウロボロス≫と苛めによる恨みの背景を絶妙なバランスで描いた正統派ホラー作品『透明女』。
    ≪霊体視認≫をシステム化した社会で人の人生における強い欲望を描いた『ホロ』。
    小林の短編においてたびたび登場するテーマ≪ロボットと人の優劣の差≫を描いた『少女、あるいは自動人形』。
    ホラーというよりもミステリーの趣が近い誘拐犯と主人公の織り成すストーリーは犯人が主人公の仕掛けたトリックを推理するという逆転の発想がコメディタッチの「攫われて」。
    60~70年代の星新一によるSFショートショートをリスペクトしたような読了感の『釣り人』。
    作者の小林はきっとテレビを熱中して観、妄想の日々を送る少年だったに違いない。いや、きっとそうだ!ヒロインのフジ・ユリコってネーミングどうよ?好きだねぇ、否定はしないその気持、凄く良く判るから。『SRP』
    この作品が随筆されていた頃は「冥王星」は第9番目の惑星だったんだなぁ。ちょっとタイムトラベルしたような錯覚を楽しませてもらったヤング・アダルトなSFホラー作品『十番星』
    『少女、あるいは自動人形』と共通するテーマの短編。「不完全な人間と完全なロボット」の差と、人間の尊厳が危うくなる恐怖『造られしもの』
    有名な「悪魔の証明」をベースにしたストーリーは、文筆家の男と、聖書を盲信する宣教師の男とが繰り広げる神の実在の証明を賭けての問答。行動の出発点が≪善意≫で動いている人間ほど厄介なものはない事を表現したシニカルでブラックな展開は、逆説的に人間の≪腹黒い(グロい)≫部分を炙りだす『悪魔の不在証明』
    タイトルは、かなり≪狙った≫向きがあり、むしろ確信犯的。おもしろかった。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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