落下する夕方 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 971
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480012

作品紹介・あらすじ

梨果と八年一緒だった健吾が家を出た。それと入れかわるように押しかけてきた健吾の新しい恋人・華子と暮らすはめになった梨果は、彼女の不思議な魅力に取りつかれていく。逃げることも、攻めることもできない寄妙な三角関係。そして愛しきることも、憎みきることもできないひとたち…。永遠に続く日常を温かで切ない感性が描いた、恋愛小説の新しい波。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルが良い。江國香織さんの作品はいつもそうだけど。
    恋の終わりを描くために華子は生まれたのでは?と思った。
    失って、失ったことを認めて、過去にする。
    華子のような存在があれば私ももう少し上手く失恋できたのに。

    • 大野弘紀さん
      華子はもはや、刹那的な命の時間で生まれ落ちた、一瞬の永遠のような、亡霊にも似た、思い出(つまり過去)そのものだったのかも、しれない

      華子はもはや、刹那的な命の時間で生まれ落ちた、一瞬の永遠のような、亡霊にも似た、思い出(つまり過去)そのものだったのかも、しれない

      2019/11/22
  • 再(X20回?)読しました。
    20年以上前の1999年発行当時に購入。

    梨果は八年同棲した恋人・健吾に別れを告げられて
    彼は家を出る。健吾の想い人の不思議な女性、
    華子となぜか同居することになるけれど意外と
    その生活はしっくりと馴染んでいき...。

    購入当時も「優雅な生活だな…。」と感じましたが
    (江國さんの小説の登場人物はだいたい優雅に
    生活している)さすがに20年前となると
    生活様式や行動がやや古いですね。
    健吾があっさり転職してさっと仕事を見つけられる
    ところとか…。

    ただしそれを差し引いても始まりと終わりは
    私の中でこのジャンル(恋愛かな?)の小説で
    超えるものはなかなか出てこないです。
    読むたびに心に響きます。

    1年以上をかけて恋を失う物語、大切なものを
    失いそうになっていたり失ってしまったときに
    読み返す小説です。

  • 主人公が、元カレの好きな女と暮らすという奇妙な物語。

    嫉妬や未練に振り回されてドロドロの展開になるかと思いきや、清々しい読後感だった。
    それは主人公が元カレを愛していたからだろうと思う。愛しているのかそれとも愛されたいのか…それは大きな違いを生むんだな。

    あとがきで江國香織さんが『これは格好わるい心の物語』と書いていた。そうかもしれないけど、私は人間らしくて大好き。


  • Twitterでおすすめされて読んだ
    一番好きな小説だと

    この小説は本当に冷静だった
    静かだった
    なぜ彼女は死んだんだろう
    疑問が残る中にも彼らは生きていくんだろうなと思った

  • 印象的だったのは、華子の以下の一言。
    「私はシカ。それも雄のシカになりたかった」

    華子と私と時々健吾。私の中で、序盤は健吾が多くの割合を占めているが、物語が進む中で、徐々に華子に移り変わっていく。

    私が華子にある種、依存していく。華子は関わる全ての他人から、依存または執着されているのに、彼女は全く関心がない。

    華子の言動に我々読者も引き込まれて、興味を抱いていくのが不思議だった。

  • 1500円ぐらいする和風出汁のラーメンみたいな一冊。精巧で緻密、あえてのぼかしが更なる旨味を引き立てる…というか。計算された美味しさ。

    江國香織さんってドロドロをサバサバに書くので親しみやすさからか引き込まれるんだけど、表現適切か知らんが文体に「崩し」がある。倒置法とか体言止めとか習ったけど、例えば一文で済む文章を敢えて二文にすることでキャラを強調して引き立てるとか。ふにゃけた口語を持ってくるとか。

    「私たちはマンションまで送ってもらった。銀色のムスタングで(79項)」

    「健吾は話してくれなかった。かわりにがばりと立ちあがり、焼き肉でも食べに行こう、と言う。それで、そうした(90-91項)」

    それが効果的に散りばめられていてずっと飽きずに最後まで行けてしまうので、ある意味とても精巧。高級な腕時計のよう。ラーメンだけどすすすっといけてしまう。300ページあるのに通勤の往復で読めてしまうんだから、そのスキルは、やはり属人的なものなんだと思う。

  • 久々にどうしようもなく江國さんの作品を読みたくなった。
    最寄りのブックオフが閉店セールをしていたので、『え』のところに行って、装丁に惹かれてこの本を買った。

    読んでいて満たされた。
    優雅で静かで穏やかなのに、あまりにも残酷。
    理解なんてできっこないのに、なんだか、ああそうか、と納得させられる。
    好きだなぁ。お洒落だなぁ。


    8年間付き合っていた恋人健吾は「好きなひとが出来た」と2人で住んでいた家を出て行ってしまう。
    悲しくてやりきれない思いをよそに、健吾が好きになった相手である華子が、主人公である梨果の部屋に転がり込んでくる。

    意味がわからないし、腹も立つ。
    だけど健吾をはじめ多くの人(それも男性のみならず女性も。性的嗜好とか関係なく)が華子に魅了され、気付けば我々読者までもが華子を好きになっている。

    すごい人だよ、江國香織。
    これからも好きです。 

  • 華子のように生きたいと思ううちは
    華子の影、闇、暗さを理解できていない

  • 一見すると非常に奇妙な人間関係が、江國さんのちからによって成立しています。少しずつ時間を置いて再読したい本です。

  • 華子の魅力的な絶望感に惹き込まれる。登場人物のほとんどが、それぞれの問題点を強調するような描き方をされている。それなのに愛おしい。後書きを読んで納得。「格好わるい心」が一番魅力的。
    華子が亡くなる結末は物凄く予想外なのに、その後を読んでいると華子が自殺したのはごく自然な事のように感じられるから不思議。人が溶け込んでいる場所って感覚は分かる。
    最後の「引っ越そうと思うの。」で、梨果の全部の気持ちとの決別を感じて、梨果が健吾から振り切れて良かったって気持ちと、私はまだ華子と決別出来てないし華子の事が大好きなのに、梨果にとっては華子は過去の人になっちゃったんだ……って寂しくて泣きそうになる。読み終わってから、自分も物語の登場人物の1人だったような気分になった。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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