落下する夕方 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 8392
レビュー : 826
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480012

作品紹介・あらすじ

梨果と八年一緒だった健吾が家を出た。それと入れかわるように押しかけてきた健吾の新しい恋人・華子と暮らすはめになった梨果は、彼女の不思議な魅力に取りつかれていく。逃げることも、攻めることもできない寄妙な三角関係。そして愛しきることも、憎みきることもできないひとたち…。永遠に続く日常を温かで切ない感性が描いた、恋愛小説の新しい波。

感想・レビュー・書評

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  • 息苦しいくらい切ないな。
    華子みたいな女がもし身近にいたら苦しいと想う。自由で軽い感じな華子に嫉妬してしまう。
    大好きな人が華子に夢中になる、いや、どの人も華子に夢中になる。
    華子の様に生きることができたらどれだけ幸福だろうか、いや、どれだけ苦しいのだろう。
    華子と健吾の相模湖でボートの上でのセックス。それを聞いた梨果の気持ちは痛いほどわかる気がする、だけどあたしは梨果のようにはなれない。
    セブンアップがすごく気になる。健吾と梨果の馴染みのパイ屋さんも。
    勝也と勝也の家内、華子の弟、惣一。中島さん。梨果の塾の教え子である直人くん。どの男も華子が好きだ。

    華子のような女になりたい。しなやかで自由な美しい、物寂しげな、不思議な魅力のある華子に。

    江國香織さんらしい毒々しく甘美なはなし。

  • 15か月という、長い時間をかけて主人公が恋を失ったことを確認していく話。
    物語の始まりと結びに、彼女が恋を失うときに形のあったものと、15か月の日々の中でいつの間にか形骸化していったもの、その有様が、これ以上ないくらいに適切な分量で表現されています。彼女が経た15か月という時間の中で起こった、残酷なほどに現実的で、けれど掴み所のまるでない日々を描いた物語です。

    この本の魅力は主人公自身と、そして「華子」。
    理性的でありながら、女性らしい感受性や柔軟な物事の捉え方や考え方を持つ主人公は決して強いわけではなく、けれど背筋を丸めることもしない、良識的な女性です。そこに反則的な魅力を持つ華子の存在があります。
    何度読み返しても、華子の魅力や人間性を私はうまく言い表すことができません。文中にも登場人物たちの言葉の中にも「華子のこういうところがいい」といった具体的な表現は一切ありません。それでも開いたページの至るところに、華子の人を惹きつける言葉にできない魅力が散りばめられています。口角の上げ方、言葉の選び方、直喩で描かれていない部分からでさえ、圧倒的に、それを感じさせられます。

    好きな人の視線を借りて、その先にいる人を見つめてしまうこと。適切な分量で言葉を話すこと。持て余す寂しさの処理の仕方。せずにはいられない期待と、期待を裏切られたときのための防御線。人間らしい繊細さと生々しさが描かれた最高の1冊です。

    • 大野弘紀さん
      華子の魅力

      圧倒的に。

      本当に、そう。
      素敵、泣けるくらい素敵なレビュー
      華子の魅力

      圧倒的に。

      本当に、そう。
      素敵、泣けるくらい素敵なレビュー
      2019/03/29
  • 1500円ぐらいする和風出汁のラーメンみたいな一冊。精巧で緻密、あえてのぼかしが更なる旨味を引き立てる…というか。計算された美味しさ。

    江國香織さんってドロドロをサバサバに書くので親しみやすさからか引き込まれるんだけど、表現適切か知らんが文体に「崩し」がある。倒置法とか体言止めとか習ったけど、例えば一文で済む文章を敢えて二文にすることでキャラを強調して引き立てるとか。ふにゃけた口語を持ってくるとか。

    「私たちはマンションまで送ってもらった。銀色のムスタングで(79項)」

    「健吾は話してくれなかった。かわりにがばりと立ちあがり、焼き肉でも食べに行こう、と言う。それで、そうした(90-91項)」

    それが効果的に散りばめられていてずっと飽きずに最後まで行けてしまうので、ある意味とても精巧。高級な腕時計のよう。ラーメンだけどすすすっといけてしまう。300ページあるのに通勤の往復で読めてしまうんだから、そのスキルは、やはり属人的なものなんだと思う。

  • それはたとえば
    ラジオの終わりの寂しさ
    一ミリも誤差のない「おかえりなさい」


    それは例えば
    信じられるものなんて何もないということ
    何かに捕らわれるまで逃げ続けるということ


    何かがおかしいのに
    それを指摘することができない
    目をそらすことが できなくて


    ただただ
    そういうものだと
    受け止めることしかできない


    それはきっと
    人の弱さなのだろう


    正しさで立場を守る人
    賢さで厄介ごとを避ける人
    常識で他人との関りを正す人

    どれも、きっと正しいのだ
    子どもであり、大人であり
    そのどちらもが、正しいのだ

    悲しいくらい、きっとそう
    それさえも愛しいくらい、人という生き物は
    どうしようもないもの

  • ゆっくりゆっくり失恋していく物語。
    執着って寂しい。

  • 装丁がとても可愛くて思わず手に取った。華子さんが素敵だった。

  • 多分100回以上読み返した。それくらい好きな一作。
    情景を思い浮かべながら、その先を想像していたら、そこにすでに先回りされている感じ。そしてこのどうしようもなさ。それがとっても心地いい。

  • 一気に江國香織ファンに引き込まれた作品。2013年今現在も、江國香織作品でこれを超えるものは無いかもしれない。表現の美しさ、空気感、ストーリー全てが満点の作品。

  • ストーリー自体は、こんなこと現実には絶対ないだろうなーと思いながら読んだし、華子に関しても、こんな人が現実に居たら全然魅力的じゃないと思います。私が思うに、作者にとっては、ストーリーや人物像はそこまで重要ではなくて、人が恋をしたとき、また恋を失う時に感じる悲しみを、ただ表現したかっただけなのではないでしょうか。この小説は、文章がきれいで、読み終わった後は、とても美しい風景画を見た後のような気持ちになります。また、小説のタイトルが秀逸です。映画化もされているようなので、いつか探して見てみたいです。

  • カルピスがのみたくなった。

    • 大野弘紀さん
      カルピスが飲みたくなる

      なんて、素敵。
      カルピスが飲みたくなる

      なんて、素敵。
      2019/07/04
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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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