落下する夕方 (角川文庫 え 4-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 11754
感想 : 1007
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480012

作品紹介・あらすじ

梨果と八年一緒だった健吾が家を出た。それと入れかわるように押しかけてきた健吾の新しい恋人・華子と暮らすはめになった梨果は、彼女の不思議な魅力に取りつかれていく。逃げることも、攻めることもできない寄妙な三角関係。そして愛しきることも、憎みきることもできないひとたち…。永遠に続く日常を温かで切ない感性が描いた、恋愛小説の新しい波。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて江國香織さんの小説を読んでみました。本当になんと表現したら良いか分からないし、内容ちゃんと理解出来てないかもしれないけど。でも読んでて、不思議と癒されたし自分を大切にしようと思わしてくれる本でした。

    それは文章がとっても美しいからなのかも。あとヘチマコロンとか、強いぶどうの味がする飴とか、出てくるものたちもなんだか癒される響き。あと主人公が失恋を乗り越えるために、いつもより丁寧に暮らす描写に、自分も重ね合わせて、丁寧に自分を大切にしよって思わされた。失恋全くしてないけど、なんだか共感出来た。

    それにしても華子はどんだけ魅力的なんだ!あの自由さに人は憧れを抱くのだろうか。不思議だ。

  • 再(X20回?)読しました。
    20年以上前の1999年発行当時に購入。

    梨果は八年同棲した恋人・健吾に別れを告げられて
    彼は家を出る。健吾の想い人の不思議な女性、
    華子となぜか同居することになるけれど意外と
    その生活はしっくりと馴染んでいき...。

    購入当時も「優雅な生活だな…。」と感じましたが
    (江國さんの小説の登場人物はだいたい優雅に
    生活している)さすがに20年前となると
    生活様式や行動がやや古いですね。
    健吾があっさり転職してさっと仕事を見つけられる
    ところとか…。

    ただしそれを差し引いても始まりと終わりは
    私の中でこのジャンル(恋愛かな?)の小説で
    超えるものはなかなか出てこないです。
    読むたびに心に響きます。

    1年以上をかけて恋を失う物語、大切なものを
    失いそうになっていたり失ってしまったときに
    読み返す小説です。

  • タイトルが良い。江國香織さんの作品はいつもそうだけど。
    恋の終わりを描くために華子は生まれたのでは?と思った。
    失って、失ったことを認めて、過去にする。
    華子のような存在があれば私ももう少し上手く失恋できたのに。

    • 大野弘紀さん
      華子はもはや、刹那的な命の時間で生まれ落ちた、一瞬の永遠のような、亡霊にも似た、思い出(つまり過去)そのものだったのかも、しれない

      華子はもはや、刹那的な命の時間で生まれ落ちた、一瞬の永遠のような、亡霊にも似た、思い出(つまり過去)そのものだったのかも、しれない

      2019/11/22
  • 主人公が、元カレの好きな女と暮らすという奇妙な物語。

    嫉妬や未練に振り回されてドロドロの展開になるかと思いきや、清々しい読後感だった。
    それは主人公が元カレを愛していたからだろうと思う。愛しているのかそれとも愛されたいのか…それは大きな違いを生むんだな。

    あとがきで江國香織さんが『これは格好わるい心の物語』と書いていた。そうかもしれないけど、私は人間らしくて大好き。


  • 本の内容自体は★3.8くらいだけど
    手に取って一気に読み終わったタイミングで
    なぜかとんでもなく心を救ってくれたので
    ★5の気持ち。

    最近、江國さんの短編ばかり読んでいたので
    一冊通してのお話は久しぶり。
    華子という人物にわたしもしっかりと翻弄されながら、そしてこや物語の人物たちと違わず、彼女に魅了されながら、そして、梨果と共に傷を癒す準備をするかのように2日ほどですぅーっと読み終えました。

    読んだ日数は少ないけど、体感、この一冊の季節、約1年を過ごした不思議な感覚になった。

    恋愛小説、とは一言では言えなくて、どういったらいいんだろうと思っていたら、あとがきに
    これは時間の小説だ、と記載あって、それがすとんと落ちた。

    (江國さん自身は、魂のすれ違いの物語で、
    格好悪い心、未練や執着や惰性に満ちた愛情、の物語でもあるって書いててそれも、なるほどなあと思ったけど)

    一人の女性が、普段の生活を過ごしながら、失恋を乗り越えようとスタート地点に経つまでの物語。
    って書いたけど、なんか陳腐。なんて表せばいいんだろう。
    傷を癒すとかじゃなくて、その過程は、いかにも現実と近いというか(華子以外は)、執着や惰性にまみれた過程で、自分にとって大きすぎるものを失った時に、経験したことがあるような過程が描かれている感覚。

    華子はとてもインパクトがあってこの物語を彩ってくれているけど、きっと、もっとリアルなのは、
    小さい華子みたいな存在、それは人間に限らず、
    もの、ひと(この物語の中の直人くん)、習慣、そういうたくさんの、そこにいるだけのもの、が、立ち止まった時ひ少しずつ人の人生を前に押してくれるのだと思う。

    一方で、わたしにも華子みたいな存在がいたら、うまく乗り越えられることがあるのになあ
    と、しっかりと、華子の不思議な魅力に虜になりました
    でも華子は何か特別なことをしているのではなく
    ただそこにいるだけ。
    損得勘定はもちろん、寄り添ったりとかあたたかいことは何もせず、ただそこにいるだけ。
    それがどんなに難しいことなんだろう、と思う。
    しずかで、あかるくて、絶望しているもの。

    華子はすごいな。
    そんなこと言っても、華子はきっと、ふうん
    と言うだけなんだろうけど。

  • 印象的だったのは、華子の以下の一言。
    「私はシカ。それも雄のシカになりたかった」

    華子と私と時々健吾。私の中で、序盤は健吾が多くの割合を占めているが、物語が進む中で、徐々に華子に移り変わっていく。

    私が華子にある種、依存していく。華子は関わる全ての他人から、依存または執着されているのに、彼女は全く関心がない。

    華子の言動に我々読者も引き込まれて、興味を抱いていくのが不思議だった。

  • Twitterでおすすめされて読んだ
    一番好きな小説だと

    この小説は本当に冷静だった
    静かだった
    なぜ彼女は死んだんだろう
    疑問が残る中にも彼らは生きていくんだろうなと思った

  • ヘチマコロンとか、赤い口紅とか、コーヒーとか、生活感あふれる素敵な描写がすき。
    雨の日にじっくり読みたい。

    もう戻ってこない恋人、ゆっくり失恋していく話。
    どんなに好きでも、人の気持ちは取り戻せない。

  • 1500円ぐらいする和風出汁のラーメンみたいな一冊。精巧で緻密、あえてのぼかしが更なる旨味を引き立てる…というか。計算された美味しさ。

    江國香織さんってドロドロをサバサバに書くので親しみやすさからか引き込まれるんだけど、表現適切か知らんが文体に「崩し」がある。倒置法とか体言止めとか習ったけど、例えば一文で済む文章を敢えて二文にすることでキャラを強調して引き立てるとか。ふにゃけた口語を持ってくるとか。

    「私たちはマンションまで送ってもらった。銀色のムスタングで(79項)」

    「健吾は話してくれなかった。かわりにがばりと立ちあがり、焼き肉でも食べに行こう、と言う。それで、そうした(90-91項)」

    それが効果的に散りばめられていてずっと飽きずに最後まで行けてしまうので、ある意味とても精巧。高級な腕時計のよう。ラーメンだけどすすすっといけてしまう。300ページあるのに通勤の往復で読めてしまうんだから、そのスキルは、やはり属人的なものなんだと思う。

  • 江國香織さんの作品の中でも
    特に好きな本になりました。

    誰の気持ちになっても切ない。
    だけど心地良かった日々を
    ずっと読んでいたくなるような小説でした!

    “つきすすんでいく格好わるい心の上空に、
    しずかな夕方がひろがりますように。”
    (あとがきより)

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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