泣かない子供 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2976
レビュー : 172
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480029

作品紹介・あらすじ

子供から少女へ、少女から女へ……時を飛び越えて浮かんでは留まる遠近の記憶、あやふやに揺れる季節の中でも変わらぬ周囲へのまなざし。こだわりの時間を柔らかに、せつなく描いたエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • この人のエッセイは、赤裸々で気持ちがいい。

    それから、「流しのしたの骨」や「間宮兄弟」のような、江國さんの書く家族の話が、なぜ魅力的なのか、このエッセイの中に見つけたような気がする。
    家族のことを、「排他的集団」と称して、「変態的」と称して、実はものすごく敬愛しているのだ。
    こんな、家族に対する愛情のかけ方、初めて知りました。

  • 「ラルフへ」に触発されて。
    ======================
    由香へ

    おげんきですか。昔の友達に手紙を書くとなって、何人か思い浮かんだ顔の中にあなたがいました。あの時あなたはああだったよね、こうだったよね、って言い合える友達はあなたしか居ないとも。

    一度喧嘩をしましたね。あれがケンカだったのかどうか私には正直分からないのですが。だって何が原因で何のための喧嘩だったかさっぱり覚えていません。覚えているのはあなたが先に謝ってくれたこと。真っ直ぐ私の目を見てごめん、と言ったあなたにあの時私はとても驚きました。こんな風にきっちり喧嘩をする人がいるんだと。

    それまで私は勢いあまって感情をぶつけ合ってそのあと気まずくなりなんとなく元に戻る、というやり取りしかしたことがなかった。ちゃんと思ったことを言って、その後に謝罪をして、という真っ当な喧嘩の仕方を知っているあなたが新鮮でした。

    あなたは私が初めて家族以外で一緒に暮らした人でもあります。振り返ってみるとどうもあなたは本当に特別な存在みたいですね。今全く繋がりがないのが不思議なくらい。

    私が男であなたが女なら上手くいったのかもと考えたことがあります。でもそんなことないのでしょうね。性別なんて小さな要因でしかなくて結局は人と人ですから。

    あなたとは一緒に遊園地にも行ったしホテルのバーにも行ったしショッピングにも行きました。でもそのどれも思えば2人ではなかったね。2人で出かけたことってあったでしょうか?2人で過ごした時間はたくさんあったのに。

    あなたとわたし、先に変わったのはどちらでしょう。少しずつ距離が空いていく原因となったのは。


    あなたがどう思っていたか今は知る由もありませんが、私は徐々にあなたに会うのがしんどくなっていきました。告白すると、あなたに見下されているように感じていたのです。可哀想、と思われている気がしました。あなたといると劣等感を刺激されました。


    何年か前、突然あなたが連絡をくれた時、昨日あやりが夢に出てきた、と言ってくれたのは嬉しかったです。夢に出るなんて、あなたの心の中に私がちゃんと存在しているようで。


    最後に会った時のことを覚えていますか。思えばあれもやっぱり2人ではなかった。私はあなたに会うことを思うと何週間も前から緊張して、美容院に行ったりお洒落をしたり、今思えばこの時点でおかしいですね。

    当日はそれなりに楽しんでいたと思います。なんせ久しぶりでしたから。けれど帰り道から予兆が始まり、家に着く頃には相当ひどい頭痛が起きていました。こんなにひどいのはここ数年なかったと思うぐらい。
    痛む頭を抱えながら、自分が気が張っていたことを知り、その時気付いたのです。会うのにこんなに緊張する相手は友達ではないと。

    いつからでしょうね、私にとってあなたが友達じゃなくなったのは。それとも最初から友達なんかじゃなかったのでしょうか。それは寂しすぎるような気もするけれど。


    あなたがこれを読む可能性もゼロではないけれど、できれば読んでほしくありません。あなたとわたしのことを誰でも見られる場所に書くなんて、あなたは怖がると思う。冷静に見ると怖いね。こういうことは会って話すべきだね。



    ただあなたとなら、いつかここに書いたことも全部話せるような気もするのです。自分の感情を素直に表してくれるあなたになら。

    きっとどこかでまた互いの人生が交差する時が来るでしょう。
    その時にはお酒を飲んでもいいですか。そうすれば私も少しは正直になれる気がするから。


    お元気で。
    あなたの未来の旦那さんに、由香はいい奥さんになると伝えるという約束、いつか果たす日がくることを願って。

  • 夜のコーヒーショップで人を待ちながら、
    ひといきに読んだ。

    日々の小さなかなしみとか、ときめきとか、
    本当に大切に記されている。

    ひとつひとつ読み進めていくと、
    ああわたし生きているなあ、と安心する。

    結局、待ち人には会えなかったけれど
    まあ仕方ないかと思えた。

  • 奥さんと恋人を「ご飯とお菓子」に例えるところ、なんとも言えない気持ちになった。確かにそうだな、とも思うし、ご飯になってもお菓子になっても、どのみち切ない。

    やめたいのにやめられないと思いながら本を読んでいる時の快楽を「ほとんど肉体的快楽」と表現されているけれど、私にとっては江國さんの文章を読むことがそれかもしれない。

    まるでお酒を飲んだときみたいにクラっとするような文章がきらきら光っていて、やめられない。
    「スイカ味のジェリービーンズをかみながら、私たちは幸福だった」!

    くすっと笑えて、切なくて、うっとりするようなエッセイ集。

  • 世の中には救いなどない、という書き方をしながら、それでも絶望を選ばない。



    サガンと江國香織さん、同じ雰囲気を感じていたから、江國さんが、サガンの話をしていて嬉しかった。

    ラルフへ、不倫に対する考え方も面白い。

    あぶらとり紙の話も、自分も同じ経験を持っていて、懐かしく読んだ。

    石井桃子訳の本、読んでみたい。

  • 『ありふれた変態たち』。家族という集団が外から見るといかに排他的で内にいるひとにとっても束縛に満ちていて寂しく、けれどもその集団だけのリズムには心地よさもあるかについて。それを「変態的」と表現しているのが良い。ほかには『父の小言』『「バンビ」のこと』が良かった。江國香織は、家族についての文章と本など何らかの作品の感想が良い。『「バンビ」のこと』で動物達の森における力関係の描写について「やさしい言葉で淡々と語りながらも、ザルテンの観察眼には容赦がない。」と書いているがこれは江國香織自身の文章にも当てはまると思った。自分の感覚や気持ちを大事にしていて柔らかいが、後ろにもう一人冷静な自分がいて、表現を選び抜いて文章を書いているのではないかと感じさせる。

     中学生のころよく読んでいた作家だが、都会的な雰囲気や恋愛が主題の文章が苦手で読まなくなっていた。大学院に進んでから雑誌「飛ぶ教室」のバックナンバーに載っていた文章が気に入って、ようやっとこの本を読むことが出来た。これからはエッセイや童話を読んでいこうと思う。

  • 私が江國さんの本を好きな理由がはっきり分かった本。
    強く主張したり押しつけがましくない。江國さんは、読者のためというよりも、自分のために書いているなと思った。だから素直に静かに自分と向き合っているのが分かった。読者と向き合っているようなエッセイをよく目にするから、江國さんみたいな姿勢で文章を書く人が大好き。

  • この中の「ラルフへ」は私のバイブル。
    恋をしたときは必ず読むようにしてる。
    自分の気持ちが「正しい」ってことを確認するために。

  • 『ラルフへ』で、わたしの私の不倫に対する思考がそっくりそのまま言語化されていて、震えた。
    江國さんの文章は、江國さんが言うようにお酒をたっぷりと吸った焼き菓子みたい。甘美でほろ苦い。

  • 手元においておきたい。

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著者プロフィール

一九六四年東京都生まれ。著書に『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(山本周五郎賞)、『号泣する準備はできていた』(直木賞)、『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』(谷崎潤一郎賞)などがある。

「2020年 『改訂増補新版 エドワード・ゴーリーの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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