- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043480036
作品紹介・あらすじ
穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。これが私の本当の姿なのだろうか。誰もが羨む生活の中で、空いてしまった心の穴が埋まらない。10年前のあの雨の日に、失ってしまった何よりも大事な人、順正。熱く激しく思いをぶつけあった私と彼は、誰よりも理解しあえたはずだった。けれど今はこの想いすらも届かない-。永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。
感想・レビュー・書評
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嫌でも時間は過ぎてしまうし前に進んでしまうものだけれど。
そう思うのは私が人生の半分も歩んでいないからかなぁ。
あおいのように現実を生きないことに憧れる。
ふわふわしていて、自分が何者で何をしているかうっかり忘れてしまう時間。
私も失恋するのが下手だし現実から目を背ける癖があるから、あおいと似てるような気もするのに。
違うか、あおいはちゃんと傷ついて、あまりにもちゃんと傷つきすぎてそれを忘れるのを恐れてるのか。
あぁ海外で暮らしたいなぁ。圧倒的な非日常に憧れる。
でも日常になった途端また嫌になるんだろうな。きっとなる。って都合のいい言い訳。
江國さんの小説読むと自分の生活が馬鹿馬鹿しくなる。
何を必死になってるんだろう。自ら視野を狭くして。
家に帰ってまで仕事のことを考えてしまうなんて。1人でいるから上手く頭を切り替えられないんだろうな、鬱々として。
本を読んだりフィクションの世界に旅立ったり、そうやって騙し騙し今の生活を続けていく。
結局は今の生活を失うのが怖いから。何かあって今の仕事を失ったって何とでもなる。そう思えるようにはあと何年かかるかな。詳細をみるコメント1件をすべて表示-
大野弘紀さんもしかしたら、江國香織の本は、大人が読む絵本のような、ものなのかもしれませんね。もしかしたら、江國香織の本は、大人が読む絵本のような、ものなのかもしれませんね。2020/07/05
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高校生のときに初めて読み、昨年20年ぶりに再読。以来、時々繰り返し読んでいる本。アマレットを知った本。
初めて読んだときは、あおいの気持ちが理解できなかったけど、20年経って分かる気がした。イケメンで完璧なマーヴとの生活。フラットで穏やかで充分すぎるのに満たされない。本当のことを言えなかったのは、傷つきたくない気持ちもあったと思うけど、マーヴと穏やかに過ごしていれば順正への気持ちを乗り越えられると信じていた部分もあったと思う。そして、もう順正に会うことはないからどうしようもないし、本心を話したところで分かり合えないから言うだけ無駄と思って心にしまい込んで、自分の中で消化しようした部分もあるのでは。それが決して肯定できるものではないのはもちろんだし、マーヴがかわいそうなことには変わりない。でも、だからといってみんながみんな、自分の気持ちを明け透けにできるわけじゃないと思いたい。繊細な心理描写を感じました。
「人の居場所なんてね、誰かの胸の中にしかないのよ」このセリフがずっと印象的です。 -
多分一番多く読み返している本。そして私がイタリアに憧れを抱くきっかけとなった作品。
初めて読んだ時は高校生。正直つまらないと思った。
映画と辻仁成の「青」は素晴らしく面白かったけど、この「赤」はつまらない。
お風呂と読書とセックスしかしていない、ただ優雅で怠惰な女性の単調な話じゃないかと。
大人になってからはそんなあおいの生活に憧れ、こんな恋を羨ましいと思った。
そして今、今まで苦手だった江國さんに何故かいきなりハマってしまった今。
素晴らしいと思った。
江國さんの他の作品を読んでいると分かる。
江國さんだけの小説だったら、こういう台詞は出てこないと思う言い回しが多々ある。
でも恋愛を始め、人との交流というものは自分では予期出来ない台詞の応酬だ。
これは共作のなせる技だと思う。
それに、それでも江國さん色は失っていないのだ。
来月、念願が叶ってイタリアに行ける。
この本は絶対に持っていこう。 -
ゆっくりと進んでいく日常。
別に何がある訳でもないけれど、そこがまたアオイの居場所のなさを助長していた。
半分くらい読んでいた時、何とも言えないマーヴとの日常を心地よく感じたと同時に、どこか波風たてないような彼女の言動に違和感を覚えた。
順調にまわる歯車を一瞬にして、噛み合わせなくさせる方法を彼女は知っていたのだと思う。
辻仁成バージョンがあることを知らなかったので、読んでみたいと思う。映画もみてみたい。
読んでいてひどく心をかき回されることがなかった分、逆にそれがリアルな女性の葛藤にみえた。 -
大学生の頃から繰り返し読んでいる。
辻仁成さんのblueの方も対として読んだけれど、それぞれが男性と女性の視点から語られているのでどうしてもrossoを読み返すことが多く、かつ共感する部分が多い。
江國さんの本が好きな理由は主に2つ。
ひとつ目は、江國さんの文章そのもの。
江國さんの小説、エッセイは書き方が他には無い書き方で、瑞々しくそれでいてからっと乾いていて軽やかで良い香りがするような文章。そして独特の表現。(特に恋愛について)変わった表現だなと思うのに、どこかしっくりきて共感してしまう不思議さに魅了されて、一時期江國さんの本をかなり集め、片っ端から読んでいた。
ふたつ目は、繰り返し読んでいると、読み返すたび自分が共感する部分、フレーズが変化するところ。
この本についても、フェデリカの「人の居場所なんてね、誰かの胸の中にしかないのよ」という言葉にも初めて読んだ時は「居場所を誰か自分以外の人に委ねるなんて、不安定すぎる」と思った。でも時間を経て、心を預けられるような人との出会いを重ねたあと読むと、全く違う言葉のように聞こえる。
学生時代の思い出も蘇るから懐かしさもあり、読むたびに見方が変わる新鮮さもある大好きな一冊。
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恋をしているときを思い出せます。
江國さん、いい本書きますね。
そして2冊セットなのがこの本のミソです。 -
「神様のボート」以来の読後鬱。江國さんはどうして女性の心の毛羽立ちみたいなものをこんなに機敏に描けるのだろう。
あとがきの
「人生とはその人のいる場所にできるもの」
「心というものはその人のいたい場所に常にいる」
という言葉に、救われたし絶望した。 -
若い頃に読んで没頭してしまった作品。何回読んだかわからない。
自分の別れの体験と重ねてしまい復縁を願わずにはいられない作品(笑)
運命の相手、とか信じてるまだ若い時期に読むと心酔してしまうのでは。
1番印象的だったのは、1番ではない人と過ごす女性の心象の描き方がリアルで刺さりました。
終始濃い霧の中にいるような、ぬったりとした文章と時間が流れます。それを不思議と退屈させないどっぷり江國ワールドの一冊です。
もちろん男側(辻仁成)と合わせて読むのかおすすめです -
ささやかな幸せ、という言葉がぴったりくるような、ほぼ完璧な日常。その中で、彼女の中で決定的に欠けているものが、その何気ない文体によって、こちらにひしひしと伝わってくる感じ。染み入る感じ。 あぁ、この人はこの生活より、欲しいものがあるのだな、と。それが切ない。
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2019/12/22
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著者プロフィール
江國香織の作品





