泣く大人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480043

作品紹介・あらすじ

夫、愛犬、男友達、旅、本にまつわる思い……刻一刻と姿を変える、さざなみのような日々の生活の積み重ねを、簡潔な洗練を重ねた文章で綴る。大人がほっとできるような、上質のエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 鍵のかかった日記帳、もしくは秘密のノートを読んでいるみたいな感じのエッセイだった。

    自分のことを、「本質的な意味において私はずっと不良だったし、無論いまも不良だ。」といっているが、女性が憧れる女性はみんなそういう不良性を持っているのだと思う。
    まだまだ彼女の作品を読み続けたいと思った。

  • 読んだことあるっけ?と思ったらそれは「泣かない子供」でした。

    日々のこだわりや読書の記録などを綴ったエッセイ。

    「贅沢なかたまり」のレーズンバターがとてつもなくおいしそう…!
    「居場所がある、という気持ち」で書かれている闇と光、夜と不良に関するお話が一番心に残りました。
    「くつろぎの時間」の楽しく生きるための正しい欲望と、気分転換にする小さな労働のお話にとても共感した。
    男友達に関する考えが絶妙に言い得ていておもしろかったです。

    心地の良い文章を書かれる方だなぁと改めて思いました。

  • 同じような考え方で嬉しかったり、もやもやしてたところの考察が発見になったり、全く新しい考え方だったり

    これは読み直したい。あれも、あれも、と思っていたらきっと1冊また読んでしまう。と思ったので、買うことをきめた。

    「愉しい」って表現特に好きだった。

  • 以下、本文より

    ◯人は、信じたものにしか守られ得ない

    ◯幸福な時間をたくさん持つと、人は勇敢になると思う。自分の人生に対する信頼、しかし勇気にはならない。何かに護られて在る、ということ。宗教のある人は、だから勇敢になりやすいと思う。うらやましい。

    真実!って思うことがすらっと描いてあったり、エッセイなのに小説みたいに魅力的な書き出しだったり、3つのテーマごとにさまざまな小噺が収録されていて最高でした。

    途中、『ながい』という表記があって、長いの意味だけれどあえてひらがな表記にしているのかな?と思うのですが。これを読む時、自然とながあい、と頭の中で言ってしまって、とても楽しかったです。長い、ならさくっとそのまま短く読んでいたはずなのに、言葉にそのまま引っ張られていたので、こんな風に全ての言葉を選りすぐったのをまさに体感した気がしたからです。

  • わたしは江國香織の文章を読むとなんだかイライラする。でも江國香織の本はほとんど買って集めている。この人ほど作家になるべくしてなった人も、珍しいように思う。 「悪意がないということは機微もないということ」というのが、すごく心に引っ掛かった。機微をころされるくらいなら、悪意をもたない人生は送りたくない。

  • 読み進めるたびに驚きの連続
    こんなにも言葉を正しく使う人がいることに驚いてしまう
    この人には世界の本当が見えている、感じられているのだと思う。
    旅についての考察が興味深かった、いや、全部のお話がすごかった。こんなに適切に世界を捉えられているなんて。
    あと、江國香織さんは、やっぱり優しくないし(優しい人は作家になれない)捻くれてる(捻くれてないと書けない)けど、芯の通った素敵な女性だと感じた。

  • 大好き。
    逡巡することについて。ここよすぎて何十回もよんだ。

  • 「いつもいつも一緒にいてくれることが無理でも、いつもいつも一緒だと思わせることは可能なのに。」という言葉に惹かれて買った本。このエッセイは夢中で読み進められた。音楽を聴くというのは掻き乱されたいということ、現実や日常がくるっと裏返る瞬間など、大人という切なくて儚い生き物ならではの感性で紡がれた言葉を愉しめるのが大人ならではの温かみ、悦びだと思う。
    男友達に関する章が共感することばかりで。欠点や怠惰も魅力的に思えるのが男友達だけど、だからこそ恋しくもなる。気にしないでいてあげられない悲しみを背負ってでも一緒にいたい人が好きな人なんだろうなぁ。
    ほんとに江國さんの言葉は美味しくて一つ一つ大切に読んであっという間に終わっちゃった。

  • 江國さんの文章が好き。飾らない等身大。それなのにちょっぴり贅沢だったり、非日常を感じたり、上質な気持ちになる。リフレッシュにとても良い。

  • 結構昔の(2001年刊行)Ⅳ章に区分されているエッセイ集。Ⅰ雨が世界を冷やす夜とか丸々好き。
    湿度とか温度とか匂いとかなぜにこんなに文章で表現できるんだろう。
    エッセイで扱うテーマ自体に共感、ではなくて選ぶ言葉によって湧き上がる空気を感じられた。
    でもⅡは私には男友達がいないのでふ~ん、そういうものかーと読み流し(笑)、Ⅲ、Ⅳ、とふたたび言葉に気持ち良く酔う。
    特にⅣは読書日記。
    章タイトルと同じ「日ざしの匂いの、仄暗い場所」は筒井ともみさん「舌の記憶」の書評で、これは傑作。大好き。もちろん「舌の記憶」も読みたくなったし、しょっぱな『食べ物は、人をつくる。物語は、仄暗い場所に生息する」だもん。
    そもそもタイトルからして、否、タイトルだけですでに作品だよね。。。

  • 2015.02.22読了。
    今年7冊目。

    好きだな、江國さん。
    レーズンバターに、豪快な淑女田中さん、男友達、井戸、朝食室。
    わかるわかると共感したり、私もこうありたいと思ったり。

    私にとって贅沢な一冊。

  • 再読。エッセイは進んで読みたいタイプじゃないんだけど、江國香織は別。<雨が世界を冷やす夜>と<ほしいもののこと>のところは特に好き。<男友達の部屋>は、気持ちも状況も自分と違いすぎて、経験的にはちっともわからないはずなのに楽しい。夜にやってる短いドラマみたい。

  • やんわりとたおやかであるようで、割と白黒はっきりしていて、
    シンプルであるようで、実は所どころこんがらがってる本質。
    自分の愛している世界はちょっとしたことで均衡を崩す。
    バランスをとることは本当に難しい。

    江國さんのエッセイは女性として生まれた贅沢でもあり、何とも言えぬ複雑怪奇な奇奇怪怪なしこりでもある。

  • 江國さんのエッセイはじめて。"男友達"論は理解できるような出来ないようなくすぐったくもリアル。

  • 江國さんのような女の人とお友達になってみたいなと思った。このような人とやり取りとすると、言葉について真摯に向き合えるような気がする。
    個人的には、「いい女は男を泣かせ、いい男は女を泣かせない。」という意味の部分にかなり共感してしまった。本に記載のように、具体的な理由は僕にもあげられないけれど笑

  • 江國さんのエッセイは初めて読んだのだけれど、波長が合って、とても胸がきゅんきゅんした

    同じ女性であることが、とても嬉しく思える

  • 役に立たないことにばかり熱中する子供だったのだ。役に立たないこと、幸福な無駄。


    この半年ですっかり浪費癖のついた私には、とてもありがたいお言葉です。

  • 江國さんのエッセイを初めて読みました。というか、エッセイというものを初めて読んだかも。ところどころ、ああこういう感じ分かる、って思いながら読みました。…でもやっぱり、わたしエッセイって苦手だ。(笑)小説のがいいね。うん。

  • 江國さんの感受性がたっぷり味わえる一冊でした。
    泣かない子供に続けて一気に読んでしまったけど、江國さんの文章は、紅茶を一杯用意して、座り心地のいいソファに座って読みたくなる感じ。

  • そしたら江国さん、5年後には泣く大人になったらしいです。
    でも江国さん曰く、大人は泣くことができる生き物なんだそうな。
    この人の強い言い切りもあたしは好き。
    男の人に対する思い、人生、欲しいもの、いろんなエピソード、詰まってます。

  • 江國さんとお友達になって気負わずにおしゃべりできたらどれだけ楽しいことだろう。

    _φ(・_・
    25 雨が世界を冷やす夜
    そのあいだも風はうなり、暴れ、吠え、いろいろな音をたてる。ばたんばたん、とか、びづーう、とか。

    39裏返る現実
    現実とその外側、や、日常とその外側、は靴下とおんなじで、簡単にくるっと裏返る。そうすると、それまで現実だと思っていたものが突然非現実になり、非現実だと思っていたものがあっけらかんと現実になり、日常だも思っていたものがいきなり非日常になり、非日常だとばかり思っていたものが堂々と日常になるわけで、それはもう驚きとか困惑とかいっている場合ではすでになく、おっと、と小さくつぶやいて、あとはもうまるで何もなかったかのように、それを受け入れるより他ない。ちょうど、夢からさめたときのように。私は、現実や日常がくるっと裏返る、あの瞬間を愛している。

    57 お風呂の旅
    私は毎日二時間お風呂に入る。
    お風呂に窓のある家。お風呂場の壁が、合成樹脂じゃなくてタイルの家。

    65
    失くしたものは忘れよう、と妙に大げさに決心して、大きな歩幅で歩き始める。

    92
    得難い、男友達

    184
    自分が運転していると言う事実に突然恐怖して、揺れる。
    ↑江國さんが運転しないっていうはなし。
    可愛すぎるけど気持ち分かる…

    190
    私は、いつもそばにいてくれる男のひとが好き。ほんとうのことを言えば、会社にも行ってほしくない。トイレにも、一人では行ってほしくない。床屋だけは別。床屋に行って、髪が短く清々しくなり、いい匂いをさせて帰ってくる男の人と再会するために、床屋の一時間だけは離れて待っていてあげる。
    でも、いまのところ、そんなにそばにいてくれる男のひとには会ったことがない。(中略)
    呆れ顔をしている女友達についてさえ、ほんとうは、一人ずつの胸の内では、いつもいつもそばにいてくれる男の人が欲しいと思っているはずだ、と疑っている。
    社会生活をしていく上で、望んでも無理なことがわかっているから、望んでいないふりをしているのだろう、と、思う。
    でも。
    いつもいつも一緒にいてくれることが無理でも、いつもいつも一緒だと思わせることは可能なのに。

    196
    私は勇敢でいたいと思っているわけではない。勇敢でいなくてはならない、と思っている。だって日々を生きるのに、勇気はどうしたっている。

  •  恋愛小説など全くに近いくらい読まないが、ふとしたきっかけで「冷静と情熱のあいだ Rosso」を読んだ。
    その せつなさ が強烈過ぎて江國香織さんの小生はしばらく読めないと思いつつも、江國さんとはどんな方なのだろうという興味を持つようになり、このエッセイを手に取った。
     おもしろかった。このエッセイの中で紹介されていた小説も読んでみたい。

  • 江國さんの感性と言葉選びがすごく好き。
    わかる!って部分と、確かに、の部分と、なるほど!の部分と、江國さんと対話してる気分になれた。
    幸福とは、を言語化出来るのがとてつもなく魅力的。

  • エッセイ集。

    初っ端から、レーズンバターの塊の話。
    確かにそのまま食べるとすごそうです。
    カロリーもすごそうですw
    の前に、そんなバターがあったのに驚きです。
    普通のバターしかない、と思ってました…。

    題名通り、大人だからこそ、なエッセイ内容でした。

  • 江國さんの言葉選びが魅力的で、小説もエッセイも大好き。木漏れ日が差すような、温かくて心地よい気持ちで読むことができる。
    勇気は消耗品、本を読んだり、友達と会ったり、美味しいものを食べたり。私なりの幸福で供給したい。

  • 江國香織さんは生活に「男」が必要と認めているところが清々しくて良い。あどけない少女らしさも併せ持つ所も素敵。
    YOUと重なる。
    江國ワールド浸れてよかった

    108/140

  • めっちゃ好き。
    特に「男友達」の章。これ20代だと「え」と思っただろうけど30代になって読んでよかった。江國香織の価値観の広さを味わえて楽しかったしよかった。普通に笑う。

  • 江國香織さんの感性が静かに炸裂している。

  • ★朝食室、わたしもほしい

    ★私は、いつもそばにいてくれる男のひとが好き。ほんとうのことを言えば、会社にも行ってほしくない。トイレにも、一人では行ってほしくない。床屋だけは別。床屋に行って、髪が短く清々しくなり、いい匂いをさせて帰ってくる男の人と再会する幸福のために、床屋の一時間だけは離れて待っていてあげる。

    ★基本的に子供が苦手。
    理想の女性なり男性なりを尋ねられたとき、「子供好きなひと」とこたえるひとがいるが、あれも私にはわからない。謎だ。
    (めっちゃわかる)

    ★私は、勇敢でいたいと思っているわけではない。勇敢でいなくてはならない、と、思っている。だって、日々を生きるのに、勇気はどうしたっている。
    ★勇気は消耗品なのだ。どんどん要るので、どんどん供給しなければならない。
    ★そこが度胸とは違うところだ。度胸は、発揮しても減らない。逆に言えば、供給することもできない。 

  • 著者が36歳頃の本らしいが、とても若くてわがままで(良くも悪くも)、奔放で、共感できないところが多かった。けれどそういうところに嫉妬心を抱いているのだと思う。文体は好みではなかったが、時折美しい表現があり、その箇所だけ煌めいているようだった。ほかの作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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