どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043496068

作品紹介・あらすじ

所詮人生は、理不尽で虚しい。いかなる人生を営もうと、その後には「死」が待っている。「どうせ死んでしまう」という絶対的な虚無を前にしながら、なぜ私たちは自ら死んではならないのか?生きることの虚しさを徹底的に見つめ、それをバネにたくましく豊かに生きる道を指南する、刮目の人生論。無気力感に苛まれる時、自分に絶望し苦悩する時の必携本。

感想・レビュー・書評

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  • なぜ、私はこの世に自分の意志ではなく生まれさせられ、
    苦しみあえいで生きねばならず、
    そしてじきに死んでしまわねばならないのか、
    しかもほとんど何もわからないままに。


    10年ほど前に高速道路で交通事故に遭ったことがある。
    自分のクルマは全壊。
    しかし、自分はヒザをほんのちょっと打撲しただけで奇跡的に助かった。
    もし、あのときクルマから脱出する前に、
    トラックやバスのような大きな車両が自分のクルマに突っ込んできたら、
    即死だったはずだ。

    精神的にズタズタにされ、苦しみながら、なぜか今日も生きている。
    もし、あのとき死んでいたら、今日の苦しみは味わずに済んだ?
    果たして、どっちが自分にとってラッキーだったのか?
    よくわからない。

    日本で年間の自殺者が3万人を超え、
    うつ病・ひきこもり・PTSDが急増し、
    多くの人が閉塞感に襲われ、
    自殺者予備軍は増える一方である。

    日本は常識的なレールから外れなければ住みやすく快適な国。
    しかし、そんな一昔前の高度経済成長期の神話はすでに崩壊した。
    常識的なレールも地獄。
    そのレールからドロップアウトしても地獄。
    まさに行くも地獄、退くも地獄。
    この八方塞がりな閉塞感が、多くの人を自殺へと駆り立てる元凶となっている気がする。

    閉塞感を生むひとつの要因として、
    「出る杭は打たれる」とよくいわれるように、
    日本独特の「みんな一緒の暴力」は根強いものがある。

    世間は、みんなマジョリティが楽しいことを楽しくないと言う者を絶対に許さない。
    みんなが楽しい時間、楽しくない素振りをすることさえ絶対に許さない。

    この国では、組織は個人の内部まで、
    いや信条や感受性の中核まで侵入して、
    それを支配しようとする。

    これに、誰も(とくに組織の上層部が)疑問を感じないことが不思議でなのであり、
    疑問を感じた者が排斥されることが残酷なのであり、
    このすべてが気楽に行われていることが恐ろしいのである。


    実は、楽しいことだけでなく、苦しいことにも「みんな一緒の暴力」は猛威をふるう。
    つまり、上記の表現を言い換えれば、
    「みんなマジョリティがつらく苦しい思いをしているときに、楽しようとする者を絶対に許さない。
    俺が休めないのに、お前が休むのは許せない!絶対に許さない!」
    となる。

    ブラック企業や社畜が跋扈し、多くの人を思考停止させているのもこれが原因だ。
    「みんなで休まず、みんなで不幸になろうキャンペーン」がまさにそれだ。
    これは海外ニートさんのブログに詳しい。

    マジョリティが苦痛を感じないことに、
    甚だしい苦痛を感じる感受性のマイノリティ・信条のマイノリティの自分。
    疑問を感じている少数派の自分は、
    その疑問を表明すれば排斥される。
    どうせ排斥されるなら、
    その前に自分の意志で会社を辞めたいのだ。

    その苦痛から逃れるために自殺するなんて、
    バカらしい。
    納得がいかない。

    こう考える道筋のヒントをもらっただけでも、
    この本を読んだ甲斐があった。

  •  今まで「自殺は悪いこと」と刷り込まれてきたので、「自殺したいと思う自分は悪い」と罪悪感に思っていた。自殺は(善悪はともかく)間違いではないと認めてもらえて嬉しかった。また、「自殺を思いとどまる二つの理由」が的確に言い当てられていておもしろかった。「自殺する直前の心理状態」にも共感した。自分も、自殺を考え抜いて、死ぬか死なないかどちらかの所でぐらぐらしていて、結局自殺は失敗した。「自分は幸福なはずなのに苦しんでいて、これは悪いことだ」と思い込んできて、それを修正しようとしてきたので、修正できるものではないと知ってほっとした。「精神的自傷行為」という言葉に、ツイッターのメンヘラ界隈で見かける「精神リスカ」という言葉を思い出した。「生まれてきてごめんなさい、こんな風に育ってごめんなさい」と思いながら生きているが、「子を産んだだけでも親は罪なのに……」という言葉に少し救われた。毒にも薬にもなるいい本だった。今の自分には苦いけど効き目のある薬だった。しかしこの先生はどうして子どもがいるんだろう。

  • なるたけ一気に勢いをつけて崖からジャンプするような気持ちで読んだ方がいいと思った。『堕落論』の現代版みたいな、そんな風に思えた。丁寧に文庫あとがきにタイトルに対する解が書かれていた。文章だと誤解を受けてしまう危険性があるけど本当に真剣真摯な人だと思った。さらに輪をかけて中村うさぎさんの解説も力強く、蛇にぱっくんと呑みこまれたような感覚に襲われた。
    真理は狂気の中に混ざってあって、取り出せないし取り出したとしても変質しやすいものなんだろう。しかも血まみれなんだとそう思った。

    もう本に書き込みをいっぱいしてしまったので、本棚保存で時々読み返そうと思う。
    2018年積読本消化31冊目。

  •  実家にあり、タイトルに惹かれて読み始めた。幸せと一般にみなされることを含め、人生の全ては、どうせ死ぬという真実を直視したとき、絶望的に虚しくなる。ならばなぜ生きるのか。自殺するべきではないのか。
     
     まず、周りの人が自分が自殺すると悲しむから、自殺は悪であるという考え方が示される。しかし、より筆者が強調するのは、哲学者として生きるということである。「なぜ生きるのか」という問いへの答えを出せないままに自殺することは、哲学における至上の命題を考える機会を放棄するということであり、知を愛する哲学者として言語道断である。また、答えが出なくとも、真実の虚しさを偽って世間で生活するよりも、せめて虚しい、という真実を正直に見つめて、考えられる哲学の道に生きた方がいくぶん気が楽ではないか、という主張だ。

     たしかにその通りであるが、死という不可避な真実を意識してしまいつつも、俗世への思いも断ち切れず、哲学へ身を投じることはできない者はいかに生きる意味を見つければいいのか、ということについては本文からは学ぶことができなかった。
     しかし、中村うさぎ氏による巻末解説において、新鮮な考え方を発見できた。生に意味がないから死ぬと考えるならば、私は全てのものに意味があるべきだという思想を持っていることになる。では、生に意味がないから死のうとするとき、その死には何か意味があるのか?死ぬことでそれまでの人生に意味が付与されるわけでもない。意味もなく死ぬなら、意味もなく生きるのも同じことで抵抗を感じなくて良いのではないか。このような人生観に、本書のタイトルに対する一つの解を見た気がした。

  • いつだったか、とんでもなく生きづらかった時に思わずタイトルも目を奪われた本だけれど、哲学の素養が全くない私には難解な本だった。ようやく数年間おいて読了。
    また辛い時に何となく手に取ったら、涙を流しながら読んでた。著者も相当の変わり者だが、普通な考え方を持っていると言い難い私には共鳴する部分がかなり多く、しかし著者のように開き直って生きてはいない。まだまだもがき続けそうな人生だけれど、死ぬまで考え続けなければならない。「どうせ死んでしまうのに、なぜ今死んではいけないのか?」答えがなくとも、考えに考えることこそが、その理由のように思えた。かえって生きる力が湧いてきた。
    あと、どうか、あなたの周りにこのような疑問を持ち、死に惹かれている人がいるとしたら、「死んでほしくない」と一言だけでも声をかけてあげよう。

  • タイトルの「どうせ死んでしまうのに、なぜ今死んではいけないのか?」とは難しいテーマです。というより、生き辛くなるから敢えてあまり考えないようにしている部分でもあります。
    とりあえず、気分が落ち込んでいる時には読まない方が良いかもしれない。

  • 読了

  • 幸福を求めず、どうせ死んでしまうという人生の理不尽さを見つめて生きるという清らかな(あるいは限りなくむなしい)生き方と、それを実現するための「半隠遁」という処世術が語られます。

    わたくし自身は、著者のように「どうせ死んでしまう」ということを突きつめて考えることはなかったのですが、こんなにも清々しい仕方で自分の人生と向きあっているひともいるのかと、感心させられました。

  • 生きているのが辛くて仕方がない人を前提に諸行無常を説く本はたくさんあるように思うけれど、生きているのが楽しく、満足して、希望もあって、でもなぜ今死んではいけないのかが分からない人のための本には未だ巡り会えない。この本も答えてはくれなかった。
    楽しくて幸せで充実している、でもどうせ死んでしまうなら、それが自分自身にとってすべて無になるということなら、なぜ今死んではいけないのだろう。それが納得できる本は無いんだろうか。
    これはもっと後ろ向きだった。読み終わった後、長い間哲学病に悩まされてつらかった。

  • う〜ん。私は、この答えには正直頷けませんでした。

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著者プロフィール

1946年生まれ。
東京大学法学部卒業。同大学院哲学専攻修士課程修了。ウィーン大学で哲学博士号取得。電気通信大学教授を経て、現在は「哲学塾カント」を主宰。専攻は時間論、自我論。
著書に『哲学の教科書』『「時間」を哲学する』『ウィーン愛憎』『「私」の秘密』『「純粋理性批判」を噛み砕く』『哲学塾授業』『差別感情の哲学』『不在の哲学』ほか多数。

「2018年 『カントの「悪」論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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