海になみだはいらない (角川文庫)

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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043520022

感想・レビュー・書評

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  • 日本中の若者も老人も子供も大人も女も男も、全員灰谷健次郎を読めばいいと思うよ。

  • 「どうしてですか。説明してください」
    キヨコがたずねた。
    「はいはい」
    とダックス先生は言った。
    「ろうかはいつも右側をしずかに歩く、というのはこまるのです。火事が起こったら焼け死んでしまいますからねぇ」
    「まじめにしゃべってください」
    「はいはい。
    あなたひとりとか、二、三人で歩いているときは、ろうかの右側を歩こうが左側を歩こうが、そんなことはどっちでもいいのです。たくさんの人間が歩くときは右側通行をまもったほうがいい。つまり、ろうか一つ歩くにしても、そのときそのようすを判断して歩くのが人間なのです。もし、まだほかのクラスが勉強中なら、今は静かに歩かないとひとのめいわくになる、そう考えて静かに歩ける人がちゃんとした人間というものでしょう。そう考えると1の目標はいらないということになります」
    「いらない目標を学校がなぜ決めたのですか?」
    キヨコはくってかかった。
    「なかなかするどい質問ですね」
    とダックス先生はあわてなかった。
    「あのね。ここだけの話ですがね……」
    ダックス先生は声をひそめた。
    「決めたことをまもらせるのが教育だとおもってるアンポンタンの先生が、まだ、いっぱいいるのですよ」
    「わあ、いうたろ、そんなこというて」とコウヘイが大声をあげた。
    「あらまあコウヘイくん、そりゃないでしょう」
    とダックス先生はあわれな声を出した。みんながくすくすわらった。
    「2の説明もしますか」
    とダックス先生はいった。
    「2も3も、ちゃんと説明してください」
    キヨコはいった。
    「はいはい。2はですね……」
    ダックス先生はたのしそうにいった。
    「自由時間をどうすごすかということはとてもだいじなことなんです。あそび時間はあなたたちの学校生活の中でたった一つの自由時間ですから、あなたたちが自由に使う権利があります。本の好きな人は本を読んでもいいでしょう。音楽の好きな人は笛を吹いたり、オルガンをひいてもいいでしょう。もちろん、運動の好きな子は運動場に出てからだをうごかすのもいいのです。それぞれが自分の考えで決めればいいので、一つのことをおしつけるというのはよくありません」
    「じゃ学校はよくないことを決めてわたしたちにおしつけているのですか」
    「そういうふうにとらないほうがいいのではありませんか、キヨコさん」
    「………」
    「太陽のもとでのびのびあそんでほしいという先生たちのねがいだとおもえば、べつにどうってことないじゃありませんか。なにせ、そうとうおいぼれた先生方がたくさんいらっしゃいますからねえ」
    「またいった」とコウヘイがさけんだ。
    「あれまあ、また、いっちゃった」

  • 子供向けのお話ですが、楽しく読むことができます。ダックス先生のお話が一番好きで、最初は先生を疎ましく思っていた生徒たちと先生との距離が縮まる過程がとても丁寧です。

  • 表題作『海になみだはいらない』のほか、『君はダックス先生がきらいか』『三ちゃんかえしてんか』の3作品が収められている。さらに最後の『三ちゃんかえしてんか』は5つの独立した短編から構成されている。
    どの作品も、灰谷さんの物語だと言われずしてわかる灰谷さんらしい温かさと人間愛にあふれている。
    多くのレビューにあるように『君はダックス先生がきらいか』はやはり珠玉である。
    『海になみだはいらない』ももちろん素晴らしい作品だが、物語の展開的に短編にするには少し惜しい気もする。まだまだ広がっていきそうな濃密さなので、長編としても成立したのではないかと思う。
    『三ちゃんかえしてんか』の導入として書かれている短い詩のなかに、人を愛するということは自分が知らない人生を知ることだ、というような文句があるが、同作はまさしくこれをテーマにして5つの短編が展開されているというのがよく感じとれる内容で、誰かの弱さもつらさも欠点も、他の誰かがそれをきちんと知って、能動的に補っていく。そんなまっとうで温かい人間関係に満ちた作品群です。

  • 児童文学こそ難しい。丁寧な描写に引き込まれた。伝わると思って話してはだめだなぁと反省させられる丁寧な描写がとても勉強になった。力の入れるポイントが違うんですね。

  • 『キライキライキライキライ』

    いつもなら、先にほかの方のレビューは読まないのだが、今回はなんとなく覗いてすごく驚いた。大勢の人が何度か読み返した。と書いてあるのだ。特別に思い入れがあったわけではないのだけど、かくゆう僕も再読であったのでこの本は二度読ませる力があるのかもしれない。

    強く生きる事もとても素晴らしいことだと思う。だけど、弱くても生きることは素晴らしい事なんだ。つまり、腐らないこと枯れないこと死なないことが素晴らしいんだ。また読むかもしれない。

  • 子どもと彼らと真正面から向き合う教師や大人達の姿が美しいです。
    『三ちゃんかえしてんか』は人を理解すると言う難しさを考えさせられました。
    読み終わってからじわじわときました。

  • 「きみはダックス先生がきらいか」

    タイトルからぐさぐさ刺さり
    小学生のときから思い出すと
    読み返す
    灰谷作品のなかで昔から一番
    考えてしまう作品

  • 短編3つが入っている。
    ・海になみだはいらない:子どもたちと漁師達との生活。現在失われた生活がある。
    ・きみはダックス先生がきらいか:見た目はなんの取得もない私と同じ(私は見た目も中身も同じ)だが、しっかりと子どもたちを見ている先生の姿がある。優秀でないといわれる先生の真骨頂であろう。
    ・ひとりぼっちの動物園:個性あふれる子どもたちが主人公の短編5つ。

  • 2010.05.24. 何年かぶりの再読。よいです、心がじわじわとあったかくなる。ダックス先生、小学生の時に読んでから、何年経っても同じところでにこにこしているよう。

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著者プロフィール

1974年に発表した『兎の眼』が大ベストセラーに。1979年、同作品で第一回路傍の石文学賞を受賞。生涯を通じて、子どもの可能性を信じた作品を生み出し続けた。代表作に『太陽の子』『天の瞳』シリーズなど。2006年没。

「2009年 『天の瞳 最終話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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