殺人鬼 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.49
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本棚登録 : 411
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043555048

作品紹介・あらすじ

あの晩、私は変な男を見た。黒い帽子を被り、黒眼鏡をかけ、黒い外套を着たその男は、義足で、歩くたびにコトコトと不気味な音を立てていた。そして男は何故かある夫婦をつけ狙っていた。彼の不審な挙動が気になった私は、その夫婦の家を見張る。だが、数日後、その夫のほうが何者かに惨殺されてしまい-。表題作「殺人鬼」をはじめ、「百日紅の下にて」も収録した短篇集。名探偵・金田一耕助が四つの事件に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • ある晩に探偵小説家・八代が見かけた黒づくめの男。コトコトと不気味な音を立てて歩く男はある夫婦をつけ狙っていた。そして、殺人事件が巻き起こる表題作『殺人鬼』を含め、四つの事件を金田一耕助が追う!

    短編集ということで読みやすく、それでいて横溝正史の世界観も楽しめる。人物描写の濃厚さ、事件の語り口の巧妙さはさすが。戦後という世相、人の本性、それが鬼となっていく過程の苦さ。横溝作品はなんでこんなに濃いのにすらすら読めるのか、いつも不思議でならない。

    『殺人鬼』は一筋縄ではいかない人の情念が絡み合った蜘蛛の巣のような作品。それぞれの人物が持つ秘密と本性がもつれ合っていく複雑さ。人の奇妙さなんて、見た目からではわからないのかもしれないね。解釈の余地が残るラストもいい。

    百貨店でいつも万引きをしていく厚いヴェールを被った女がいた。彼女が店員を刺殺する事件が起こる。しかし、彼女の万引きは見逃す謎のルールがあった。ヴェールを被った女の正体を探る『黒蘭姫』。謎を追うと新しい謎が飛び出す展開が面白い。ヴェールをはぎ取った下にある素顔。これまたミステリの中に人の感情を織り込むのが上手い。

    香水で財を成した『トキワ商会』社長の孫が人妻と起こした心中。しかし、それは殺人だと言う社長の依頼を受け、金田一と等々力警部が捜査をする『香水心中』。二人の会話が軽快で好き。香水の香りの中で死んだ二人の謎。そこから始まる人間関係の連鎖。タイトルの意味を知った時のやるせなさ。どの登場人物もエゴ剥き出しで、鬼ははたして誰だったのかと思うばかり。

    亡くした戦友からの依頼で佐伯という男を訪ねた金田一。佐伯が愛した女性の一周忌に起きた事件の推理を語る『百日紅の下にて』。戦後、無くした家の跡で、亡くした女性のことを語るという哀愁たっぷりなエピソード。これまた人の情と恨みの深さを思い知る物語になっている。一番短いけど、それを感じさせない内容で好き。

    それにしても「9歳の時から自分の妻か愛人にするつもりで、手塩にかけて女の子を育てました。そうじゃないとシャイなので結婚もできないと思ったので~」みたいなことをほのぼのと語るんじゃない!事件よりもそっちが気になるわ(笑)

  • 殺人鬼
    金田一耕助が、この話の主人公を助けたと思ったら…
    終わりに金田一の手記を添えていること、オチが文学的。
    黒蘭姫
    咄嗟とはいえ殺してしまったこと、「デスペレート」になり過ぎ!
    香水心中
    なぜ香水を使ったか?だけはわかった!
    百日紅の下にて
    長閑な中で語られる辛い過去…
    悲しい結末、と思ったけど、でも優しさと温もりのある終わり方だった。

  • 4つの短編からなるミステリー作品ですが、どの話も面白かったですね!特に最初の殺人鬼と最後の百日紅の下にては、両方義足の復員兵が出てきて、繋がりがある話なのか?と思いきや全く関係ありませんでした・・・
    それにしても短編ながら、しっかりとしたミステリー作品にどれも仕上がっており、さすがは金田一耕助シリーズだと感心するのでした!

  • 短編集

    長編の方が個性と面白さがあって好きだが、
    なかなか良くまとまった短編4つが収録されている。

    「殺人鬼」
    犯人は予想通り、と思いきや、
    本当にそうかはわからない、と謎をはっきりさせない結末で気になる終わり方。


    「百日紅の下にて」
    対談で明かす過去の事件。
    紫の上設定は特に事件に関係ないので、
    性癖か?書きたかっただけか?
    殺人するほど愛の深さを示すため?(笑)
    警察に突き出すためではなく、
    戦友の思いと謎解きのために対談した
    金田一耕助の去り方がかっこいい

  • 金田一耕助の短編集。「殺人鬼」「黒蘭姫」「香水心中」「百日紅の下にて」の4作品が収録。章末で、金田一耕助が戦前、復員後、事務所をどこに開設したり、移動しながら、どんな事件を解決してきたか、時系列に少し解説されていたのは、金田一耕助の功績を振り返るうえで、大いに興味深い。

  • おもしろかった

  • 「殺人鬼」「黒蘭姫」「香水心中」「百日紅の下にて」の金田一耕助シリーズ短編集。戦後まもなくという時代背景など、古い作品であることはわかるのですが、とても読みやすく小説としての古臭さを感じることはありません。どの作品の女性も色々な意味でとても強く、美しく、そして悲しいです。「黒蘭姫」は謎より探偵事務所に依頼主を迎えたときの金田一氏の様子が微笑ましく印象的でした。好みは対話だけでストーリーが進む「百日紅の下にて」。謎解きもとても鮮やかですが、ラストシーンも情景がまざまざと目に浮かぶようでとても好きでした。

  • 短編集故にさくさく読めるかと思いきや、やっぱり背景や血縁関係の入り組んだ設定が出てきて頭を使わないと読めないものがあった。
    間違いなく同じ人の文章だと分かるのに、手を替え品を替え、語り口や設定の妙が飽きさせないで最後まで読ませてくれる。

  • H30.04.28 表題作『殺人鬼』のみ読了。

    江戸川乱歩の作品みたいで、ストレートに犯人が判明していくのではなく、二転三転、となっていくのが個人的には読んでいて疲れる作品だった。
    ややこしいと、読んでいて段々興味がなくなってどうでもよくなってしまう自分の性格・相性に気付けた。

    H30.05.04 『黒蘭姫』読了。

    まず、序盤から多分この人が犯人だな、と分かるくらいにコンパクトな話。
    すっきりまとまっていて読みやすいが、衝撃や驚きはないので流れる様に終わった感じ。

  • 少年時代、江戸川乱歩が大好きでよく読んでいた。
    横溝正史の金田一シリーズは映画の犬神家の一族等に代表されるあのオドロオドしい雰囲気が子供心に恐ろしくて敬遠して読まずに大人になっていた。
    あらためて短編シリーズだが読んでみると面白い!
    怪人二十面相の方がよっぽど怖いくらいだった。
    なんだか安定の推理小説って感じで推理小説をそんな風に読んだらいけないのだろうけど安心して読める感じがした。
    「百日紅の下にて」はもの悲しい物語だったけど最後に金田一が獄門島へと向かって行ったのはワクワクさせられた。
    今度は長編に挑戦してみよう。

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著者プロフィール

1902年生まれ、81年没。大正期より執筆活動を始め、雑誌「新青年」編集長として江戸川乱歩に名作『陰獣』を発表させるなど編集者としても活躍。戦後『本陣殺人事件』『蝶々殺人事件』を発表、前者で第1回探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を受賞、以後『八つ墓村』『犬神家の一族』など、金田一耕助を主人公とする傑作群で探偵小説界の第一人者としての地位を不動のものに。70年代の角川文庫によるリバイバルと金田一シリーズの映画化によって大ブームとなり、最晩年には傑作『悪霊島』を発表、生涯現役を貫いた。作品は以後も読み継がれ、新たな映像作品化も数多い。

「2021年 『横溝正史少年小説コレクション3 夜光怪人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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