殺人勤務医 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.30
  • (37)
  • (62)
  • (124)
  • (36)
  • (10)
本棚登録 : 821
感想 : 92
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043572021

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 10年以上前に読んだ本を再読。
    主人公の古河先生がダークヒーローのような扱いにならないよう、配慮して作られているように感じた。
    一歩間違えば『DEATH NOTE』のキラのような存在になってしまいかねないが、そうではなく、あくまで私利私欲のために殺人を犯す存在として、ギリギリのラインで描かれていると思う。

    また、(物語としての要素が強くなってはしまうが)反出生主義を語る上での一資料としても有効なくらい、産まれること/産まれないこと、生きること/死ぬことについて考えた上で書かれているように感じる。
    特に、「あとがき」の「生まれたことと、生まれなかったこととのあいだに大差はない。生まれて来られた者もすぐに死に、生まれて来られなかった者と同じになる。だから──生まれられなかった者たちも、そんなに悲しまなくていい。戦争と飢餓しか知らずに死んでいく子供たちも、そんなに嘆かなくていい⋯⋯」という部分は、おそらく作者の思想そのものであり、他作品にも通ずるだろう。

    ただし、この思想について、私はそうは思わない。宇宙規模のマクロ視点で考えれば「大差はない」が、では「生まれて来られなかった者」に「どうせみんな数十年で死ぬから同じだ」と言って、納得させられるだろうか。「生まれて来られなかった者」は、その数十年のために生まれようとしていたのだから、「大差はない」で済む話ではない。主人公に惨殺された数人に「どうせ犯人もすぐに死ぬから、そんなに悲しまなくていい」と言ったところで、なんの意味があるのか。出生や生死の話の大半はミクロな視点だ。

    根本的な部分で、作者は思想の方向を誤っているようだ。

  • 大石さんの作品を読むきっかけになった本だったと思う。

    ホラーではあるが、怖くはない。
    タイトル通り、殺人をライフワークとする医者の話。被害者は(殺されるほどではもちろん無いが)ある程度の胸糞行為をした人間なので、懲らしめ系が好きな人はスカッとするかも?
    グロ度も低めなので、読みやすい。

    他の方も書いていましたが、作者のあとがきこそサイコパスじみてて最もホラーに感じます。笑

  • うーん、ギリギリ★3だけど、あまり気持ちのいい怖さじゃなかった気がする…
    グロいの好きだけど、中絶系が痛そうで痛そうで、お腹のあたりがムズムズしてた。

  • 大石圭先生の作品は以前に
    人を殺すという仕事を読んでおり
    他の作品も気になりこの本を手にしました

    人工中絶についての歴史は
    なるほどと思いながら読んでいました
    私的にはグロが好きなのですが
    そこまでグロさはありませんでした。

    過去の虐待
    生きている事に値しない人間
    医師という立場で合法で殺人
    人それぞれ考え方がありますが
    そう言われればそうなってしまう
    否定できない部分も(中絶について)
    ありました。

    大石圭先生は私は好きなので
    他の作品も読んでみたいです

  • 怖い。
    ゆっくりゆっくり絞められるような怖さがあった。怖いのに、文章が読みやすいという罪深さ。

    病気の犬、幼い子ども、カラス、ヒヨドリを心配する心、ソメイヨシノの美しさを感じる感受性、その反対もまた激しい。

    恐ろしいことが繰り広げられているのに、たんたんと話が進んでいき、たんたんとコトが終わってゆく。たんたんと終わることを主人公は知っている。

    主人公の感情の起伏が少なすぎるから、怖さが増幅するのか。
    (過去に関すること・たぶん愛していると思っている人に対する衝動以外冷静すぎる)

    学生の頃、中絶・妊娠のドキュメンタリーを授業で見せられたときに、お腹のなかで(羊水の中で)逃げ惑う子どもの映像が衝撃的すぎて怖かった記憶がある。
    中絶に関すること、拷問のシーンなど結構書かれているので、読むときは考えてからどうぞ。

  • 中絶の専門医である主人公が、歪んだ価値観により、日常に存在する悪いことをする人や、胸糞の悪いことをする人を自らの手で自宅の地下で殺すのを描いた物語。
    この手の小説なら殺すテンポがもうちょっと早くても良いと思うし、そこまでやることか?となることがあり感情移入できにくい。
    あと色んな方法で殺すのならもうちょっと描写が生々しく書かれててもよかったと思う。

  • 最後がなぁ
    また刺されて殺されるオチかなと思ったがそうでもない。
    院長を殺すかなと思ったけど違う。
    残虐性も官能性もイマイチな感じがした。
    でも読みやすい。

  • 自分も持ってるな…いや、きっと人って皆持ってるよ。
    ただ、実行するかしないかってだけ。理性や道徳ってのが働いてて『思ってもしないだけ』。

    『世のため人のため』や『正義』じゃなくて、ただ自分の琴線に引っかかった『気に入らない奴』ってだけなんだよね。

    それに至るまでの人格形成的なのも含め、単なるホラーやイヤミスではなく凄く納得できるなと思いながらも、しかし特別感情移入するでもなく俯瞰して淡々と行うのを淡々と見てる感じだった。

  • 大石圭さん2冊目。
    以前読んだ「湘南人肉医」とよく似た設定。優雅な暮らしをしているお医者さんが裏で人を殺しまくるというお話。小さい子供や動物を虐待する奴は同じ目に遭ってしまえ!と思ったりするので、いいぞもっとやれという気持ちになりました。拷問シーンが沢山あったけど、そんなにグロさは感じなかった。淡々と任務を遂行している感じ。深く考えず、ただ殺すのみ。そんな本。

  • ご飯は残さず食べましょう。

著者プロフィール

1961年、東京都出身。法政大学文学部卒業。93年、『履き忘れたもう片方の靴』で第30回文芸賞佳作を受賞し、デビュー。『アンダー・ユア・ベッド』『殺人勤務医』『絶望ブランコ』『愛されすぎた女』『裏アカ』など、著書多数。2019年には『殺人鬼を飼う女』『アンダー・ユア・ベッド』が立て続けに映画化され、話題に。

「2023年 『破滅へと続く道 右か、左か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大石圭の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ZOO
乙一
金原 ひとみ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×