おくのほそ道(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 角川書店 
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レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574025

作品紹介・あらすじ

2019年11月10日祝賀御列の儀 芦田愛菜さん祝辞で話題!
俳聖芭蕉の最も著名な紀行文、奥羽・北陸の旅日記を全文掲載。ふりがな付きの現代語訳と原文で朗読にも最適。コラムや地図・写真も豊富で携帯にも便利。風雅の誠を求める旅と昇華された俳句の世界への招待。

感想・レビュー・書評

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  • 「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり……」
    →時は永遠の旅人である。月も日もそして年も、始まりと終わりを繰り返しながら歩み続けて止まることはない。だから時が歩みを刻む人生は、旅そのものである……。

    詩のような美しい出だし、俳人松尾芭蕉(1644~1694)の紀行文『おくのほそ道』。
    人生は旅、行動する芭蕉の姿はとてもすがすがしく、勇気さえもらえます。流れる季節、やむことのない自然の営みを繊細な感覚で詠む才気、軽妙さの中にもしっかりと先人たちの文芸をふまえた風雅に感銘をうけます。
    3月に江戸を発ち、東北、奥羽、北陸をめぐる芭蕉と弟子の曾良(そら)。終点の大垣まで約5か月、2000キロ以上の旅は圧巻です!

    ***
    <啄木鳥(きつつき)も 庵(いお)は破らず夏木立>
    *季語=「夏木立」=夏
    啄木鳥もさすがに(仏頂和尚の)この庵は敬意をはらって壊さなかったとみえ、夏木立の中に姿を保っている。
    ちなみに啄木鳥は「寺つつき」という異名をもつそうで、可愛いやら可笑しいやら。

    <田一枚 植えて立ち去る柳かな>
    *季語=「田植え」=夏
    柳の蔭で昔を偲びながら涼んでいると、早乙女たちがもう田植えを終えてしまったようだ、名残惜しいそろそろ発とう(不肖アテナイエ訳)

    この句は、その昔、遍歴してこの柳の下で涼んだとされる西行の歌をうけています。

    <道のべに清水流るる柳かげ しばしとてこそ立ちどまりつれ>(西行『新古今集』)
    清水が流れる柳の蔭で涼んでいると、ほんの一休みのつもりが、ずいぶんと長居してしまったな。

    西行の足跡を追い、暑いなかやっとたどり着いたその柳蔭で感涙にむせぶ芭蕉、それを微笑ましくながめる曾良の姿が目に映るようです。なんといっても芭蕉は大の西行ファン、そこここに敬愛する西行の歌を取り入れながら俳句にしています。ということで、私も西行ファンなので、芭蕉と意気投合したような気持ちでかなりうれしい♪

    <夏草や 兵(つわもの)どもが夢の跡>
    *季語=「夏草」=夏
    「国破れて山河あり。城(しろ)春にして 草青(くさあお)みたり」
    国は滅んでも、山河はかわることなくそのまま、城は荒れても、春になれば草は緑に萌える。

    という杜甫の詩を踏まえた芭蕉の句は、無常感のただよう名句です。古戦場をまえに、人間という生き物のむなしさと、ついえた奥州の覇者への鎮魂句でもあります。

    その後、芭蕉は奥羽山脈を超えると……「山形領に立石寺(りっしゃくじ)という山寺あり。慈覚(じかく)大師の開基(かいき)にして、殊に清閑の地なり……岩にいわほを重ねて山とし、松柏 年旧(としふ)り、土石(どせき)老いて苔滑(こけなめ)らかに……」

    <閑(しず)かさや 岩にしみ入る蝉の声>
    *季語=「蝉」=夏

    9世紀(平安初期)、最澄の弟子だった慈覚大師は、比叡山の基礎を築いた名僧で、その大師の修業した幽玄な山寺に芭蕉はいたく感激しています。そして私がいたく感激するのは、つくづく『おくのほそ道』とは、その俳句のみならず、冒頭からの散文、随筆もみごとです。ときに美しい風景をみるような紀行文、ときに心が躍るような散文詩にであえます。

    さて旅も大詰め、ところが大切な旅の友、曾良が体調を崩します。泣く泣く芭蕉と曾良は別れることに……。

    <行(ゆ)き行きて 倒れ伏すとも萩の原>(曾良)
    *季語=「萩」=秋
    病人の一人旅だから途中で行き倒れになるかもしれない。それでも秋萩が咲きほこる原なら死んでも悔いはない。

    車もない、スマホもない、ドクターヘリもない……読んでいてハッとさせられます。昔の旅は己の身一つ、その足だけが頼りで、いつでも死と隣り合わせです。途中で別れ別れになってしまえば、行き倒れて今生の別れになるかもしれません。なにせ天気は思いどおりにならず、その予報もままなりません。食べ物や宿を確保するのも至難のわざ、道中には悪辣な追い剥ぎもいるかもしれません。精巧な地図もGPSもない、暗い山中や峠で道なき道に迷いはて、誤って滑落するかもしれません。流れのはやい最上川で小さな船の船頭に命を預け……と想像を広げてみるだけで、なるほど、旅を無事に終えることは快挙、運を天と道祖神(旅の神)にまかせた奇跡、まぶしく生きることでもあるのですね。

    芭蕉と曾良は半年近く旅をつづけ、奥羽山脈を越え、2000メートル級の月山(がっさん)に登り、さらに驚くのは、一日40~50キロを歩く、ほぼ毎日、ひたすら歩く! ということで、もともと伊賀の下級武士出身の芭蕉は、隠密としてみちのくの藩を偵察に行ったのではないか? なんてことも言われているよう(笑)。

    そんな驚異と奇跡の旅を、芭蕉と曾良が案内してくれます。思えば読書は時空を超えた旅のようなもの、芭蕉いわく旅は人生、となれば、読書は自分と他者の経験と生きざまをあらためて生きる、人生でもあります。

    ということで、本書は繰り返し読む旅人にも楽しめますし、はじめての旅人にもわかりやすい。現代訳、地図、興味深い小話なども用意していて、ガイダンスばっちり、至れり尽くせりの道の奥の旅になっていますよ♪

    • やまさん
      アテナイエさん
      おはようございます。
      コメントといいね!有難うございます!
      きょうの天気は、快晴です。
      今日も一日、健康に気を付けて...
      アテナイエさん
      おはようございます。
      コメントといいね!有難うございます!
      きょうの天気は、快晴です。
      今日も一日、健康に気を付けて良い一日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/12
  • 中学、高校などで古典に触れた方は一度は聞いたことがあるはずの『奥の細道』わたしも知ってるはず。だけど、うん?旅の日記だよね~俳句詠むんだよね~くらいの知識。おじいちゃん2人が黒っぽい着物を着て歩いている絵をぼんやり思い浮かべる程度。
    改めて今回手にとってみたビギナーズ・クラシックスシリーズ。このシリーズ読みやすくて、近頃少しずつ集めてる。
    まずは、あの2人のおじいちゃん、おじいちゃんって年齢ではなかった!彼らは松尾芭蕉と弟子の曾良なのね。芭蕉の曾良への信頼度はすごく厚いみたいで、弟子というよりも同じ修行者の友として一緒に旅をしている。曾良の話にはしっかりと耳を傾け、また彼が病気により芭蕉の元から離れることになったときは、とてつもなく悲しんでいる様子が窺える。この曾良はしっかり者で、旅の記録を『随行日記』として残している。『奥の細道』には芭蕉の創作が少なからず含まれているようで、コースの下調べ、資料収集、旅費の会計などを担当した曾良の記録は、信頼出来る資料なのだそうだ。
    この2人いいコンビだなぁ。
    感激屋で細かいことは気にせずに思いのまま旅を楽しむ師匠。そんな師匠にちょっぴり尻拭いをさせられながらも彼が災いに巻き込まれないように気を配る真面目な弟子。そんなイメージがわたしの中に生まれた。
    松島の美観を描いた芭蕉の随筆は、彼の感動が表れていて素敵だと思う。それと、義経の悲劇、藤原三代の栄枯盛衰、平泉で詠まれた芭蕉の鎮魂の句であろう《夏草や兵どもが夢の跡》がやっぱりわたしは一番好きだな。

  • 「蚤虱馬の尿する枕もと」は尿前の関の句である。宿泊先は住居の中に馬屋があった。蚤や虱がいて、馬が枕元で放尿するとユーモラスに描いている。この宿泊地は山形県最上郡最上町の旧有路家住宅(封人の家)として観光名所になっている。
    「尿する」の読みは「バリする」説と「しとする」説が対立する。「バリ」は俗語である。俗語であることで俳諧らしさが出るとする。これに対して「しとする」説は尿前(しとまえ)の関と合わせる。

  • 芦田愛菜さん祝辞で話題!
    俳聖芭蕉の最も著名な紀行文、奥羽・北陸の旅日記を全文掲載。ふりがな付きで朗読にも最適な一冊。

  • 学校で必ず習う冒頭の「月日は百代の・・・」以外の部分を初めてまともに(大半は現代語訳で)通読。

    風情ある景色の移ろいを書き留めているのかと思うとそうでもない。土産を持たされても重たいだけだし、宿だって道中どこにでもあるわけではなく、冷たい土間で一夜を明かすこともある。奥羽の関所では旅人自体が珍しく通過も難儀する。
    そんなようなことを、李白だの西行だのの基本的教養を下敷きに書き綴っている、と言われてもそうわかるものでもない。

    それでも旅好きの人が読めば「あーこのあたりか。ルートは今と同じだなー」といった楽しみ方はある。個人的にツボだったのは山形「出羽三山」参詣の下り。ここ数年来、ここを踏破してみたいというのが個人的な念願なのだ。芭蕉が参詣後に奉納した句がなんともいい。

    「涼しさや ほの三日月の 羽黒山」(羽黒山)
    「雲の峰 いくつ崩れて 月の山」(月山)
    「語られぬ 湯殿にぬらす 袂かな」(湯殿山)

    とくに月山(がっさん)。標高1,400m、峰のように連なった雲が風で次々形を変えふと姿を見せる山頂。うーん、行きたい。

    きちんと回ると二泊三日必要。仕事の合間を縫ってうまくスケジューリングできるかな、なんて言っているうちはできないのである。住み慣れた庵も(いったん)打ち捨てて今年あたりいよいよ(新幹線で)挑戦したい。

    (ちなみにもともとは修験道、神仏習合の聖地だが、明治以降は神社)。

  • 角川のビギナーズ・クラシックスは非常に読みやすい。
    古典に詳しくない人にもわかるような豆知識も書いてあるところもビギナーズと銘打っているに相応しい。

  • 俳聖・松尾芭蕉の五ヶ月に渡る奥羽・北陸の旅日記。崇拝する西行の面影を偲び、雄大かつ過酷な自然に対峙し、源平合戦の昔を想う。紀行文に留まらない俳諧の真髄を貫く。

    理由あっておくのほそ道を読もうと思ってそういえばビギクラにあったような……と思い手を取ってみた。文化文政の頃の文章は八犬伝読んでるけど元禄時代のやつって全然読んでないしましてや俳諧紀行文はめちゃ専門外だわ~となってしまった。ビギクラは最初に現代語訳で次に本文なんだけど文語文の簡素さに惚れ惚れしてしまったよね(そこ?
    なんというかこの文章をそのまま旅行誌とかに載せてもいいなって思っちゃった。それくらいいろいろ浮かんでくるし実際におくのほそ道聖地巡礼したくなったりもしました。東北以外はオマケ程度なのかなと思ったけど越後~北陸の方もとてもよくて荒波やの句もそのまま情景が浮かんできてしまった。途中で曽良と別れるのはちょっとしんみりしてしまったけど最後に曽良含めた門人が沢山集まって旅のゴールを迎えてくれたのがなかなかにドラマチックでした(?)最後の句が最初の句と対句みたいになってるのも好きだしまだまだ旅に生きるという芭蕉の信念が伺えました。

  • 国語の教科書ではなかなか頭に残らないものだが、このビギナーズクラッシックスのシリーズはかなり読みやすい。

    今朝の東野圭吾先生も会社の方にお借りした本だが、これまた別の会社の方にお借りした。

    文学は苦手で、お借りしてから半月ほど手に取ることができなかったが、読んでみるとあっという間に読み終わる。

    解説が易しく、情景も掴みやすい。
    なじみの俳句ももちろん登場し、少し嬉しい気持ちになる。

    東北旅行してみたくなる、そんな一冊。

  • 断片的には読んできたが、今回初めて通して読んだ。
    内容はあまりにも有名だが、こうやって通して読むと、松尾芭蕉という一人の天才の魂の軌跡みたいなものが浮かび上がってくる。すでに俳諧の世界ではトップに君臨しながらも全てを捨てて旅を続ける心境がなんとなく分かることで、その俳句の精神世界が少し理解できたような気がする。
    ある意味、究極のロードノベル。

    詳しい日本語や、旅の経緯が入った地図、俳句の説明など、私みたいに古語や俳句に疎い人間にも分かるように丁寧に編纂されていて本当にありがたかった。入門書として最適で、これを読むと、芭蕉や俳諧の世界がもっと詳しく知りたくなった。

  • 一応中学・高校で古文はやったが、あまり馴染むこともできず、その後はすっかりご無沙汰、でも古典にまったく興味がないわけでもない……といった向き(つまり僕だが)にはありがた過ぎる角川文庫の「ビギナーズ・クラシック」シリーズの中の一冊。

    「おくのほそ道」自体は短い作品なので、全文が収載されているが、本書ではそれを場面ごとに細かく項分けしている。各項は現代語訳→原文→解説で構成されるが、これとは別に随所に理解を助けるためのコラムが挿入されている。現代語訳と原文は総ルビ。巻末では「解説」で芭蕉の人物伝と、「おくのほそ道」全体の概説がなされ、「付録」には本作の旅程図、芭蕉の年譜などが付く。まさに至れり尽くせりである。

    古典とはいえ要は旅行記なのだから、肩肘を張る必要はない。芭蕉とともに旅を楽しめばよいと思う。各所に垣間見える芭蕉の人柄や人生観、当時の人びとの人情なども興味深いところである。

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